経年化浄水施設における原水水質悪化等への対応に関する研究

文献情報

文献番号
201330004A
報告書区分
総括
研究課題名
経年化浄水施設における原水水質悪化等への対応に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
相澤 貴子(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の異常気象等に伴う水道原水水質悪化に対して中小規模水道事業体(以下「中小事業体」という。)が導入しやすく有効な浄水処理の改善・強化方策を提案するとともに、耐震化促進等を支援するための簡易耐震診断手法等を検討し、これらを適切なリスク低減策のための「手引き(案)」としてとりまとめる。
研究方法
「原水水質悪化への対応の検討」及び「耐震化促進等に関する検討」の2つを課題として設定し、研究代表者、研究分担者及び水道事業体等の研究協力者からなる課題ごとのワーキンググループにより、ヒアリング調査等による実態把握と情報解析、高濁度原水の処理等に関する実験、新簡易耐震診断表の検討を行い、これらの結果に基づいて、それぞれ中小事業体向けの「手引き(案)」を作成した。
結果と考察
1 原水水質悪化への対応の検討
平成24年度には、中小事業体の浄水処理における主な課題は原水高濁度時に生じる凝集・沈澱不良であることが明らかとなった。この解決に向け、薬品注入の適正化に向けた検討を行い、平成24年度に提示した凝集剤注入率算定式を浄水場の原水で評価し、実用性が検証された。有機色度成分を含む原水の凝集処理では、濁質の除去に加えて有機物の除去に消費される分の凝集剤の増量が必要であり、最適注入率を設定して凝集剤注入を行うことにより安定した濁質処理が可能なことが明らかになった。また、アルカリ度の代替指標には簡便に測定できる電気伝導率が有用であることが明らかとなった。その他、ろ過水濁度の安定的に管理するための二段凝集処理及び水質管理を容易にするための超高塩基度PAC(塩基度70%の水道用ポリ塩化アルミニウム)の適用に関する検討・効果検証を行った。これに水道事業体の課題改善事例を合わせ、平成24年度に作成した原案に基づいて、中小事業体が導入しやすく有効な浄水処理技術の改善・強化方策を提案する「高濁度原水への対応の手引き(案)」を作成した。さらに、この活用について、アンケート調査により有用性を検証した。
2 耐震化促進等に関する検討
平成24年度は、地震被害の特性を反映し簡略化した簡易耐震診断手順を具体的な診断フローで示し、既往簡易耐震診断表の問題点を改善した新簡易耐震診断表案を作成するとともに、耐振性と被災時の影響範囲を考慮した耐震性改善必要度に基づく詳細耐震診断実施の優先順位付けの手法及びこれらの研究成果を基にした「浄水施設簡易耐震診断の手引き」の原案を作成した。平成25年度は、中小規模水道事業を中心とするケーススタディにおけるこれら研究成果の試用及びレビュー等を通じて得られた意見・提案等に基づいて、分かりやすい文章・構成・説明内容等へのブラッシュアップ、修正、及び検討内容の追加等を行い、中小事業体職員にとって更に分かりやすく使いやすい最終成果品を提示した。また、これらの平成25年度におけるケーススタディによって、新簡易耐震診断表の改善効果及び有効性として耐震性判定の精度向上を検証した。さらに、平成24年度に実施した浄水施設等の簡易耐震診断のケーススタディ結果を用いて、全国の浄水施設等の耐震性の現況を把握した。
結論
「原水水質悪化への対応の検討」では、中小事業体から原水水質悪化に対する浄水処理の課題を把握し、その課題解決に向けた方策の検討を実施した。その結果と課題改善の実例を合わせ、中小事業体向けに導入しやすく有効な浄水処理技術の改善・強化方策を提案する「高濁度原水への対応の手引き(案)」を作成した。これを支援ツールとして中小事業体が活用し、原水水質悪化に対応した適切な改善・強化方策を実施することにより、水道施設並びに水質管理におけるリスク低減が可能となる。また、「耐震化促進等に関する検討」では、我が国における浄水施設の耐震化の状況は依然として低く、中小事業体を中心に耐震化への取り組みが遅れていることから、東北地方太平洋沖地震等の地震被害実態を踏まえた簡易耐震診断手順を提案するとともに、既往簡易耐震診断表を改善した「新簡易耐震診断表(案)」の提案と、被災時の影響度合を考慮した詳細耐震診断実施の優先順位決定方法を提案した。これらはケーススタディにより有効性が確認され、また中小事業体にとって使いやすくかつ高度な技術力を要しないことから、今後、中小事業体をはじめ我が国の水道事業における浄水施設等の耐震化促進に大きく寄与するものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201330004B
報告書区分
総合
研究課題名
経年化浄水施設における原水水質悪化等への対応に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
相澤 貴子(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の異常気象等に伴う水道原水水質悪化に対して中小規模水道事業体(以下「中小事業体」という。)が導入しやすく有効な浄水処理の改善・強化方策を提案するとともに、耐震化促進等を支援するための簡易耐震診断手法等を検討し、これらを適切なリスク低減策のための「手引き(案)」としてとりまとめる。
研究方法
「原水水質悪化への対応の検討」及び「耐震化促進等に関する検討」の2つを課題として設定し、研究代表者、研究分担者及び水道事業体等の研究協力者からなる課題ごとのワーキンググループにより、ヒアリング調査等による実態把握と情報解析、高濁度原水の処理等に関する実験、新簡易耐震診断表の検討を行い、これらの結果に基づいて、それぞれ中小事業体向けの「手引き(案)」を作成した。
結果と考察
1 原水水質悪化への対応の検討
