社会保障と経済の相互関係に関する研究

文献情報

文献番号
200901001A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障と経済の相互関係に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
青木 玲子(一橋大学 経済研究所 世代間問題研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 池永 肇恵(一橋大学 経済研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,786,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.選挙で年金や医療が重要な理由に、有権者の年齢分布が考えられる。世代間問題を政治的にとらえ、年齢分布の非対称性を解消する選挙制度を検討する。

2.1980年代以降高・低スキルの増加と、中間的な業務の減少による労働市場の「業務の二極化」が観察されている。各職業のスキルを点数化して業務構成の長期的変化を分析し、背景の需要・供給の動向を推察する。
研究方法
1.『所得再分配調査』や『国勢調査』を使って、年齢分布と所得再分配を考察、現行選挙制度下とデーメニ投票法(未成年者も有権者で、親が変わりに投票)下の票の分布を計算する。

2.『キャリアマトリックス』を用い、「非定型分析業務」「非定型相互業務」「定型認識業務」「定型手仕事業務」「非定型手仕事業務」の5業務の割合を計算し、『国勢調査』、『賃金構造基本統計調査』、『就業構造基本調査』と『賃金構造基本統計調査』を使って、業務別評価と需要・供給の推移等を把握する。

結果と考察
1.①年齢層別再分配所得をみると、60歳以上の層の所得は、子供(のいる家庭)の所得よりも高い。
②現在の有権者の中位値は51歳であるが、次世代をになうが投票権のない20歳未満の人口は全体の37%である。②有権者の約24%は18歳未満の子供を持つ親で、43%が55歳以上(年金支給に強い関心をもつ層)である。
③デーメニ投票法下では、有権者の37%が親(と子供)で、35%が55歳以上になる。

2.①1960年以降、高・低スキルでの非定型業務の拡大がみられ、非定型業務のシェアが増加、定型業務のシェアが減少した。②日本の労働市場の二極化は長期的で、1990年代以降である合衆国と異なる。差の原因は1960年時点での両国の産業・職種構成の違いであるが、スキル評価の違いも関係している。③1970‐2000年の5業務をヘドニック賃金アプローチ推計で評価し、平均賃金に対して、定型認識業務は正の、定型手仕事業務は負の相関を示した。
結論
1.デーメニ投票法によって、二つの世代間のバランスがとれるようになり、次世代の利害が国政選挙に反映される。子供を持つ決断に必要な、政策の長期的な安定と展望が実現できる。

2. 1960年以降、ほぼ一貫して高スキル、低スキル両方の非定型業務の長期的拡大傾向が見られた。特に非定形、つまり柔軟性や対人対応を要する業務が半世紀に渡り拡大しているが、相互的および手仕事業務では価格が低落、分析的業務では価格が上昇傾向にあり、前者では供給の増大が、逆に分析業務では需要の増大が相対的に重要だった可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2010-09-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200901001B
報告書区分
総合
研究課題名
社会保障と経済の相互関係に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
青木 玲子(一橋大学 経済研究所 世代間問題研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 葉子(一橋大学 経済研究所)
  • 池永 肇恵(一橋大学 経済研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化の影響と政策の効果を理論とデータで分析する。特に地域差のデータを使うことにより、過去の政策をふくむ地域差がその後の出生率や労働市場にどのように影響しているかを都道府県時系列データを使って、解明する。また、少子化と高齢化によるサービスと財のニーズの多様化に対応できる政策の模索のために理論モデルの発展モデルを構築する。消費財の質と労働スキルの多様性の影響も理論と実証で把握する
研究方法
1.データを使って、現状を把握して分析する。2.理論モデルを構築し、データにより検証する。
結果と考察
1.品質差別のある消費財とスキルの差がある労働を前提とする理論モデルにより、以下を示した。①就業率と出生率が正の関係になりうる②消費と出生率が負の関係にある③技術が未成熟な経済では、Easterlin Hypotheis (出生率低下により賃金が上昇すると)が成立する。
2.1980‐2000年の都道府県別時系列データを使って、理論モデルの示唆①と②を検証した。消費財と労働スキルが異なることが地域差の説明に不可欠であることもわかった。
3.労働市場の二極化の長期的推移を検証した。定型的か非定型的か等の5業務に分類し、1960‐2005年では、非定型業務のシェアがほぼ一貫して増加し、定型業務のシェアがほぼ一貫して減少するなど、高・低スキル両方での非定型業務の拡大がみられた。
4.1970‐2000年では、各業務に対する需要と供給の動向を推察すると、非定型分析業務・定型手仕事業務で需要の増減がやや支配的で、非定型相互業務・手仕事業務および定型認識業務では供給の増減がやや支配的であった。
5.子供のいる家庭への資源が移転されない政治的な理由として有権者の年齢分布がある。そこで、次世代が選挙で反映するような制度を提案して国政調査のデータで試算すると、親の票の割合が37%に増加して、55歳以上の票が全体の35%になる。次世代への資源の移動が起こりやすくなると推測できる。
結論
1.地域分析における出生率と女性の労働力化率の正の相関が観察されるメカニズムを明らかにした。さらに、上述のクオリティコントロールをすることで、地域分析においても出生率と女性の労働力化率に経済理論と整合的な関係が見られることが示された。
2.今後は少子化と人口構造の変化が消費と労働形態に及ぼす影響を考慮した理論分析と実証分析を行う必要がある
3.非定型手仕事業務増加の背景には高齢化の進展、世帯規模の縮小という人口動態上の変化や高スキル就業者の増加があることが示唆された。
4.政治経済的アプローチが政策の実現には重要である。

公開日・更新日

公開日
2010-09-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901001C