医療における安全・質確保のための必要資源の研究:「品質原価」と「持続可能性のための原価」の測定と分析

文献情報

文献番号
200601002A
報告書区分
総括
研究課題名
医療における安全・質確保のための必要資源の研究:「品質原価」と「持続可能性のための原価」の測定と分析
課題番号
H16-政策-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石崎 達郎(京都大学 医学研究科 )
  • 関本 美穂(京都大学 医学研究科 )
  • 林田 賢史(京都大学 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療の安全・質保証に必要な病院の活動・システムの原価を測定し、その関連要因を分析することである。また、質・安全の上で重要な組織文化、および診療活動内容を可視化する。これらにより持続的に医療の質・安全を確保向上できる制度・政策に資することを目指す。
研究方法
臨床研修病院単独・管理型全1,039施設を対象に、安全管理・感染制御について、組織体制、内部評価、研修、インシデント報告作成、院内感染サーベイランス、医薬品・機器管理、廃棄物処理、患者の立場を重視した活動等を調査範囲として質問票調査を行った。別途調査で説明と同意、記録・書類作成に要する近年の増分原価を推計し、安全確保に重要な組織文化の測定を行い、診療活動の指標化については、診療録・診療情報、診断群分類情報、診療報酬のデータにより解析を行った。
結果と考察
【結果】 医療安全のためのコストは、417施設(回答率40.1%)の回答の内、早期回答の399施設を解析した。1年100床当りの対象範囲内原価は、約2~4千万円、1患者1日当たり約700~1,300円に相当した。特定機能病院群にてより多くの資源が投入されており、東北・中国地方はの投入量は低い傾向が観察された。説明と同意のコストについては、7年間増分で100床規模あたり増分原価の平均は各々約3千万円程度と推測された。
安全確保の上で重要な組織文化の指標化では、その信頼性、妥当性が確認され、施設、部署、職種等の特徴を可視化できた。また、診療活動の指標化では、特に外科領域や抗生剤使用について臨床側からもその効用に前向きの評価を得ることができた。
【考察】 これらのコスト増は、医療従事者の多くの負担増大によって支えられてきたといっても過言ではないであろう。ただし、結果の解釈にあたり、必ずしも全ての医療安全活動を網羅しない点を認識することが重要で、また、欠損回答を暫定的に無実施として扱っており本推計値は過小評価となっていると考えられる。
結論
本調査対象領域に限った医療の安全・質確保の取り組みにかかる近年のコスト増は莫大であることを数量的に示した。説明と同意、記録・書類作成についても同様のコスト増がみられた。また、安全確保の上で重要な組織文化の指標化、質・安全の確保の上で重要な診療活動の指標化についても実例をもって成果を上げることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200601002B
報告書区分
総合
研究課題名
医療における安全・質確保のための必要資源の研究:「品質原価」と「持続可能性のための原価」の測定と分析
課題番号
H16-政策-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石崎達郎(京都大学 医学研究科 )
  • 関本美穂(京都大学 医学研究科 )
  • 林田賢史(京都大学 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医療の安全・質保証のための病院の活動・システムの原価の測定と、診療活動や組織文化の可視化を含む関連要因の分析を目的とし、持続的に医療の質・安全を確保向上できる制度・政策に資することを目指す。
研究方法
安全管理・感染制御について、組織体制、内部評価、研修、インシデント報告、院内感染サーベイランス、医薬品・機器管理、廃棄物処理、患者の立場を重視した活動等を調査範囲として、初年度に原価調査を設計し、二年度に8病院で綿密なヒアリングと構造化したデータ収集を基に増分原価を推計し、三年度に臨床研修病院単独・管理型全1,039施設を対象に質問票調査を行った。別途調査で説明と同意、記録・書類作成に要する近年の増分原価を推計し、安全確保に重要な組織文化の測定を行った。診療活動については、初年度より診療情報、診断群分類情報、診療報酬のデータにより指標化・解析を行った。
結果と考察
【結果】 医療安全のためのコストは、417施設(回答率40.1%)の回答の内、早期回答の399施設を解析した。1年100床当りの対象範囲内原価は、約2~4千万円、1患者1日当たり約700~1,300円に相当した。資源投入量は、特定機能病院群にてより多い傾向、東北・中国地方はより低い傾向がみられた。説明・同意と記録・書類作成のコストは7年間増分で100床規模あたり各々平均約3千万円程度と推測された。
安全確保に重要な組織文化の指標化では、その信頼性、妥当性が確認され、施設、部署、職種等の特徴を可視化できた。また、診療活動の指標化・可視化には特に外科領域や抗生剤使用について臨床側からその有効利用に積極的な評価が得られた。
【考察】 これらのコスト増は医療者の負担増により支えられてきたといっても過言ではあるまい。しかも、結果の解釈にあたり、必ずしも全ての医療安全活動を網羅しない点を認識することが重要で、また、欠損回答は暫定的に無実施として扱われ、本推計値は実態より小さい評価値であることに留意すべきである。
結論
医療の安全・質確保の取り組みにかかる近年のコスト増は本調査対象領域に限っても莫大であることを数量で具体的に示した。説明と同意および記録・書類作成にも同様のコスト増を示した。また、安全確保に重要な組織文化ならびに診療活動の可視化についても実用可能な形で成果を上げることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200601002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療の安全確保に必要な活動やシステムは世界各国で開発されているが、医療安全活動に必要とされる資源量を推定した研究はまだ報告されていない。本研究は、安全確保の必要資源を推定するためのフレームワークを開発すると共に、安全システムの維持運営に要するコストを、活動内容および構築方法の内訳ごとに詳細に推定した世界に類をみない実証研究である。当推定値と施設構造的特性との関連性を明らかにすることで、安全システム構築の促進に資する知見が期待され、今後の専門的・学術的発展のポテンシャルが極めて大きい研究である。
臨床的観点からの成果
本研究では多施設を対象に調査を実施し、安全システム構築のための必要とされる医療従事者による労働力の投入状況を捉えると同時に、職員の安全文化の測定や診療活動の指標化を行い、質と安全に関する臨床活動の多様性や施設間のバラツキを明らかにした。当該成果を調査協力施設へフィードバックすることで、自施設および医療従事者の質と安全に係る臨床活動の改善に貢献可能な成果を上げることができた。本研究成果を医療現場に提示することで、臨床活動における質と安全の確保・向上の一助として活用できる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
平成18年度および平成19年度に開催された診療報酬調査専門組織および中医協基本問題小委員会で研究成果が報告され、行政施策に検討された。
その他のインパクト
Japan Medicine、社会保険旬報、MEDIFAX

