廃棄物処理におけるダイオキシン類の抑制および分解技術に関する研究

文献情報

文献番号
199900680A
報告書区分
総括
研究課題名
廃棄物処理におけるダイオキシン類の抑制および分解技術に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
川口 雄次(WHO健康開発総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中江章浩(WHO健康開発総合研究センター)
  • 軽部征夫(日本電磁波応用研究会)
  • 柴田長吉朗(日本電磁波応用研究会)
  • 長山淳哉(九州大学医療短期大学)
  • 二川佳央(防衛大学)
  • 馬場茂明(国際糖尿病教育学習研修所)
  • 河野義弘(住金マネジメント株式会社)
  • 村山照男(ミクロ電子株式会社)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
農業産業革命に続く情報革命の進展に伴い廃棄物処理の分野やにおいてもパラダイムチェインジが求められており、大量生産、大量消費、大量廃棄という現行システムを根本的に改める必要に迫られている。このために、分散型の廃棄物処理システムを作り、廃棄物を作り出したその場所でその廃棄物を処理することにより廃棄物を減らそうというインセンティブを働きやすいようにさせ、あわせてダイオキシンなどの有害科学物質の生成をおさえ、在宅高齢者介護により生ずる感染性医療廃棄物の処理を容易にするなどの目的のために化石燃料を用いた外からの加熱方式に変えてマイクロ波により廃棄物自体を振動させて処理する方式を開発する。感染性医療廃棄物は難燃性の高分子有機化合物が主体であり状態も固体、液体と多様であるため従来の外部からの加熱処理方式では安定した処理が困難である。
そこでマイクロ波を用いその特性を利用した廃棄物処理を行い安定ガス化実燃焼のテストを行った。この過程で、処理物への定温制御性の確認、マイクロ波加熱効率、マイクロ波照射に影響する処理物自体の誘電率の温度依存性特性を測定し今後の課題を明らかにした。
研究方法
焼却対象物を挿入しマイクロ波を照射して焼却対象物を乾燥、着火、焼却、灰化させる一時燃焼炉とその生成ガス排出口に連接されたガスダクトを介して供給されたガスを自燃させる二次焼却炉の二つの炉を持ちマイクロ波を発振器から一次燃焼炉に基づく金属製のタイプである導波管とアイソレーターを付属させたマイクロ波利用廃棄物処理装置を作成する。この実験装置を用いてダイアライザー、血液回路、注射器を対象処理物として燃焼テストを行い、この結果を従来型の化石燃料を用いた外部加熱方式の焼却炉のものと比較する。
結果と考察
ダイオキシン類の抑制についてはマイクロ波利用処理装置と従来型の焼却炉との間での大きな差異は見られなかった。これは小容量処理での比較のため、内部燃焼状態の差が生じなかったためであると考えられる。二次燃焼室における発生ガスの滞留時間が0.7~0.8秒程度しかなかったためか、ダイオキシン濃度も2.2~4.4ng/m3N であった。マイクロ波の加熱効率についてはマイクロ波導入口の形状と位置を最適化することによって、マイクロ波加熱効率86.9%という結果を得た。従来、約10kgの人工透析機器を焼却するのに25kWHの電力が必要であったが、今回の改良型の実験装置においては18.8kWHですみ、25%のエネルギーコストの削減が可能となった。設備費のコストダウンについてもマイクロ波出力が1.5kWのマイクロ波発振機を採用した場合は導波管、アイソレーター、マイクロ波発信器の制作費を、30%程度ダウンさせた。また、すべての材料は温度上昇とともに複素誘電率の虚数部が大きく上昇し実数部の変化は虚数部に比べ小さいという結果を得た。マイクロ波炉内での材料の発熱分布は(150コCないし200コCでの発熱量は常温時に対して2倍以上)中心部分が周辺より大きいことが判明した。マイクロ波加熱時の発熱は温度が上昇するほど大きくなり中心部分から加熱が広がっていき温度の上昇が進むほど加熱が強くなることもわかった。処理物の温度上昇はマイクロ波照射により、高温に昇温されるわけであり、今後はこれらの発熱分布を考慮した一次燃焼室の最適設計が課題であると考えられる。
結論
マイクロ波を利用することにより、廃棄物処理装置を小型化し、最終的には各家庭、各職場に設置することが可能となり、各人が廃棄物の発生を最小にしようという動機づけになる。また発生するダイオキシン濃度も低下し、病院などから発生する感染性医療廃棄物を殺菌するのにも大きな効果がある。この意味でマイクロ波利用は情報社会における廃棄物処理の大きな選択肢の一つであると考えられる。当面はコストダウンが課題であるが、感染性医療廃棄物の殺菌に限ればすぐにでも実用化が可能であると思われる。

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