安全衛生活動の費用対効果を算出する手法の開発とその公表ガイドの作成

文献情報

文献番号
201326024A
報告書区分
総括
研究課題名
安全衛生活動の費用対効果を算出する手法の開発とその公表ガイドの作成
課題番号
H23-労働-若手-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 岡原伸太郎(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、安全衛生活動の費用対効果を可視化することで、事業者が自ら活動を評価し、効率的・効果的な活動を促進するとともに、その結果を外部に公表することで企業価値が高まることがインセンティブとなり、より一層、自主的活動が推進されることを目指す。そのため、安全衛生活動の費用対効果を算出するための手法を確立すること、また、労働安全衛生活動をCSR関連報告書で公表するための資料を作成することを目的とする。
研究方法
(1)安全衛生活動の費用:既に作成した「衛生・健康管理コスト集計表」をもとに、健康管理活動に特化した集計表を作成した。健康管理活動は、健康診断、過重労働対策、メンタルヘルス対策、健康相談、教育・健康増進プログラムとした。また、本ツールを用いて、7事業所(A~G)のコストデータを計算した。
(2)安全衛生活動の効果:効果の1つとして、労働生産性の低下を評価した。労働生産性の低下は、某企業(製造業)の1事業所を対象に、平成24年10月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票は、日本語版Stanford Presenteeism Scaleを使用した。労働生産性の低下による損失額は、「時給(円)x1日の労働時間x稼働日数x労働生産性の低下(%)]」により計算した。医療費は、当該事業所の勤務する労働者(672名)の2012年4月1日から2013年3月31日までの1年間レセプトデータ(のべ受診回数3556回分)を、健康保険組合から取得し、解析を行った。
(3)CSR:2004年度から2012年度まで東証一部上場企業のCSR報告書の記述内容を確認し、集計および解析を行った。
結果と考察
(1)健康管理コスト集計表は、http://ohtc.med.uoeh-u.ac.jp/health-accounting.htmlよりダウンロード可能である。7事業場の健康管理コストは、労働者1人あたり、最低で12,781円、最高で75,626円であった。
(2)プレゼンティーイズム調査は、調査回答者:649名、有効回答者数:427名(65.8%)であった。過去1ヵ月に受けた健康上の問題や不調(複数選択)は、腰痛218件、アレルギー118件、眼の不調110件、頭痛85件であった。過去1ヵ月の受けた健康上の問題や不調(1つ選択)の結果は、腰痛122名(32.1%)、アレルギー54名(14.2%)、眼の不調36名(9.5%)、頭痛28名(7.4%)であった。労働生産性の低下による損失額は、総額では、腰痛が最多で175,263,441円、次いでアレルギー65,269,047円であった。医療費の内訳は、入院外(外来)が71.2%を占めていた。また、医科が全体の68.0%であった。
(3)CSRにおける労働安全衛生の報告のための資料集を作成した。
結論
安全衛生活動の費用は、コスト集計表で計算可能である。評価指標は複合的であるが、一例として労働生産性の低下を取り上げた労働生産性の低下による損失額は1,475,959円であり、安全衛生活動で労働生産性の低下を削減できれば、効果とすることができる。また、CSRにおける労働安全衛生の報告のための資料集を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201326024B
報告書区分
総合
研究課題名
安全衛生活動の費用対効果を算出する手法の開発とその公表ガイドの作成
課題番号
H23-労働-若手-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智久(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 喜幸(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木 繁之(産業医科大学 産業生態科学研究所 )
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 岡原伸太郎(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、安全衛生活動の費用対効果を可視化することで、事業者が自ら活動を評価し、効率的・効果的な活動を促進するとともに、その結果を外部に公表することで企業価値が高まることがインセンティブとなり、より一層、自主的活動が推進されることを目指す。そのため、安全衛生活動の費用対効果を算出するための手法を確立すること、また、労働安全衛生活動をCSR関連報告書で公表する際に参考となる資料を作成することを目的とする。
研究方法
(1)安全衛生活動の費用:研究代表者は、平成20年度に3事業所の専属産業医にインタビュー調査を実施し、その結果をもとに労働安全衛生活動にかかる費用を算出するためのツール(安全衛生コスト集計表)を開発した。安全衛生コスト集計表をもとに、衛生・健康管理コスト集計表、健康管理コスト集計を作成し、実際に事業所において費用算出を行った。災害コストは、1社(E事業場、製造業)で実際に発生した災害について、安全衛生担当者とともに事後的に災害コストの算出を行った。
(2)安全衛生活動の効果:職域で実施された経済評価研究をレビューし、用いられている効果指標の整理を行った。106の関係団体、事業者団体に対して、安全衛生活動の評価指標に関する質問紙調査を実施した。某企業(製造業)の1事業所で無記名自記式質問紙調査を実施した。Stanford Presenteeism Scaleを用いて、労働生産性の低下を調査した。また、レセプトデータから医療費を分析し、労働生産性の低下による損失額と比較した。
