MSMのHIV感染対策の企画、実施、評価の体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
201226014A
報告書区分
総括
研究課題名
MSMのHIV感染対策の企画、実施、評価の体制整備に関する研究
課題番号
H23-エイズ-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 内海 眞(独立行政法人国立病院機構東名古屋病院)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学大学院医学研究科)
  • 木村 哲(東京逓信病院)
  • 岡 慎一(独立行政法人国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
57,631,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMへの早期受検の促進によりAIDS患者発生を減少させ、予防行動の向上によりHIV感染の拡大を抑えることを目標とする。そのため、2010年度まで実施したエイズ予防のための戦略研究の成果を分析すると共に、MSMにおけるHIV感染に対してコミュニティセンターを基軸に取組む仙台、東京、愛知、大阪、福岡、沖縄のNGOおよび地方(愛媛)で取組むNGOと協働し、MSMのソーシャルネットワークを活用したコミュニティベースの啓発介入の評価研究を行う。また、自治体、保健所等のエイズ担当者と連携し、MSMのHIV感染対策の行政施策への導入を図る。
研究方法
1.エイズ予防のための戦略研究の効果評価と政策還元
分担/協力:木村哲、岡慎一/金子典代、塩野徳史、高野操、岩橋恒太 他
2.地域のMSMにおけるHIV感染対策の企画、実施に関する研究
分担/協力:東北(伊藤俊広/NGOやろっこ)、首都圏(市川誠一/NPO法人akta、NPO法人ぷれいす東京)、東海(内海眞/NGO・Angel Life Nagoya)、近畿(鬼塚哲郎/NGO・MASH大阪)、福岡(山本政弘/NGO・Love Act Fukuoka)、沖縄(健山正男/NGO・nankr)
3.MSMにおける行動科学調査および介入評価研究
1)行動科学調査および介入評価研究
分担/協力:金子典代/塩野徳史、岩橋恒太、佐々木由理 他
(1)全国成人男性対象のインターネットおよび郵送法による質問紙調査、(2) コミュニティベースの携帯電話による性の健康に関する質問紙調査、(3)HIV抗体検査受検者動向調査
2)MSMにおけるHIV/STD感染の動向に関する研究
分担/協力:多田有希/塩野徳史
3)MSMのHIV感染に関与する社会学的背景および感染対策に寄与する要因
分担/協力:本間隆之/後藤大輔、町登志雄 他
4.自治体におけるMSMのHIV感染対策構築に関する研究
分担/協力:市川誠一/中澤よう子、川畑拓也 他
結果と考察
1.エイズ予防のための戦略研究の『エイズ発症予防「できる!」キャンペーン』介入資材は、HIVやエイズに関する対話経験、周囲のHIV感染者の存在認識に影響し、新宿地域では受検行動の向上に寄与した。受検者5分間アンケートの協力施設に個別に分析した結果を還元した。
2.6地域のNGOは、MSMに向けた予防啓発および受検行動促進の啓発を行うと共に、自治体・保健所との意見交換会、エイズ担当者対象のMSM対応研修会、MSM向けHIV検査広報の協力を行った。
3.全国成人男性対象のインターネット質問紙調査(39,766人)により、MSM割合は4.6%、うち商業施設を利用するMSMは34.6%で、非利用者に比べて感染リスク行動、性感染症既往歴が高く、商業施設を介した啓発の重要性が示された。
4.性の健康に関する質問紙調査を各地のNGOを通じて実施した。横断調査の有効回答は3,027人、うち1,803人が追跡パネル調査に参加同意した。初回パネル調査参加者の64%(650人)が4回のパネル調査に参加した。啓発介入に対する変化を把握する追跡調査が可能となった。
5.HIV抗体検査受検者の動向調査を8都府県83施設で実施した。2012年の受検件数40,766件、陽性判明数198人(0.49%)、質問紙の有効回答数26,478人であった。ゲイNGOの啓発資材認知はMSMで高い一方、地域間差があった。NGOのMSM向け広報資材を認知する受検者が多い施設ほど陽性判明数が多く、NGOによる啓発の有用性が示唆された。
6.ロジックモデルを用いて大阪のNGOによるHIV啓発活動のプロセス評価を行った。
7.感染症発生動向調査における男性同性間のHIV/AIDS、梅毒等の発生動向を分析した。日本国籍MSMにおける出生年代別HIV/AIDSの動向分析から1980年代生まれの若い年齢層での増加が示された。
結論
首都圏のMSMに向けて4回連続で実施したエイズ予防のための戦略研究の啓発キャンペーンは受検行動の向上に寄与した。6地域のNGOは商業施設を介したコミュニティベースの啓発に加え、自治体・保健所との連携体制を進めた。全国成人男性39,766人のインターネット調査から、MSM割合が4.6%、ゲイ向け商業施設を利用するMSMはHIV/性感染症の感染リスクが高く、商業施設ベースの啓発の重要性が示された。MSM対象の質問紙調査(横断調査)後に同一対象者を追跡するパネル調査への参加者を募集し、間歇的にパネル調査を実施することでNGOの啓発活動による変化を把握することが可能となった。保健所等の受検者への質問紙調査を6地域で実施し、MSMをはじめとした受検者層の動向を把握した。NGOのMSM向け広報資材を認知するMSMが多い施設ほど陽性判明数は多かった。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201226014Z