がん予防に資する未成年等における包括的たばこ対策に関する研究

文献情報

文献番号
200824027A
報告書区分
総括
研究課題名
がん予防に資する未成年等における包括的たばこ対策に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
原 めぐみ(佐賀大学 医学部社会医学講座予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 正平(国立成育医療センター研究所成育医療政策科学研究室)
  • 兼板 佳孝(日本大学医学部  公衆衛生学部門)
  • 加治 正行(静岡市保健福祉子ども局保健衛生部)
  • 井埜 利博(群馬パース大学保健科学部看護学科)
  • 矢野 公一(札幌市衛生研究所)
  • 稲垣 幸司(愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院)
  • 松本 明子(佐賀大学医学部社会医学講座環境医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,127,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法と同附帯決議、及びたばこ規制枠組条約に準じ、特に未成年者及び妊産婦等におけるたばこ対策に係る諸課題の把握と地域レベルでのたばこ対策を一層推進させることを目的とする。
研究方法
バイオマーカーを用いた受動喫煙の実態調査・分析:小児や乳幼児、妊産婦の尿中代謝産物をELISAやGC-MSを用いて測定した。既存データ分析:21世紀出生児縦断調査と人口動態調査出生票の集計データ、および妊娠届時の妊婦の喫煙・飲酒状況の調査と出生児の週数および体重のデータを分析した。禁煙支援方策の検討強化と普及:未成年者の禁煙支援・治療に関するガイドライン作成のための作業を進めた。また、研究班と既存の事業との連携体制を構築し、効率的・効果的な受動喫煙曝露の実態把握、及び受動喫煙対策の普及啓発を模索した。
結果と考察
国内で受動喫煙の把握に使用されているELISA法の測定キットの妥当性がGC-MSによるたばこ煙暴露の詳細な検討により確認された。受動喫煙の影響がない場合のコチニンの暫定基準値は唾液で0.5ng/mL以下、乾燥濾紙尿で5ng/mgCre以下が妥当と考えられ、受動喫煙状況の実態を調査したところ幼小児、学生、妊産婦の2、3割が受動喫煙の被害を受けていると推定された。小児の受動喫煙の暴露の程度と関連する要因は、両親の喫煙(母親の方が影響大)、喫煙本数、目の前での喫煙、戸外、換気扇の下、寝室、台所、居間での喫煙などであった。また、自治体での母子保健事業と連携し、効率的に受動喫煙対策のための曝露評価を実施できた。既存データの分析により、両親の喫煙行動と児の疾患や事故発生が密接に関連していること、喫煙妊婦は低出生体重、早産のリスクが高い事、家庭での受動喫煙や妊娠中の飲酒があると妊娠を機に禁煙しにくいことが確認された。未成年者、妊産婦への禁煙治療・禁煙支援に関する4018編の論文の中から主要文献124編を選択し、構造化抄訳集を作成し総合的なまとめを行った。
結論
未成年者や妊産婦の受動喫煙曝露の影響が客観的に示された。これらの事実を喫煙者に知らせ、家庭や自家用車の環境を禁煙とするための教育の実施や、母子保健手帳交付時や健診、乳児訪問などの機会を利用した喫煙・受動喫煙状況の把握と情報提供、および妊産婦とその家族の禁煙支援への連携の確立、小児科、産科医療機関での情報提供や禁煙支援の実施、未成年喫煙者を禁煙治療や支援に結び付けるための、教育現場、保健行政、医療機関における連携の構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200824027B
報告書区分
総合
研究課題名
がん予防に資する未成年等における包括的たばこ対策に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・若手-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
原 めぐみ(佐賀大学 医学部社会医学講座予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 正平(国立成育医療センター研究所成育医療政策科学研究室)
  • 兼板 佳孝(日本大学医学部  公衆衛生学部門  公衆衛生学)
  • 加治 正行(静岡市保健福祉子ども局保健衛生部)
  • 井埜 利博(群馬パース大学保健科学部看護学科)
  • 矢野 公一(札幌市衛生研究所)
  • 稲垣 幸司(愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院 疫学部)
  • 松本 明子(佐賀大学医学部社会医学講座環境医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策基本法と同附帯決議、及びたばこ規制枠組条約に準じ、特に未成年者及び妊産婦等におけるたばこ対策に係る諸課題の把握と地域レベルでのたばこ対策を一層推進させることを目的とする。
研究方法
たばこ対策の実態調査として地方自治体の母子保健領域での実施状況の全国調査、バイオマーカーを用いた受動喫煙の実態調査として小児や乳幼児、妊産婦の尿中代謝産物のELISAやGC-MSを用いた測定、既存データ分析として21世紀出生児縦断調査データ、日本医師会会員の調査データ、妊娠届時の妊婦の喫煙・飲酒状況の調査と出生児の週数と体重のデータの分析、禁煙支援方策の検討強化と普及として未成年者等の禁煙支援・治療に関するガイドライン作成のための作業、既存事業との連携による効率的・効果的な受動喫煙曝露の実態把握と対策の普及啓発、禁煙支援を行った。
