知的障害者の地域生活移行に関する支援についての研究

文献情報

文献番号
201224005A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害者の地域生活移行に関する支援についての研究
課題番号
H22-身体・知的-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所発達障害情報・支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 晶子(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局秩父学園)
  • 四ノ宮 美恵子(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局理療教育就労支援部)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,432,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在福祉サービス体系が十分には整備されていない重度知的障害者群(重度群)と発達障害を伴う軽度~境界域知的障害者群(軽度群)について、地域生活移行のための福祉サービスを用いた支援手法について調査研究を行い、地域生活の実現に必要な支援手法と体系を提言する研究の3年目である。
1) 重度群について地域生活移行を疎外する因子として心身機能を検討する。
2) 軽度群について福祉サービスとしての就労移行支援プログラムを開発するとともに、就労を目指す発達障害者の活動と参加を国際生活機能分類(ICF)に基づいて評価し、支援ニーズを明らかにするアセスメントツールを開発する。
3) 軽度群の就労支援に役立つ、ICFに基づいたツールマップを開発する。
4) 前年度までのきょうだい調査で重度群同胞の課題として明らかになった「将来の生活」に関する情報提供を目的としたパンフレットを作成し配布する。
研究方法
1) 障害児入所施設(秩父学園)における18歳以上の年齢超過者54名のうち、研究期間内の地域生活移行群(15名)と非移行群(39名)を対象に、心身機能を大島分類改訂版および異常行動チェックリスト日本版を用いて調査し、比較した。
2) 軽度群に対し「施設内訓練」、「行事参加」、「職場実習」という3つの場を支援フィールドとして、体験とその意味づけの支援を繰り返し行いながら「自己理解」、「他者理解」、「社会的規範の理解」の促進を図る支援プログラムを開発し、提供した。また、試行版アセスメントシートによる前年度の予備調査の知見を基に、改訂版アセスメントシートを作成し、調査を実施した。
3) 前年度までに調査・抽出した軽度群の就労に役立つ支援ツールをICFに基づき分類し、支援ツールマップを開発した。
4) 重度群の同胞を提供対象とした「障害者の将来の生活」に関するパンフレットを作成し、重度群家庭48戸に送付し、評価を調査した。
結果と考察
1) 重度群の地域以降について、移行群、非移行群で大島分類及び異常行動チェックリストのスコアは、有意差はなかった。
2) 軽度群6名に開発した支援プログラムを行った結果、支援継続中の1名を除く5名全員が就職し、支援期間の短縮化が図られるなど、その有用性が示唆された。また、開発したアセスメントを就労支援中の発達障害者21名および統制群20名に対して施行し、両群に有意な差を認めた。さらに発達障害の本人評価と支援者による他者評価の比較では、「コミュニケーションの理解」において、支援者は本人が認識するよりも理解度を高く見積もる傾向があった。
3) 就労に役立つことが期待される個別支援ツールとして抽出された68種類を基に、縦軸をICFの心身機能、横軸を活動参加とする支援ツールマップを開発した。
4) 重度群のきょうだいに「障害者の将来の生活」に関してパンフレットを作成し提供したところ情報提供への評価は高かった。
結論
重度知的障害者については、その心身機能に関わらず、地域移行支援・フォローアップシステムを活用することで家族の信頼を得ながら地域生活移行を推進していくことが重要と考える。
軽度知的障害を伴う発達障害成人においては、体験とその意味づけをとおした支援を積み重ねることが生活体験の乏しさや論理的思考の苦手さを補う支援手法として有効であると推察された。また、開発したアセスメントシートは本人の支援ニーズの把握に適していると考えられた。
さらに軽度知的障害を伴う発達障害者の就労に役立つことが期待される68の個別支援ツールを抽出し、縦軸をICFの心身機能、横軸を活動参加とする支援ツールマップを開発した。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201224005B
報告書区分
総合
研究課題名
知的障害者の地域生活移行に関する支援についての研究
課題番号
H22-身体・知的-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所発達障害情報・支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 晶子(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局秩父学園)
  • 四ノ宮 美恵子(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局理療教育就労支援部)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在福祉サービス体系が十分には整備されていない重度知的障害者群(重度群)と軽度~境界域知的障害者群(軽度群)について、地域生活移行のための福祉サービスを用いた支援手法について調査研究を行い、地域生活の実現に必要な支援手法と体系を提言する。
1) 入所施設での地域生活移行を通して重度知的障害者の地域生活支援体系を検討する。
2) 軽度知的障害を伴う発達障害成人に対する福祉サービスとしての就労移行支援プログラムを開発するとともに、就労を目指す発達障害者の活動と参加を国際生活機能分類(ICF)に基づいて評価し、支援ニーズを明らかにするアセスメントツールを開発する。
