NSAIDs過敏気道疾患の病因、発症機序解明とガイドライン作成に関する研究 

文献情報

文献番号
201322004A
報告書区分
総括
研究課題名
NSAIDs過敏気道疾患の病因、発症機序解明とガイドライン作成に関する研究 
課題番号
H23-免疫-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 正実(相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 成宮 周(京都大学医学研究科・メディカル・イノベーション・センター)
  • 長瀬 隆英(東京大学医学部附属病院・呼吸器病学)
  • 玉利 真由美(独立行政法人理化学研究所 横浜事業所)
  • 藤枝 重治(福井大学医学部感覚運動医学講座)
  • 春名 眞一(獨協医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 相原 道子(横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学)
  • 岡野 光博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉)
  • 磯谷 澄都(藤田保健衛生大学医学部 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
NSAIDs不耐症に関して多角的に、疫学、難治化機序、診断方法、遺伝的背景、基礎病態、機序など)面から、国際的に誇れる高いレベルで解明研究を行い、その成果を世界へ情報発信する。
研究方法
1) 発作入院におけるAIA頻度:国立病院機構相模原病院に大発作で入院した患者204中、AIAは35-64歳で29%、65歳以上で21%であった。大発作全体でのNSAIDが誘因となった例は2%であり、比較的少なかった(AI2003)。一方、全国17施設での成人大発作入院前向き調査1年間196例において、NSAIDs使用が誘因となったのは9%であった(投稿中)。
2) 難治化機序(谷口):好酸球性炎症、CysLT産生、マスト細胞炎症が難治例で有意に亢進していた(投稿中)。
3) フェノタイプ解析(谷口):AIAは3病型のフェノタイプに分けることが可能であり、この分類はAIAでの個別化医療に役立つと思われる(投稿中)。
4) AIA診断方法の新規開発
 ①AIA負荷試験における課題と新規基準の提言(磯谷):NSAIDs吸入負荷試験では偽陰性が30%以上存在し、診断には不向きであることが初めて証明された。
5) AIA患者の遺伝子解析(玉利):GWASの結果、P<1x10-4を示した75個のTagSNPs(r2>=0.8)を選出し、ケース178例とコントロール24608例で検証研究を行った。
6) 病因病態解明
①AIA細胞モデル(PGE2作用の低下)における病態解析(成宮):PGE2のTh17リンパ球に対する作用と分子機構明らかにすることを目的とした。PGE2がEP2とEP4の2つの受容体に働き、細胞内cAMP濃度を上昇させてPKA(A-キナーゼ)を活性化し、CREBのリン酸化を介して蛋白質誘導を引き起こし、これら蛋白質がIL-23Rの転写調節に働いていることを証明した。
②CysLT系KOマウスを用いた病態解析(長瀬): CysLT2-RのKOマウスが作成された。LTB4受容体とcysteinyl LT受容体は、異なる生理活性を示した。
③特異的血小板活性化(谷口):AIAにおいて末梢血血小板上活性化マーカー、液性因子など非AIAと比較して有意に高値で、CysLT過剰産生と関連していた。さらに血小板と好酸球の付着も有意に増加し、両者のクロストークにより、CysLT産生亢進に関与していると推定された。
④好塩基球の関与(谷口):安定期、誘発時の好塩基球活性化指標は亢進なし。
 ⑤ヒトCOX2活性化(喫煙)とAIA(谷口):現喫煙患者はAIAで有意に少なく、逆に禁煙後5年以内にAIAが有意に発症していた。喫煙継続がAIA発症を抑制している新知見が得られた。
7) 鼻茸病態からの検討
①AIA鼻茸のプロテオーム解析から得られた有意因子、L-plastinの役割(藤枝):AIA鼻茸の網羅的蛋白解析(プロテオーム解析)を行い、AIA群で有意に発現が亢進しているものとしてL-plastinが同定できた。免疫組織化学では浸潤好酸球においてL-plastinとアクチンが顆粒状に染色され、好酸球の脱顆粒とアクチン重合はL-plastinを介している可能性が示唆された。
②AIA鼻茸に認めるAryl hydrocarbon receptor: AhR低下(岡野):AIA鼻茸ではNSAIDs耐性非AIA鼻茸と比較して抗炎症作用のあるAhR mRNA発現量が有意に低下していた。
③好酸球性副鼻腔炎における呼気NOと機序(春名):
8) NSAIDs不耐症皮膚型の病態解明(相原):NSAIDs不耐症患者は他の蕁麻疹より凝固複数項目の異常が多く、正常化しない項目が多い。
9) NSAIDs不耐症、診断治療の手引きの作成改定とHP上の公開(谷口、全体)。すでに独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センターHP作成した内容(医師向け、患者向け)を新しい知見など取り入れ、新たにリニューアルした。
10) NSAIDs不耐症に関する専門医向けの手引き:国際刊行物2014年発行(Springer社から)予定(世界AIAグループ、谷口、全体)
結果と考察
概要版「研究方法」にまとめて記載。
結論
多くの国際的な高いレベルの新知見が得られ情報を発信した。これらの成果はNSAIDs不耐症の機序や病態解明に貢献すると確信する。また専門医から患者まで広く正確なHP情報公開ができ、世界初の国際AIAガイドラインに関する英文書物の発行まで行えたことは大きな成果と考える。

