食品用香料及び天然添加物の化学的安全性確保に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200200979A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用香料及び天然添加物の化学的安全性確保に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤恭子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 伊藤誉志男(武庫川女子大学)
  • 義平邦利(東亜大学)
  • 山崎壮(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 扇間昌規(武庫川女子大学)
  • 斉藤寛(岡山大学)
  • 川崎洋子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 四方田千佳子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品・化学物質安全総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
26,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用香料及び天然添加物の安全性を化学的研究により確保するために、(I)食品香料においては、①香料規格のあり方を検討し、②流通量調査により暴露量を評価し、③規格定量法や不純物試験法を検討し、さらに、④食品中からの分析法の開発と、⑤天然香料基原植物の成分調査と毒性調査を行う。また、(Ⅱ)天然添加物においては、⑥天然添加物の公的規格設定に向けて、業界自主規格案の策定を行い、⑦第7版食品添加物公定書に収載の規格試験法から有害試薬を排除することを目的に、代替試験法案について、市場流通品への適用可否について調査研究を行い、また、⑧天然添加物中の不純物および主成分のアレルゲン性について、アレルゲン性試験法の開発を目的にマウス膝窩リンパ節測定法の検討を行い、さらに⑨天然添加物の分析法を充実させるために、酸化防止剤茶抽出物の定量法を確立し、さらに、(Ⅲ)食品添加物全般を対象に、⑩IRによる確認試験のあり方の研究、⑪確認試験の参照スペクトルとして採用するIRスペクトルの研究、⑫食品中未許可添加物の分析法の開発をめざし、摂取量調査として、⑬生産量統計に基づく推定と、⑭行政検査結果に基づく推定を行う。以上の研究により、食品添加物の規格基準や分析法を設定し、また、食品添加物の摂取量を把握することにより、食品添加物の安全性を化学的に確保し、国民の健康維持に役立つことを目的とする。
研究方法
①食品香料の規格のあり方を考えるにあたり、規格未設定の品目について、国内各社の自社規格を調査し、国際的な規格と比較した。②香料化合物の使用実態調査を行い、部分的な品目については、JECFAの安全性評価法を用いた評価を実施した。③香料化合物のGC法による含量測定法の公定書への収載に向けて、難揮発性成分や不揮発性成分などが存在する場合の簡便な内標準法としての一点検量法を8機関で検討した。また、昨年度検討した天然香料中残留溶媒一斉分析法(案)を改良するとともに、6溶媒の限度試験法を作成し、11機関で検討した。④食品中の柑橘系香料の分析法として、SPME法(固相マイクロ抽出法)による前処理を行った後、GC/MSを用いて一斉分析する方法を検討した。⑤昨年度に引き続き「サ」のサイプレスから「ハ」のバンレイシまでの天然香料基原の植物・動物・微生物および近縁動物・植物・微生物について、含有成分の調査をし、それらの各成分について生理活性物質、障害・毒性物質等があるかも調査をした。⑥天然添加物規格設定のための研究を、日添協技術委員会・自主規格専門委員会を中心に推進した。既存添加物製造企業の自社品質規格・試験法等について調査を行い、その規格内容の妥当性を評価した。⑦有害試薬の排除のために、日添協技術委員会が中心となり、代替試験法案の市場流通品への適用性について調査し、適用不可能な場合は改めて代替試験法の開発を検討した。⑧天然添加物中のアレルギー物質に関する研究では、水溶性物質として着色料をモデル化合物に用い、化学構造あるいは色素の精製度とマウス膝窩リンパ節測定法(PLNA)二次応答の強さとの相関について比較検討した。⑨茶抽出物の分析では、固相カラムで前処理を行った後、HPLC-UVを用いて、グラジエント溶出する分析法を検討した。⑩食品添加物5製品及び試薬1製品につき、種々の前処理後、IRスペクトルを測定した。⑪参照スペクトルとして採用するため
に、カルナウバロウ、魚燐粉およびガムベースを入手し、ペースト法およびKBr法でIRを測定した。また、食品香料24品目も入手し、主に液膜法で測定し、必要に応じてヌジョール法とKBr法も用いた。⑫エビへの保存料4-へキシルレゾルシノールの分析法では、固相カートリッジによる精製後、HPLCで定量する方法を検討した。⑬指定添加物について、その製造・輸入事業者を対象に、食品添加物グレードの製造、輸入量、年間純食品向け出荷量、輸出量について、第7回調査のアンケートを実施した。⑭行政検査に基づく食品添加物の摂取量調査では、試作した全国自治体による食品添加物の行政検査結果集計用データベースを使用し、システムの改良を試みた。
