スモンに関する調査研究

文献情報

文献番号
199900585A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
岩下 宏(国療筑後病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小長谷正明(国療鈴鹿病院)
  • 小西哲郎(国療宇多野病院)
  • 高瀬貞夫(広南病院)
  • 千田光一(日本大神経)
  • 早原敏之(国療南岡山病院)
  • 松本昭久(市立札幌病院)
  • 中江公裕(獨協医大公衆衛生)
  • 宮田和明(日本福祉大社会福祉)
  • 森英俊(筑波技術短大)
  • 松岡幸彦(国療鈴鹿病院)
  • 明石謙(川崎医大リハ)
  • 安藤徳彦(横浜市立大病院)
  • 池田修一(信州大三内)
  • 乾俊夫(国療徳島病院)
  • 上田進彦(大阪市立総合医療センター)
  • 内野誠(熊本大病院)
  • 岡本幸市(群馬大神内)
  • 岡山健次(大宮赤十字病院)
  • 蔭山博司(国療北海道第一病院)
  • 加知輝彦(国療中部病院)
  • 加藤昌弘(愛知県保健予防課)
  • 北川達也(国療西鳥取病院)
  • 姜進(国療刀根山病院)
  • 吉良潤一(九州大神内)
  • 鯨井隆(国療米沢病院)
  • 黒田康夫(佐賀医大内)
  • 斉田和子(国療宮崎東病院)
  • 佐藤正久(新潟大神内)
  • 三宮邦裕(大分医大三内)
  • 塩澤全司(山梨医大神内)
  • 渋谷統寿(国療川棚病院)
  • 島功二(国療札幌南病院)
  • 庄司進一(筑波大臨床内)
  • 杉村公也(名古屋大保健)
  • 錫村明生(奈良県立医大神内)
  • 妹尾秀雄(北海道保健福祉部)
  • 祖父江元(名古屋大神内)
  • 高橋桂一(国療兵庫中央病院)
  • 高橋光雄(近畿大神内)
  • 高山佳洋(大阪府保健予防課)
  • 竹内博明(香川医大看護)
  • 田島康敬(釧路労災病院)
  • 千田富義(秋田県立リハセンター)
  • 千野直一(慶応義塾大リハ)
  • 寺澤捷年(富山医薬大和漢)
  • 中瀬浩史(虎の門病院)
  • 中野今治(自治医大神内)
  • 西郡光昭(宮城教育大教育)
  • 長谷川一子(北里大神内)
  • 蜂須賀研二(産業医大リハ)
  • 服部孝道(千葉大神内)
  • 花籠良一(南昌病院)
  • 林正男(石川県厚生部)
  • 林理之(大津市民病院)
  • 平山幹生(福井医大二内)
  • 廣瀬和彦(東京都府中病院)
  • 發坂耕治(岡山県保健福祉部)
  • 松永宗雄(弘前大脳研)
  • 丸山征郎(鹿児島大臨検)
  • 三浦英男(福島県立リハ飯坂温泉病院)
  • 溝口功一(国立静岡病院)
  • 森松光紀(山口大神内)
  • 森若文雄(北海道大神内)
  • 山下元司(高知県立芸陽病院)
  • 山下順章(松山赤十字病院)
  • 山田淳夫(国立呉病院)
  • 山中克己(名古屋市立中央看護専)
  • 吉田宗平(和歌山県立医大神内)
  • 渡辺幸夫(大垣市民病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
84,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スモン患者の医療・福祉の現状調査とQOLの向上
研究方法
1.「医療システム委員会」メンバーにより全国スモン患者医療・福祉の現状を「スモン現状調査個人票」を用いて調査した。2.この調査を基礎として、全国スモン患者、各ブロック、各地区の現状、合併症、QOL、病態、自律神経、心理、その他を調査した。3.大阪府と共催で「スモン・神経難病セミナー」当研究班主催で「スモンフォーラムIN東京」を開催した。
結果と考察
1. スモン検診結果 ; 本年度は、全国1149名のスモン患者が検診された。男女比1:2.9、70歳代最多で65歳以上76.2%、「新聞の大見出しは読める」以上の視力障害38.2%、「1本杖歩行」以上の歩行障害43.6%、何らかの合併症を有するもの89.7%、特に白内障49.8%、高血圧35.2%、脊椎疾患30.5%、四肢関節疾患22.5%、障害度は極めて重度4.8%、重度18.5%、中等度44.0%、軽度25.7%、極めて軽度2.7%、障害度の要因としてスモン+合併症46.4%、スモン42.0%、スモン+加齢6.0%、合併症0.7%などであった。医学上問題ありと、やや問題ありを合わせると、70.3%に達した。平成10(1998)年度に比し、白内障、高血圧、脳血管障害および悪性腫瘍の合併症等は上昇していた。平成6(1994)年度以降本年度まて障害度の年次推移はほとんど変化なかった。しかし、障害をもたらす要因の年次推移は、スモン+合併症がスモンより本年度初めて高頻度であった。即ち、今日のスモン患者の障害度は合併症に起因する頻度がますます高まっていることが示された。
