緑内障診断SNPチップと変形プロテオミクスクラスター解析による緑内障統合的診断法の開発

文献情報

文献番号
201027031A
報告書区分
総括
研究課題名
緑内障診断SNPチップと変形プロテオミクスクラスター解析による緑内障統合的診断法の開発
課題番号
H20-感覚・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 和彦(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 田代 啓(京都府立医科大学 ゲノム医科学)
  • 長崎 生光(京都府立医科大学 統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の失明原因の第一位である緑内障は、患者の89%が無自覚未診断との多治見スタディの報告もあるように早期診断の遅れが課題である。そこで緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障(POAG)の簡便で低侵襲な血液検査によるリスク判定実現を目指して、ゲノムワイド関連解析(GWAS)で得た一塩基多型(SNP)マーカーと、多種類サイトカイン同時測定による血中サイトカイン濃度を組み合わせて、統合的に解析する診断アルゴリズムを構築することを目的とする。具体的には、両マーカー解析とデータの処理方法を検討し、実践的なアルゴリズム開発する。
研究方法
アフィメトリクス社製500KチップによるGWAS時に得られたSNPのうち、低精度データを除外し、2次元クラスターが異常なSNPを除いて、最終的にp<0.001を示した約数百SNPsを得た。イルミナ社製カスタムチップによる別集団で検証を行った。一方、ビーズテクノロジーによる多種類サイトカイン同時測定方法を樹立した。SNPマーカーと血中サイトカイン濃度をいかに統合的に取り扱うかのデータの扱い方を検討した。さらに、実際に取得したデータを学習とテストに用いる2群に分けて、カイ2乗検定P値上位のうちいくつのSNPを用いるべきか、どのようなSNPの組み合わせを用いるべきかを検討し、解析方法の手法・関数と各パラメータを大規模にスクリーニングした。
結果と考察
最終的に有意水準p<0.0001を示した有意な6 SNPsを得た。4個のSNPsは同一の連鎖不平衡ブロックの上に存在した。他の多因子疾患のGWAS研究成果と同様に、オッズ比(危険度)は、1.2から1.5程度であり、多数のマーカーSNPの組み合わせで診断精度を上げる必要性が実証的に示された。カイ2乗検定P値上位いくつのSNPを用いるのが至適であるかを過学習や偽の好成績出現に留意して検証した。既知のあらゆる解析手法のどれが診断率至適化に適するかをスクリーニングの結果、正診率 70%に達する方法を割り出した。同様に血中サイトカイン濃度測定により4種の有意なサイトカインを見出し、SNPマーカーと血中サイトカイン濃度を組み合わせた機械学習法ベースの統合的診断アルゴリズムを構築した。
結論
目標としたSNPマーカーと血中サイトカイン濃度を組み合わせる統合的診断アルゴリズムを試験運用したところ、7割以上の診断が可能であったので、特許出願した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201027031B
報告書区分
総合
研究課題名
緑内障診断SNPチップと変形プロテオミクスクラスター解析による緑内障統合的診断法の開発
課題番号
H20-感覚・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 和彦(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学 )
  • 田代 啓(京都府立医科大学 ゲノム医科学)
  • 長崎 生光(京都府立医科大学 統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の失明原因の第一位である緑内障は、患者の89%が無自覚未診断との多治見スタディの報告もあるように早期診断の遅れが課題である。そこで緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障(POAG)の簡便で低侵襲な血液検査によるリスク判定実現を目指して、ゲノムワイド関連解析(GWAS)で得た一塩基多型(SNP)マーカーと、多種類サイトカイン同時測定による血中サイトカイン濃度を組み合わせて、統合的に解析する診断アルゴリズムを構築することを目的とする。
研究方法
