ナノマテリアルの簡易測定法の開発及びばく露防止対策等に関する研究

文献情報

文献番号
201233002A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの簡易測定法の開発及びばく露防止対策等に関する研究
課題番号
H22-労働-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
名古屋 俊士(早稲田大学 理工学術院創造理工学部環境資源工学科)
研究分担者(所属機関)
  • 明星 敏彦(産業医科大学生態科学研究所労働衛生工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,449,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノマテリアルの開発が急速に進められている中、労働者の健康確保のためには、作業環境中のナノマテリアルの測定が必要である。しかしながら、現在ナノマテリアルの測定は限られた専門機関でしか対応できない状況にあることから脱却し、労働環境の管理レベルに応じた測定法及び評価法を確立する事が急務である。そのためには、ナノマテルアル測定用のデジタル粉じん計を開発し、そのデジタル粉じん計を用いた「ナノマテリアル取扱い作業環境における作業環境管理フロー」を提案することを目標にしている。
 次に、ナノマテリアル取り扱い現場では、局所排気装置で捕集されたナノマテリアルは除塵装置を通して屋外に排出されているが、除塵装置であるバグフィルターによりナノマテリアルが、どのくらい捕集されているかに関する知見がほとんど無いのが現状である。そこで、小型実験用除塵装置を作製し、正確な知見の得られていないナノマテリアルに対するバグフィルター等の捕集特性に関する検討を行う。さらに、労働者の健康確保のため、防じんマスクフィルターのナノモテリアルの捕集特性について検討を行うことによりナノマレリアル取扱い作業者の曝露防止に寄与する情報提供を行う。
研究方法
1)24年度は デジタル粉じん計LD-5を改良してナノマテリアル測定用デジタル粉じん計LD-5N2を開発し、酸化チタン、ナノカーブンチューブ、フラーレン及び銀粒子の4種類について、ナノマテリアル連続発生装置を用いて、各種ナノ粒子に対する感度特性の基礎研究を行い、その結果を過去2年間の研究で得た知見と本年度の研究で得た成果を総合的に判断して、「ナノマテリアル取扱い作業環境における作業環境管理のためのフロー」を構築し提案する。
2)小型実験用除塵装置を作製し、実際に使用している4種類のバグフィルターと1種類のHEPAフィルターについて、酸化チタンを用いてナノマテリアルに対するフィルター等の捕集特性に関する基礎的研究を実施した。
3)ナノマテリアル連続発生装置から発生したナノマレリアルに対する6種類の防じんマスクのメカニカルフィルターの捕集効果及び静電フィルターの捕集効率とその捕集特性に関する検討した。
結果と考察
1)ナノマテリアル連続発生装置を用いて、各種ナノ粒子に対する感度特性の実験結果からLD-5N2は、ナノ粒子(50nm)に対してLD-5の4倍の感度をしましたこのことから、ナノマテリアルが測定でる測定器であることが検証された。
2)連続発生装置から酸化チタンナノ粒子を発生させ捕集効率と捕集特性に関する実験を行った結果、全てのバグフィルターろ過材で粒子堆積層が無い状態よりも一次堆積層である粒子堆積層を作った状態の方が捕集効率が高くなっていることがわかる。
3)現在市販されている防じんマスク6種類のフィルターについて、連続発生装置から各種ナノマテリアルを発生させ捕集効率と捕集特性に関する実験を行った結果、全粒径に対する捕集効率は全フィルターにおいて96%以上と高い値を示し、ナノマテリアルに対する捕集性能は有効であった。また、防じんマスクは、約200~300nmの粒子に対する捕集効率は低下するが、約200~300nm以下のナノ粒子に関しては、拡散効果によって粒径が小さくなるほど、捕集効率が上昇することが明らかとなった。
結論
1)本研究により、現場対応型ナノ粒子測定用デジタル粉じん計LD-5N2が開発できたことで、従来の大型で高価で且つ現場測定用には不向きであったナノマテリアル対象測定器から解放され、本研究の目的である「ナノマテリアルの簡易測定方法」が可能となった。
