文献情報
文献番号
201326002A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国の産業精神保健法制度の背景・特徴・効果とわが国への適応可能性に関する調査研究
課題番号
H23-労働-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三柴 丈典(近畿大学 法学部政策法学科)
研究分担者(所属機関)
- 林 弘子(宮崎公立大学)
- 水島 郁子(大阪大学大学院 高等司法研究科)
- 井村 真己(沖縄国際大学 法学部法律学科)
- 笠木 映里(九州大学 法学部)
- 本庄 淳志(静岡大学 人文社会科学部法学科)
- 長谷川 珠子(福島大学 行政政策学類)
- 白波瀬 丈一郎(慶應義塾大学 医学部)
- 團 泰雄(近畿大学 経営学部)
- 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 荻野 達史(静岡大学 人文社会科学部社会学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本調査研究の目的は、①諸外国の産業精神保健法制度の背景・特徴・効果を解明し、②わが国
への適応可能性を探ることにある。
への適応可能性を探ることにある。
研究方法
初年度は、主任研究者が研究班会議でのブレインストーミングを経て報告書の基本的構成を示すフォーマットを作成し、法制度調査の分担研究者が各担当国の第一次資料等のレビュー、現地への渡航調査(法政策関係者への面接調査等)を通じ、その埋め合わせ等に尽力した。関連領域(精神医学、産業医学、経営学、[次年度から社会学も加入])の専門家にもフォーマットが示され、それに即した情報提供を通じ、法制度調査担当者が持つべき視点と基本知識が明らかにされた。次年度は、初年度の調査研究の成果を踏まえて改編されたフォーマットに即し、引き続き、文献レビュー、現地への渡航調査等が実施され、概ね①が完了した。最終年度は、①の結果を踏まえて②を果たすための社会調査(1.質問票による大規模な電子調査と大手企業3社への訪問調査、2.メンタルヘルス対対策促進員への面接調査と質問票による電子調査)と①の補充調査が行われ、総括報告書の完成をみた。
結果と考察
以下の法政策的提言が導かれた。
提言1)嫌悪感に基づく差別的取り扱い、敵対的な態度や策動などにより、人の人格や尊厳を侵すなどして、精神的な雇用環境を悪化させる行為の禁止(安衛法)
根拠)実態としての労働相談件数の増加、社会認識の高まり、ヨーロッパ諸国では既に雇用平等関係法、安全衛生関係法、刑法典等で禁止されていること等。
提言2)ある勤務時間と次の勤務時間の間のプライベートな時間(休息時間)の保障(労基法か安衛法)
根拠)睡眠時間とメンタルヘルスの関係に関する疫学的データ、EUでの規制、国内の裁判例(国立循環器病センター事件)等。
提言3)当該労働者にとって急激かつ大幅な労働条件の変化があった場合の支援体制の構築と実施の確保(安衛法)
*現行法では、法定健診や長時間労働面接の事後措置、中高年齢者など労災防止との関係で特に配慮を要する労働者に対して求められる措置として就業上の配慮が定められているが、過重な心理的負荷をもたらし易い条件を特定した一次予防的な措置にかかる定めはない。
提言4)各事業場で労働者が遂行する職務(の質量や当該労働者の適応性)の分析と適切な人員の配置(安衛法69条及び70条の2に基づく指針(メンタルヘルス指針など))
根拠)国内の判例による言及、代表的なストレス測定モデルによる捕捉、本研究PTにおける社会調査の結果等。
提言5)個々の組織ごとに講じられているメンタルヘルス対策について、その効果(休業率、匿名条件下での従業員の職務満足度調査結果など)を変数で捉え、企業名の公表や労災保険料の減免、労働基準監督の一部免除などにより、信賞必罰を加える規定の創設(安衛法第28条の2、第88条関係、および安衛法69条及び70条の2に基づく指針等)
根拠)対策の効果を測る一律的で適正なアウトカム評価指標が開発されているとまでは言えないこと、本研究PTでの社会調査から、この規定形式であれば社会的支持が得られやすいことが判明していること等。
提言6)判例法理の内容がより適切に反映されるよう、安全配慮義務を再定義すること(労働契約法第5条)
*対象者の安全・衛生への実質的な影響可能性(特に支配・管理可能性)を持つ者が、災害疾病にかかる予見可能性に基づく結果回避可能性の存在を前提に、当該結果回避のための手続ないし最善の注意を尽くす義務としての趣旨が明確化するように労働契約法第5条を改定すること
