文献情報
文献番号
201122007A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害者の適応評価尺度の開発に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
- 市川宏伸(東京都立小児総合医療センター)
- 井上雅彦(鳥取大学医学系研究科)
- 内田裕之(大阪大学大学院)
- 内山登紀夫(福島大学大学院)
- 岩永竜一郎(長崎大学医学総合研究科)
- 小笠原恵(東京学芸大学)
- 黒田美保(淑徳大学総合福祉学部)
- 杉山登志郎(浜松医科大学)
- 中村和彦(浜松医科大学)
- 萩原拓(北海道教育大学旭川校)
- 原幸一(徳島大学総合科学部)
- 村上隆(中京大学現代社会学部)
- 行廣隆次(京都学園大学人間文化学部)
- 谷伊織(東海学園大学人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
発達障害児者への具体的な支援計画の策定や行政サービスの実施を考える上で、個々の支援ニーズを的確に把握することが必要となる。しかし、国内では発達障害児者の支援ニーズを客観的に把握するための基本的なツールが開発・普及されておらず、もっぱら知的機能に基づいた評価のみが行われてきた。そのため、知的機能以外の面で様々な生活上の困難を示す発達障害児者が必要な支援を受けられないという不都合が生じている。そこで本研究では社会生活への適応の観点から発達障害者の現実的な支援ニーズを捉える尺度として国際標準となっているVineland適応行動尺度(VABS-II)の日本版を開発し、標準化および信頼性・妥当性の検証を行った。さらに、感覚刺激への反応異常を評価する感覚プロフィール(SP)、自閉症児者に特有の反復行動を測定するためのRBS-Rの日本版の標準化と妥当性検証も並行して行った。
研究方法
VABS-II日本版の標準化サンプルとして一般群1367名のデータを収集した。また、尺度の信頼性・妥当性検証のために一般群延べ130名と発達障害・知的障害の診断を受けた臨床群259名のデータを収集した。また、3バージョンの日本版SPの標準化のために一般群延べ2888名のデータ、尺度の妥当性検証のために臨床群延べ490名のデータを収集した。さらに、日本語版RBS-Rの妥当性を検証するために、臨床群330名のデータを収集した。
結果と考察
VABS-II日本版について、94の年齢区分ごとに各下位領域の素点を標準得点に換算するアルゴリズムを作成した。さらに、VABS-IIの信頼性について、内的整合性、再検査信頼性、評定者間信頼性の観点から、妥当性について、因子構造、年齢による得点推移、基準関連妥当性、臨床群のスコアプロフィールの観点から確認した。日本版SPの3バージョンについて、一般群データに基づく標準値を算出した。また、臨床群データとの比較や知的能力・自閉的特性との関連などから、日本版SPの妥当性が確認された。日本語版RBS-Rの信頼性・妥当性は、項目分析、内的整合性、診断間の比較、知的能力・自閉的特性との関連から総合的に検証された。
結論
発達障害児者の現実の生活上の困難を捉える3つの尺度の日本版が開発・標準化された。また、これらの尺度は、定型発達者と同等の知的能力を持つ高機能自閉症児者であっても、その行動上の困難を明確に捉えられることが明らかになった。これらの尺度を組み合わせて使用することで、IQに依存した従来の評価基準からの脱却が可能になると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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