結果と考察
①18類に属する二千数百種の香料化合物の規格を調査し、その内、実際に使用実態(会社数)が多い化合物やわが国独自の化合物から40品目を選択し、JECFA、FCCなどの国際規格と比較した。②流通量調査による暴露量評価に関しては、有効回答率は96.2%であった。国内における全食品香料化合物総使用量に対する78品目の総使用量の比率は65.1%であった。③香料化合物と内標準物質の重量比とピーク面積比の検量線、純度とピーク面積比の検量線は良好な直線性を示し、一点検量法による含量測定は信頼性ある結果を与えた。天然香料の残留溶媒一斉分析法では、多点検量線法と一点検量線法により同様の結果が得られ、限度試験法として、一点検量線法が使用できると考えられた。残留溶媒の限度試験法(案)を作成し、試験法の評価を行った結果、精度は許容できる範囲と考えられた。④食品中の柑橘系香料の分析法として、液体試料1.0 mLをセプタム付きバイアル瓶に入れ、密封したバイアル瓶にSPMEのセプタム貫通針を貫通させ、50℃で20分間加温し、香気成分をSPMEファイバーに吸着させた後、GC/MSに導入する方法を確立した。⑤サイプレスからバンレイシまでの206品目の天然香料について調査した。本年度調査した206品目の香料の基原動植物数は318種であった。今回の調査で得られた物質は、3401化合物であった。⑥天然添加物規格設定のための研究では、189品目の自主規格を収載した「第三版既存添加物自主規格(日本食品添加物協会)」を刊行し、新たに22品目の既存添加物について自主規格案の策定を行った。⑦昨年度からの継続を含め、15品目(12試験項目)について調査研究を行った。β-カロテン類等において、代替試験法案を見出した。⑧天然添加物中のアレルギー物質に関する研究では、合成色素であるキサンテン系色素、アゾ系色素、トリフェニルメタン系色素、インジゴ色素で検討した結果、基本骨格と反応性に明らかな関係がみられた。またfootpadから血中への移行が速やかな化合物は反応性が低い傾向を示した。天然色素であるコチニール色素について、通常精製度色素と高精製度色素の投与群のindexを比較すると、前者の方が高いindexを示した。⑨茶抽出物の分析には、固相カラムはCARBOGRAPH、溶出液はアセトニトリル/ヘキサン(96:5)が良かった。HPLC条件はカラムにODSカラム、移動相は(A)アセトニトリルと(B)0.01%リン酸のリニアグラジエントを用い、25分以内に6成分を完全に分離定量できた。⑩全製品のIRスペクトルは、厳密には参照スペクトルと一致しなかった。しかし、乾燥減量の条件で乾燥することにより、全製品のスペクトルを同一にすることができた。⑪カルナウバロウ、魚燐粉、ガムベースおよび食品香料24品目について、液膜法又はペースト法およびKBr法で標準的なIRを得た。⑫エビの保存料はメタノールで抽出し、固相カートリッジで精製後、HPLCで測定することができた。⑬第7回目の食品添加物製造・輸入業者に対するアンケート調査を開始し、調査票を回収して統計量に基づく中間報告をまとめた。⑭試作した全国自治体による食品添加物の行政検査結果集計用データベースで、システムの改良を試みた。
結論
①食品香料の規格については、第8版公定書検討の初期段階に、枠組みについての決断が必要である。②78品目の食品香料化合物の推定摂取量を求め、毒性及び代謝がJECFAにより公表されている品目について判断樹
による安全性評価を試みた結果、安全性に懸念を抱かせる化合物はなかった。③面積百分率法に一点検量法を組み合わせたGCによる含量測定法は、一般の香料化合物に利用可能と結論された。HS-GC法による天然香料の一斉分析法および限度試験法として、簡便な分析法を確立できた。④食品中からの柑橘系香料の一斉分析法を確立した。⑤本調査結果では、調査で得られた成分のうち10%弱については化学物質毒性データに登録があり、専門家による検討が必要と思われた。⑥天然添加物の規格設定を目標に、既存添加物の自社規格・試験法の調査と自主規格案の策定を行った。⑦公定書の規格試験法から有害試薬を排除するための、新たな試験法案を検討した。⑧各種着色料をモデル化合物として、マウス膝窩リンパ節測定法による水溶性物質の抗原性評価への応用性を検討した。⑨各種食品中の茶抽出物の定量法を、固相カラムによる前処理とHPLCによる分析に基づいて検討した。市販食品に適用し、再現性ある定量結果が得られた。⑩水和物や結晶多形の影響をなくすために、各条で前処理法を規定しておくことが必要と考えられた。⑪公定書で参照IRスペクトルを採用する場合には、公定書の記載「同一波数のところに同様の強度の吸収を認める」に留意すべきと考えられた。⑫未許可添加物の分析法として、簡便で精度の高い分析法を確立した。⑬生産量統計に基づく摂取量推定で第7回目の調査を実施し、中間報告をまとめた。⑭行政検査結果に基づく摂取量推定で、試作データベースを使用しソルビン酸をモデルとしてシステムの改良を試みた。

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