文献情報
文献番号
200200068A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期入院医療試行診断群分類を活用した調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学)
研究分担者(所属機関)
- 今中雄一(京都大学)
- 遠藤久夫(学習院大学)
- 信友浩一(九州大学)
- 橋本英樹(帝京大学)
- 五島雄一郎(東海大学)
- 井上通敏(国立大阪病院)
- 伏見清秀(東京医科歯科大学)
- 阿南誠(国立九州医療センター)
- 大江和彦(東京大学)
- 石川B光一(国立がんセンター)
- 佐藤啓二(愛知医科大学附属病院)
- 近藤克幸(秋田大学医学部附属病院)
- 牧野勲(旭川医科大学医学部附属病院)
- 小林誠一郎(岩手医科大学附属病院)
- 小林展章(愛媛大学医学部附属病院)
- 茂木五郎(大分医科大学医学部附属病院)
- 植木實(大阪医科大学附属病院)
- 吉川純一(大阪市立大学医学部附属病院)
- 武田裕(大阪大学医学部附属病院)
- 合地明(岡山大学医学部附属病院)
- 高岩堯(香川医科大学医学部附属病院)
- 納光弘(鹿児島大学医学部附属病院)
- 堤幹宏(金沢医科大学病院)
- 利波紀久(金沢大学医学部附属病院)
- 山下貢司(川崎医科大学附属病院)
- 高橋伯夫(関西医科大学附属病院)
- 柿田章(北里大学病院)
- 北島康雄(岐阜大学医学部附属病院)
- 名和田新(九州大学医学部附属病院)
- 田中紘一(京都大学医学部附属病院)
- 中川雅夫(京都府立医科大学附属病院)
- 高山誠(杏林大学医学部附属病院)
- 大柳冶正(近畿大学医学部附属病院)
- 生塩之敬(熊本大学医学部附属病院)
- 野田進士(久留米大学病院)
- 森下靖雄(群馬大学医学部附属病院)
- 村井勝(慶應義塾大学病院)
- 相良祐輔(高知医科大学医学部附属病院)
- 坂本憲広(神戸大学医学部附属病院)
- 尾本良三(埼玉医科大学附属病院)
- 宮崎澄雄(佐賀医科大学医学部附属病院)
- 並木昭義(札幌医科大学医学部附属病院)
- 中村征矢(産業医科大学病院)
- 森田陸司(滋賀医科大学医学部附属病院)
- 布施勝生(自治医科大学附属病院)
- 永末直文(島根医科大学医学部附属病院)
- 佐藤裕之(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
- 五味邦英(昭和大学病院)
- 村瀬澄夫(信州大学医学部附属病院)
- 明石勝也(聖マリアンナ医科大学病院)
- 伊藤晴夫(千葉大学医学部附属病院)
- 能勢忠男(筑波大学附属病院)
- 三上真弘(帝京大学医学部附属病院)
- 堺秀人(東海大学医学部付属病院)
- 西岡清(東京医科歯科大学医学部附属病院)
- 小柳泰久(東京医科大学病院)
- 大石幸彦(東京慈恵会医科大学附属病院)
- 東間紘(東京女子医科大学病院)
- 加藤進昌(東京大学医学部附属病院)
- 小山信彌(東邦大学医学部付属大森病院)
- 山田章吾(東北大学医学部附属病院)
- 香川征(徳島大学医学部附属病院)
- 稲葉憲之(獨協医科大学病院)
- 三原基之(鳥取大学医学部附属病院)
- 寺澤捷年(富山医科薬科大学附属病院)
- 澄川耕二(長崎大学医学部附属病院)
- 郡健二郎(名古屋市立大学病院)
- 武澤純(名古屋大学医学部附属病院)
- 吉岡章(奈良県立医科大学附属病院)
- 赤澤宏平(新潟大学医学部附属病院)
- 隈崎達夫(日本医科大学付属病院)
- 根岸七雄(日本大学医学部附属板橋病院)
- 菅野剛史(浜松医科大学医学部附属病院)
- 宮本正喜(兵庫医科大学病院)
- 羽田隆吉(弘前大学医学部附属病院)
- 弓削孟文(広島大学医学部附属病院)
- 齋藤等(福井医科大学医学部附属病院)
- 白日高歩(福岡大学病院)
- 菊池臣一(福島県立医科大学医学部附属病院)
- 岸川輝彰(藤田保健衛生大学病院)
- 加藤紘之(北海道大学医学部附属病院)
- 山本晧二(三重大学医学部附属病院)
- 荒木賢二(宮崎医科大学医学部附属病院)
- 嘉山孝正(山形大学医学部附属病院)
