化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発

文献情報

文献番号
201428016A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発
課題番号
H24-化学-指定-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人 システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 )
  • 相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,174,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質による生体影響の分子メカニズムに依拠した毒性評価手法の迅速化、高度化、及びその実用の為のインフォマティクス開発を目的とする。
即ち、先行研究にて構築済みの延べ5.8億遺伝子情報からなる高精度トキシコゲノミクスデータベースと単回暴露時の毒性ネットワーク解析技術を基盤に、これらを維持・拡充しつつ、反復暴露のネットワーク解析、及び、その予測評価技術を開発する。ここにインフォマティクス専門家によるシステムトキシコロジーの概念を導入し、網羅的毒性予測評価システムの機能強化と精度向上を図る。
研究方法
我々が開発したPercellome絶対量化法(BMC Genomics. 7, 64, 2006 / 特許441507 / 細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を用い、化学物質の反復暴露に対する生体の遺伝子発現の反応は、毎回の投与の度に、①その都度の変化を示す「過渡反応」と、②回を重ねるに連れて発現値の基線(ベースライン)が徐々に移動する「基線反応」の二つの成分から構成され、単回暴露影響を単純に積算して予測する変化とは異なることが明らかとなった。具体的には、過渡反応と基線反応の関連性を観測可能とする新型反復暴露実験(1、2、或いは4日間の反復暴露を行い、次の日に従来通りの単回暴露を実施し2、4、8、24時間後に肝の網羅的遺伝子解析を行う)を、飼育環境の照明時間等を厳密に管理して実施した(国立医薬品食品衛生研究所の「動物実験の適正な実施に関する規程」遵守)。また、マウス胎児をモデルとした発生過程の遺伝子発現ネットワークの描出研究を実施した。
本研究解析に用いるアルゴリズムを、Percellomeやシステムバイオロジーに基づいて複数開発し、以下に示す独自の解析プログラムに実装した。
結果と考察
反復暴露については、H24年度の四塩化炭素、H25年度のバルプロ酸ナトリウムに加え、H26年度はクロフィブレートの新型反復暴露実験を実施し、過渡反応と基線反応の分離、及び、両反応の連関性、即ち過渡反応が増加する場合には基線反応も増加、減少する場合には基線反応も減少する、という四塩化炭素と共通の基本現象を確認し、その上流に共通の分子機構が働いている強い可能性を明らかにした。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析の為に、経時的発現値の一階微分及び二階微分により発現変動起点及び発現ピーク時点を同定する技術を用いるプログラム開発し、胎生6.26日~9.75日の間の全ての発現変動起点ごとに遺伝子を抽出・分類し、発生過程を司るシグナルネットワークの網羅的描出を進めた。
データ解析手法の開発研究として、本年度は、マウスのみを対象としていた非Percellomeデータの絶対量推定をラットにも拡大したほか、実験間の共通変動遺伝子を高速抽出するプログラムPercellomeExplorerを応用し、各化学物質に特異的な生体反応要素のハイスループット抽出解析を実現した。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発として、遺伝子発現ネットワーク推定ではアルゴリズムの性能向上と機能実装を進め、開発したプログラムをGaruda(研究用ソフトウエア国際共通プラットフォーム)に対応させつつ、Webサービスとして提供した。また遺伝子クラスタ解析手法ソフトウエアのPercellomeデータへの最適化や計算規模及び速度の向上を進めた。さらにPercellomeデータベースのGaruda上への実装を進め、そのソフトウエアをGarudaガジェットの一般公開バージョンとして配布を開始した。Garuda Platformは、国際的に非常に高い評価を得ており、一般公開後も普及は順調に進んでいる。
結論
新型反復暴露解析で見いだした、過渡反応成分と基線反応成分の基本的な関連性は、生物学的・毒性学的に新規性が高く、反復毒性の分子毒性学的理解の促進、及び、単回暴露実験データベースからの反復毒性予測法の開発にあたり重要であり、今後も本機序の全容解明を進める。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析については発現変動起点及び発現ピークの時点に着目する微分解析手法の開発、実証を進めた。今後も信頼性と効率の向上と共に、応用範囲の拡充を目指す。