公開日・更新日

公開日
2014-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2014-08-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201322004B
報告書区分
総合
研究課題名
NSAIDs過敏気道疾患の病因、発症機序解明とガイドライン作成に関する研究 
課題番号
H23-免疫-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 正実(相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 成宮 周(京都大学医学研究科・メディカル・イノベーション・センター)
  • 長瀬 隆英(東京大学医学部附属病院・呼吸器病学)
  • 玉利 真由美(独立行政法人理化学研究所 横浜事業所)
  • 藤枝 重治(福井大学医学部感覚運動医学講座)
  • 春名 眞一(獨協医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 相原 道子(横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学)
  • 岡野 光博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉)
  • 磯谷 澄都(藤田保健衛生大学医学部 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
NSAIDs不耐症に関して、多角的に(疫学、臨床像、診断方法、遺伝的背景、基礎病態、機序など)、かつ国際的に誇れる高いレベルで解明研究を行い、その成果を世界へ情報発信する。
研究方法
1)大規模かつ正確な疫学調査:
①数万人におけるWeb調査(谷口):NSAIDs過敏症は3%でその危険因子は、食物アレルギー、喘息、蕁麻疹、鼻茸、最近の体重増加。
 ②大発作入院におけるAIA頻度:相模原病院大発作患者204中AIAは29%、NSAIDが直接原因は2%、全国17施設前向き調査で9%。
③成人喘息の難治化因子(谷口):欧州、北米との国際比較でAIAが重要な日本人喘息の難治化因子と証明(CEA2012)。
2)臨床像の国際比較、負荷試験の検証(谷口、磯谷):AIAの臨床像が欧米と同様であることが判明した。吸入負荷試験では偽陰性が30%以上存在することが判明。
3)難治化機序とフェノタイプ解析(谷口):好酸球性炎症、尿中LTE4、マスト細胞炎症が難治例で有意に亢進(増加)していた。ペリオスチンは有意に高値であった。
4)AIA診断方法の新規開発(谷口):静注負荷試験の有用性。血液や尿検体でのAIA診断法開発で尿中LTE4/LXsが最も特異度、感度ともに良好(CEA2012)。
5)AIA患者の遺伝的背景(玉利):ゲノムワイド水準を満たすSNPはなかったが、HLA領域2q21の2つの領域で強い関連を認めた。
6)AERD類似細胞モデル(PGE2、COX低下)病態解析(成宮):PGE2-EP2/EP4-cAMP経路が転写因子CREB/CRTC2を介してIL-12やIL-23の受容体を遺伝子レベルで誘導。PGE2の低下は、Th1分化誘導促進の抑制を起こし、Th2分化誘導が促進。
7)CysLT系KOマウスを用いた病態解析(長瀬):KOマウスの作成と病態解析。
8)炎症性細胞の関与(谷口):AIAでは特異的な血小板活性化があり、好酸球と付着しCysLT産生に関与(投稿中)。好塩基球の関与はなく、マスト細胞はアスピリン誘発時の主役(JACI 2011, AI 2012)。
9)エイコサノイド不均衡(谷口):自然界のCOX2誘導因子である喫煙がAIA発症を抑制(投稿中)。PGE2低下(JACI2010),LX低下(CEA2011)も証明。
10)AIA鼻茸の網羅的蛋白解析と次世代シーケンサーを用いたWhole Transcriptome解析(藤枝):AIA鼻茸においてL-plastinの発現がATA鼻茸に比べ増加し、その発現は主に好酸球。鼻茸中のWhole transcriptome (RNA-seq)を、次世代シーケンサー(NGS)を用いて解析し、新規トランスクリプトを同定した。その結果、有意差な遺伝子が112個同定。
11)AIA鼻茸難治化機序(岡野):①鼻茸細胞はTLR4リガンドのLPS刺激に対しIL-5、IL-13の産生を示し、PGE2により抑制。②エンテロトキシン刺激で誘導されるIL-22はNSAIDにより抑制。NSAIDs過敏機序としてIL-22の産生抑制がある可能性。③鼻副鼻腔粘膜における芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor: AhR)の発現が、AIAでは有意に低下。
12)好酸球性副鼻腔炎における呼気NOとIgE(春名):副鼻腔粘膜に多数のIgEの存在。抗IgE療法の可能性が想定。
13) NSAIDs不耐症皮疹の病態解明(相原):NSAIDs不耐症蕁麻疹の病態には凝固線溶系異常が関与。
14)NSAIDs不耐症、診断治療の手引きの作成とHP上の公開(谷口、全体)とNSAIDs不耐症に関する国際刊行物の発行(Springer社)(世界AIA研究グループ):①初めてのNSAIDs不耐症に関する国際GL(教科書)を責任編集者として2015年刊行予定。②NSAIDs不耐症に関する最も詳細かつ正確な情報公開をHP上で行っている。これらは、多くの医療現場や患者QOL向上に寄与。
結果と考察
概要版「研究方法」にまとめて記載。
結論
多くの国際的な高いレベルの新知見が得られ情報を発信した。これらの成果はNSAIDs不耐症の機序や病態解明に貢献すると確信する。また専門医から患者まで広く正確なHP情報公開ができ、世界初の国際AIAガイドラインに関する英文書物の発行まで行えたことは大きな成果と考える。

