文献情報
文献番号
201427023A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的医療機器開発を加速する規制環境整備に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新見 伸吾(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
- 蓜島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
- 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
- 澤田 留美(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
- 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
- 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 植松 美幸(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
- 石原 一彦(東京大学大学院 工学系研究科 マテリアル工学専攻)
- 佐々木 啓一(東北大学大学院 歯学研究科 歯科インプラント学)
- 田中 賢(山形大学大学院 理工学研究科 バイオ化学工学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
31,115,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新規医療機器開発を加速させる規制整備の一環として、循環器医療機器の重要特性である血液接触において問題となっている血液凝固、血栓形成をin vitroで評価する簡易スクリーニング法の開発を目的とし、材料/細胞界面特性の支配因子(水和状態、イオン、蛋白質挙動)、材料との相互作用による細胞の分子レベルの挙動等に着目して検討を行った。また、歯科分野では歯科用インプラントの疲労試験におけるワーストケースの選定の考え方について、科学的な根拠に基づく学術的な研究による承認審査基準の解釈の統一を目指した検討を行った。
研究方法
血管ステント用金属材料のほか、新たに合成した高分子材料のランダム共重合体に吸着するヒト血漿蛋白質を試料として、LC-MS/MS (Q-Exactive/Advance Nano UPLC)を用いて網羅的比較定量解析を行った。各種高分子材料及びそのランダム共重合体をコーティングしたQCMセンサーとALB、FIB、FINC及びVTNCとの相互作用を緩和法により測定し、結合速度定数、解離速度定数、結合定数及び解離定数を算出した。PP-low bindチューブ中で各種高分子材料のランダム共重合体を浸漬したヘパリン加ヒト血液に浸漬し、SC5b-9、β-TG及びTAT蛋白質量を市販ELISAにより測定した。各種高分子材料のランダム共重合体等の材料上で血管内皮細胞及びTHP-1細胞を培養し、遺伝子及び蛋白質発現挙動等を解析した。主な解析ソフトウェアとしてMaterials Studioを利用し、エネルギーを最小化したMEA 50量体構造に水分子を25~100個配置させ、水分子の酸素原子のへの吸着エネルギーを計算した。ポリマーブラシ表面の構造及び特性はX線光電子分光装置等により解析し、水和構造はNMRを用いて評価し、材料間及び蛋白質との相互作用はAFMフォースカーブにより解析した。新規ポリマーを合成し、中間水量及び抗血栓性をそれぞれDSC法及びヒト血小板粘着試験により評価した。歯科インプラントの疲労試験のワーストケース設定等の考え方に関して問題と考えられる事項を把握し、明確な科学的根拠に基づいて討議した。疲労試験におけるワーストケースの設定について、FEMを用いた解析を行った。
結果と考察
材料表面への静的及び動的蛋白質吸着挙動を指標とした評価法、材料との接触に伴う血液中のTAT及びβ-TG変動に基づく評価法、並びにTHP-1細胞のCD54発現量・IL-8産生量を指標とした評価は、医用材料の血液適合性を予測・評価する新たなin vitro試験として利用できることが示唆された。血液適合性と密接に関与する中間水の存在の有無は、材料表面近傍の水和状態に着目した分子動力学シミュレーションにより予測できる可能性が示された。高分子材料に対する蛋白質吸着の抑制には蛋白質の離脱時に分子間相互作用を誘起しない表面を設計することが重要であることが判明し、高分子の医用材料の中間水と抗血栓性はその一次構造を最適化することにより制御できることが明らかになった。歯科用インプラントにおける疲労試験のワーストケースの選定の基本的な考えについて、インプラント形状における長さ、径、アングルの有無、嵌合機構の形状に関して審査基準に関する考え方を取り入れ、ワーストケース選定のためのフローチャート案を取りまとめて提案した。
結論
プロテオミクス解析を用いた血液適合性評価マーカの探索に関する研究、蛋白質吸着の動力学的解析に関する研究、並びに細胞内蛋白質発現挙動を用いた評価法の開発に関する研究において選定されたマーカ蛋白質は、医用材料の血液適合性を評価するための新たな指標となることが明らかになった。また、既存試験法において、TAT及びβ-TGが血液適合性評価マーカとして利用できることが明らかになった。分子シミュレーションを用いた材料表面の水和状態の解析に関する研究において得られた成果は、医用材料の開発研究を新たなステージに導くうえで大きな意義を持つと考えられる。新規材料の物理化学的特性評価に関する研究、並びに中間水コンセプトによる新規生体適合性高分子の合成に関する研究においては、医用材料の水和状態のほか、蛋白質との静電的及び疎水的相互作用が血液適合性と密接に関連することが明確に示された。歯科用インプラントに関する研究において取りまとめた「課題解決に向けた提言」は、申請資料作成の効率化、審査の迅速化、国内歯科産業振興への波及効果等への寄与が期待される。
公開日・更新日
公開日
2018-06-21
更新日
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