文献情報
文献番号
201408003A
報告書区分
総括
研究課題名
カーボンナノチューブとPEEK材を複合する技術を活用した脊椎手術のための高機能インプラントの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 直人(国立大学法人信州大学 バイオメディカル研究所)
研究分担者(所属機関)
- 加藤 博之(国立大学法人信州大学 医学部)
- 高橋 淳(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 薄井 雄企(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 羽二生 久夫(国立大学法人信州大学 バイオメディカル研究所)
- 伊東 清志 (国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 青木 薫(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 高梨 誠司(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 岡本 正則(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 小林 伸輔(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 野村 博紀(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 田中 学(国立大学法人信州大学 医学部附属病院)
- 森山 茂章(福岡大学 工学部)
- 西村 直之(ナカシマメディカル株式会社 製造部)
- 湯谷 知世(ナカシマメディカル株式会社 開発部)
- 赤木 雅道(ナカシマメディカル株式会社 開発部)
- 奥山 真紀子(ナカシマメディカル株式会社 開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究目的
我が国の脊椎疾患を有する患者数は、高齢化の影響を受けて急速に増加しており、いわば国民的疾患の様相を呈している。多くの脊椎手術で行われる脊椎固定では、脊椎椎体スペーサーが用いられる。しかし、以前より脊椎椎体スペーサーに使用されているチタン金属は、骨に比べて硬すぎるために母床の脊椎椎体が圧潰することがある。これにより、複数回手術が必要になる、機能障害が発生するなどの問題が多数生じている。このため近年は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材が頻用されるようになった。PEEKを脊椎椎体スペーサーに使用すると、金属材料に比して弾性率が低いため、椎体が圧潰することが少ない。しかしPEEKは骨親和性が低いため、骨移植を併用した場合でも骨癒合しにくく、不安定性が生じるという大きな欠点がある。このように、現在の脊椎椎体スペーサーによる脊椎固定には多くの問題があるが、今後も脊椎手術が増加し続けることは確実である。このような状況において、日本で発見されたカーボンナノチューブ(CNT)はナノテクノロジー材料の代表であり、近年急速に生体材料への応用研究が活発になっている。本研究では、独自に開発したCNT複合技術をシーズとしてPEEK材に適用し、新しいCNTとPEEKの複合材料(CNT/PEEK)を開発する。目的とする製品は、強度が高いが弾性率が骨に近似し、骨親和性の高い理想的なCNT/PEEK脊椎椎体スペーサーである。この開発に成功すれば、手術を必要とする多くの重症脊椎患者に有用な、日本発の革新的医療機器になることが期待できる。
我が国の脊椎疾患を有する患者数は、高齢化の影響を受けて急速に増加しており、いわば国民的疾患の様相を呈している。多くの脊椎手術で行われる脊椎固定では、脊椎椎体スペーサーが用いられる。しかし、以前より脊椎椎体スペーサーに使用されているチタン金属は、骨に比べて硬すぎるために母床の脊椎椎体が圧潰することがある。これにより、複数回手術が必要になる、機能障害が発生するなどの問題が多数生じている。このため近年は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材が頻用されるようになった。PEEKを脊椎椎体スペーサーに使用すると、金属材料に比して弾性率が低いため、椎体が圧潰することが少ない。しかしPEEKは骨親和性が低いため、骨移植を併用した場合でも骨癒合しにくく、不安定性が生じるという大きな欠点がある。