身体疾患を合併する精神疾患患者の診療の質の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201317052A
報告書区分
総括
研究課題名
身体疾患を合併する精神疾患患者の診療の質の向上に資する研究
課題番号
H24-精神-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 水野 杏一(公益財団法人 三越厚生事業団)
  • 志賀 剛(東京女子医科大学医学部 循環器内科学)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経科)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 稲垣 正俊(岡山大学病院 精神科神経科)
  • 木村 宏之(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 木村 真人(日本医科大学千葉北総病院 メンタルヘルス科)
  • 小川 朝生(独立行政法人国立がん研究センター東病院臨床開発センター 精神腫瘍学開発分野)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 糖尿病研究部)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院 医学系研究科 精神医学)
  • 三宅 康史(昭和大学医学部救急医学/昭和大学病院救命救急センター)
  • 山崎 力(東京大学医学部付属病院 臨床研究支援センター)
  • 平田 健一(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 山本 賢司(北里大学医学部 中毒・心身総合救急医学、精神科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
身体疾患を有すると高率に精神疾患を合併・併存し、身体疾患の予後が悪化することは、国外の多くの研究で示されている。しかし、身体疾患と精神疾患の合併・併存患者に関する国内での研究の蓄積は十全ではない状況である。こうした状況を受け、厚生労働省の検討会では、身体疾患と精神疾患の合併・併存患者への対策の必要性が指摘されている。
そこで本研究では、精神疾患と身体疾患の合併・併存患者への最適な医療を提供することを最終目標として、研究班を組織した。有病率調査、自記式尺度の診断精度研究及び疾病予後に関する前向きコホート研究並びに医療情報を活用した研究を行い、学術的エビデンスを創出するとともに、精神科地域連携クリティカルパスを開発し、精神科と身体科等との連携マニュアルと合併・併存患者の治療技術向上のための研修資材を作成した。なお、本研究で扱う身体疾患は、医療計画上の5疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、精神疾患)と救急事業である。
研究方法
本研究は、14名の研究分担者により研究班を編制して成果を統合した。研究方法は、(1)臨床研究、(2)連携マニュアルと地域連携クリティカルパス(パス)の開発、(3)合併・併存患者の治療技術向上のための研修資材の作成である。
結果と考察
本研究成果として以下の結果が得られた。(1)「臨床研究」の一環として、①糖尿病患者を対象にPHQ-9とSCIDを行った結果、大うつ病エピソードスクリーニングの感度は73%、特異度は94%であり、一定の有用性を確認した(野田分担班)。②PHQ-9で10点以上のうつ(SCIDによる大うつ病エピソード)の頻度は、それぞれ糖尿病患者で8.8% (3.2%)、慢性心不全で14.8% (3.3%)、かかりつけ医受診患者で8.0%(診断面接未実施)であった(木村宏之分担班)。③循環器疾患患者における睡眠障害およびうつ病の有病率と重症度が、心疾患やQOLに影響することが示唆された(内村分担班)。(2)「精神科と身体科等との地域医療連携パス開発」の一環として、①がん診療におけるうつ病(小川分担班)、②救命救急センター退院後における自殺未遂者(三宅分担班・山本分担班)、③かかりつけ医療場面のうつ病(稲垣分担班)、④循環器疾患患者におけるうつ病(平田分担班)、を想定したパスの初案を作成した。また、これまでに開発したツールを用いて、⑤脳卒中における脳卒中後のうつ病・うつ状態の実態調査と連携パスの実運用(木村真人分担班)、⑥認知症地域連携の有用性の検討(数井分担班)を行った。(3)「合併・併存患者の治療技術向上のための研修資材の作成」の一環として、①救命医療スタッフによる精神科救急患者の初期対応コース(PEECコース)のトライアルコースが終了した(三宅分担班)。②認知行動療法的アプローチの1つであるアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を慢性疾患患者に適用させる為の研修資材を作成し、研修会を実施した(熊野分担班)。
結論
本研究成果は、糖尿病や心不全の患者に対して、精神科診断面接マニュアルを用いて大うつ病エピソードの評価を実施するという、国内では希少な経験を有している。本結果は、学術的には診断面接に基づく有病率、自記式尺度の診断精度の確認および予後に関する各知見が、それぞれの身体疾患患者の精神疾患研究の基盤となることが予測できる。加えて、本研究班の研究分担者は、それぞれの疾患領域で責任ある立場にあり、循環器病関連学会をはじめとする学術団体でのうつ等の診断・治療・連携のガイドラインの策定という波及効果が期待できることから、臨床における連携マニュアルや研修資材を作成することを通じて、都道府県の医療計画の進展に寄与すると考えられる。また、本研究で開発した身体疾患と精神疾患との地域連携に関する効果的なパスを政策担当者に提示することで、医療政策にも寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,790,000円
(2)補助金確定額
10,790,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,229,579円
人件費・謝金 2,228,966円
旅費 1,483,947円
その他 2,357,508円
間接経費 2,490,000円
合計 10,790,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
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