- 沖田極(山口大学医学部附属病院)
- 佐藤弥(山梨医科大学医学部附属病院)
- 根本明宣(横浜市立大学医学部附属病院)
- 古謝景春(琉球大学医学部附属病院)
- 西尾一郎(和歌山県立医科大学附属病院)
- 黒岩義之(横浜市立大学)
- 斎藤勇(杏林大学)
- 竹中洋(大阪医科大学)
- 川城丈夫(国立療養所東埼玉病院)
- 加藤治文(東京医科大学病院)
- 山口徹(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
- 小柳仁(聖路加国際病院)
- 飯野四郎(医療法人社団静山会清川病院)
- 比企能樹(北里大学)
- 関寛之(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
- 飯島正文(昭和大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
300,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の医療水準は、医療技術の著しい進歩などにより、国際的にみても高い水準に達してきており、また全国的にみても同水準の医療を国民が享受できるようになってきているが、今後、さらに質の高い入院医療を確保するため、急性期疾患について、診断群分類を活用しつつ入院期間や診療内容等を把握・分析するとともに、こうした分析が、診療内容の質の向上や効率化に有効か、病院経営の合理化に役立つか、病院機能を評価する際の枠組みとしてどのように活用できるかなどについても必要なデータを収集し、併せて分析を行う必要がある。本研究は、中央社会保険医療協議会(以下中医協)の審議を踏まえ、現在、国立病院等10病院において行われている診断群分類に応じた定額払い方式の試行とは視点を異にして、診断群分類そのもの及びそれを活用した診療内容等に関する調査に関する基礎的な分析方法等の知見を蓄積するものである。
また、本年度研究では中医協における審議結果を踏まえて、平成15年度から特定機能病院において診断群分類による包括評価に基づく支払い方式が行われることを前提に、全国82(+1分院)の特定機能病院から収集したデータをもとに、わが国独自の診断群分類であるDPC(Diagnosis Procedure Combination)を開発することを最も重要な目的とした。
また、本年度研究では中医協における審議結果を踏まえて、平成15年度から特定機能病院において診断群分類による包括評価に基づく支払い方式が行われることを前提に、全国82(+1分院)の特定機能病院から収集したデータをもとに、わが国独自の診断群分類であるDPC(Diagnosis Procedure Combination)を開発することを最も重要な目的とした。
研究方法
本研究の実施に当たっては、全国の病院管理学、医療経済学、医療情報学、各臨床分野の専門家からなる以下のような研究班を組織し検討を行った。まず、各研究班における研究の基礎となるデータベースの作成及び各研究班の検討のとりまとめを行う「診断群分類を活用した調査研究班(総括研究班)」をおいた。その下に、「分野別研究班」(10班)及び「主要診断群別検討班」(15班)をおいた。それぞれの主な役割は以下の通りである。
まず、各研究班における研究の基礎となるデータベースの作成及び各研究班の検討のとりまとめを行う「診断群分類を活用した調査研究班(総括研究班)」をおいた。その下に、以下のような「分野別研究班」(11班)をおいた。(1)「診断群分類調査研究班」(分担研究者:五島雄一郎;以下同じ)においては、臨床学的類似性からのDPCの検討と原案の作成を行った。(2)「医療情報データベース構築に関する研究班」(井上通敏)においては、医療情報データベース構築に関する種々の問題(データの標準化及び質の問題等)の検討を行った。(3)「医療経済学的分析に関する研究班」(遠藤久雄)においては、医療経済学的な観点からのDPCの医療の質に対する影響についての研究を行った。(4)「病院管理学的分析に関する研究班」(信友浩一)においては、収集されたデータをもとに、病院管理学的観点からの研究(評価指標の作成)と分析を行った。