結果と考察
3割の自治体では妊産婦の禁煙支援が体系的・具体的でなく、母子保健計画に喫煙・受動喫煙関連項目のある自治体が2割に満たなかった。受動喫煙把握に使用するELISA測定キットの妥当性がGC-MSによる詳細な検討で確認され、受動喫煙の影響がない場合のコチニンの暫定基準値は唾液で0.5ng/mL以下、乾燥濾紙尿で5ng/mgCre以下が妥当と考えられた。幼小児、学生、妊産婦の2、3割が受動喫煙の被害を受けていると推定され、暴露の程度は両親の喫煙(特に母親)、本数、場所などと関連していた。既存データ分析により、両親の喫煙行動と児の疾患や事故発生が密接に関連していること、喫煙する医師は患者の喫煙を容認する傾向にあり、喫煙に関する問診や禁煙指導に消極的で、施設のたばこ対策も消極的姿勢であること、喫煙する妊婦は低出生体重、早産のリスクが高く、家庭での受動喫煙や妊娠中の飲酒があると妊娠を機に禁煙しにくいことが確認された。未成年者、妊産婦への禁煙治療・禁煙支援に関する4018編の論文から主要文献124編を選択し、構造化抄訳集と総合的まとめを作成した。卒煙外来治療費補助モデル事業では受診者は一人しか現れなかった。
結論
未成年者や妊産婦の受動喫煙曝露の影響や対策の状況などが示された。家庭や自家用車の環境を禁煙とするための教育、母子保健手帳交付時や健診、乳児訪問などの機会を利用した喫煙・受動喫煙状況の把握と情報提供、禁煙支援への連携の確立、小児科、産科医療機関での情報提供や禁煙支援の実施、未成年喫煙者を禁煙に結び付けるため教育現場、保健行政、医療機関の連携が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200824027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内で受動喫煙の把握に使用されているELISA法の測定キットの妥当性がGC-MSによるたばこ煙暴露の詳細な検討により確認された。受動喫煙の影響がない場合のコチニンの暫定基準値は唾液で0.5ng/mL以下、乾燥濾紙尿で5ng/mgCre以下が妥当と考えられた。未成年者や妊産婦のたばこ対策は緊急の課題であるが、これまでバイオマーカーを用いた受動喫煙状況の実態調査は十分になされていなかったが、本研究により幼小児、学生、妊産婦の2、3割が受動喫煙の被害を受けていると推定された。
臨床的観点からの成果
わが国では未成年者や妊産婦の禁煙治療に関してはガイドラインなどが存在しないため、未成年者、妊産婦への禁煙治療・禁煙支援に関する主要文献を選択し、構造化抄訳集を作成し、ガイドライン作成のための作業をすすめつつ、諸外国でのニコチンパッチの使用条件を調査したところ、主な先進国では、ほとんどが18歳以上で問題なくニコチンパッチ使用が認められており、フランスでは15歳以上からニコチンパッチが許可されていた。また13から17歳でも、使用中止に至るような有害事象は報告されていないことが確認された。
ガイドライン等の開発
喫煙の疫学関連情報、禁煙治療関連、未成年、妊産婦、胎児、周産期をキーワードとして、MedlineおよびCochrane Centralデータベースより1995年から2007年の論文3308件、医学中央雑誌より1991年から2007年の論文710件を検索し、合計4018件の医学論文から124件の論文を選択した。これらに関して構造化抄録および総論的なまとめを作成し、わが国の未成年喫煙者、妊産婦喫煙者に対する禁煙治療・禁煙支援のガイドライン作成の基礎資料とした。
その他行政的観点からの成果
地方自治体の母子保健領域におけるたばこ対策の実施状況に関する全国調査は行政的資料として価値のある成果が得られ、母子保健領域のたばこ対策は全国で充分にできていない可能性が示唆された。また、厚生労働省が実施した第1回から第5回の21世紀出生児縦断調査および人口動態調査出生票の集計データ分析も行政的資料として価値があり、10代、20代の両親の喫煙率は極めて高く、両親の喫煙行動と児の疾患および事故発生が密接に関連していたことが確認された。
その他のインパクト
平成20年度日本小児科学会総会の関連集会として「子どもの防煙合同研究集会」を開催し、本研究班の成果を発表し、小児科医へ本研究課題の重要性や必要な対策などについて啓発普及ができた。

発表件数

原著論文(和文)
23件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
井埜利博、 渋谷友幸、 斉藤洪太、 他
小児の生活習慣および脂質代謝と受動喫煙の関連性に関する横断的研究
心臓 , 40 , 124-131  (2008)
原著論文2
矢野公一、 福士勝、 花井潤師、 他
乳幼児・妊婦のタバコ曝露の実態
北海道小児保健研究会誌 , 19-23  (2008)
原著論文3
稲垣幸司、 林潤一郎、 丁群展、 他
日本と台湾の歯学部学生の喫煙状況と社会的ニコチン依存度
禁煙会誌 , 3 (5) , 81-85  (2008)
原著論文4
竹内あゆ美、 稲垣幸司、 大河内ひろみ、 他
歯科衛生士の社会的ニコチン依存度と禁煙教育の効果
日歯周誌 , 50 (3) , 185-192  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-