3) 軽度~境界域知的障害を有する発達障害者の就労支援に役立てるため、利用可能な支援ツールを明らかにし、ICFに基づいたツールマップを開発する。
4) 知的障害者の同胞が抱える課題を明らかにし、対処方法を検討する。
研究方法
1) 秩父学園入所中の18歳以上の年齢超過者54名のうち、研究期間内の地域生活移行群(15名)と非移行群(39名)を対象に、環境因子として「地域生活移行に対する家族の理解」に関するアンケート調査を行い、個人因子として心身機能を大島分類改訂版および異常行動チェックリスト日本版を用いて調査した。
2) 発達障害を伴う軽度知的障害者に対して、「施設内訓練」、「行事参加」、「職場実習」という3つの場を支援フィールドとして、体験とその意味づけの支援を繰り返し行いながら「自己理解」、「他者理解」、「社会的規範の理解」の促進を図る支援モデルと支援プログラムを開発した。また、ICFの活動と参加及び環境因子項目を抽出し、支援ニーズアセスメントを開発し、調査を実施した。
3) 当事者の親を対象に、職業生活および家庭生活における支援ニーズについて半構造化形式のグループインタビュー調査を行い、就労に向け役立つ支援ツールの文献調査を経て、ICFに基づく支援ツールマップを開発した。
4) 重度群(50例)および軽度群(12例)について、その家族(両親、同胞)を対象にアンケート調査を実施した。
結果と考察
1) 個人因子は移行群、非移行群で有意な差はなく、環境因子(地域移行に関する家族の理解と要望)の関与が推定された。
2) 開発した就労支援モデルに基づいて軽度群6名に支援を行った結果、支援継続中の1名を除く5名全員が就職し、支援期間の短縮化が図られるなど、その有用性が示唆された。また、開発したニーズアセスメントを就労支援中の軽度群および統制群に対して施行し、両群に有意な差を認めた。さらに発達障害の本人評価と支援者による他者評価を比較した。「コミュニケーションの理解」において、支援者は本人が認識するよりもコミュニケーションの理解度を高く見積もる傾向があった。
3) 就労に役立つことが期待される個別支援ツールとして68種類が抽出され、これを基に、縦軸をICFの心身機能、横軸を活動参加とする支援ツールマップを開発した。
4) きょうだいの課題は、重度群では「(入所前および帰省時の)入所者の家庭での行動」「親亡き後の後見」が多かったが、軽度群では、「当事者の将来(結婚、住居、仕事)」であった。重度群のきょうだいに「障害者の将来の生活」に関してパンフレットを作成し提供したところ情報提供への評価は高かった。
結論
重度知的障害者については、地域移行支援・フォローアップシステムを活用することで家族の信頼を得ながら地域生活移行を推進していくことが重要と考える。
軽度知的障害を伴う発達障害成人においては、体験とその意味づけをとおした支援を積み重ねることが生活体験の乏しさや論理的思考の苦手さを補う支援手法として有効であると推察された。また、開発したICFに基づくアセスメントは本人の支援ニーズの把握に適していると考えられた。さらに軽度知的障害を伴う発達障害者の就労に役立つことが期待される68の個別支援ツールを抽出し、ICFに基づく支援ツールマップを開発した。きょうだいの課題は重度群と軽度群で異なることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201224005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在、障害福祉サービス体系が十分には整備されていないと考えられる2つの群である、重度知的障害者群(重度群)と軽度~境界域知的障害者群(軽度群)の地域生活移行に焦点を当てた。重度群に対しては、重度知的障害者入所施設における地域移行支援の困難要因を個人因子および環境因子の側面から明らかにした。軽度群に関しては、発達障害を併発する成人を対象に、支援プログラム、国際比較可能なツールである国際生活分類(ICF)を基にしたアセスメントおよび、ICFに基づく支援ツールマップを開発した。
臨床的観点からの成果
両群に対し地域移行のための福祉サービスを用いた介入を実施した。重度群の地域移行に関して、移行群、非移行群で個別評価を実施し困難要因を多面的に分析した結果、心身機能による有意な差ははく、家族に情報提供を十分にし、理解を得ることが肝要であることを明らかにした。軽度群に関して、開発した就労移行支援モデルを適用し介入を行った。対象者の就労移行支援利用期間は、開発前に支援を行った対象者と比較して3.5月短くなり、15ヶ月であった。また、地域の支援機関との連携による職場定着支援を行い、離職者は出なかった。
ガイドライン等の開発
重度群に対しては、同胞に調査を実施し、結果を基に「障害者の将来の生活」について情報提供するパンフレットを作成した。軽度群に対しては、就労移行支援の知見と分析を基に、発達障害を併発する対象者向けの就労移行支援プログラムを開発した。その一環として、就労を目指す発達障害者に対してICFに基づく調査を実施し、アセスメントを開発した。また、軽度知的障害を伴う発達障害者の就労に役立つ支援機器に関して、ICFに基づく支援ツールマップを開発した。
その他行政的観点からの成果
重度障害者の成人期のきょうだいへの支援方法は未確立であるが、本研究において情報提供の有効性が示されたことは、支援手法開発に向けた一助となると考えられる。
軽度群に関しては、発達障害を伴う成人の地域移行が、今後障害福祉サービスにおける課題になっていくことが予想されることから、本研究で開発した就労移行支援プログラム、ICFに基づくアセスメント及び支援ツールマップが今後、障害福祉サービス事業所等での支援手法のモデルとして活用されることが期待できる。
その他のインパクト
3年間の研究期間内で22件の学会発表(内国際学会1件)を行い、成果の普及に努めた。内1件は平成24年の発達障害学会で優秀賞を受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
21件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201224005Z