中小事業体への調査の結果、浄水処理における主要な課題は水源河川高濁度時の凝集・沈澱不良への対応であることが分かった。この課題を解決するための浄水処理技術として、薬品注入の適正化に向けた検討を行い、原水水質変動時の浄水処理を容易にするための凝集剤注入率算定式を策定し、その実用性を検証した。降雨に伴う原水高濁度への対応には、凝集剤注入率を濁度変動に応じたタイミングで増減させることが重要であり、有機色度成分を含む原水では、濁質の除去に加え、有機色度成分の除去に消費される分の凝集剤の増量が必要であり、最適注入率を設定して凝集剤注入を行うことにより、安定した濁質処理が可能なことが明らかになった。また、アルカリ度の代替指標には簡便に測定できる電気伝導率が有用であり、これを用いることでアルカリ度管理が容易となった。その他、ろ過水濁度の安定的に管理するための二段凝集処理及び水質管理を容易にするための超高塩基度PAC(塩基度70%の水道用ポリ塩化アルミニウム)の適用に関する検討・効果検証を行った。これに水道事業体の課題改善事例を合わせ、中小事業体が導入しやすく有効な浄水処理技術の改善・強化方策を提案する「高濁度原水への対応の手引き(案)」を作成した。さらに、この活用について、アンケート調査により有用性を検証した。
2 耐震化促進等に関する検討
事業体における耐震化の取組み状況や課題についてのアンケート調査を実施し、その結果得られた詳細耐震診断結果及び地震被害実態を基にして、「地盤液状化の有無(地盤条件)」、「建設年代(適用耐震工法指針)」、「構造的強度」を判定基準とする3段階評価を提案した。さらに、地震被害の特性を反映し簡略化した簡易耐震診断手順を具体的な診断フローで示し、既往簡易耐震診断表の問題点を改善した新簡易耐震診断表案を作成するとともに、耐振性と被災時の影響範囲を考慮した耐震性改善必要度に基づく詳細耐震診断実施の優先順位付けの手法を策定した。これらの研究成果について、中小規模水道事業を中心とするケーススタディ及びレビュー等を行い、得られた意見・提案等に基づいて、分かりやすい文章・構成・説明内容等へのブラッシュアップ、修正、及び検討内容の追加等を行い、中小事業体職員にとって更に分かりやすく使いやすい「浄水施設簡易耐震診断の手引き(案)」を作成した。この作成過程において、ケーススタディでは、新簡易耐震診断表の改善効果及び有効性として耐震性判定の精度向上を検証した。さらに、除水施設等の簡易耐震診断のケーススタディ結果を用いて、全国の浄水施設等の耐震性の現況を把握した。
結論
「原水水質悪化への対応の検討」では、中小事業体から原水水質悪化に対する浄水処理の課題を把握し、その課題解決に向けた方策の検討を実施した。その結果と課題改善の実例を合わせ、中小事業体向けに導入しやすく有効な浄水処理技術の改善・強化方策を提案する「高濁度原水への対応の手引き(案)」を作成した。これを支援ツールとして中小事業体が活用し、原水水質悪化に対応した適切な改善・強化方策を実施することにより、水道施設並びに水質管理におけるリスク低減が可能となる。また、「耐震化促進等に関する検討」では、我が国における浄水施設の耐震化の状況は依然として低く、中小事業体を中心に耐震化への取り組みが遅れていることから、東北地方太平洋沖地震等の地震被害実態を踏まえた簡易耐震診断手順を提案するとともに、既往簡易耐震診断表を改善した「新簡易耐震診断表(案)」の提案と、被災時の影響度合を考慮した詳細耐震診断実施の優先順位決定方法を提案した。これらはケーススタディにより有効性が確認され、また中小事業体にとって使いやすくかつ高度な技術力を要しないことから、今後、中小事業体をはじめ我が国の水道事業における浄水施設等の耐震化促進に大きく寄与するものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201330004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特記事項なし。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
本研究は「原水水質悪化への対応の検討」及び「耐震化促進等に関する検討」の2つを課題とし、それぞれ「高濁度原水への対応の手引き」、「浄水施設簡易耐震診断の手引き」の策定を成果とした。これらの研究成果は「新水道ビジョン推進協議会」において情報共有され、新水道ビジョンに掲げた政策目標(「安全」、「強靭」、「持続」)に対し、「安全」では気候変動を踏まえた水質管理の強化、「強靭」では浄水施設耐震化の促進、「持続」では既存施設の改善・強化と維持管理の適正化の観点から、この推進に貢献した。
その他のインパクト
「高濁度原水への対応の手引き」を参考にして、水道維持管理企業が独自に現場対応用のマニュアルを作成したとの連絡あり。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
11件
IWA-ASPIRE(Malaysia)での発表を追加
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
本研究で課題とした「原水水質悪化への対応の検討」及び「耐震化促進等に関する検討」の2つの成果が、それぞれ「新水道ビジョン推進協議会」において情報共有された。
その他成果(普及・啓発活動)
39件
本研究の成果である「高濁度原水への対応の対応の手引き」の普及活動27件、「浄水施設簡易耐震診断の手引き」の普及活動12件を実施した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
桐村昭充、足立渉、鈴木泰博 et al.
地震被害実態に基づく浄水施設簡易耐震診断手法の検討
環境衛生工学研究 , Vol.26 (No.3) , 13-16  (2012)
原著論文2
M. Miyajima
Performance of Drinking Water Pipelines in Liquefaction Areas in the 2011 Great East Japan Earthquake
International Journal of Landslide and Environment , 1 ((1)) , 61-62  (2013)
原著論文3
M. Miyajima
Resilient Water Supply System for Earthquake and Tsunami
Journal of Water Supply: Research and Technology – AQUA , 63 ((2)) , 86-94  (2014)
原著論文4


原著論文5


公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201330004Z