公開日・更新日

公開日
2014-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-08-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)疫学調査、2)臨床像の国際比較、負荷試験の検証、3)難治化機序、4)新規診断方法開発、5)遺伝子解析、6)細胞モデル解析、7)KOマウス解析、8)主役炎症性細胞の同定、9)エイコサノイド不均衡解明、10)網羅的蛋白解析と次世代シーケンサーを用いた解析、11)鼻茸難治化機序、12)皮疹の病態解明、13)診断治療の手引き公開、14)国際刊行物の発行、など多くの国際的な高いレベルの新知見が得られ、その成果は国際教科書として刊行予定。
臨床的観点からの成果
前述1)大規模かつ正確な全国疫学調査で日本人の有症率と大発作患者における割合(29%)を証明、前述2)臨床像を国際比較で明らかにし吸入負荷試験の偽陰性が多いことを証明、前述3)難治化機序を見出し今後の機序解明法、新規治療法を提言、前述4)尿による診断方法開発、前述12)NSAIDs不耐症皮疹の病態解明などにより臨床や患者側に多くの利益を間接的に供給。前述13)診断治療の手引きの公開、前述14)国際刊行物の発行予定(Springer社)(国内翻訳版予定)により国内外に高いレベルの有益な成果を公開。
ガイドライン等の開発
●NSAIDs不耐症、診断治療の手引きの作成とHP上の公開
●NSAIDs不耐症に関する国際刊行物の発行(Springer社):初めてのNSAIDs不耐症に関する国際ガイドライン(教科書を兼ねる)を谷口が責任編集者として現在編集中(2015年刊行予定、翻訳版も出版予定)。
なお本研究班の成果の一部は、成人喘息ガイドライン2012にも、5編の参考文献として引用されている。
その他行政的観点からの成果
【未だ残るNSAIDs誤使用入院が明らかに】NSAIDs関連による大発作入院が、全国17施設による前向き調査により、全大発作入院の9%占めることが明らかとなり、今後のNSAIDs誤使用対策が、喘息死や喘息大発作対策の重要な課題として明確になりました。【喘息発作入院に占める高いNSAIDs不耐症頻度】今回の後ろ向き調査や全国前向き調査により発作入院患者における本症の割合は25~30%以上と判明し、通院患者における頻度(5%)を大きく上回った。よって本症の難治化対策が今後、非常に重要と思われます。
その他のインパクト
シンポジウム●海外アスピリン喘息シンポジウム(招待講演)毎年6月(2010-13)、欧州アレルギー免疫学会の付属シンポとして、ポーランドにて2日間国際シンポが開催され、谷口、岡野らは、招待講演として研究班の成果を公表した。●国内アスピリン喘息公開シンポジウム(主催)
毎年秋に、都内会場にて、NSAIDs不耐症・難治性喘息研究会として、シンポジウムを主催(MSD共催)した。毎年、海外招請講演1-2名、成宮博士など多くの著名研究者をまねき、参加人数は約100名であり、多くの討論と情報公開を行った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
196件
その他論文(和文)
211件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
205件
学会発表(国際学会等)
81件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201322004Z