文献情報
文献番号
201324097A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性血管腫・血管奇形についての調査研究班 患者実態調査および治療法の研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-難治等(難)-一般-059
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三村 秀文(川崎医科大学 放射線医学(画像診断2))
研究分担者(所属機関)
- 秋田 定伯(長崎大学医学部・歯学部附属病院形成外科)
- 大須賀 慶悟(大阪大学医学系研究科放射線医学)
- 佐々木 了(KKR札幌医療センター斗南病院形成外科)
- 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所 情報伝達分野)
- 田中 純子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学)
- 森井 英一(大阪大学 大学院医学研究科 病態病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまで国内・海外で血管腫・血管奇形の詳しい実態調査は行われていない。本研究では、血管腫・血管奇形患者の実数、病状、診断、治療等の実態を把握する目的で、初の多施設から成る血管腫・血管奇形患者の症例登録による全国実態調査を行った。同時に健康保険組合の診療報酬記録のデータベースを用い、標準病名から血管腫・血管奇形患者数推定を行った。また軟部・皮膚脈管奇形(血管奇形およびリンパ管奇形)の診断基準を作成した。
研究方法
1.全国疫学調査:平成25年度は全国疫学調査を行った。日本形成外科学会認定施設および教育関連施設、日本IVR学会認定施設の計738施設を対象施設とした。対象患者は平成21年1月から23年12月に上記当該施設を受診(外来・入院を含む)した血管奇形の患者のうち、静脈奇形(海綿状血管腫)、リンパ管奇形(リンパ管腫)、動静脈奇形、混合型血管奇形(症候群を含む)の患者で、毛細血管奇形(単純性血管腫・ポートワイン斑)単独は除いた。2.患者数推定:血管腫・血管奇形病名の患者数(血管奇形と乳児血管腫などの血管性腫瘍を合わせた患者数)およびそのうちリンパ管奇形病名の患者数を推定した。健康保険組合に加入している本人および家族の全診療報酬記録のデータベースを利用して、血管腫・血管奇形病名のついた患者数の推計を試みた。3.診断基準の作成:研究班が診断基準素案を作成し、血管腫・血管奇形研究会および血管腫・血管奇形IVR研究会にコメントを募り、修正した。4.血管病変の病理学的解析、静脈奇形の原因であるTie2受容体の機能解析:血管腫・血管奇形症例標本を用いた病理学的分類のレトロスペクティブ解析と血管病変の分子生物学的解析、患者末梢血および生検標本由来の候補遺伝子のゲノムシークエンス解析を行った。
結果と考察
1.疫学調査による患者実態調査、重症度分類の作成と検証 平成25年度は全国調査を行った。解析の結果の概略を以下に示す。85施設から登録があり、有効登録は3681例であった。①患者基本情報:登録患者の3681例において、平均年齢は29.8歳であった。性別は、女性2151例(58%)、男性1530例(42%)であった。初発時期については生下時での発症が1112例(35%)で最も多かった。②病変部位情報:計4062病変のうち、占拠部位は頭頸部が最も多く1599病変(39%)、次いで下肢が1119病変(28%)、上肢800病変(20%)、体幹544病変(13%)であった。③症状情報:症状は腫脹2059例(56%)、整容障害1653例(45%)、疼痛1575例(43%)、機能障害(疼痛を除く)543例(15%)を呈した患者が多かった。④診断情報:疾患名としては重複症例を含め、計3700例あった。静脈奇形が2217例(60%)、動静脈奇形586例(16%)、リンパ管奇形457例(12%)、混合型血管奇形/症候群が440例(12%)であった。⑤治療情報:治療後の転帰は、2656例中治癒450例(17%)、改善1779例(67%)、不変333例(12%)、悪化41例(2%)、不明53例(2%)であった。⑥重症度分類:重症度4度あるいは5度の重症例は合わせて262例(7%)であった。なお重症度分類の検証は来年度以降に行う。2.標準病名を用いた患者数推定:1年期間有病率を元に推計した血管腫・血管奇形病名の実患者数は108,723-114,012人(同リンパ管奇形病名の実患者数は7,402-9,004人)であった。なお、この血管腫・血管奇形病名の実患者数には対象外の乳児血管腫をはじめとする血管性腫瘍、毛細血管奇形単独例も含まれている。3.診断基準の作成:作成した軟部・皮膚脈管奇形(血管奇形およびリンパ管奇形)診断基準は日本形成外科学会、日本IVR学会の承認を得た。4.血管病変の病理学的解析:これまで血管腫と診断されていた症例について再度免疫染色を行うことで見直した。また、Klippel-Trenaunay症候群の原因遺伝子の一つとして知られているAGGF1について、様々な血管病変で発現解析を行った。5.血管奇形の原因であるTie2受容体の機能解析:タモキシフェンによりVE-Cadherinプロモーター制御下にCreを発現するTgマウスとFlox-CA-Tie2―Tgマウスを交配させ、出生後にTie2を恒常的に活性化できるシステムを構築した。
結論
全国疫学調査を行い、3681例の解析を行った。軟部・皮膚脈管奇形(血管奇形およびリンパ管奇形)診断基準を完成させ、日本形成外科学会、日本IVR学会の承認を得た。今後疫学調査のさらなる解析、本調査に基づく重症度分類の検証を行う。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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