(3)企業の社会的責任活動(CSR)関連報告書における安全衛生の位置づけ調査:2004年度から2012年度まで、各年の東証一部上場企業が公開しているCSR関連報告書の労働安全衛生活動に関する記載内容を調査した。
結果と考察
(1)安全衛生コスト集計表、衛生・健康管理コスト集計表、健康管理コスト集計表を完成させた。ツールは、http://ohtc.med.uoeh-u.ac.jp/health-accounting.htmlよりダウンロード可能である。
(2)企業が主に享受する効果は、帰属意識の向上、疾病休業の低減、労働生産性の向上、企業イメージの向上であった。労働者が主に享受する効果は、健康の改善、私生活の充実、満足度の向上であり、これらの効果指標はすべて、企業が主に享受する効果指標に結びついていた。主に社会が享受する効果は、医療費の減少であった。労働生産性の低下による損失額は、1事業所での調査では1,475,959円であり、その改善が安全衛生活動の効果と捉えることができる。
(3)CSR関連報告書における労働安全衛生の報告のための資料集を作成した。
結論
本研究では、安全衛生活動の費用対効果を計算する手法を開発した。企業の立場での費用分析のためのツールを開発し、公開した。評価指標は複合的であるが、労働生産性の低下は損失額が大きく、重要な指標の1つである。多くの企業(東証一部上場企業)でCSR報告書のなかに労働安全衛生を報告しており、その位置づけは定着している。一方、その記載内容は一定でなく、ガイドライン作成が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201326024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
安全衛生活動の経済評価研究において、費用計算を行うツールを活用することができる。実際には、「労働者の健康状態及び産業保健活動が労働生産性に及ぼす影響に関する研究」(厚労科研, H25-27, 森晃爾)、「作業関連疾患の予防等に資する一般定期健康診断を通じた効果的な健康管理に関する研究」(厚労科研, H26-28, 大久保靖司)、「ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究」(厚労科研, H27-29, 川上憲人)の各研究の経済評価で活用されている。
臨床的観点からの成果
・企業のなかでおこなう安全衛生活動は、実務者が企業のなかで、経営者に対して安全衛生活動を実施するメリットを伝えることが必要である。その際、本研究の手法の活用が期待される。
・企業がCSR報告書等に安全衛生活動を記載する際、どのようなことを記載するか検討する資料となる。
・企業による健康投資に係る情報開示に関する検討会(経済産業省)のなかで、基礎的資料として扱われた。
ガイドライン等の開発
安全衛生活動、衛生・健康管理活動、健康管理活動のそれぞれにかかる費用を計算するためのツール(コスト集計表)を開発した。
CSRにおける労働安全衛生の報告のための資料集ver1.0(2014.3.1)を作成した。
その他行政的観点からの成果
開発したコスト集計表は、次世代ヘルスケア産業協議会 健康投資ワーキンググループ(第1回H26.2.14、第2回H26.4.4)において、参考資料として取り上げられた。
CSRに関する成果は、「企業による健康投資に係る情報開示に関する検討会」(経済産業省)のなかで、基礎的資料として扱われた。
その他のインパクト
研究成果は、ホームページで公開しており、
http://ohtc.med.uoeh-u.ac.jp/health-accounting.html
ツールは数多くダウンロードされている。
現在、Web上での費用集計システムを開発中(特許出願準備中)であり、近日中に公開予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
健康管理コスト算出装置および健康管理コスト算出プログラム
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2016-116782
発明者名: 永田智久、森晃爾、学校法人産業医科大学
権利者名: 永田智久、森晃爾、学校法人産業医科大学
出願年月日: 20160613
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tomohisa Nagata, Koji Mori, Yutaka Aratake, et al.
Development of cost estimation tools for total occupational safety and health activities and occupational health services: cost estimation from a corporate perspective
Journal of Occupational Health , 56 (3) , 215-224  (2014)
24739371
原著論文2
Tomohisa Nagata, Koji Mori, Yutaka Aratake, et al.
Establishment of reference costs for occupational health services and implementation of cost management in Japanese manufacturing companies
Journal of Occupational Health , 58 (4) , 323-332  (2016)
27170449
原著論文3
Nagata T, Nakata A, Mori K, et al.
Occupational safety and health aspects of corporate social responsibility reporting in Japan from 2004 to 2012.
BMC Public Health , 17 (1) , 381-  (2017)
doi: 10.1186/s12889-017-4356-y.

公開日・更新日

公開日
2014-06-16
更新日
2019-06-17

収支報告書

文献番号
201326024Z