2)ナノマテリアルに対するバグフィルターの捕集特性は、ナノマテリアルも一次堆積層が形成された後でのバグフィルターならば、全粒径の粒子に対して94%~98%の捕集効率を示すことが明らかとなった。また、HEPAフィルターそのものによるナノマテリアルに対する捕集効率は、ほぼ100%であった。
3)市販の防じんマスクのナノマテリアルに対する捕集特性及び性能評価の結果、全粒径に対する捕集効率は全フィルターにおいて96%以上と高い値を示した。市販の防じんマスクでも漏れの無いように装着すればナノマテリアルから作業者の曝露を防止することが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201233002B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノマテリアルの簡易測定法の開発及びばく露防止対策等に関する研究
課題番号
H22-労働-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
名古屋 俊士(早稲田大学 理工学術院創造理工学部環境資源工学科)
研究分担者(所属機関)
  • 明星 俊彦(産業医科大学産業生態科学研究所労働衛生工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノマテリアルの開発が急速に進められている中、労働者の健康確保のためには、作業環境中のナノマテリアルの測定が必要である。そのため、ナノマテルアル測定用デジタル粉じん計を開発し、LD-5N2を用いた「ナノマテリアル取扱い作業環境における作業環境管理フロー」を提案する。また、作業環境で捕集された粒子の形態を電子顕微鏡で観察を行う場合、単体粒子から凝集体までの粒子が混在して観察される。そこで、粒子別に形態観察可能なサーマルプレシピテーターの開発を行う。
 次に、ナノマテリアル取扱い現場では、局所排気装置で捕集されたナノマテリアルはバグフィルター等を通して屋外に排出されているが、バグフィルターによりナノマテリアルが、どのくらい捕集されているかに関する知見がほとんど無いのが現状である。そこで、小型実験用除塵装置を作製し、正確な知見の得られていないナノマテリアルに対するバグフィルター等の捕集特性に関する検討を行う。さらに、市販の19種類の防じんマスクフィルターについて、ナノマテリアル捕集特性の検討を行う。
研究方法
1)開発したナノマテルアル測定用デジタル粉じん計LD-5N2について、酸化チタン、ナノカーブンチューブ、フラーレン及び銀粒子の4種類を、ナノマテリアル連続発生装置から発生させ、各種ナノ粒子に対する感度特性の基礎研究を行い、その結果を過去2年間の研究で得た知見と本年度の研究で得た成果を総合的に判断して、「ナノマテリアル取扱い作業環境における作業環境管理のためのフロー」を構築し提案する。
2)小型実験用除塵装置を作製し、実際に使用している4種類のバグフィルターと1種類のHEPAフィルターについて、酸化チタンを用いてナノマテリアルに対するフィルター等の捕集特性に関する基礎的研究を実施した。
3)ナノマテリアル連続発生装置を用いて、ナノマテリアルを発生させ、単体粒子から凝集体まで一度に測定できるサーマルプレシピテーターの捕集条件を検討した。
4)現在市販されている防じんマスク19種類につて、ナノマテリアルに対する防じんマスクのメカニカルフィルターの捕集効率とその捕集特性に関する検討した。
結果と考察
1)ナノマテリアル連続発生装置を用いて、各種ナノ粒子に対する感度特性の実験結果からLD-5N2は、酸化チタンナノ粒子(50nm)に対してLD-5の約4倍の感度をしましたこのことから、ナノマテリアルが測定でる測定器であることが検証された。
2)連続発生装置から酸化チタンナノ粒子を発生させ捕集効率と捕集特性に関する実験を行った結果、4種類のバグフィルターろ過材で粒子堆積層が無い状態よりも一次堆積層である粒子堆積層を作った状態の方が捕集効率が高くなっていることが明らかとなった。
