文献情報
文献番号
201408006A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脳梗塞治療加速のための薬物超音波併用次世代普及型低侵襲システムの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井口 保之(東京慈恵会医科大学 内科学講座神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 峰松 一夫(国立循環器病研究センター 病院)
- 山本 晴子(国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター)
- 古賀 政利(国立循環器病研究センター 病院脳卒中集中治療科)
- 小川 武希(東京慈恵会医科大学 救急医学部)
- 横山 昌幸(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究部)
- 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学 神経病理学講座)
- 三村 秀毅(東京慈恵会医科大学 内科学講座神経内科)
- 丸山 一雄(帝京大学 薬学部)
- 幸 敏志(田辺三菱製薬株式会社 研究本部)
- 川島 裕幸(株式会社カネカ 開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
27,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
超急性期脳梗塞に対して強く勧められる治療法として広く行われているのがrt-PA静注療法である。この療法により、予後は一定の改善を示すが、さらに高い改善効果が強く望まれている。このrt-PAの血栓溶解作用をさらに高める方法の一つが、超音波血栓溶解促進療法である。この療法は、超音波照射によって,主にrt-PA分子のフィブリン網目への浸透が促進することで血栓溶解を促進する。この療法において最重要なことは、有効で安全な超音波照射である。当然、その浸透促進作用は超音波強度が大きければその作用は強くなるが、強い超音波照射による生体への障害が懸念されることとなる。
これまでに、超音波血栓溶解促進療法の臨床試験は数件実施されたが、未だ認可に到った例は無い。本研究はこのrt-PA静注療法の有効性と安全性を飛躍的に高めるための新規超音波照射併用療法を開発する。この開発は、中周波数超音波照射、定在波抑制、貼付型超音波振動子、バブルリポソームの技術を組み合わせることで、より効果が高く安全な線溶療法を確立する。さらに、臨床のヒストリカルデータを精密に収集・解析することで、より少人数・短期間の臨床試験を可能とする。平成26年度は、ラットを用いた超音波照射安全性評価、ヒト頭蓋骨超音波透過率測定、変調による超音波透過率変動の抑制に重点を置いて研究を行った。
これまでに、超音波血栓溶解促進療法の臨床試験は数件実施されたが、未だ認可に到った例は無い。本研究はこのrt-PA静注療法の有効性と安全性を飛躍的に高めるための新規超音波照射併用療法を開発する。この開発は、中周波数超音波照射、定在波抑制、貼付型超音波振動子、バブルリポソームの技術を組み合わせることで、より効果が高く安全な線溶療法を確立する。さらに、臨床のヒストリカルデータを精密に収集・解析することで、より少人数・短期間の臨床試験を可能とする。平成26年度は、ラットを用いた超音波照射安全性評価、ヒト頭蓋骨超音波透過率測定、変調による超音波透過率変動の抑制に重点を置いて研究を行った。
研究方法
1,超音波の効果と安全性評価
ラット中脳大動脈塞栓モデルを9.4T動物用MRI装置によって、塞栓状態を観察して、一定時間塞栓した後に再開通を施す。このモデルを後述の超音波照射安全性評価に用いた。超音波の頭蓋骨透過性はAIMS装置で超音波振動子とハイドロフォンを移動させて測定した。
2,貼付型超音波振動子開発
これまでに作製した超音波振動子を用いて、ブタ全血での血栓溶解促進作用をin vitroで計測した。血栓をキュベット中でrt-PA添加、超音波照射をしてから、残った血栓を溶解させて吸光度によって量を測定した。
3,臨床研究プロトコル
ヒストリカルデータ解析は、国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を受けた。解析対象は 2005 年 10 月から 2013 年 4 月までにrt-PA静注療法を施行した 384 例である。前向きに収集したデータベースを用いて,後ろ向きに検討した。
4,バブルリポソームによる更なる血栓溶解促進
DiO標識RGD-バブルリポソームの凍結乾燥製剤を復水処理後、HUVEC細胞との結合性を、4℃、15分間接触させてフローサイトメトリーで評価した。また、復水後の粒子径とパーフルオロプロパン(C3F8)ガスの含有量をそれぞれ、動的光散乱装置とガスクロマトグラフで測定した。