広義解放隅角緑内障および正常コントロール例に対して血液サンプルの収集と緑内障臨床検査を行なった。解析と並行して、血液サンプルの収集を行うとともに、種々の臨床機器を用いた緑内障精密検査を行い、今年度末の時点で、最終的に原発開放隅角緑内障(広義)千数百例、落屑緑内障(PE)など約200例、正常コントロール例千数百例の、ゲノムサンプルならびに臨床データを収集することができた。アフィメトリクス社製500KチップによるGWAS結果をイルミナ社製カスタムチップによる別集団で検証を行った。一方、ビーズテクノロジーによる多種類サイトカイン同時測定方法を樹立した。SNPマーカーと血中サイトカイン濃度をいかに統合的に取り扱うかのデータの扱い方を検討した。さらに、実際に取得したデータを学習とテストに用いる2群に分けて、カイ2乗検定P値上位のうちいくつのSNPを用いるべきか、どのようなSNPの組み合わせを用いるべきかを検討し、解析方法の手法・関数と各パラメータをスクリーニングした。
結果と考察
最終的に有意水準p<0.0001を示した有意な6 SNPsを得た。他の多因子疾患のGWAS研究成果と同様に、オッズ比(危険度)は、1.2から1.5程度であり、多数のマーカーSNPの組み合わせで診断精度を上げる必要性が実証的に示された。カイ2乗検定P値上位いくつのSNPを用いるのが至適であるかを過学習や偽の好成績出現に留意して検証した。既知のあらゆる解析手法のどれが診断率至適化に適するかを大規模スクリーニングの結果、正診率 70%に達する方法を割り出した。同様に血中サイトカイン濃度測定により4種の有意なサイトカインを見出し、SNPマーカーと血中サイトカイン濃度を組み合わせた機械学習法ベースの統合的診断アルゴリズムを構築した。
結論
目標としたSNPマーカーと血中サイトカイン濃度を組み合わせる統合的診断アルゴリズムを試験運用したところ、7割以上の診断が可能であったので特許出願した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
世界で初めて原発開放隅角緑内障のゲノムワイド関連研究成果として6個の疾患マーカーSNPを報告した。本研究への緑内障および正常ボランティアのこの研究参加人数は4000例を越え、すべての症例の血中リンパ球を不死化させて細胞株確保して、アイスランドの同等物を凌ぐ貴重な医学的情報資源と呼ぶべき生物試料を獲得した。またこの研究結果を踏まえて遺伝子と変形プロテオミクスを統合する診断アルゴリズムを構築し試験運用したところ、7割以上の診断が可能であったので特許出願した。遺伝子診断チップの作成の足がかりとなった。
臨床的観点からの成果
動けるお年寄りを増やす目的も含めて我が国の失明原因の第一位である緑内障の対策に際して、患者の89%が無自覚未診断との多治見スタディの報告もあるように早期診断の遅れが課題であるが、ゲノム情報と血中サイトカイン濃度を組み合わせて判定する今回の研究成果によって、視野検査や眼底検査に比べるとはるかに簡便な血液検査で早期に診断できる可能性が生まれた。これまでの放置例や発見遅延例に対して早期治療開始が可能になる道筋ができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
動けるお年寄りを増やす目的も含めて我が国の失明原因の第一位である緑内障の対策に際して、患者の89%が無自覚未診断との多治見スタディの報告もあるように早期診断の遅れが課題であるが、今回の研究成果によって、視野検査や眼底検査に比べるとはるかに簡便な血液検査で早期に診断できる可能性が生まれた。
その他のインパクト
2009年度の我々の原発開放隅角緑内障疾患マーカーを報告した論文(Proc Natl Acad Sci U S A. 106(31): 12838-12842, 2009)が朝日、毎日、読売、産経などの主要新聞に取り上げられた。また2010年1月30日に、一般市を対象とする「緑内障診断および治療の限界」というシンポジウムを厚生労働省科学研究費感覚器障害研究事業の研究成果発表会/京都府立医大眼科府民講座として行った。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
47件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
57件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakano M, Ikeda Y, Taniguchi T et al.
Three susceptible loci associated with primary open-angle glaucoma identified by genome-wide association study in a Japanese population
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America , 106 (31) , 12838-12842  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027031Z