3)連続発生装置を用いて、銀ナノ粒子を発散させたところ、捕集面の中心には凝集体が、捕集面の端側には単体に近い状態で確認された。サーマルプレシテーターは、ナノ粒子の凝集体と単体粒子が混在ている作業現場での使用が可能であることが確認された。
4)現在市販されている主だった19種類の防じんマスクフィルターについて、連続発生装置から各種ナノ粒子を発生させ、捕集効率と捕集特性に関する実験を行った結果、全粒径に対する捕集効率は全フィルターにおいて96%以上と高い値を示し、ナノ粒子に対する捕集性能は有効であった。
結論
1)現場対応型ナノ粒子測定用デジタル粉じん計LD-5N2の開発
本研究により、デジタル粉じん計LD-5N2が開発できたことで、従来の大型で高価で且つ現場測定用には不向きであったナノマテリアル対象測定器から解放され、本研究の目的である「ナノマテリアルの簡易測定方法」が可能となった。
2)バグフィルターの捕集特性は、ナノマテリアルにより一次堆積層が形成された後ならば、ナノマテリアル全粒子に対して94%~98%の捕集効率を示すことが明らかとなった。また、HEPAフィルターのナノマテリアルに対する捕集効率は、ほぼ100%であった。
3)ナノマテリアルの形態観察の際、一つのサンプラーで幅広い粒子をカバー出来る、画期的なサーマルプレシテーターが開発出来たと考える。
4)市販の防じんマスクのナノマテリアルに対する捕集特性及び性能評価の結果、全粒径に対する捕集効率は全フィルターにおいて96%以上と高い値を示した。市販の防じんマスクでも漏れの無いように装着すればナノマテリアルから作業者の曝露防止に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2013-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201233002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
市販のデジタル粉じん計LD-5を改良して、ナノマテリアルの領域まで測定可能なLD-5N2を開発した。その結果、「ナノマテリアルの簡易測定法」が可能となった。また、LD-5N2を用いた、新たに各ナノマテリアルに対する「ナノマテリアル取扱い作業環境における作業環境管理フロー」として提案した。現在、当初の計画より遅れていますが、LD-6N2の市販に向けて、メーカーと試作中。
臨床的観点からの成果
研究テーマから、臨床的観点からの成果は、無い。
ガイドライン等の開発
化学物質リスク検討会でナノ粒子酸化チタンに関しては、詳細リスク評価まで進んでいる。その後、ナノ粒子以外の酸化チタンの評価と併せて検討し、その結果をさらに健康措置検討会に送り、健康措置検討会で検討を行う状況。ただし、酸化チタンに関しては、現在、化学物質リスク検討会での検討が終了しておらず、健康措置検討会での検討が行われていないじょうきょうです。健康措置検討会で検討が終了次第、管理濃度委員会にて測定義務化が決まれば、本研究の成果である「ナノマテリアルの簡易測定法」が測定法の決定に役立つと考える。
その他行政的観点からの成果
酸化チタンは、平成28年6月24日6月台1回の化学物質のリスク検討会での検討結果を受けて、化学物質の健康障害防止措置検討会で検討することになった。健康障害防止措置検討会の検討を受けて、規制物質として法改正を行った後、管理濃度委員会で測定法等の検討が行われる。本研究で提案した作業環境管理のためのフローや開発したナノ粒子対象の相対濃度計L-5N2が役に立つ。
その他のインパクト
酸化チタンに関して、行政のリスクにかかる情報提案等の推進のため、平成28年12月8日リスクコミニケーションを東京で実施した。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久保田祐仁、金丸直子、村田克、名古屋俊士
漏えい濃度およびばく露濃度から求め   た外付け式フードの必要排気風量
作業環境 , 36 (3) , 48-55  (2015)
原著論文2
大貫正史、村田克、名古屋俊士
金属酸化物触媒を用いたホルムアルデヒド等の分解   処理に関する研究
作業環境 , 36 (3) , 56-63  (2015)
原著論文3
渡辺雄飛、村田克、名古屋俊士
