日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究

文献情報

文献番号
202308055A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 敬子(東邦大学 医学部)
  • 勝川 史憲(慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター)
  • 桑波田 雅士(京都府立大学 大学院 生命環境科学研究科)
  • 田中 清(静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター )
  • 福渡 努(滋賀県立大学 人間文化学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養生理学研究室)
  • 吉田 宗弘(関西大学化学生命工学部)
  • 片桐 諒子(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 雨海 照祥(滋慶医療科学大学 医療科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して、現状の課題を整理し、目指すべき方向性について、科学的かつ具体的な示唆を与え、そのための資料を提供することである。具体的には次の3点を中心とした:(1)主として過去5年間に出版された論文のなかから「食事摂取基準で参考または引用すべき論文」を検索して整理すること。(2)食事摂取基準が活用されている(または、されるべき)分野の利活用の実態並びに課題を調査し、客観的かつ具体的な改善方針を提案すること。(3)食事摂取基準の恒久的な発展を担保すべく、この分野の中堅並びに若手の専門家を育成すること。加えて、食事摂取基準は国を越えてのハーモナイゼーションの重要性が指摘されていることを受け、日本と類似する食習慣、食環境、健康課題を有し、独自で食事摂取基準を策定している国と、アジア諸国のなかで食事摂取基準の策定を計画している国を選び、関連情報の提供並びに関連情報の交換・共有を図ることも目的とした。
研究方法
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して特に重要と考えられた栄養素(群)等並びに改定に際して重要だと考えられた関連情報を中心として、本年度(2年目)は17の課題について系統的レビューを行った。
結果と考察
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して特に重要と考えられた栄養素(群)等並びに改定に際して重要だと考えられた関連情報を中心として、本年度(2年目)は17の課題について系統的レビューを行った。これらの成果物(または研究中の資料)は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会ワーキンググループのなかで資料として用いられた。また、今後の策定作業に際して有用な基礎資料として活用されることが期待される。しかしながら、栄養学の特性上、レビュークライテリアを統一的に作成することはむずかしく、じゅうぶんに客観的かつ網羅的に質の高い情報(研究論文)を収集し、まとめられたか否かについては疑問が残る結果となった。また、栄養実務者を対象として日本人の食事摂取基準の活用状況に関する調査を行った結果、栄養実務者のあいだで日本人の食事摂取基準が積極的に活用されている実態が明らかとなり、実務者が正しくかつさらに積極的に食事摂取基準を活用できるように、食事摂取基準のさらなる普及並びに教育の重要性が確認された。中堅並びに若手の専門家を育成については、今回、3分の1程度の課題についてこれまで「日本人の食事摂取基準」の改定作業を担当した経験を持たない研究者を採用し、策定作業の継続と向上を図った。また、食習慣が類似する近隣アジア諸国との連携並びに情報交換も重要であり、今年度は台湾とラオスの関係者と情報交換を行った。
結論
今後、栄養関連のガイドラインに資する系統的レビューの方法・技術に関する基礎研究をさらに進めるとともに、国内外の関係者との情報交換を活発化し、この分野を担う新たな研究者並びに専門家の育成が必須かつ急務であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
その他

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
2025-04-11

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202308055B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 敬子(東邦大学 医学部)
  • 勝川 史憲(慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター)
  • 桑波田 雅士(京都府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 田中 清(静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター)
  • 福渡 努(滋賀県立大学 人間文化学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養生理学研究室)
  • 吉田 宗弘(関西大学 化学生命工学部)
  • 片桐 諒子(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 雨海 照祥(滋慶医療科学大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して、現状の課題を整理し、目指すべき方向性について、科学的かつ具体的な示唆を与え、そのための資料を提供することを目的とする。具体的には次の4点を中心とした。
(1)レビュークライテリアを作成したうえで、主に過去5年間に出版された論文のなかから「食事摂取基準で参考または引用すべき論文」を系統的に検索して整理すること。
(2)改善または拡張すべき部分(たとえば、災害時における食事摂取基準の在り方、食事摂取基準が扱うべき生活習慣病の種類とその具体的な内容、複数栄養素の相互作用についての考え方と食事摂取基準における示し方)について、研究論文の網羅的な検索・読解を行い、次期改定に必要な資料を提供すること。
(3)より広くかつ正しく活用されるために食事摂取基準が活用されている(または、されるべき)分野の利活用の実態並びに課題を調査し、客観的かつ具体的な改善方針を提案すること。
(4)食事摂取基準の恒久的な発展を担保すべく、この分野の中堅並びに若手の専門家を育成すること。
研究方法
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して特に重要と考えられた栄養素(群)等ならびに改定に際して重要だと考えられた関連情報を中心として、初年度17課題、2年度17課題について、系統的レビューを行った。特に、現在の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では必ずしも記述対象とされていないものの他国の食事摂取基準では扱われていることの多い事項(糖類やビタミン類が生活習慣病等に与える影響、必要量等に関する新たな生体指標の開発とその利用可能性、加齢による身体状況の変化(例としてフレイルと認知症)と栄養素等摂取量との関連)については、「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)だけでなく、その後の改定も見据えて系統的レビューを行った。
結果と考察
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は食事・栄養が関わる行政、産業、教育等、各所で活用されている。これら膨大なニーズに対して「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の記述だけで対応できるとは考えにくく、それを補完する学術資料が必要であり、本研究結果はこの役割も担うものであると期待される。
このうち、3分の1程度の課題については「日本人の食事摂取基準」の改定作業をこれまで担当した経験を持たない(しかし国際誌等への執筆経験が豊富な)比較的に若手の研究者を採用し、策定作業の継続と向上を図った。これは今後食事摂取基準がその質と量を減じることなく(時代の要請に応じ質と量を増して)、半恒久的に策定される体制を構築するうえで重要かつ必須の方法であったと考えられる。
しかしながら、栄養学の特性上、レビュークライテリアを統一的に作成することはむずかしく、じゅうぶんに客観的かつ網羅的に質の高い情報(研究論文)を収集し、まとめられたか否かについては疑問が残る結果となった。今後、栄養関連のガイドラインに資する系統的レビューの方法・技術に関する基礎研究をさらに進めるとともに、この分野を担う新たな研究者ならびに専門家の育成が必須かつ急務であると考えられた。
なお、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定のために令和5年度にワーキンググループが組織し、策定作業が行った。本研究では初年度(令和4年度)はこれを見据えて研究を進め、令和5年度はワーキンググループと連絡を取りつつ、研究を進めた。
「日本人の食事摂取基準」が扱うべき新たな課題のひとつである災害栄養については、食事摂取基準が扱うべき対象、状況、範囲、内容について、これらの概念整理と理論構築の必要性が強調された。
加えて、栄養実務者(管理栄養士ならびに栄養士等、栄養に関連する職に従事する者)を対象として、日本人の食事摂取基準の活用状況に関する調査を行った。栄養実務者のあいだで日本人の食事摂取基準が積極的に活用されている実態が明らかとなり、実務者が正しくかつさらに積極的に食事摂取基準を活用できるように、食事摂取基準のさらなる普及ならびに教育の重要性が確認された。
結論
今後、栄養関連のガイドラインに資する系統的レビューの方法・技術に関する基礎研究をさらに進めるとともに、この分野を担う新たな研究者ならびに専門家の育成が必須かつ急務であると考えられた。
加えて、栄養実務者(管理栄養士ならびに栄養士等、栄養に関連する職に従事する者)を対象として、日本人の食事摂取基準の活用状況に関する調査を行った。栄養実務者のあいだで日本人の食事摂取基準積極的に活用されている実態が明らかとなり、実務者が正しくかつさらに積極的に食事摂取基準を活用できるように、食事摂取基準のさらなる普及ならびに教育の重要性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2025-01-09
更新日
2025-04-11

