文献情報
文献番号
201215007A
報告書区分
総括
研究課題名
大腸癌におけるオキサリプラチンの末梢神経障害に対する漢方薬:牛車腎気丸の有用性に関する多施設共同二重盲検ランダム化比較検証試験(臨床第III相試験)
課題番号
H22-臨研推-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
掛地 吉弘(神戸大学大学院 食道胃腸外科)
研究分担者(所属機関)
- 前原 喜彦(九州大学 医学研究院)
- 大石 了三(九州大学病院 薬剤部 )
- 加藤 広行(獨協医科大学 消化器外科(第一外科))
- 桑野 博行(群馬大学大学院 消化器外科)
- 鴻江 俊治(田川市立病院 消化器外科)
- 河野 透(旭川医科大学大学院 消化器外科)
- 小寺 泰弘(名古屋大学大学院 消化器外科学)
- 小林 道也(高知大学医学部 消化器外科)
- 島田 光生(徳島大学大学院 消化器・移植外科)
- 猶本 良夫(川崎医科大学 総合外科学)
- 夏越 祥次(鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学)
- 馬場 秀夫(熊本大学大学院 消化器外科学)
- 藤井 雅志(日本大学医学部 消化器外科)
- 森 正樹(大阪大学大学院 消化器外科学)
- 吉田 和弘(岐阜大学大学院 腫瘍外科(消化器外科・乳腺外科))
- 竹内 正弘(北里大学 薬学部臨床医学(臨床統計学))
- 赤澤 宏平(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 情報科学・統計学分野)
- 山中 竹春(国立がん研究センター東病院・消化器外科)
- 森田 智視(横浜市立大学 統計学)
- 江見 泰徳(九州大学病院 消化器外科)
- 調 憲(九州大学大学院 消化器・総合外科)
- 森田 勝(九州大学大学院 消化器・総合外科)
- 坂口 善久(国立病院機構九州がんセンター 消化器外科)
- 池口 正英(鳥取大学医学部 消化器外科(病態腫瘍外科学))
- 室 圭(愛知県がんセンター中央病院 消化器外科(薬物療法部))
- 西巻 正(琉球大学大学院 消化器外科)
- 加藤 健志(関西労災病院 消化器外科(下部消化管外科))
- 永安 武(長崎大学大学院 消化器外科(腫瘍外科学))
- 緒方 裕(久留米大学医学部附属医療センター 消化器外科)
- 後藤 昌弘(大阪医科大学 消化器外科(化学療法センター))
- 冨田 尚裕(兵庫医科大学 消化器外科(下部消化管外科))
- 小島 宏(愛知県がんセンター愛知病院 消化器外科)
- 小坂 健夫(金沢医科大学 消化器外科)
- 古畑 智久(札幌医科大学 消化器外科)
- 滝口 伸浩(千葉県がんセンター消化器外科)
- 平川 弘聖(大阪市立大学大学院 消化器外科)
- 藤田 文彦(長崎大学大学院 消化器外科)
- 白水 和雄(久留米大学医学部 消化器外科)
- 前田 耕太郎(藤田保健衛生大学 消化器外科(下部消化管外科))
- その他(当研究班の分担者は59名。その他の分担者については研究報告書を参照。 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
61,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大腸癌は増加が著しい悪性腫瘍の一つであり、新しい抗がん剤の開発は、患者の生存期間の延長に貢献している半面、副作用で苦しめられている患者は著しく増加している。オキサリプラチンの末梢神経障害もその一つであり、世界中で問題となっており、この症状の克服は、がん患者のQOL向上にとって福音である。
1:オキサリプラチンを含む大腸癌標準化学療法における漢方製剤:牛車腎気丸の末梢神経障害軽減における有効性を検証する。
2:漢方製剤の有効性を、プラセボを用いることにより多施設共同二重盲検ランダム化比較試験で科学的・客観的に比較検証する。
1:オキサリプラチンを含む大腸癌標準化学療法における漢方製剤:牛車腎気丸の末梢神経障害軽減における有効性を検証する。
2:漢方製剤の有効性を、プラセボを用いることにより多施設共同二重盲検ランダム化比較試験で科学的・客観的に比較検証する。
研究方法
化学療法未施行のpSatgeIII大腸癌根治切除症例を対象として、mFOLFOX6+牛車腎気丸併用群155例とmFOLFOX6+プラセボ併用群155例、合計310例を目標症例数に設定し、二重盲検ランダム化比較検証臨床第III 相試験を実施する。主要評価項目をGrade2(CTCAE v4.0)以上の末梢神経障害の発現までの時間(TTN)、副次的評価項目をL-OHP を休薬および中止判断した症例割合、L-OHP dose intensity、末梢神経障害発生割合、末梢神経障害以外の有害事象発生割合とする。インターネットを利用したElectron Data Capture(EDC)システムを構築し、平成22年10月22日から症例登録が始まった。
結果と考察
平成24年3月31日現在、登録症例数は176例となっている。プロトコール計画どおり、有効性の中間解析に着手。中間解析の結果、委員会から1)症例登録の停止。2)継続例の現状治療継続。3)研究チームから統計解析責任者の中間解析への参加。4)追加解析の勧告があった。平成24年8月2日第2回効果安全性評価委員会を開催。このまま試験を継続しても、試験目的の牛車腎気丸実薬の末梢神経障害抑制効果を証明できる可能性は非常に低い(futillity = 0.0000)として、効果安全性評価委員会から「試験の無効中止」の勧告を受けた。研究グループとして試験中止と決定し、継続治療症例の試験薬治療を直ちに中止、結果の最終解析に進んだ(試験介入部分ではない術後補助化学療法については担当医の判断で継続)。実地医療への影響を鑑み、九州大学病院より「試験の無効中止」についてプレスリリースを行った。現在、最終解析を進行中である。本試験の結果から結腸癌術後補助化学療法時のオキサリプラチン末梢神経障害の予防的軽減効果は証明できなかった。オキサリプラチン末梢神経障害には、急性障害と蓄積性の慢性障害の2種類があるとされているが、今回の試験は蓄積性慢性障害の予防的抑制を目的としているが、牛車腎気丸の作用機序、抑制効果が急性障害と慢性障害において異なることが、実験的報告からも示唆され、このような違いが、臨床的実感と試験結果の乖離に繋がった可能性がある。また、今回の対象症例は、西洋医学的、臨床試験的な適格基準で選択された症例である。漢方薬の場合、「証」をもってその適応が判断されることが基本であるが、この点が、臨床試験の結果に影響を及ぼしたのかもしれない。
結論
結腸癌術後補助化学療法時の漢方薬:牛車腎気丸によるオキサリプラチン末梢神経障害の軽減効果は証明できなかった。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
-