強制送風式パッシブサンプラー(セミアクティブサ   ンプラー)の個人ばく露測定に向けた基礎検討について
作業環境 , 36 (3) , 64-67  (2015)
原著論文4
橋本晴男、山田憲一、名古屋俊士
化学物質の個人ばく露測定ガイドライ   ン
産業衛生学雑誌 , 57 (2) , 61-120  (2015)
原著論文5
名古屋俊士
作業環境における個人ばく露測定に関する実証的検証事業
作業環境特別号 , 62 , 10-26  (2015)
原著論文6
村田克、名古屋俊士
ナノマテリアルを測定対象とした相対濃度計LD-5N2の開発に  関する基礎的研究
作業環境 , 36 (1) , 50-53  (2015)
原著論文7
Kenichi Yamada,Shinji Kumagai, Toshio Nagoya, Ginji Endo
Chemical Exposure  Levels in Printing Workers with Cholangiocarcinoma
Jounal of Occupational Health , 56 , 332-338  (2014)
原著論文8
藤井由貴、村田克、明星敏彦、名古屋俊士
ナノ粒子に対する呼吸用保護具の防護  性能に関する研究
呼吸保護 , 27 (1) , 2-16  (2014)
原著論文9
相沢洋子、名古屋俊士
屋外作業場における粉じん取扱作業者の呼吸用保護具の使  用状況に関する実態調査
産業衛生学雑誌 , 56 (6) , 268-274  (2014)
原著論文10
奥琢哉、村田克、名古屋俊士
吸引流量低下が個人サンプラーNWPS-254型の吸入性粉  じん濃度測定に与える影響
作業環境 , 35 (6) , 77-80  (2014)
原著論文11
渡辺雄飛、名古屋俊士
有害化学物質の測定・分析法~N,N-ジメチルホルムアルデヒ  ド
作業環境 , 35 (5) , 51-54  (2014)
原著論文12
久保田祐仁、村田克、名古屋俊士
局所排気装置の外付け式フードに付けたフラン  ジが開口面近傍の風速に与える影響と排気風量を求める計算式
作業環境 , 35 (4) , 57-66  (2014)
原著論文13
大貫正史、村田克、名古屋俊士
金属酸化物触媒を用いた有機溶剤の分離に関する基  礎的研究
作業環境 , 35 (3) , 66-70  (2014)
原著論文14
篠崎勇太、村田克、名古屋俊士
切削油剤ミストのサンプリング法に関する研
作業環境 , 35 (3) , 71-75  (2014)
原著論文15
村田克、名古屋俊士
ダイヤモンド工具による切断、研磨作業時に発生する粉じん  中のコバルト量
産業衛生学雑誌 , 56 (2) , 57-60  (2014)
原著論文16
中村憲司、村田克、名古屋俊士
位相差・分散顕微鏡法の石綿繊維視認性の評価と  改善
作業環境 , 35 (2) , 77-82  (2014)
原著論文17
名古屋俊士
溶接作業者に及ぼす粉じん、金属ヒューム等の影響とその留意点
軽金属溶接 , 52 (2) , 50-54  (2014)
原著論文18
山本修司、大河内博、名古屋俊士
2012年夏季の富士山頂および富士山麓における  大気中揮発性有機化合物の挙動
大気環境学会誌 , 49 (1) , 34-42  (2014)
原著論文19
渡辺雄飛、松尾亜弓、名古屋俊士
粒状活性炭―加熱脱着―GC/FID法による作業環境   中の特定化学物質測定法の確立に関する研究
作業環境 , 34 (3) , 34-37  (2014)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201233002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,449,000円
(2)補助金確定額
4,449,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,756,877円
人件費・謝金 0円
旅費 133,800円
その他 2,558,323円
間接経費 0円
合計 4,449,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-