地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究

文献情報

文献番号
201525010A
報告書区分
総括
研究課題名
地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-004
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
大垣 眞一郎(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 茂(公益財団法人水道技術研究センター )
  • 佐々木 史朗(公益財団法人水道技術研究センター )
  • 富井 正雄(公益財団法人水道技術研究センター )
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 神子 直之(立命館大学 理工学部)
  • 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系)
  • 小熊 久美子(東京大学 先端科学技術研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国の水道水源の多くは地表水であるが、耐塩素性病原微生物の汚染が懸念されている。厚生労働省は、クリプトスポリジウム等対策指針を策定し、その対策を求めているが、特に小規模水道においては、未対応の施設が残っている。また、クリプトスポリジウム等対策の目標であるろ過水濁度0.1度以下を常時維持することに困難を感じている水道事業者も見受けられ、近年、急激な濁度上昇等の増加と相俟って懸念が増している。一方、これまで国内で地表水を対象とした紫外線処理の導入例はなく、関連する研究も少ない。このような背景から、本研究では、濁度管理を補完する技術としての地表水を対象とした紫外線処理の適用について検討を行った。
研究方法
1.濁度管理等における課題の抽出
 実務を行っている水道事業体の実態を把握し課題を明確化するために、昨年度に引き続き、ヒアリング調査を行った。規模、地域、水源種別、浄水処理方法等を考慮して調査先を選定し、調査票に基づき、ヒアリングと現地調査を行った。また海外情報を得るために文献調査を実施した。
2. 原水条件及び処理効果の検証
 濁質の存在が紫外線処理に対する影響を、濁度を調整した試料水に、微生物を添加して紫外線を照射し、検証した。また、流水式紫外線照射槽の性能評価を行うために、2種類の微生物を同時に流下させ、理論的滞留時間と両ファージ生残率の関係を調べた。
3. 紫外線の照射手法及び設計諸元の検討
 地表水の濁度変動に対応する紫外線照射量の検討を行うために、濁質による紫外線の吸収・散乱を評価する手法の研究を継続した。具体的には、透過光のみによる測定方式と、透過光と90度散乱光による測定方式の二種類の異なる測定法で測定した濁度の比によって、紫外線処理の効果への影響を評価できる可能性があることを、実例で確認した。また、濁度測定方法の異なる3種類の濁度計(透過光式、透過+90°散乱光方式、積分旧方式)について、カオリン標準液にて校正した装置にて、ポリスチレン標準液、及びホルマジン標準液の濁度を測定した。
 さらに、標準粒子を用いて濁度と紫外線透過率を調整した試料を微生物不活化実験に供し、標準粒子の特性(素材、色、サイズ)が不活化特性に及ぼす影響を実験的に調査した。
結果と考察
1. 濁度管理等における課題の抽出
 地表水の浄水処理については、とくに小規模事業体におけるろ過池ごとの濁度管理が予算や人員確保の面から困難であること等が2年間の調査で改めて浮き彫りになった。紫外線処理装置は概ね期待どおりの効果をあげていた。また欧米5か国の文献調査の結果、紫外線処理の適用条件として地表水と地表水以外との区分は見られず、濁度の規定は我が国よりも穏やかであること等が明らかとなった。
2. 原水条件及び処理効果の検証
 濁質を含む水における紫外線照射の効果を算定する場合には、254ミリメートル吸光度を用いて平均紫外線量を算定することで安全側の対応が可能である。紫外線耐性の異なる2種の微生物を同時に流水式紫外線装置に流した場合、その生物の紫外線耐性に応じて、異なる換算紫外線量が算出されることを確認した。流水式紫外線装置の性能評価時に、生物線量計としての単一微生物の不活化実験の結果だけでは病原微生物に対する効果を厳密には予測できないおそれがあることを示している。
3. 紫外線の照射手法及び設計諸元の検討
 濁質による紫外線の吸収・散乱を評価する手法の研究を継続し、透過光のみによる測定方式と、透過光と90度散乱光による測定方式の二種類の異なる測定法で測定した濁度の比によって、紫外線処理の効果への影響を評価できる可能性があることを示した。また校正用標準液の種類による測定値への影響を測定したところ、カオリンを基準とすると、特にホルマジン溶液を標準液とした場合、測定値は透過光方式では1.8倍、積分球方式では2倍以上の値となった。
 さらに、標準粒子を用いて濁度と紫外線透過率を調整した試料を微生物不活化実験に供し、標準粒子の特性(素材、色、サイズ)が不活化特性に及ぼす影響を実験的に調査した。その結果、同一粒径・同一粒子濃度で粒子の種類を変えた場合、カーボンブラック粒子では不活化率が低下しテーリングが発生したが、白のポリスチレン粒子では不活化率が向上し、紫外線の反射・散乱が生じた可能性が示唆された。また別の実験から粒子と微生物の相対的なサイズが影響する可能性が示唆された。現行の地表水以外の紫外線処理適用要件を満足すれば、濁質による処理効率の有意な低下は生じない可能性が大きいことが示唆された。
結論
 当初計画どおりに各種の調査・実験等を行い、研究を進めた。平成28年度は前年度の結果をもとに、さらに検討を進め、実務に即した最終報告が提出できるように研究を継続する予定である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201525010Z