「在宅介護の質」:評価尺度の開発および介護負担との関連について

文献情報

文献番号
200400292A
報告書区分
総括
研究課題名
「在宅介護の質」:評価尺度の開発および介護負担との関連について
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所 長寿看護介護研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲尾 昌一(札幌医科大学医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,956,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、「在宅介護の質」評価尺度の妥当性の検証を行うことを目標とした。
研究方法
A訪問看護ステーションを利用する要介護高齢者を対象に、調査を実施した。アウトカム指標に相当する下位尺度は、要介護高齢者の心身の機能の指標となる他の変数との間に、相関が認められると想定される。一方、「在宅介護の印象」は、アウトカム指標との間には関連を示さず、プロセスやインプットに相当する指標との間に相関が認められることが想定される。想定された変数間の関連を検証することにより、「在宅介護の質」評価尺度の構成概念妥当性を検討した。
結果と考察
要介護高齢者ならびに家族介護者の変数と、「在宅介護の質」評価尺度の各下位尺度との間の相関を算出した。本評価尺度においてアウトカム指標としている5つの下位尺度は、要介護度、寝たきり度、痴呆自立度との間に有意な相関が認められたが、「在宅介護の印象」との間には、有意な相関が認められなかった。また、日常的な行動の成否から対象者の認知機能を評価するSMQの得点は、「認知」「ADL」「粗大運動」との間のみに有意な相関が認められ、本評価尺度の収束的妥当性を支持する結果を示した。以上から、本評価尺度のうち、アウトカム指標とした5つの下位尺度の妥当性が確認されたと考えられる。本評価尺度において、プロセスやインプットに相当する指標とした5つの下位尺度のうち、「水回りの改修」を除く4つの下位尺度は、上述のアウトカムに関連する指標との間に有意な相関が認められなかった。また、「不適切な処遇」を除く4つの下位尺度は、「在宅介護の印象」との間に、有意な相関が認められた。以上から、プロセスやインプットの指標とした5つの下位尺度のうち、当初想定した結果を示した「適切な着衣」「衛生と介助」「段差解消」については、妥当性が確認されたと考えられる。
結論
本研究により作成された「在宅介護の質」の各下位尺度は、概ね所期の性質を備えていることが示された。本評価尺度の構成概念妥当性が、一定程度確認されたことから、尺度開発の基礎的な段階は完了したと言える。在宅介護の質を、客観的かつ総合的に評価する評価尺度は、世界的に見ても数少ない。本研究により開発された「在宅介護の質」評価尺度により、在宅介護の客観的評価への端緒が開けたものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400292B
報告書区分
総合
研究課題名
「在宅介護の質」:評価尺度の開発および介護負担との関連について
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 由美子(国立長寿医療センター研究所 長寿看護介護研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲尾 昌一(札幌医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「在宅介護の質」評価尺度を作成し、その信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。
研究方法
本研究は、以下の順に実施された。
1.評価項目原案の作成
2.原案各項目のtest-retest信頼性および検者間信頼性を検討するための調査
3.尺度を作成し、その内的整合性を検証するための調査
4.尺度の妥当性検証の調査ならびに在宅介護の質と家族介護者の介護負担との関連を検討するための調査
結果と考察
1.全68項目の評価項目原案を作成した。2.評価尺度原案において、test-retestおよび検者間いずれかにおいて、信頼性係数が0.4より低かった項目が14項目あった。3.評価項目原案から不適当な項目を除外し、選別された43項目について、5回に分けて因子分析を行った。その結果、「在宅介護の質」評価尺度の下位尺度として、「認知」「麻痺」「ADL」「粗大運動」「不適切な処遇」「適切な着衣」「衛生と介助」「段差解消」「水回りの改修」、および「視聴覚」(内的整合性のみ確認)の10の尺度が選定された。4.「在宅介護の質」の中で、アウトカム指標となる下位尺度(「認知」「麻痺」「ADL」「粗大運動」「視聴覚」)は、要介護高齢者の心身の機能を示す他の変数との間に有意な相関が認められ、一方、プロセスやインプットに相当する下位尺度(「不適切な処遇」「適切な着衣」「衛生と介助」「段差解消」「水回りの改修」)との間には有意な相関が認められなかった。在宅介護の印象を評価した変数と、アウトカムに相当する下位尺度との間には有意な相関を示さず、プロセスやインプットに相当する下位尺度との間には有意な相関が認められた。家族介護者の介護負担との関連については、要介護高齢者の着衣の状態が不適切であるほど、家族介護者は、要介護高齢者のADLの介護を辛いと感じていた。以上より、「在宅介護の質」評価尺度の各下位尺度は、各項目と尺度いずれにおいても、その信頼性が確認された。また、本評価尺度の構成概念妥当性が確認された。
結論
「在宅介護の質」評価尺度が作成され、信頼性に加え妥当性の確認も行われた。在宅介護の質を、客観的かつ総合的に評価する評価尺度は、世界的に見ても数少ない。本研究により開発された「在宅介護の質」評価尺度により、在宅介護の客観的評価への端緒が開けたものと考える。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-