文献情報
文献番号
201222024A
報告書区分
総括
研究課題名
2010年国民健康栄養調査対象者の追跡開始(NIPPON DATA 2010)とNIPPON DATA80/90の追跡継続に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-指定-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 克之(国立大学法人滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
研究分担者(所属機関)
- 上島 弘嗣(滋賀医科大学生活習慣病予防センター)
- 岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所)
- 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
- 和泉 徹(北里大学医学部循環器内科学)
- 大久保 孝義(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
- 奥田 奈賀子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
- 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
- 門田 文(大阪教育大学養護教育講座)
- 喜多 義邦(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
- 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
- 斎藤 重幸(札幌医科大学保健医療学部看護学科基礎臨床講座内科学分野)
- 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
- 中川 秀昭(金沢医科大学医学部公衆衛生学教室)
- 中村 保幸(京都女子大学家政学部生活福祉学科)
- 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)
- 西 信雄(独立行政法人国立健康・栄養研究所国際産学連携センター)
- 早川 岳人(福島県立医科大学衛生学・予防医学講座)
- 寳澤 篤(東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門)
- 松村 康弘(文教大学健康栄養学部)
- 村上 義孝(滋賀医科大学社会医学講座医療統計学部門)
- 由田 克士(大阪市立大学大学院生活科学研究科 食・健康科学講座)
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター予防健診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
47,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究課題は①従来の循環器疾患基礎調査の後継調査として、平成22年国民健康・栄養調査の対象者に追加問診・心電図検査・追加血液検査・尿検査を実施し、循環器疾患に関連する現況を明らかにするとともに、同集団を対象に長期追跡するコホート研究(NIPPON DATA 2010)を新たに開始すること、②20年以上の追跡を行っているNIPPON DATA80/90の追跡をさらに進め、栄養等をはじめとする各種リスク要因の長期にわたる生活習慣病リスクへの影響を明らかにすることを目的とする。
研究方法
①第1回追跡調査からの死亡13名、新たな調査参加拒否者11名を除いた2,639名のNIPPON DATA2010参加者に対して、郵送および電話による第2回追跡調査を行い、糖尿病・脳卒中・心疾患新規発症を調査した。②NIPPON DATA80の29年目追跡とNIPPON DATA90の20年目追跡のデータ整備作業を進め、24年/29年 (NIPPON DATA80)・15年(NIPPON DATA90)追跡データによる解析を行った。③平成22年国民健康・栄養調査のデータを統計法(平成19年度法律第53号)第33条の規定に基づいて入手し、NIPPON DATA2010のベースラインデータと突合することでデータベースを作成した。このデータベースを基に、NIPPON DATA2010の尿中アルブミン排泄量と国民健康・栄養調査の血清クレアチニン等のデータを用いて、国民の慢性腎臓病 (CKD)有病率を算出した。④突合データベース、およびNIPPON DATA80/90・2000年循環器疾患基礎調査・平成12年国民栄養調査のデータを用いて、1980~2010年の30年間(10年ごとの4時点)の高血圧有病率・治療率・管理率の推移を性・年齢階級別に算出した。また、高血圧に及ぼす肥満の寄与割合の推移についても分析した。⑤NIPPON DATA90参加者のうち、過去のADL・QOL追跡調査に参加した72歳以上の生存者、全国187保健所管内の1,914名を対象とし、22年目のADL・QOL追跡調査を実施した。⑥NIPPON DATA2010対象者の心電図の判読を行った。⑦研究成果を衛生行政施策、各種学会ガイドライン、あるいは国民の普及啓発に有効に活用されるよう努めた。
結果と考察
①第2回追跡調査を実施し、1月時点で91.9%から回答が得られた。②NIPPON DATA80の29年目追跡データベースが完成し、分析を開始した。NIPPON DATA90については、20年目における住民票交付申請による生存確認において死亡が確認された者630人について、人口動態統計データの利用申請を行って提供を受け、原死因の確定作業を行い、追跡データ整備作業が進行中である。また、24年/15年追跡データによる解析を進め、平成24年度は計7編の論文がCirculation等の欧文誌に掲載された。③eGFR<60の者は12.0%、アルブミン尿の者は16.6%、両方該当する者は3.5%、いずれかに該当する者は25.5%であった。男女差は明らかではなく、年齢が高いほど有病率は高くなった。④高血圧有病率は男女ともに低下傾向であったが、2000~2010年までの10年間では、男性において上昇する年齢層もあった。治療率・管理率は男女ともに全ての年齢階級で上昇傾向にあった。また、高血圧に及ぼす肥満の寄与は男女とも増加していることが明らかとなった。⑤全国187保健所管内の1,914名の対象者に対して各保健所を通して追跡調査を実施し、1月時点で173保健所、1,204名(142保健所)の調査票が回収された。⑥心電図のコーディングが確定し、ほぼ全ての所見で年齢が上がるほど、また男性は女性よりも有所見率が高くなっていた。⑦健康日本21(第2次)において、NIPPON DATA研究からの論文が4編引用され、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版においては、NIPPON DATA80冠動脈疾患死亡リスク評価チャートが採用された。また、ホームページをアップデートし、健康教育用教材としてスライド資料などをダウンロードできるようにした。
結論
NIPPON DATA 2010の追跡調査は極めて順調に遂行されており、今後わが国の生活習慣病予防対策への提言を行う上で重要な知見が得られることが期待される。また、NIPPON DATA80/90は追跡期間の延長作業が進んでおり、比較的若い世代に対象者を絞った解析が可能となった。若いときからの生活習慣と将来の循環器疾患死亡との関連が今後明らかになってくる。これらの知見は引き続き、行政施策立案やガイドライン作成に資するエビデンスとなりうる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-03
更新日
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