県行政、県レベルの協会・団体で主催されるシンポジウム等で発表

毎日新聞(2009年4月8日)などマスコミで取り上げられた。安全対策に具体的に費用がかかるということで取り上げられたが、それらがさらに他の多くのマスコミに引用された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
25件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuda H, Imanaka Y, Hayashida K.
Cost of hospital-wide activities to improve patient safety and infection control: a multi-centre study in Japan
Health Policy , 87 (1) , 100-111  (2008)
原著論文2
Sekimoto M, Imanaka Y, Kobayashi H,et al.
Impact of hospital accreditation on infection control programs in teaching hospitals in Japan.
American Journal of Infection Control , 36 (3) , 212-219  (2008)
原著論文3
Ishizaki T, Imanaka Y, Sekimoto M,et al.
Comparisons of risk-adjusted clinical outcomes for patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage across eight teaching hospitals in Japan.
Journal of Evaluation in Clinical Practice , 14 (3) , 416-421  (2008)
原著論文4
Hayashida K, Imanaka Y, Fukuda H.
Measuring hospital-wide activity volume for patient safety and infection control: a multi-centre study in Japan.
BMC Health Services Research , 7 (1) , 140-140  (2007)
原著論文5
Hayashida K, Imanaka Y, Sekimoto M, et al.
Evaluation of acute myocardial infarction in-hospital mortality by risk adjustment based on Japanese administrative data.
The Journal of International Medical Research , 35 (5) , 590-596  (2007)
原著論文6
Hirose M, Regenbogen SE, Lipsitz S, et al.
Lagtime in incident reporting system at a university hospital in Japan.
Quality and Safety in Health Care , 16 , 101-104  (2007)
原著論文7
Evans E, Imanaka Y, Sekimoto M,et al.
Risk adjusted resource utilization for AMI patients treated in Japanese hospitals.
Health Economics , 16 (4) , 347-359  (2007)
原著論文8
Sekimoto M, Imanaka Y, Kitano N,et al.
Why are physicians not persuaded by scientific evidence? A grounded theory interview study.
BMC Health Services Research , 6 , 92-92  (2006)
原著論文9
Sekimoto M, Imanaka Y, Hirose M,et al.
Impact of treatment policies on patient outcomes and resource utilization in acute cholecystitis in Japanese hospitals.
BMC Health Services Research , 6 , 40-40  (2006)
原著論文10
Kuwabara K, Imanaka Y, Ishizaki T.
Quality and productive efficiency in simple laceration treatment.
Journal of Evaluation in Clinical Practice , 12 (2) , 164-173  (2006)
原著論文11
福田治久,今中雄一.
感染制御に係るコストとコスト計算の質の評価.
病院管理 , 44 (2) , 67-75  (2007)
原著論文12
小林寛伊,大久保憲,木津純子,他
臨床研修指定病院における病院感染制御の取り組みの実態調査.
環境感染 , 21 (3) , 200-208  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-