地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究

文献情報

文献番号
201429019A
報告書区分
総括
研究課題名
地表水を対象とした浄水処理の濁度管理技術を補完する紫外線処理の適用に関する研究
課題番号
H26-健危-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大垣 眞一郎(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の水道水源の多くは地表水であるが、耐塩素性病原微生物の汚染が懸念されている。厚生労働省は、クリプトスポリジウム等対策指針を策定し、その対策を求めているが、特に小規模水道においては、未対応の施設が残っている。また、緩速ろ過・急速ろ過方式の浄水場においては、クリプトスポリジウム等対策の目標であるろ過水濁度0.1度以下を常時維持することに困難を感じている水道事業者も見受けられ、近年、急激な濁度上昇等の増加と相俟って懸念が増している。一方、国内で耐塩素性病原微生物対策としての地表水を対象とした紫外線処理の導入例はなく、関連する研究も少ない状況にある。このような背景から、本研究では、濁度管理を補完する技術としての地表水を対象とした紫外線処理の適用に関する検討を行った。
研究方法
本研究において、平成26年度は三つの具体的検討課題を設定した。それぞれの研究方法を以下に示す。
1.濁度管理等における課題の抽出
実務を行っている水道事業体の実態を把握し課題を明確化するため、2年間にわたりヒアリング調査を行う。施設能力規模、地域、水源種別、浄水処理方法等を考慮して調査先を選定し、事前に送付した調査票への回答を得た後、ヒアリングと現地調査を行うという方法を採った。
2.原水条件及び処理効果の検討
この課題は、1)国内における地表水の濁度成分等の分析、及び2)地表水の水質特性が紫外線処理の効果に及ぼす影響評価の二項目に分けて検討した。1)については、模擬地表水による凝集沈澱ろ過実験及び実際の地表水等の評価を行った。模擬地表水よる実験では、小型実験装置にて、クリプトスポリジウム模擬粒子を模擬地表水に添加し、凝集条件等の違いによるクリプトスポリジウム模擬粒子除去率への影響を把握した上で、実験装置の後段にさらに紫外線処理を想定した場合のリスク低減効果を試算した。実際の地表水等の評価では、地表水等の試料水の分析評価を行い、地表水への紫外線処理の適用可能性等を検討した。2)地表水の水質特性が紫外線処理の効果に及ぼす影響評価では、地表水試料に紫外線を照射し、濁度が不活化効果に与える影響等を回分式実験装置で検証した。
3.照射手法及び設計諸元の検討
濁度変動に対応する紫外線照射線量の検討を行うため、地表水試料等について複数の測定方式で濁度を測定し、得られた値から紫外線の処理効果への影響を評価する簡易指標について検討した。
結果と考察
1.濁度管理等における課題の抽出
地表水を原水とする浄水処理においては、小規模事業体において、ろ過池ごとの濁度管理が予算や人員確保の面から困難であること等をあらためて浮き彫りにした。なお、本調査は中・小規模施設を主要な調査対象として平成27年度にかけて2年度にわたり作業を実施し、地表水の濁度管理及び紫外線処理施設の維持管理の実態把握をとりまとめる。したがって今年度の報告は途中経過報告である。
2.原水条件及び処理効果の検証
模擬原水とクリプトスポリジウム模擬粒子による小型実験装置を用いた凝集沈澱砂ろ過実験結果に対して、紫外線照射を仮定した場合のリスクを試算した結果、紫外線照射がない場合と比較して、凝集処理が必ずしも良好ではない条件においてもリスクが低減されるという結果を得た。また、地表水等の水質分析結果から、現行の紫外線処理に対する水質要件が地表水においても有効である可能性が示唆された。さらに、濁質を含む水における濁質の不活化速度への影響を確認する回分実験では、不活化速度は低濁度領域においては濁質の影響を受けないという結果を得た。
3.紫外線の照射手法及び設計諸元の検討
地表水の濁度変動に対応する紫外線照射量の検討を行うために、濁質による紫外線の吸収・散乱を評価する手法の検討を行った。その結果、透過光のみによる測定方式と透過光と散乱光による測定方式とによる二種類の異なる測定法で測定した濁度の比によって、紫外線処理の効果への影響を評価できる可能性があることが示された。
結論
当初計画どおり、1.濁度管理等における課題の抽出、2.原水条件及び処理効果の検証、3.紫外線の照射手法及び設計諸元の検討について調査・実験等を行うことによって研究を進め、一定の進展を得た。平成27年度は前年度の結果をもとにさらに検討を進め、紫外線処理が地表水の浄水処理技術の一つとして適用可能となるように、実務に即し研究を継続する予定である。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201429019Z