文献情報
文献番号
201415013A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病に対する低分子シャペロン治療薬の開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
桑田 一夫(国立大学法人岐阜大学 大学院連合創薬医療情報研究科)
研究分担者(所属機関)
- 水澤英洋(国立精神・神経医療研究センター病院・神経内科学)
- 西田教行(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染分子)
- 三條伸夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科神経病態学)
- 小野文子(千葉科学大学動物危機管理学部)
- 柴田宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
594,342,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、新規抗プリオン化合物(P092マレイン酸塩)に対し、GMP有機合成、注射剤としての製剤、薬物動態試験、薬理薬効試験、非臨床安全性試験(GLP)を行い、医師主導治験を実施するとともに、薬事法に基づく承認申請を行い、プリオン病治療薬を実用化することを目的とする。
研究方法
A : P092マレイン酸塩 のGMP合成、及び注射剤製造設備の設置:治験に用いる被験物(P092マレイン酸塩)を委託合成(GMP合成)した。
B : P092マレイン酸塩の薬物動態試験、及び非臨床安全性試験:薬物動態試験、及び非臨床安全性試験を、委託により実施した。試験内容に関しては、PMDAによる事前面談を実施した。
C : 医師主導治験プロトコールの作成:オールジャパン体制で治験の母体となるプリオン病の臨床研究のためのコンソーシアムJapanese Consortium of Prion Disease (JACOP)において、患者登録、治験時の評価項目に関わる自然歴調査を実施した。また、治験薬概要書、非臨床試験総括報告書、医師主導治験プロトコールをそれぞれ、現時点における知見に基づいて作成した。
B : P092マレイン酸塩の薬物動態試験、及び非臨床安全性試験:薬物動態試験、及び非臨床安全性試験を、委託により実施した。試験内容に関しては、PMDAによる事前面談を実施した。
C : 医師主導治験プロトコールの作成:オールジャパン体制で治験の母体となるプリオン病の臨床研究のためのコンソーシアムJapanese Consortium of Prion Disease (JACOP)において、患者登録、治験時の評価項目に関わる自然歴調査を実施した。また、治験薬概要書、非臨床試験総括報告書、医師主導治験プロトコールをそれぞれ、現時点における知見に基づいて作成した。
結果と考察
国内で、P092に関する物質特許が成立した(特許第5665089号)。さらに医薬品としてのP092マレイン酸塩の物質特許に関するPCT出願を行った(PCT/JP2015/52982)。治験薬製造では、P092マレイン酸塩のGMP有機合成(委託)を終了し、合成規格を決定した。自施設製造では、GMP準拠合成施設、GMP準拠製剤施設を整備し、薬理薬効試験などに随時使用できる体制にある。非臨床試験では、長期毒試験と安全性薬理試験を除いて、First in Humanに必要な毒性試験を完了した。10mg/Kgの用量においても、重大な副作用は認められていない。薬物動態試験では、2mg/Kgの用量で週一回(もしくは、隔週、或いは月一回)静脈内投与を行うことにより、脳組織内にIC50(300±100 nM)の周辺で、薬剤濃度が維持されることが判明した。マウスに対するP092の薬理薬効試験において、P092投与により、有意な延命効果が観察されている。さらにC-BSE株を脳内接種したプリオン感染サルに対するP092による治療実験(薬理薬効試験)において、P092マレイン酸塩を2mg/Kgで週1回間歇投与した場合、発症前投与群では非投与群に比して、発症がほぼ抑制されていることが確認された。これにより非臨床POCは確保できた、と考える。PMDAの対面助言に従い、まずFirst in Human第1相(安全性評価)では、緩徐発症型(遺伝性プリオン病)のGSS3例を対象とし、P092の安全性を確認する。また、安全性が確認されれば、孤発型クロイツフェルト病のような急性の病態を含む症例に対し、第2/3相臨床試験を実施することとした。プリオン病は現在治療法のない感染症であるため、薬物動態(PK)試験をP3施設で行う必要がある。これが可能な施設(LC-MS)を長崎大学大学院医歯薬学総合研究科内P3施設に設置した。2013年にJACOPを設立し、自然歴調査を開始したが、現在では参加施設は全国130ヶ所以上に上っており、今後オールジャパンでの治験体制を担う母体となる。
本薬剤が実用化されれば、変異型ヤコブ病に対しても有効である可能性が高い。我が国では全頭検査が施行され、牛肉の輸入に関しても規制が多く、国際的な摩擦の一因となっている。プリオン病が治療可能になれば、もちろん感染しないに越したことはないが、このような摩擦も部分的に緩和される、と考えられる。世界では、毎年約7000人がプリオン病で亡くなっていると推定されるため、プリオン病治療薬が開発されれば、その国際的・社会的意義は極めて高い。P092に関する医師主導治験プロトコールを平成28年度内に作り上げ、治験相談を実施する。治験が開始されれば、本プロトコールに沿って、プリオン病の治療に向けた臨床現場でのP092塩の活用が事実上開始されることになる。
本薬剤が実用化されれば、変異型ヤコブ病に対しても有効である可能性が高い。我が国では全頭検査が施行され、牛肉の輸入に関しても規制が多く、国際的な摩擦の一因となっている。プリオン病が治療可能になれば、もちろん感染しないに越したことはないが、このような摩擦も部分的に緩和される、と考えられる。世界では、毎年約7000人がプリオン病で亡くなっていると推定されるため、プリオン病治療薬が開発されれば、その国際的・社会的意義は極めて高い。P092に関する医師主導治験プロトコールを平成28年度内に作り上げ、治験相談を実施する。治験が開始されれば、本プロトコールに沿って、プリオン病の治療に向けた臨床現場でのP092塩の活用が事実上開始されることになる。
結論
進捗状況を総合的に考えると、平成29年より、第Ⅰ相に入ることが可能である。
また、企業との連携体制もできており(資料9参照)、その後の第Ⅱ/Ⅲ相試験、及び承認申請も計画通り進むものと考えている。
また、企業との連携体制もできており(資料9参照)、その後の第Ⅱ/Ⅲ相試験、及び承認申請も計画通り進むものと考えている。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
-