食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究

文献情報

文献番号
201522001A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全確保には、その品質と適正な使用を欠かすことはできない。そこで、本研究では、食品添加物の品質を担保するために重要な食品添加物の規格及び試験法等に関する研究、並びに食品添加物の適正な使用のために重要な摂取量推計等に関する研究を行った。
研究方法
1)赤外スペクトル(IR)に関する調査研究:屈折率の異なる4種類の香料化合物について、ATR法等によりIRを測定した。2)定量NMR法(qNMR)による定量用標準物質の純度分析法の確立:13C-qNMRを用い、フルジオキソニルの定量を行った。3)食品添加物中の鉛分析法に関する研究:マイクロウェーブ(MW)灰化後キレート樹脂固相を用いて試験溶液の調製を行い、ICP-MSにより鉛の測定を行った。4)香料化合物規格の国際整合化に係わる調査研究:JECFA規格の検証のため、類指定香料化合物の自主規格の実測値を調査し、JECFA規格の規格値と比較した。5)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究:食品添加物製造(輸入)業者を対象に、指定添加物及び既存添加物の製造量等を調査した。6)天然香料の使用量調査研究:昨年行った天然香料基原物質調査の集計、考察を行った。7)日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究:構造活性相関手法(SAR)による予測が陰性で、簡易Ames試験陽性だった1化合物の一部のAmes試験を行った。8)食品添加物の食品中における消長と副生成物に関する研究:過酸化ベンゾイル(BPO)を添加して調製したうどんをモデル試料として、GC-MSを用いて副生成物を分析した。
結果と考察
1)液膜法とATR法でスペクトルの違いが見られ、その違いの程度は、試料の屈折率に依存する傾向が認められた。2)13C-qNMRでは、各シグナルから得られた定量値のばらつきは最大で5%程度、相対標準偏差は最大で8.4%とこれまで検討した1H-qNMRによる各食品添加物標品の定量と比べ、分析精度は若干劣るものであった。3)カルシウムを含む有機塩類については、MW灰化後、キレート樹脂による固相抽出法が有効であった。4)我が国で流通している香料化合物のうち、308品目について、試験成績表・受け入れ検査値の調査あるいは測定項目及び測定条件を限定して得られた値の調査を行い、74品目はJECFA規格で問題なし、181品目はJECFA規格の修正が必要、53品目はさらなる調査等が必要と判断した。5)第11回調査として指定添加物のアンケート調査及びその追加調査、既存添加物等については、第6回のアンケート調査を行った。6)多数の基原物質に由来する天然香料の使用実態を簡便に把握し、形態等にかかわらず基原物質毎の全体量を回答する方式を策定し、結果として600 品目を超える基原物質毎に天然香料の使用量の概要を把握することができた。7)構造活性相関の予測において、簡易Ames試験の陽性結果を陰性と予測された化合物の一部に標準的なAmes試験を実施したところ、結果はすべて陰性であった。8)BPO添加うどん中の揮発性化合物としてベンゼンが検出されたが、今回の結果をもとに、BPO添加麺類からのベンゼンの経口暴露量を推計したところ、20歳以上における一人当たりの耐容一日摂取量(TDI)に対する一日摂取量の割合は0.08%であり、BPOを添加した食品からのベンゼン暴露量は、TDIを大きく下回ることが確かめられた。
結論
IRについては、ATR法を添加物への確認試験に利用する際には、ATR法での測定条件に留意し、標準ATRの確立が必要であると結論した。qNMRについては、13C-qNMRを使用する場合は、必要とする分析精度に応じて、秤取量、分析時間(積算回数)を設定することが実用的に運用する上で重要と考えられた。鉛分析法に関しては、二価の有機塩類には、溶媒抽出法の代替法として、MW灰化-キレート固相抽出法が有用と考えられた。香料化合物規格については、603品目のJECFA規格を実測値により検討したところ、このうちの約5割はJECFA規格を満たし、約4割はJECFA規格の修正が必要、84品目はさらなる調査が必要となった。日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究では、SARモデルにはアラートの違いがあるため、複数のSARモデルによるAmes試験の陰性予測は正しいと考えてよく、安全性評価をする際には、優先順位を下げてよいことが示唆された。これらの研究は、食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料の使用量調査及び生産量統計調査を基にした摂取量推定に関わる研究及びBPO添加小麦粉による副生成物の解明では食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201522001B
報告書区分
総合
研究課題名
食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全確保には、その品質と適正な使用を欠かすことはできない。そこで、本研究では、食品添加物の品質を担保するために重要な食品添加物の規格及び試験法等に関する研究、並びに食品添加物の適正な使用のために重要な摂取量推計等に関する研究を行った。
研究方法
1)赤外スペクトル(IR)に関する調査研究:香料化合物等について、ATR法等によりIRを測定した。2)定量NMR法(qNMR)による定量用標準物質の純度分析法の確立:1H-
