急性期入院医療試行診断群分類を活用した調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300075A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期入院医療試行診断群分類を活用した調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 今中雄一(京都大学)
  • 遠藤久夫(学習院大学)
  • 信友浩一(九州大学)
  • 橋本英樹(帝京大学)
  • 伏見清秀(東京医科歯科大学)
  • 阿南誠(国立九州医療センター)
  • 大江和彦(東京大学)
  • 石川B光一(国立がんセンター)
  • 柿田章(日本私立医科大学協会)
  • 近藤克幸(秋田大学医学部附属病院)
  • 牧野勲(旭川医科大学医学部附属病院)
  • 小林誠一郎(岩手医科大学附属病院)
  • 大橋裕一(愛媛大学医学部附属病院)
  • 中野重行(大分大学医学部附属病院)
  • 合地明(岡山大学医学部附属病院)
  • 長尾省吾(香川大学医学部附属病院)
  • 愛甲孝(鹿児島大学医学部附属病院)
  • 利波紀久(金沢大学医学部附属病院)
  • 北島康雄(岐阜大学医学部附属病院)
  • 名和田新(九州大学病院)
  • 田中紘一(京都大学医学部附属病院)
  • 高山誠(杏林大学医学部付属病院)
  • 三池輝久(熊本大学医学部附属病院)
  • 森下靖雄(群馬大学医学部附属病院)
  • 倉本秋(高知大学医学部附属病院)
  • 坂本憲広(神戸大学医学部附属病院)
  • 十時忠秀(佐賀大学医学部附属病院)
  • 中村征矢(産業医科大学病院)
  • 森田陸司(滋賀医科大学医学部附属病院)
  • 布施勝生(自治医科大学附属病院)
  • 加藤讓(島根大学医学部附属病院)
  • 村瀬澄夫(信州大学医学部附属病院)
  • 藤澤武彦(千葉大学医学部附属病院)
  • 山口巌(筑波大学附属病院)
  • 西岡清(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 永井良三(東京大学医学部附属病院)
  • 山田章吾(東北大学病院)
  • 香川征(徳島大学病院)
  • 石部裕一(鳥取大学医学部附属病院)
  • 寺澤捷年(富山医科薬科大学附属病院)
  • 澄川耕二(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
  • 武澤純(名古屋大学医学部附属病院)
  • 赤澤宏平(新潟大学医歯学総合病院)
  • 根岸七雄(日本大学医学部附属板橋病院)
  • 菅野剛史(浜松医科大学医学部)
  • 羽田隆吉(弘前大学医学部附属病院)
  • 弓削孟文(広島大学医学部・歯学部附属病院)
  • 上田孝典(福井大学医学部附属病院)
  • 杉原平樹(北海道大学病院)
  • 山本晧二(三重大学医学部附属病院)
  • 江藤胤尚(宮崎大学医学部附属病院)
  • 山下英俊(山形大学医学部附属病院)
  • 沖田極(山口大学医学部附属病院)
  • 佐藤弥(山梨大学医学部附属病院)
  • 古謝景春(琉球大学医学部附属病院)
  • 黒岩義之(横浜市立大学)
  • 片山容一(日本大学)
  • 増田寛次郎(日本赤十字社医療センター)
  • 竹中洋(大阪医科大学)
  • 川城丈夫(国立療養所東埼玉病院)
  • 加藤治文(東京医科大学病院)
  • 山口徹(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 小柳仁(聖路加国際病院)
  • 飯野四郎(医療法人社団静山会清川病院)
  • 比企能樹(北里大学)
  • 里見和彦(杏林大学)
  • 飯島正文(昭和大学)
  • 福田護(聖マリアンナ医科大学)
  • 青木矩彦(近畿大学)
  • 小原孝男(東京女子医科大学)
  • 松岡健平(東京都済生会糖尿病臨床研究センター)
  • 高橋進(日本大学)
  • 大石幸彦(東京慈恵会医科大学)
  • 松田静冶(医療法人社団順江会江東病院)
  • 北村聖(東京大学)
  • 中村純次(東京厚生年金病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
