文献情報
文献番号
200935007A
報告書区分
総括
研究課題名
心理学的剖検データベースを活用した自殺の原因分析に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
- 竹島 正(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
- 松本 俊彦(国立精神・神経センター精神保健研究所)
- 高橋 祥友(防衛医科大学校)
- 平山 正実(聖学院大学大学院総合研究所)
- 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、心理学的剖検の手法を用いた「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」を実施することにより、(1)将来におけるわが国での広範な心理学的剖検の実施可能性、ならびに心理学的剖検データベース・システムのあり方について検討すること、(2)公的機関の地域保健活動のなかで接触可能であった自殺事例の臨床類型を明らかにして、自殺予防の介入ポイントを検討することを目的とした。
研究方法
都道府県・政令指定市のうち、参加要件を満たす自治体から順次調査を実施した。情報収集方法は、資格要件を満たす2名1組の調査員による遺族1名に対する半構造化面接調査であって、平成19年12月から平成21年12月末日までに76名の自殺既遂者についての調査面接を終了した。また、自殺既遂事例と地域・性別・年齢階級を一致した対照群の調査も実施し、自殺既遂事例の特徴について数量的分析を行った。
結果と考察
自殺事例群の分析をもとにライフステージ別の自殺予防のための介入のポイントを検討した結果、青少年では、精神疾患に罹患したときの早期介入、精神科治療薬の適正使用のための対策、家族支援が重要と考えられた。中高年では、アルコール関連問題についての社会の認知を高めること、断酒会等の自助グループの支援、一般医・精神科医のアルコール問題に対する診断・治療能力の向上が重要と考えられた。高齢者では、かかりつけ医のうつに対する診断・治療能力の向上、精神科受診の促進が重要と考えられた。症例対照研究の結果からは、問題のある借金、配置転換や異動に関する悩み、子ども時代の虐待や暴力、家族・家族外の社会的交流の少なさ、日常生活の支障をともなう身体的問題、睡眠障害、眠るためのアルコール使用、うつ病を含む精神障害全般が、自殺対策を進めるうえで重要な視点と考えられた。
結論
本研究からは、青少年ならびに中高年に対する自殺予防対策として、従来国内では指摘されてこなかった介入のポイントを明らかにすることができた。また、本研究を通じて、わが国において心理学的剖検の手法による自殺の実態調査を継続的に実施するための体制作りを準備することができた。
公開日・更新日
公開日
2010-06-15
更新日
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