食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究

文献情報

文献番号
201426014A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全確保には、その品質と適正な使用を欠かすことはできない。そこで、本研究では、食品添加物の品質を担保するために重要な食品添加物の規格及び試験法等に関する研究、並びに食品添加物の適正な使用のために重要な摂取量推計等に関する研究を行った。
研究方法
1)香料化合物規格の国際整合化に係わる調査研究:18項目の類または誘導体として指定されている香料化合物の自主規格の実測値を調査し、JECFA規格の規格値と比較した。2)食品添加物の規格試験法向上のための赤外スペクトル(IR)に関する調査研究:塩化コリン及びオクタン酸について、ATR法等によりIRを測定した。3)定量NMR法(qNMR)による定量用標準物質の純度分析法の確立:qNMRを用い、5-ベンジル-3,6-ジオキソ-2-ピペラジン酢酸(DKP)の定量を行った。4)ICP-MS等を用いた食品添加物中の鉛分析法に関する研究:固相抽出法等を用いて試験溶液の調製を行い、原子吸光光度計により鉛の測定を行った。5)我が国で使用している天然香料の使用量調査研究:日本香料工業会会員を対象に、天然香料基原物質について、平成25年の使用量調査を行った。6)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究:食品添加物製造(輸入)業者を対象に、指定添加物について、平成25年度の製造量、輸入量、出荷量等を調査した。7)日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究:構造活性相関手法(SAR)による予測が陰性で、簡易Ames試験が陽性だった化合物の一部について、標準的なAmes試験を実施した。8)食品添加物の食品中における消長と副生成物に関する研究:過酸化ベンゾイル(BPO)を添加して焼成したクッキー等をモデル試料として、ダイナミックヘッドスペース-ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて副生成物を分析した。
結果と考察
1)今年度実測値調査を行った香料化合物の半数以上は、JECFA規格の修正が必要あるいはさらなる調査が必要と考えられた。2)塩化コリンは、吸湿性が高く、錠剤法やペースト法は不適であり、ATR法による測定が適していると考えられた。オクタン酸は、ATR法のスペクトルは従来法のものとは一致せず、ATR法同士の比較で確認することが必要と考えられた。3)分子内の窒素に結合した水素は交換性の性質を有し、定量値が低く観察されることから、正確な定量は困難と考えられた。4)カルシウムやマグネシウム塩類については、親水性メタクリレートを母体にしたイミノ二酢酸基を導入したキレート樹脂による固相抽出法が、硫酸第一鉄については、高選択性分子認識ゲルによる固相抽出法やリン酸イットリウム共沈法が有効であった。5)構造活性相関の予測において、簡易Ames試験の陽性結果を陰性と予測された化合物の一部に標準的なAmes試験を実施したところ、結果はすべて陰性であった。6)初めての調査の結果、平成25年の1年間に使用された天然香料基原物質は281品目、その単純合計使用数量は約2,730tであり、概略ではあるが、天然香料の使用量の把握ができた。7)第11回調査として指定添加物の平成25年度取扱量のアンケート調査及び集計を行った。8)BPOを添加して焼成したクッキー等からは微量のベンゼンが検出されたが、推計された菓子類からのベンゼンの経口暴露量は、20歳以上における一人当たりの耐容一日摂取量を大きく下回ることが確かめられた。
結論
香料化合物規格については、今回の対象とした品目については、詳細な調査が不要な品目もあるものの、半数以上は、JECFA規格の修正あるいは再調査が必要であることが明らかとなった。IR法については、食品添加物の確認試験に、ATR法を取り入れる場合、品目毎に測定条件を調査し、ATR法での測定条件と標準IRの確立が必要であると結論した。qNMRについては、定量用標準物質の規格試験法への本法の適用に向けた基礎的データが得られた。鉛分析法に関しては、2価の無機塩類には、溶媒抽出法の代替法として、固相抽出法やリン酸イットリウム共沈法が有用と考えられた。日本独自の香料化合物の適切な安全性評価を目指す、SARを基にした遺伝毒性評価予測システムについては、複数のモデルで陰性が予測された場合は、実際のAmes試験も陰性である確率が高いと考えられる結果となった。香料評価には、複数のSARによるAmes試験結果の予測と、類縁化合物の評価結果が十分参考になるものと考えられる。これらの研究は、食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料の使用量調査及び生産量統計調査を基にした摂取量推定に関わる研究及びBPO添加小麦粉による副生成物の解明では食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-01-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201426014Z