240,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の医療水準は、医療技術の著しい進歩などにより、国際的にみても高い水準に達してきており、また全国的にみても同水準の医療を国民が享受できるようになってきているが、今後、さらに質の高い入院医療を確保するため、急性期疾患について、診断群分類を活用しつつ入院期間や診療内容等を把握・分析するとともに、こうした分析が、診療内容の質の向上や効率化に有効か、病院経営の合理化に役立つか、病院機能を評価する際の枠組みとしてどのように活用できるかなどについても必要なデータを収集し、併せて分析を行う必要がある。本研究は、中央社会保険医療協議会(以下中医協)の審議を踏まえ、現在、国立病院等10病院において行われている診断群分類に応じた定額払い方式の試行とは視点を異にして、診断群分類そのもの及びそれを活用した診療内容等に関する調査に関する基礎的な分析方法等の知見を蓄積するものである。
また、平成15年度から特定機能病院ではわが国独自の診断群分類であるDPC(Diagnosis Procedure Combination)に基づく包括支払い方式が行われている。本年度研究では、昨年度に引き続きこれらの施設からデータを収集し、DPCの精緻化を計ると同時に、DPC導入が各医療施設の医療内容にどのような影響をもたらしたのかについて研究を行った。
さらにDPCに対応した標準原価計算マニュアルを作成し、それに基づいたデータ収集を行い、DPCごとの原価構成を推計する試みを行った。
研究方法
本研究の実施に当たっては、全国の病院管理学、医療経済学、医療情報学、各臨床分野の専門家からなる以下のような研究班を組織し検討を行った。まず、各研究班における研究の基礎となるデータベースの作成及び各研究班の検討のとりまとめを行う「診断群分類を活用した調査研究班(総括研究班)」をおいた。その下に、「分野別研究班」(12班)及び「主要診断群別検討班」(15班)をおいた。それぞれの主な役割は以下の通りである。
まず、各研究班における研究の基礎となるデータベースの作成及び各研究班の検討のとりまとめを行う「診断群分類を活用した調査研究班(総括研究班)」をおいた。その下に、以下のような「分野別研究班」(12班)をおいた。(1)「診断群分類調査研究班」(分担研究者:松田晋哉;以下同じ)においては、臨床学的類似性からのDPCの精緻化案の作成を行った。(2)「医療情報データベース構築に関する研究班」(井上通敏)においては、医療情報データベース構築に関する種々の問題(データの標準化及び質の問題等)の検討を行った。(3)「医療経済学的分析に関する研究班」(遠藤久雄)においては、医療経済学的な観点からのDPCの医療の質に対する影響についての研究を行った。(4)「病院管理学的分析に関する研究班」(信友浩一)においては、収集されたデータをもとに、病院管理学的観点からの研究(評価指標の作成)と分析を行った。(5)「医療技術の経済的評価手法に関する研究班」(今中雄一)においてはDPCの資源消費量の指標である相対係数計算の基礎となる医療技術の経済学的評価手法の基礎的検討を行い、コスティングマニュアルの作成を行った。(6)「診断群分類を用いた医療の質管理手法に関する研究班」(橋本英樹)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCを用いた医療の質評価の方法論について検討を行った。また、平成14年度・15年度のデータを用いて、医療行為の内容の変化に関する分析を行った。(7)「診断群分類の妥当性検証の方法論に関する研究班」(伏見清秀)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCの妥当性検証のための方法論について検討を行った。(8)「ICDコーディング作業標準化に関する研究班」(阿南 誠)においては試行研究参加施設を対象にコーディングの実態調査を行い、その現状と問題点を明らかにし、今後コーディングの標準化を実現するための方法論と支援方法について検討した。(9)「主要診断群別検討班」は15班設置し、主要診断カテゴリーごとにDPCの精緻化(Ver.3)作業を行った。(10)「特定機能病院におけるデータ検討班」(石川B光一)においては特定機能病院から提出されるデータの分析手法の検討を行い、特定機能病院の特徴を考慮した分類案の基礎データを作成した。(11)「診断群分類に対応した電子カルテ用ソフトウエアに関する研究班(大江和彦)」においてはDPCに対応した電子カルテシステム及び電子レセプトシステムの開発を行った。(12)「私立大学病院におけるコスト検討班(柿田 章)」においては14年度研究で完成した原価計算マニュアルを用いて、DPCごとの原価構成を推計する試みを行った。
