逆コンプトン散乱X線源を用いた医用イメージング法の開発

文献情報

文献番号
200713005A
報告書区分
総括
研究課題名
逆コンプトン散乱X線源を用いた医用イメージング法の開発
課題番号
H17-フィジ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 上坂 充(東京大学大学院工学系研究科)
  • 百生 敦(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
  • 福山直人(東海大学)
  • 福島和人(国立循環器病センター研究所 心臓生理部 )
  • 梅谷啓二(高輝度光科学研究センター)
  • 山田家和勝(産業技術総合研究所・計測フロンテイアー研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Spring-8のような巨大シンクロトロン加速器から得られる放射光の代替として逆コンプトン散乱X線源を開発し、微小血管造影や位相コントラスト撮像などを通常の医療施設あるいは研究施設内で実現する。
研究方法
①逆コンプトン散乱X線源を用いた撮影:Sバンド加速方式逆コンプトン散乱X線源を用いて撮影した。単色性(33-40KeV)と小焦点性(30?40μm)を有するので、超高精細微小血管造影が求める<10μmの超高解像度撮像と、微量ヨードの検出を期待できる。②小型化に向けたXバンド加速管の開発:電子ビームの加速達成に引き続き、電子ビームをレーザーパルスとの衝突点へ輸送し、レーザーパルスとの衝突実験を実施した。③位相コントラスト法への応用に向けた基盤整備:逆コンプトン散乱X線源で位相コントラスト法を実現するためにX線タルボ干渉計について検討する。
結果と考察
①逆コンプトン散乱X線源を用いた撮影:世界で初めてレーザー逆コンプトン散乱由来の単色X線源による実時間撮影を確認した。解像度チャートで75μmの識別能を確認した。家兎耳血管の撮影でも第7次分岐(血管径80μm)の微小血管の観察に成功した。犬の摘出心の撮影では心筋内微小血管を観察できた。②小型化に向けたXバンド加速管の開発:電子ビームの加速達成に引き続き、電子ビームをレーザーパルスとの衝突点へ輸送し、レーザーパルスとの衝突実験を実施した。微弱ではあるが約10 keV においてコンプトン散乱由来のX線シグナルを取得した。③位相コントラスト法への応用に向けた基盤整備:放射光以外では実施が困難と考えられていた位相コントラストについて、X線タルボ干渉計の開発により逆コンプトン散乱X線源でも位相コントラスト法を実現するための可能性が示された。Mo回転対陰極X線源(フォーカスサイズ0.3mm)を用いてX線タルボ・ロー干渉計による撮像装置を構成し、ファントム(プラスチック球)を用いた撮像に成功した。
結論
逆コンプトン散乱X線線源により空間解像度75μmの微小血管撮影を実現した。今後の課題として102倍程度の光子数の増加を実現できるX線発生装置が必要となる。これにより、放射光の代替X線源として人体での超解像度微小血管造影(<10μm)の実現に道が開かれる。Xバンド加速管の開発で6m×5m×4mの小型装置化を期待できる。X線タルボ干渉計により、位相コントラスト法の普及にも期待が持てる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200713005B
報告書区分
総合
研究課題名
逆コンプトン散乱X線源を用いた医用イメージング法の開発
課題番号
H17-フィジ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 上坂 充(東京大学大学院工学系研究科)
  • 百生 敦(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
  • 福山直人(東海大学)
  • 福島和人(国立循環器病センター研究所 心臓生理部 )
  • 梅谷啓二(高輝度光科学研究センター)
  • 山田家和勝(産業技術総合研究所・計測フロンテイアー研究部門)
  • 竹下聡(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Spring-8のような巨大シンクロトロン加速器から得られる放射光は微小血管造影や位相コントラスト撮像などに有用である。その代替として医療施設あるいは研究施設内で実現できる逆コンプトン散乱X線源の可能性について検証する。
研究方法
①逆コンプトン散乱X線源を用いた微小血管撮影と放射光を用いた方法との比較:Sバンド加速方式逆コンプトン散乱X線源を用いて撮影放射光微小血管造影法のような、超高精細微小血管造影が可能かどうかを検証する。②病院設置型装置として小型化を期待できるXバンド加速管を開発する:装置開発とX線発生を3年にわたって実施した。③位相コントラスト法への応用に向けた基盤整備:逆コンプトン散乱X線源で位相コントラスト法を実現するためにX線タルボ干渉計について検討した。