根拠)使用者の(精神)衛生問題にかかる民事責任を明確にすることは、労使双方の利益に適うこと、イギリスの民事責任法理とも一致すること等。
提言7)メンタルヘルスに関する個人情報の取扱いに関するルール、特に労働者の同意が得られない場合の取扱いに関するルールの集約と周知ならびに、組織内外でメンタルヘルス対策の要となる者(産業医等)への情報の集約を支援するルールの整備(安衛法、個人情報保護法第8条等に基づく行政のガイドライン等)
根拠)有効なメンタルヘルス対策と関係情報の適正な取扱いは表裏一体であること、本研究PTでの社会調査からも、メンタルヘルス情報の取扱いに関するルールについて、現場での十分な理解に基づく運用が困難になっていると解されること。
提言8)産業と(精神保健)福祉の連携を進めるためのモデルづくりと支援
根拠)本研究PTでの社会調査からも、企業等と(精神保健)福祉関係者との接点を設けることにより、組織内でのダイバーシティが進むと考える企業関係者が多いことが判明していること等。
提言1)嫌悪感に基づく差別的取り扱い、敵対的な態度や策動などにより、人の人格や尊厳を侵すなどして、精神的な雇用環境を悪化させる行為の禁止(安衛法)
根拠)実態としての労働相談件数の増加、社会認識の高まり、ヨーロッパ諸国では既に雇用平等関係法、安全衛生関係法、刑法典等で禁止されていること等。
提言2)ある勤務時間と次の勤務時間の間のプライベートな時間(休息時間)の保障(労基法か安衛法)
根拠)睡眠時間とメンタルヘルスの関係に関する疫学的データ、EUでの規制、国内の裁判例(国立循環器病センター事件)等。
提言3)当該労働者にとって急激かつ大幅な労働条件の変化があった場合の支援体制の構築と実施の確保(安衛法)
*現行法では、法定健診や長時間労働面接の事後措置、中高年齢者など労災防止との関係で特に配慮を要する労働者に対して求められる措置として就業上の配慮が定められているが、過重な心理的負荷をもたらし易い条件を特定した一次予防的な措置にかかる定めはない。
提言4)各事業場で労働者が遂行する職務(の質量や当該労働者の適応性)の分析と適切な人員の配置(安衛法69条及び70条の2に基づく指針(メンタルヘルス指針など))
根拠)国内の判例による言及、代表的なストレス測定モデルによる捕捉、本研究PTにおける社会調査の結果等。
提言5)個々の組織ごとに講じられているメンタルヘルス対策について、その効果(休業率、匿名条件下での従業員の職務満足度調査結果など)を変数で捉え、企業名の公表や労災保険料の減免、労働基準監督の一部免除などにより、信賞必罰を加える規定の創設(安衛法第28条の2、第88条関係、および安衛法69条及び70条の2に基づく指針等)
根拠)対策の効果を測る一律的で適正なアウトカム評価指標が開発されているとまでは言えないこと、本研究PTでの社会調査から、この規定形式であれば社会的支持が得られやすいことが判明していること等。
提言6)判例法理の内容がより適切に反映されるよう、安全配慮義務を再定義すること(労働契約法第5条)
*対象者の安全・衛生への実質的な影響可能性(特に支配・管理可能性)を持つ者が、災害疾病にかかる予見可能性に基づく結果回避可能性の存在を前提に、当該結果回避のための手続ないし最善の注意を尽くす義務としての趣旨が明確化するように労働契約法第5条を改定すること
根拠)使用者の(精神)衛生問題にかかる民事責任を明確にすることは、労使双方の利益に適うこと、イギリスの民事責任法理とも一致すること等。
提言7)メンタルヘルスに関する個人情報の取扱いに関するルール、特に労働者の同意が得られない場合の取扱いに関するルールの集約と周知ならびに、組織内外でメンタルヘルス対策の要となる者(産業医等)への情報の集約を支援するルールの整備(安衛法、個人情報保護法第8条等に基づく行政のガイドライン等)
根拠)有効なメンタルヘルス対策と関係情報の適正な取扱いは表裏一体であること、本研究PTでの社会調査からも、メンタルヘルス情報の取扱いに関するルールについて、現場での十分な理解に基づく運用が困難になっていると解されること。
提言8)産業と(精神保健)福祉の連携を進めるためのモデルづくりと支援
根拠)本研究PTでの社会調査からも、企業等と(精神保健)福祉関係者との接点を設けることにより、組織内でのダイバーシティが進むと考える企業関係者が多いことが判明していること等。
結論
結果と考察に記載の通り。
公開日・更新日
公開日
2015-06-22
更新日
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