及び 13C-qNMRを用いて定量を行った。3)食品添加物中の鉛分析法に関する研究:無機Na塩等の塩類の食品添加物について、固相抽出-原子吸光光度法を検討し、有機酸Ca塩類の食品添加物について、マイクロウェーブ(MW)分解+固相抽出-ICP-MSを検討した。4)香料化合物規格の国際整合化に係わる調査研究:JECFA規格の検証のため、類指定香料化合物の自主規格及び実測値をJECFA規格の規格値と比較した。5)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究:食品添加物製造(輸入)業者を対象に、指定添加物及び既存添加物の製造量等を調査した。6)天然香料の使用量調査研究:食品に使用される天然香料を対象に天然香料基原物質の使用量を調査した。7)日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究:構造活性相関手法(SAR)による予測が陰性で簡易Ames試験(FAT)で陽性だった化合物の一部について文献調査及びAmes試験を実施した。8)食品添加物の食品中における消長と副生成物に関する研究:過酸化ベンゾイル(BPO)を添加して調製した小麦粉加工食品をモデル試料としてGC-MSを用いて副生成物を分析した。
結果と考察
1)液膜法とATR法でスペクトルの違いが見られ、その違いの程度は試料の屈折率に依存する傾向が認められた。2)1H-qNMRは検討した食品添加物に対し、良好な真度、併行精度、直線性を有していた。13C-qNMRはこれまで検討した1H-qNMRによる各食品添加物標品の定量と比べ、若干劣るものであった。3)無機塩類には、キレート樹脂固相あるいは高選択性分子認識ゲル固相やリン酸イットリウム共沈法による鉛抽出が、Caを含む有機塩類には、MW灰化後、キレート樹脂による鉛抽出が有効であった。4)自主規格とJECFA規格の存在する1088品目について両規格を比較検討し、88品目はJECFA規格で問題なく、残りのうち603品目について実測値調査を行った結果、289品目はJECFA規格で問題なし、230品目はJECFA規格の修正が必要であった。5)指定添加物につき第10回摂取量調査、既存添加物につき第5回生産量調査をまとめ、次のアンケート調査を開始した。6)多数の基原物質に由来する天然香料の使用実態を簡便に把握し、形態等にかかわらず基原物質毎の全体量を回答する方式を策定し、結果として600 品目を超える基原物質毎に天然香料の使用量の概要を把握することができた。7)文献調査の結果、類縁化合物はいずれも安全性に懸念がないことが確認され、Ames試験の結果はいずれも陰性であった。8)BPO添加小麦粉加工食品中の副生成物としてベンゼンが検出されたが、今回の調査結果をもとに、小麦粉加工食品からのベンゼンの推定暴露量を推計したところ、耐容一日摂取量を大きく下回ることが確かめられた。
結論
IRについては、ATR法を添加物への確認試験に利用する際には、ATR法での測定条件に留意し、標準ATRの確立が必要であると結論した。qNMRについては、1H-qNMRは検討した食品添加物の定量分析に適用できることが明らかとなったが、13C-qNMRを使用する場合は、必要とする分析精度に応じて、秤取量、分析時間(積算回数)を設定することが実用的に運用する上で重要と考えられた。鉛分析法に関しては、塩類については、溶媒抽出法の代替法として、キレート固相抽出法等が有用と考えられた。香料化合物規格については、603品目のJECFA規格を実測値により検討したところ、このうちの約5割はJECFA規格を満たし、約4割はJECFA規格の修正が必要、84品目はさらなる調査が必要となった。日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究では、香料化合物の安全性を確認する際に、複数のソフトで警告構造がないと判断された場合、試験を実施する優先順位を下げてよいことが示唆されたと考える。これらの研究は、食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料の使用量調査及び生産量統計調査を基にした摂取量推定に関わる研究及びBPO添加小麦粉による副生成物の解明では食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201522001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
初めての天然香料使用量調査を実施し、600 品目を超える基原物質毎に天然香料の使用量の概要を把握することができた。食品香料の安全性を考える上、欧米に先駆け、複雑な天然香料の使用量調査に着手できたことの意義は大きい。また、香料化合物の国際規格の検証を進めることは、香料化合物の国際整合化に貢献するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定については、食品安全委員会添加物専門調査会における添加物に関する食品健康影響評価等の際の参考資料として活用されている。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201522001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,653,728円
人件費・謝金 0円
旅費 184,116円
その他 2,662,156円
間接経費 0円
合計 4,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-11-28
更新日
-