結果と考察
①逆コンプトン散乱X線源を用いた撮影:世界で初めてレーザー逆コンプトン散乱由来の単色X線源による実時間撮影を確認した。解像度チャートで75μmの識別能を確認した。家兎耳血管の撮影でも第7次分岐(血管径80μm)の微小血管の観察に成功した。犬の摘出心の撮影では心筋内微小血管を観察できた。放射光微小血管造影法では管径20-200μmの微小血管を解像度5μmで実時間動画撮影が可能であった。
②小型化に向けたXバンド加速管の開発:装置を完成させ、電子ビームをレーザーパルスとの衝突点へ輸送し、レーザーパルスとの衝突実験を実施した。微弱ではあるがコンプトン散乱由来のX線シグナルを取得した。③位相コントラスト法への応用に向けた基盤整備:放射光以外では実施が困難と考えられていた位相コントラストについて、X線タルボ干渉計の開発により逆コンプトン散乱X線源でも位相コントラスト法を実現するための可能性が示された。Mo回転対陰極X線源(フォーカスサイズ0.3mm)を用いてX線タルボ・ロー干渉計による撮像装置を構成し、ファントム(プラスチック球)を用いた撮像に成功した。
結論
逆コンプトン散乱X線源により空間解像度75μmの微小血管撮影を実現した。今後の課題として102倍程度の光子数の増加を実現できるX線発生装置が必要となる。これにより、放射光の代替X線源として人体での超解像度微小血管造影(<10μm)の実現に道が開かれる。Xバンド加速管の開発で6m×5m×4mの小型装置化を期待できる。X線タルボ干渉計により、位相コントラスト法の普及にも期待が持てる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
放射光は微小血管造影、位相コントラスト撮影、などの有力な研究手段である。しかし、建設費が著しく膨大で、かつ巨大な設備が必要であり、医療、医学応用の妨げとなっていた。本研究課題では加速した電子ビームと周回させて強度を増強したレーザーを衝突した際に発生する逆コンプトン散乱X線を放射光の代替として用いることができるかを明らかにする。この装置は小型化も可能で(6m×5m×4m)医療医学施設に広く設置が可能となり、微小血管造影、位相コントラスト撮影の普及に役立つ。
臨床的観点からの成果
微小血管造影法と位相コントラスト法を医療機関内で実施できるようになる。微小血管造影法の普及により、糖尿病等のメタボリックシンドロームの初期微小循環障害の検出を通じて成人病の早期発見、早期治療に役立つ。虚血性心疾患、脳血管障害、下肢循環障害患者の詳細な病態評価を実現し、それに対する血管再生治療の視覚的効果判定法を提供できる。位相コントラスト法はがん組織と正常組織、良性腫瘍組織の鑑別能が向上した断層画像を提供できる。また、造影剤を使用しない血管の描出の可能性を有する。
ガイドライン等の開発
特に関係はない。
その他行政的観点からの成果
メタボリックシンドロームの初期病変の検出に応用することで成人病の早期発見、早期治療の実現に貢献し、医療経済の観点からも総医療費の抑制に役立つ可能性がある。また、難治性循環器疾患(心、脳、末梢動脈)の診断と治療効果の判定を改善することを通じて適切な治療法の選択が可能となる。がんの診断精度の向上や抗血管新生療法の判定法の提供を通じて医療行政、医療経済に貢献する。
その他のインパクト
Xバンド加速方式逆コンプトン散乱X線発生装置の作成は文科省関連の研究予算で東京大学工学部が中心となって実施し、バンド加速方式逆コンプトン散乱X線発生装置は産業技術総合研究所で実施した。逆コンプトン散乱X線の医療医学応用の可能性の評価は本厚生労働科学研究費で実施されている。省庁間連携による研究・開発の具体的な一例となった。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
109件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
81件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Igarashi T, Oishi Y, …Mori H, et al.
Crystallization and preliminary X-ray crystallographic analysis of two vascular apoptosis-inducing proteins (VAPs) from Crotalus atrox venom
Acta Crystallograph Sect F Struct Biol Cryst Commun , 62 (7) , 688-691  (2006)
原著論文2
Kawada T, Yamazaki T, … Mori H, et al.
