薬物トランスポーターの分子多様性と機能解析および副作用発現との連鎖解析

文献情報

文献番号
200400215A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物トランスポーターの分子多様性と機能解析および副作用発現との連鎖解析
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄一(東京大学(大学院薬学系研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 家入 一郎(鳥取大学 医学部附属病院薬剤部)
  • 山下 直秀(東京大学 医科学研究所附属病院)
  • 油谷 浩幸(東京大学 国際・産学共同研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、各トランスポーターの薬物動態における寄与の評価、遺伝的多型による機能変動、薬物間相互作用に関する検討を通じて、医薬品開発および適正使用における安全性確保をはかるための薬物動態・副作用予測システム構築の基盤作りを進めることを目的とした。
研究方法
取り込みトランスポーターOATP1B1と排泄トランスポーターMDR1, MRP2, BCRPのいずれかを共発現する細胞を構築した。BCRPの遺伝子多型変異体7種を発現する細胞を構築し、ベシクルを調製して輸送機能を評価した。スタチンの脳内からの排出を観察すべく、BEI法を用いて速度論解析を行った。臨床では、2型糖尿病治療薬であるメトホルミンの血糖降下作用に見るノンレスポンダーとOCT1遺伝子多型との関連、MDR1遺伝子のプロモーター領域に見る遺伝子多型とヒト胎盤におけるMDR1発現量との関連を観察した。薬物トランスポーターの遺伝子発現量の多様性について、EBV不死化リンパ球RNAをマイクロアレイ解析することにより検討した。
結果と考察
共発現系において取り込み・排泄両トランスポーターの基質になる化合物で方向性のある経細胞輸送が観察され、基質により排泄トランスポーターの寄与が異なることを示した。BCRP遺伝子多型のうちQ141Kについて単位タンパクあたりの活性は不変で発現量が低下することが機能低下の原因であることを示唆する結果を得た。プラバスタチンとピタバスタチンは共に脳内から能動的な排出を受けることを示し、そのトランスポーターOat3, Oatp2の寄与が異なることを示した。臨床試験では、OCT1 V408Mの保有者でメトホルミンのノンレスポンダーが多く、mRNA発現量も小さいことが示された。また、ヒト胎盤のMDR1のプロモーター変異の2つのハプロタイプによりMDR1のmRNAおよびタンパク発現量の顕著な増加が認められた。マイクロアレイを用いて、単塩基多型を利用した発現量の多様性の測定系を開発し、トランスポーター遺伝子の2アレル間の発現量多様性があることを示した。
結論
胆汁排泄トランスポーターの機能評価系、BCRPの変異による機能変化の評価系を構築した。スタチンの脳からの排出機構が薬により異なることを示唆した。OCT1, MDR1の多型が発現量、薬効に影響することを示した。マイクロアレイで発現量多様性を評価できる系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200400215B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物トランスポーターの分子多様性と機能解析および副作用発現との連鎖解析
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄一(東京大学(大学院薬学系研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 家入 一郎(鳥取大学 医学部附属病院薬剤部)
  • 山下 直秀(東京大学 医科学研究所附属病院)
  • 油谷 浩幸(東京大学 国際・産学協同研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の副作用の発現の規定因子として体内動態の個人差があげられる。これまで、代謝酵素に焦点を当てた研究が進められたが、近年、多くの薬物トランスポーター群が機能解析されるに従い、薬物動態に与える影響の重要性が明らかにされつつある。本申請研究では、ヒトトランスポーター遺伝子発現系・ヒト凍結肝細胞を用いた研究ならびに、遺伝子欠損動物を用いた研究を通して、各トランスポーターの薬物動態における寄与の評価、遺伝的多型による機能変動、薬物間相互作用に関する検討を通じて、医薬品開発および適正使用における安全性確保をはかるための薬物動態・副作用予測システム構築の基盤作りを進めることを目的とした。
研究方法
in vitro実験として、取り込みトランスポーターの解析系としては、各種トランスポーター安定発現細胞を作成し、放射標識基質の取り込みを観察した。排泄トランスポーターの解析系としては、取り込み・排泄両方のトランスポーターを極性細胞に発現した共発現細胞を用いた経細胞輸送の観察ならびに、排泄トランスポーターをアデノウィルスで高発現させた細胞から調製した細胞膜ベシクルを用いた実験系を用いた。併せて、ヒト凍結肝細胞における取り込みを観察した。またin vivo実験では、各種ノックアウト動物を用いた。ヒト臨床研究では、倫理的な面に十分配慮し、薬物投与試験を行った。
結果と考察
セリバスタチンとシクロスポリンAの薬物間相互作用が、OATP1B1を介した肝取り込み過程にあることを証明すると共に、セリバスタチンとゲムフィブロジルの相互作用は、ゲムフィブロジルのグルクロン酸抱合体のCYP2C8による代謝ならびにOATP1B1を介した肝取り込みの両方の阻害であることを証明した。ビグアニド系化合物であるメトホルミンは、Oct1(-/-)マウスで肝臓への分布が減少し、血中乳酸濃度の上昇も低く、Oct1の発現がビグアニドの副作用発現の重要な因子であること示した。OATP1B1*15変異では、プラバスタチンの、BCRP Q141K変異では、4-MUSの血中濃度上昇が見られ、in vitro実験による解析の結果、機能低下を再現できた。
結論
トランスポーターを介した薬物間相互作用やトランスポーターの遺伝子多型が臨床薬物動態に与える影響を臨床研究とin vitro実験の両面から、複数の事例に関して実証できた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-