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202308055C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「日本人の健康維持・増進、生活習慣病等の予防において望ましいエネルギー並びに主要栄養素の摂取量」に関連すると考えられる学術情報(研究論文等)を網羅的かつ系統的に調査し、専門的・学術的観点から考察を加えた。これは日本人の健康を栄養面から担保するための必須の情報であり、行政的観点からだけでなく、世界の栄養学の研究動向を見据え、わが国における研究の方向性を考えるうえでも極めて貴重な資料であり、関係機関、関係団体等で広く活用されることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究の目的は主に公衆栄養的な観点のものであるため、臨床的観点からの成果は主たるものではないが、生活習慣病等の発症予防並びに重症化予防、並びに加齢による身体変化(フレイルや認知症等)に対して「栄養」が果たしうる役割の重要性に関する知見が急増していることが確認された。今後、当該疾患の専門家とも連携し、この領域における栄養学研究をさらに推進するための必須の網羅的かつ系統的な基礎資料が得られたものと考える。
ガイドライン等の開発
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、令和5年度にワーキンググループが組織され、策定作業がなされた。本研究の初年度(令和4年度)はこれを見据えて研究を進め、令和5年度はワーキンググループと連絡を取りつつ、研究を進めた。本研究なくして「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は策定し得なかったと言っても過言ではない。さらに、次期改定(2030年版)も見据え、中長期的な展望に立って研究を遂行し、学術的観点からの提言を含めた。
その他行政的観点からの成果
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は食事・栄養に関連する多数の他の行政指針や通達等の基本となるガイドラインである。それは厚生労働省に留まらず、文部科学省、消費者庁、こども家庭庁など多岐にわたる。しかしながら、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に記述されている内容のみで、これら膨大なニーズに対応できるとは考えにくく、それを補完する学術資料が必要であり、本研究はこの責務を担うものである。
その他のインパクト
「日本人の食事摂取基準」は食品産業等に与える影響も大きい。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に記述されている内容のみでじゅうぶんにニーズに対応できるとは考えにくく、それを補完する学術資料が必要であり、本研究はこの責務を担うものである。また、栄養士・管理栄養士を要請する教育機関では必須の教育科目である。「日本人の食事摂取基準」の教育に携わる教員にとって、本研究の研究成果は極めて有用な教育材料と考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka K, Ao M, Tamaru J, Kuwabara A.
Vitamin D insufficiency and disease risk in the elderly.
J Clin Biochem Nutr , 74 , 9-16  (2024)
10.3164/jcbn.23-59.
原著論文2
藤原綾,朝倉敬子,佐々木敏.
日本における糖類基準値の策定上・活用上の課題-諸外国の摂取基準と日本の現状をふまえて-.
栄養学雑誌 , 81 (6) , 349-358  (2023)
原著論文3
杉本南,朝倉敬子,片桐諒子,佐々木敏.
・栄養関連業務に従事する者における「日本人の食事摂取基準」の使用実態:勤務施設種別比較.
公衆衛生学雑誌  (2024)
原著論文4
田中清,青未空.
慢性疾患リスクを考慮したビタミンのバイオマーカーの位置づけ.
ビタミン , 98 , 116-120  (2024)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
2024-05-31

収支報告書

文献番号
202308055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
26,000,000円
(2)補助金確定額
26,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,180,233円
人件費・謝金 10,733,367円
旅費 1,722,400円
その他 3,364,000円
間接経費 6,000,000円
合計 26,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-10-18
更新日
-