Effects of Ca2+ channel antagonists on nerve stimulation-induced and ischemia-induced myocardial interstitial acetylcholine release in cats
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 291 (5) , 2187-2191  (2006)
原著論文3
Miyahara Y, Ohnishi S, …Mori H, et al.
Beraprost sodium enhances neovascularization in ischemic myocardium by mobilizing bone marrow cells in rats
Biochem Biophys Res Commun , 349 (4) , 1242-1249  (2006)
原著論文4
Ben Ammar Y, Takeda S, …Mori H, et al.
Crystal structure of CHP2 complexed with NHE1-cytosolic region and an implication for pH regulation
EMBO J , 25 (11) , 2315-2325  (2006)
原著論文5
Masuda M, Takeda S, …Mori H, et ai.
Endophilin BAR domain drives membrane curvature by two newly identified structure-based mechanisms
EMBO J , 25 (12) , 2889-2897  (2006)
原著論文6
Kimura K, Goto T, …Mori H, et al.
Biphasic of inducible nitric oxide synthasein a hind limb ischemia model
J.Clin.Biochem.Nutr. , 38 (2) , 1-8  (2006)
原著論文7
Sato E, Hayashi Y, …Mori H, et al.
X-ray Spectra from Weakly Ionized Linear Copper Plasma
Jpn. J. Appl. Phys. , 45 (6) , 5301-5306  (2006)
原著論文8
Kawada T, Yamazaki T, …Mori H, et al.
Vagal stimulation suppresses ischemia-induced myocardial interstitial norepinephrine release
Life Sci , 78 (8) , 882-887  (2006)
原著論文9
Miyahara Y, Nagaya N, …Mori H
Monolayered mesenchymal stem cells repair scarred myocardium after myocardial infarction
Nat Med , 12 (4) , 459-465  (2006)
原著論文10
Goto T, Fukuyama N, …Mori H, et al.
Search for appropriate experimental methods to create stable hind-limb ischemia in mouse
Tokai J Exp Clin Med , 31 (3) , 128-132  (2006)
原著論文11
Igarashi T, Araki S, Mori H, Takeda S
Crystal structures of catrocollastatin/VAP2B reveal a dynamic, modular architecture of ADAM/adamalysin/reprolysin family proteins
FEBS Lett , 581 (13) , 2416-2422  (2007)
原著論文12
Kawada T, Kitagawa H, …Mori H, et al.
Hypothermia reduces ischemia- and stimulation-induced myocardial interstitial norepinephrine and acetylcholine releases
J Appl Physiol , 102 (2) , 622-627  (2007)
原著論文13
Kawada T, Yamazaki T, …Mori H, et al.
Angiotensin II attenuates myocardial interstitial acetylcholine release in response to vagal stimulation
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 293 (4) , 2516-2522  (2007)
原著論文14
Sagae M, Sato E, …Mori H, et al.
Intense clean characteristic flash x-ray irradiation from an evaporating molybdenum diode
Opt. Eng. , 46 , 1-7  (2007)
原著論文15
Sato E, Germer R, …Mori H, et al.
Novel monochromatic x-ray generators and their applications to high-speed radiography
SPIE , 6279 (6) , 1-12  (2007)
原著論文16
Sato E, Sagae M, …Mori H, et al.
High-sensitive radiography system utilizing a pulse x-ray generator and a night-vision CCD camera
SPIE , 6279 (41) , 1-6  (2007)
原著論文17
Sato E, Tanaka E, Mori H, et al.
K-edge magnification digital angiography using a 100-&micro;m-focus tungsten tube
Opt. Eng. , 46 , 1-6  (2007)
原著論文18
Takeda S, Igarashi T, Mori H
Crystal structure of RVV-X: An example of evolutionary gain of specificity by ADAM proteinases
FEBS Lett , 581 (30) , 5859-5864  (2007)
原著論文19
Obata H, Sakai Y, …Mori H, et al.
Single Injection of a Sustained-release Prostacyclin Analog Improves Pulmonary Hypertension in Rats
Am J Respir Crit Care Med , 177 (2) , 195-201  (2008)
原著論文20
Iwasaki H, Fukushima K, …Asahara T
Synchrotron radiation coronary microangiography for morphometric and physiological evaluation of myocardial neovascularization induced by endothelial progenitor cell transplantation
Arterioscler Thromb Vasc Biol , 27 (6) , 1326-1333  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-