(5)「医療技術の経済的評価手法に関する研究班」(今中雄一)においてはDPCの資源消費量の指標である相対係数計算の基礎となる医療技術の経済学的評価手法の基礎的検討を行い、コスティングマニュアルの作成を行った。(6)「診断群分類を用いた医療の質管理手法に関する研究班」(橋本英樹)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCを用いた医療の質評価の方法論について検討を行った。(7)「診断群分類の妥当性検証の方法論に関する研究班」(伏見清秀)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCの妥当性検証のための方法論について検討を行った。(8)「ICDコーディング手法の標準化に関する研究班」(阿南 誠)においては試行研究参加施設を対象にコーディングの実態調査を行い、その現状と問題点を明らかにし、今後コーディングの標準化を実現するための方法論と支援方法について検討した。(9)「主要診断群別検討班」は15班設置し、主要診断カテゴリーごとにDPCの精緻化(Ver.3)作業を行った。(10)「特定機能病院におけるデータ検討班」(石川B光一)においては特定機能病院から提出されるデータの分析手法の検討を行い、特定機能病院の特徴を考慮した分類案の基礎データを作成した。(11)「診断群分類に対応した電子カルテ用ソフトウエアに関する研究班(大江和彦)においてはDPCに対応した電子カルテシステム及び電子レセプトシステムの開発を行った。
まず、各研究班における研究の基礎となるデータベースの作成及び各研究班の検討のとりまとめを行う「診断群分類を活用した調査研究班(総括研究班)」をおいた。その下に、以下のような「分野別研究班」(11班)をおいた。(1)「診断群分類調査研究班」(分担研究者:五島雄一郎;以下同じ)においては、臨床学的類似性からのDPCの検討と原案の作成を行った。(2)「医療情報データベース構築に関する研究班」(井上通敏)においては、医療情報データベース構築に関する種々の問題(データの標準化及び質の問題等)の検討を行った。(3)「医療経済学的分析に関する研究班」(遠藤久雄)においては、医療経済学的な観点からのDPCの医療の質に対する影響についての研究を行った。(4)「病院管理学的分析に関する研究班」(信友浩一)においては、収集されたデータをもとに、病院管理学的観点からの研究(評価指標の作成)と分析を行った。(5)「医療技術の経済的評価手法に関する研究班」(今中雄一)においてはDPCの資源消費量の指標である相対係数計算の基礎となる医療技術の経済学的評価手法の基礎的検討を行い、コスティングマニュアルの作成を行った。(6)「診断群分類を用いた医療の質管理手法に関する研究班」(橋本英樹)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCを用いた医療の質評価の方法論について検討を行った。(7)「診断群分類の妥当性検証の方法論に関する研究班」(伏見清秀)においては諸外国における先行事例を参考としながら、わが国におけるDPCの妥当性検証のための方法論について検討を行った。(8)「ICDコーディング手法の標準化に関する研究班」(阿南 誠)においては試行研究参加施設を対象にコーディングの実態調査を行い、その現状と問題点を明らかにし、今後コーディングの標準化を実現するための方法論と支援方法について検討した。(9)「主要診断群別検討班」は15班設置し、主要診断カテゴリーごとにDPCの精緻化(Ver.3)作業を行った。(10)「特定機能病院におけるデータ検討班」(石川B光一)においては特定機能病院から提出されるデータの分析手法の検討を行い、特定機能病院の特徴を考慮した分類案の基礎データを作成した。(11)「診断群分類に対応した電子カルテ用ソフトウエアに関する研究班(大江和彦)においてはDPCに対応した電子カルテシステム及び電子レセプトシステムの開発を行った。
結果と考察