このように、現在の脊椎椎体スペーサーによる脊椎固定には多くの問題があるが、今後も脊椎手術が増加し続けることは確実である。このような状況において、日本で発見されたカーボンナノチューブ(CNT)はナノテクノロジー材料の代表であり、近年急速に生体材料への応用研究が活発になっている。本研究では、独自に開発したCNT複合技術をシーズとしてPEEK材に適用し、新しいCNTとPEEKの複合材料(CNT/PEEK)を開発する。目的とする製品は、強度が高いが弾性率が骨に近似し、骨親和性の高い理想的なCNT/PEEK脊椎椎体スペーサーである。この開発に成功すれば、手術を必要とする多くの重症脊椎患者に有用な、日本発の革新的医療機器になることが期待できる。
研究方法
1. CNT/PEEK材料開発
素材設計、生体親和性構造設計、試験片製造、機械的特性評価を平成25年度に引き続いて実施した。本年度は特に3の実験のために、多数の試験片を製造した。
2. インプラントのデザイン設計技術開発
平成25年度に引き続いて有限要素シミュレーションを実施してインプラント設計にフィードバックし、最適な形状デザインの設計技術を開発した。
3. CNT/PEEKの生体安全性評価、骨親和性評価
平成25年度に引き続いてCNT/PEEK試験片の皮下埋込みで、長期試験の組織評価を行った。また、遺伝子改変発癌性マウスのCNT皮下埋込み試験において組織評価を行った。本年度は特に、表面性状を改良したCNT/PEEK試験片の骨埋込みによりPush-out試験を実施した。さらに、CNT/PEEK試験片を用いたin vitroのCa、HA析出評価、骨芽細胞接着性、骨芽細胞分化マーカー定量等の試験を実施した。
4. 安全性試験
外部GLP試験対応機関において、骨内埋植試験4週、骨内埋植試験12週、⑨亜急性毒性試験の結果を得た。
素材設計、生体親和性構造設計、試験片製造、機械的特性評価を平成25年度に引き続いて実施した。本年度は特に3の実験のために、多数の試験片を製造した。
2. インプラントのデザイン設計技術開発
平成25年度に引き続いて有限要素シミュレーションを実施してインプラント設計にフィードバックし、最適な形状デザインの設計技術を開発した。
3. CNT/PEEKの生体安全性評価、骨親和性評価
平成25年度に引き続いてCNT/PEEK試験片の皮下埋込みで、長期試験の組織評価を行った。また、遺伝子改変発癌性マウスのCNT皮下埋込み試験において組織評価を行った。本年度は特に、表面性状を改良したCNT/PEEK試験片の骨埋込みによりPush-out試験を実施した。さらに、CNT/PEEK試験片を用いたin vitroのCa、HA析出評価、骨芽細胞接着性、骨芽細胞分化マーカー定量等の試験を実施した。
4. 安全性試験
外部GLP試験対応機関において、骨内埋植試験4週、骨内埋植試験12週、⑨亜急性毒性試験の結果を得た。
結果と考察
CNT/PEEK材料開発研究として、素材設計・機械的特性評価で骨に近い弾性率達成の目途をつけ、更に他の材料を添加した場合に比較して、結晶成長速度が大幅に向上することが明らかになった。生体親和性構造設計は、骨親和性評価のために多くの試験片を製造した。インプラントデザイン設計技術開発は、有限要素シミュレーションによる構造解析を実施して、力学的に最適なインプラントの材料とデザインの設計が可能になった。さらに、CNT/PEEK試験片の皮下埋込みで、長期試験の組織評価を行った。また、CNT/PEEK試験片の表面性状を改良して、骨埋込み試験及び骨親和性に特化したin vitroの試験を実施したが、十分な向上が認められなかった。安全性試験では、GLP規格に基づいた全ての試験を完了し、問題は認めなかった。PMDA薬事戦略相談については、平成26年後半に使用していた日本の代表的なCNTであるMWNT7が製造中止になったため、CNTの変更が必要になった。また、十分な骨親和性の向上が認められなかったため、今後の継続研究後に実施することとした。
結論
本研究課題によりCNT/PEEKの脊椎椎体スペーサーは、機械的特性や製品製造性が高く、最適なデザイン設計が可能で、生体安全性が高いことが明らかになったため、骨親和性の向上が達成できれば、早期にPMDA開発前相談を実施することができる。CNT変更に伴う生体安全性評価を慎重に実施し、最終目標である薬事承認、実用化の達成を目指している。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
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