結果と考察
平成15年度の主な研究成果は以下の通りである。(1)全国82の特定機能病院等から収集した診療録及び診療報酬明細書のデータ(平成15年7月~10月の退院患者、29.3万人分)に基づき、研究班と専門家との議論を行い、DPC ver.3 (Diagnosis Procedure Combination version 3)の精緻化作業を行った。(2)上記データをもとに、一定数の症例があるDPCのみを対象に、施設単位での在院日数や支払額の分布を検討した。その結果に基づいて病院機能を評価するための指標(効率性指標、複雑性指標、Density score等)を開発し、その妥当性、有効性を検討した。(3)DPC割付の基礎となる傷病名及び処置行為のコーディングを正確に行うための情報システムの開発を行った。また、ICD10へのコーディングが正確に行われるための留意事項について、収集したデータをもとに整理を行った。さらに、調査対象病院で使用されている臨床病名の集計を行い、ICD10との対応上の問題点の整理を行った。(4)14年度研究で完成したコスティングマニュアルをもとに私立大学病院におけるDPC単位での原価推計を試みた。(5)DPCに関連して収集している情報をもとに臨床指標の開発を試みた。その結果、わが国の医療施設間には傷病によって、臨床指標に比較的大きな差があることが明らかとなった。(6)いくつかのDPCについて診療内容の変化を分析した。DPCによる包括評価制度導入前に懸念されていた過少診療(投薬などの極端な減少)やアップコ
ーディングは生じていなかった。(7)DPCの精緻化の方法論として、副傷病名にDPCを割り付け、主たるDPCとの組み合わせでケースミックスを定義する方法(CCPマトリックス法)について、その適用を試行的に行った。(9)DPC関連情報作成の効率化を目的として、既存の病院情報システムからのデータの取り込みシステムの開発を行った。また、データ集計と分析結果開示のためのOLAP技術の活用方法について、その試験的運用を行った。(10)DPCの継続的精緻化のためのワークフローを作成した。(11)今後のDPCの精緻化に資する目的で、17の国について診断群分類の状況について調査を行い、その概要を整理した。このうちオーストラリア、オーストリア、オランダ、フランス、シンガポール、韓国については現地調査も行った。今年度調査では特に診断群分類の担当組織の実態調査を中心とした。以上の研究成果は平成16年度4月から特定機能病院等における包括評価に基づく支払い方式の基礎として活用されている。
結論
本研究の結論は以下のとおりである。(1)全国82の特定機能病院等から収集した診療録及び診療報酬明細書のデータ(平成15年7月~10月の退院患者、29.3万人分)に基づき、研究班と専門家との議論を行い、DPC ver.3の精緻化作業を行った。(2)上記データをもとに、一定数の症例があるDPCのみを対象に、施設単位での在院日数や支払額の分布を検討した。その結果に基づいて昨年度開発した病院機能を評価するための指標(効率性指標、複雑性指標、Density score等)を用いて施設間のベンチマーキングを行った。(3)DPC割付の基礎となる傷病名及び処置行為のコーディングを正確に行うための情報システムの開発を行った。また、ICD10へのコーディングが正確に行われるための留意事項について、集計データをもとに整理を行った。(4)14年度研究で作成したコスティングマニュアルを用いてDPCごとの原価の推計を行った。(5)DPCに関連して収集している情報をもとに臨床指標の開発を試みた。その結果、わが国の医療施設間には傷病によって、臨床指標に比較的大きな差があることが明らかとなった。(6)上記検討を基にDPCの継続的改定のためのワークフローを作成した。

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研究報告書(紙媒体)

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