平成14年度の主な研究成果は以下の通りである。(1) 全国82の特定機能病院等から収集した診療録及び診療報酬明細書のデータ(平成14年7月~10月の退院患者、26.7万人分)に基づき、研究班と専門家との議論を行い、575傷病、2552分類からなる、わが国独自の診断群分類であるDPC ver.3 (Diagnosis Procedure Combination version 3)を開発した。(2)上記データをもとに、一定数の症例があるDPCのみを対象に、施設単位での在院日数や支払額の分布を検討した。その結果に基づいて病院機能を評価するための指標(効率性指標、複雑性指標、Density score等)を開発し、その妥当性、有効性を検討した。(3)DPC割付の基礎となる傷病名及び処置行為のコーディングを正確に行うための情報システムの開発を行った。また、ICD10へのコーディングが正確に行われるための留意事項について、上記26.7万人分のデータをもとに整理を行った。(4)将来的に原価に基づく相対係数の作成を可能とすること、及び病院管理における応用を前提として、標準的なコスティングマニュアルを作成した。また、その妥当性を確認する目的で4つの病院で試行調査を行った。(5)今後のDPCの精緻化に資する目的で、17の国について診断群分類の状況について調査を行い、その概要を整理した。このうちオーストラリア、オーストリア、オランダ、ベルギーについては現地調査も行った。以上の研究成果は平成15年度4月から全国82の特定機能病院における包括評価に基づく支払い方式の基礎として活用されている。
結論
本研究の結論は以下のとおりである。(1)全国82の特定機能病院等から収集した診療録及び診療報酬明細書のデータ(平成14年7月~10月の退院患者、26.7万人分)に基づき、研究班と専
門家との議論を行い、575傷病、2552分類からなる、わが国独自の診断群分類であるDPC ver.3を開発した。(2)上記データをもとに、一定数の症例があるDPCのみを対象に、施設単位での在院日数や支払額の分布を検討した。その結果に基づいて病院機能を評価するための指標(効率性指標、複雑性指標、Density score等)を開発し、その妥当性、有効性を検討した。(3)DPC割付の基礎となる傷病名及び処置行為のコーディングを正確に行うための情報システムの開発を行った。また、ICD10へのコーディングが正確に行われるための留意事項について、上記26.7万人分のデータをもとに整理を行った。(4)将来的に原価に基づく相対係数の作成を可能とすること、及び病院管理における応用を前提として、標準的なコスティングマニュアルを作成した。(5)今後、実際の運用を通して種々の解決すべき課題が生じてくると予想される。従って、今後の研究においてはこのような課題を解決するために必要となる課題について重点的に検討を行う必要があると考える。具体的には分類の精緻化、DPCに基づくコストデータの作成、DPCに基づく病院管理指標ならびに質の評価のための指標の開発が課題である。
門家との議論を行い、575傷病、2552分類からなる、わが国独自の診断群分類であるDPC ver.3を開発した。(2)上記データをもとに、一定数の症例があるDPCのみを対象に、施設単位での在院日数や支払額の分布を検討した。その結果に基づいて病院機能を評価するための指標(効率性指標、複雑性指標、Density score等)を開発し、その妥当性、有効性を検討した。(3)DPC割付の基礎となる傷病名及び処置行為のコーディングを正確に行うための情報システムの開発を行った。また、ICD10へのコーディングが正確に行われるための留意事項について、上記26.7万人分のデータをもとに整理を行った。(4)将来的に原価に基づく相対係数の作成を可能とすること、及び病院管理における応用を前提として、標準的なコスティングマニュアルを作成した。(5)今後、実際の運用を通して種々の解決すべき課題が生じてくると予想される。従って、今後の研究においてはこのような課題を解決するために必要となる課題について重点的に検討を行う必要があると考える。具体的には分類の精緻化、DPCに基づくコストデータの作成、DPCに基づく病院管理指標ならびに質の評価のための指標の開発が課題である。
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