ラット中脳大動脈塞栓モデルを9.4T動物用MRI装置によって、塞栓状態を観察して、一定時間塞栓した後に再開通を施す。このモデルを後述の超音波照射安全性評価に用いた。超音波の頭蓋骨透過性はAIMS装置で超音波振動子とハイドロフォンを移動させて測定した。
2,貼付型超音波振動子開発
これまでに作製した超音波振動子を用いて、ブタ全血での血栓溶解促進作用をin vitroで計測した。血栓をキュベット中でrt-PA添加、超音波照射をしてから、残った血栓を溶解させて吸光度によって量を測定した。
3,臨床研究プロトコル
ヒストリカルデータ解析は、国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を受けた。解析対象は 2005 年 10 月から 2013 年 4 月までにrt-PA静注療法を施行した 384 例である。前向きに収集したデータベースを用いて,後ろ向きに検討した。
4,バブルリポソームによる更なる血栓溶解促進
DiO標識RGD-バブルリポソームの凍結乾燥製剤を復水処理後、HUVEC細胞との結合性を、4℃、15分間接触させてフローサイトメトリーで評価した。また、復水後の粒子径とパーフルオロプロパン(C3F8)ガスの含有量をそれぞれ、動的光散乱装置とガスクロマトグラフで測定した。
結果と考察
1,超音波の効果と安全性評価
従来は一つの脳梗塞モデルとされてきたラット中大脳動脈塞栓法が、完全塞栓と不完全塞栓の場合に分けられることが、9.4T MRI測定により明らかとなった。
超音波頭蓋骨透過率測定においては、前年度に実証した骨ファントムプレートと同様にヒト頭蓋骨の場合にも、超音波透過率に大きな変動があることを明らかにし、その変動が超音波変調により抑制できることを実証した。
2,貼付型超音波振動子
インピーダンスマッチング法を用いることで、必要な発信性能の振動子を得ることができた。作製した超音波照射システムを用いてin vitroにて0.5 W / cm2超音波照射群において有意な血栓溶解加速効果を確認した。またin vivoでのラットを用いた超音波照射安全性評価法を確立し、最大強度2.8 W/cm2照射まで、著明な障害性を観察しなかった。
3,臨床研究プロトコル
急性期虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法を施行した384例のヒストリカルデータについて、早期再開通率,症候性頭蓋内出血発生率と3ヵ月後転帰等を解析した。このデータに基づいて、治験プロトコル案を作製した。この案に基づいて新規超音波血栓溶解装置の臨床治験が計画される予定である。
4,バブルリポソームによる更なる血栓溶解促進
目的とした血栓に対する特異リガンドを結合したバブルリポソームが作製されて、凍結乾燥も施された。凍結乾燥しても含有C3F8ガス量、粒径共に変化せずに安定であることが判明した。
従来は一つの脳梗塞モデルとされてきたラット中大脳動脈塞栓法が、完全塞栓と不完全塞栓の場合に分けられることが、9.4T MRI測定により明らかとなった。
超音波頭蓋骨透過率測定においては、前年度に実証した骨ファントムプレートと同様にヒト頭蓋骨の場合にも、超音波透過率に大きな変動があることを明らかにし、その変動が超音波変調により抑制できることを実証した。
2,貼付型超音波振動子
インピーダンスマッチング法を用いることで、必要な発信性能の振動子を得ることができた。作製した超音波照射システムを用いてin vitroにて0.5 W / cm2超音波照射群において有意な血栓溶解加速効果を確認した。またin vivoでのラットを用いた超音波照射安全性評価法を確立し、最大強度2.8 W/cm2照射まで、著明な障害性を観察しなかった。
3,臨床研究プロトコル
急性期虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法を施行した384例のヒストリカルデータについて、早期再開通率,症候性頭蓋内出血発生率と3ヵ月後転帰等を解析した。このデータに基づいて、治験プロトコル案を作製した。この案に基づいて新規超音波血栓溶解装置の臨床治験が計画される予定である。
4,バブルリポソームによる更なる血栓溶解促進
目的とした血栓に対する特異リガンドを結合したバブルリポソームが作製されて、凍結乾燥も施された。凍結乾燥しても含有C3F8ガス量、粒径共に変化せずに安定であることが判明した。
結論
臨床試験を開始するための技術的・臨床的な基盤を確立することを目指した平成26年度はほぼ計画通りに研究が進行した。今後はこの確立した基盤に沿って臨床試験開始に向かって進んでゆく。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
-