Percellome用解析ソフトウエアの開発研究では、研究計画通りソフトウエア、データベースの改良・拡張を進め、網羅的遺伝子発現解析の効率向上を実現した。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発では、諸アルゴリズムの性能向上や機能拡張も順調に推移した。今後、これらのソフトウエアの具体的な適用例を増やし、実用レベルでのシステム開発と国際的な普及に努める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-02-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201428016B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発
課題番号
H24-化学-指定-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 )
  • 相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質による生体影響の分子メカニズムに依拠した毒性評価手法の迅速化、高度化、及びその実用の為のインフォマティクス開発を目的とする。
即ち、先行研究にて構築済みの延べ5.8億遺伝子情報からなる高精度トキシコゲノミクスデータベースと単回暴露時の毒性ネットワーク解析技術を基盤に、これらを維持・拡充しつつ、反復暴露のネットワーク解析、及び、その予測評価技術を開発する。ここにインフォマティクス専門家によるシステムトキシコロジーの概念を導入し、網羅的毒性予測評価システムの機能強化と精度向上を図る。
研究方法
我々が開発したPercellome絶対量化法(BMC Genomics. 7, 64, 2006 / 特許441507 / 細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を用い、化学物質の反復暴露に対する生体の遺伝子発現の反応は、毎回の投与の度に、①その都度の変化を示す「過渡反応」と、②回を重ねるに連れて発現値の基線(ベースライン)が徐々に移動する「基線反応」の二つの成分から構成され、単回暴露影響を単純に積算して予測する変化とは異なることが明らかとなった。具体的には、過渡反応と基線反応の関連性を観測可能とする新型反復暴露実験(1、2、或いは4日間の反復暴露を行い、次の日に従来通りの単回暴露を実施し2、4、8、24時間後に肝の網羅的遺伝子解析を行う)を、飼育環境の照明時間等を厳密に管理して実施した(国立医薬品食品衛生研究所の「動物実験の適正な実施に関する規程」遵守)。また、マウス胎児をモデルとした発生過程の遺伝子発現ネットワークの描出研究を実施した。
本研究解析に用いるアルゴリズムを、Percellomeやシステムバイオロジーに基づいて複数開発し、以下に示す独自の解析プログラムに実装した。
結果と考察
反復暴露については、H24年度の四塩化炭素、H25年度のバルプロ酸ナトリウムに加え、H26年度はクロフィブレートの新型反復暴露実験を実施し、過渡反応と基線反応の分離、及び、両反応の連関性、即ち過渡反応が増加する場合には基線反応も増加、減少する場合には基線反応も減少する、という四塩化炭素と共通の基本現象を確認し、その上流に共通の分子機構が働いている強い可能性を明らかにした。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析の為に、経時的発現値の一階微分及び二階微分により発現変動起点及び発現ピーク時点を同定する技術を用いるプログラム開発し、胎生6.26日~9.75日の間の全ての発現変動起点ごとに遺伝子を抽出・分類し、発生過程を司るシグナルネットワークの網羅的描出を進めた。
データ解析手法の開発研究として、本年度は、マウスのみを対象としていた非Percellomeデータの絶対量推定をラットにも拡大したほか、実験間の共通変動遺伝子を高速抽出するプログラムPercellomeExplorerを応用し、各化学物質に特異的な生体反応要素のハイスループット抽出解析を実現した。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発として、遺伝子発現ネットワーク推定ではアルゴリズムの性能向上と機能実装を進め、開発したプログラムをGaruda(研究用ソフトウエア国際共通プラットフォーム)に対応させつつ、Webサービスとして提供した。また遺伝子クラスタ解析手法ソフトウエアのPercellomeデータへの最適化や計算規模及び速度の向上を進めた。さらにPercellomeデータベースのGaruda上への実装を進め、そのソフトウエアをGarudaガジェットの一般公開バージョンとして配布を開始した。Garuda Platformは、国際的に非常に高い評価を得ており、一般公開後も普及は順調に進んでいる。
結論
新型反復暴露解析で見いだした、過渡反応成分と基線反応成分の基本的な関連性は、生物学的・毒性学的に新規性が高く、反復毒性の分子毒性学的理解の促進、及び、単回暴露実験データベースからの反復毒性予測法の開発にあたり重要であり、今後も本機序の全容解明を進める。
胎児発生過程における遺伝子発現ネットワークの網羅的解析については発現変動起点及び発現ピークの時点に着目する微分解析手法の開発、実証を進めた。今後も信頼性と効率の向上と共に、応用範囲の拡充を目指す。
Percellome用解析ソフトウエアの開発研究では、研究計画通りソフトウエア、データベースの改良・拡張を進め、網羅的遺伝子発現解析の効率向上を実現した。
システムトキシコロジー解析基盤の研究開発では、諸アルゴリズムの性能向上や機能拡張も順調に推移した。今後、これらのソフトウエアの具体的な適用例を増やし、実用レベルでのシステム開発と国際的な普及に努める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201428016C

収支報告書

文献番号
201428016Z