北海道地区では、134名中120名検診し108名在宅療養中、36名入退院繰り返し、7名長期入院中、異常感覚や介護問題などの療養相談会がスモン患者のQOL維持に有用と報告された。東北地区では、236名中89名が検診され、異常感覚有するもの84.2%、合併症有り94.4%、精神的不安・抑うつ気分有り34.8%、しかし現在の生活に満足・やや満足が34.8%であったと報告された。関東・甲越地区では、健康管理手当受給者の39%に当る288名が検診され、視力が極めて悪い者24名、歩行のそれ32名、外出困難者59名が含まれていたと報告された。中部地区では、167 名が検診されたが、そのうち22名について重症度や異常知覚・深部覚障害の程度と介護保険における要介護度は必ずしも一致しなかった、これら感覚障害はスモン患者のQOLに影響を与えるため介護面で配慮すべきと報告された。近畿地区では、158名が検診され、81歳以上の超高齢者31名(20%)で、この群で歩行不能者が増加し、骨折など整形外科的合併症が関係していると報告された。中国・四国地区では、217名が検診され、障害度、高齢化、精神症候全体、焦燥不安、ADL、生活の満足度等の分析から、生活内容はADLなど身体的状況だけでなく内面的、社会的状況によっても影響されると報告された。九州地区では、312名中112名が検診され、歩行の最多は不安定独歩(21.4%)、視力は細字読みにくい(36.6)、異常感覚は中等度(56.3)などであり、アンケート調査からスモン班知らなかった17.7%、検診活動知らなかった22.1などであったと報告された。その他東京都、福島県、福井県、静岡県、兵庫県、岡山県、宮崎県等におけるスモン患者の現状が報告された。
2. Q O L、若年発症 ; 花籠らは、20ないし30年以上継続診療・療養相談しているスモン患者群9 0例と対照群77例の分析から、スモン患者は異常知覚の苦痛のために理想的QOLは困難であるが、行き届いた生活指導によってある程度の改善は期待できると報告した。北川らは19歳発症、視力障害と両下肢麻痺の後遺症、26歳結婚、一男一女出産、3年後夫と死別、身体障害1級でありながら、現在積極的に生き、高いQOLを維持している52歳、女の若年発症スモンを報告した。
3. 重症度、合併症 ; 早原らは、平成10年度作成のスモン重症度基準について、岡山県スモン検診40例の分析から、当基準は判定結果が重症に傾く傾向がみられ、重症度判定の項目としては、歩行、表在知覚、視力の3つでよいと思われると報告した。小長谷らは、スモン患者1141名での合併症有病率を一般住民と比較し、スモン患者の痴呆有病率は、80歳以上で男7%、女9%で一般住民の20%、24%より有意に低かったと報告した。
4. 病態、自律神経 ; 池田らは、スモンにおける異常知覚の客観的定量化を電流感覚閾値検査を用いて行い、スモン患者21例中20例に異常感覚が認められ、知覚過敏を主徴としていたと報告した。小西らは、スモン患者における膝関節症状は有意に女性に多く、X線画像に異常を伴う高齢者群と異常の乏しい約10歳若い若年者群とが区別されたと報告した。
5. 心理、福祉、その他 ; 宮田らは、1999年度は97、98両年度に比しスモン患者ADLの低下傾向がみられたこと、自立度の低下と共に介護へのニードが拡大していくことから、スモン患者の介護にかかわる公的・制度的保障要求切実度の増大が予測されると報告した。早原らは、精神科医による独自の面接の結果、多くのスモン患者に精神症候が高率に認められ、精神的に不安定な状態であることから、心理面接とメンタル・ケアが必要と報告した。岩下らは、スモンの教育・啓蒙とスモンの忘却・風化防止のため大阪府と共催で開いた「スモン・神経難病セミナー」について、「大阪スモンの会」からも高く評価されたと報告した。
結論
A. 全国的なスモン患者の医療と福祉の現状調査を継続し、・全国で1149例(北海道118、東北89、関東・甲越288、中部165、近畿159、中国・四国218、九州112、男女比1:2.9、70歳代最多、65歳以上76.5%)を検診した。障害度の要因として、10年前はスモンそのものが最多であったが、本年度のそれは合併症となっていた。即ち、高齢化等による合併症が今日のスモン患者障害度を最貧度に決めていたことが新たに明らかとなった。・2000年4月導入予定介護保険における要介護度認定の問題点を中部地区その他で検討したが、要介護度と臨床的重症度とは一致しなかった。
B. スモン患者のQOLの向上・平成11年9月11日⑦大阪市で「スモン・神経難病セミナー」を当研究班と大阪府共催で224名の医療福祉関係者向けに開催した。スモンが忘却・風化されつつある今日、スモンの教育啓蒙上、有意義なセミナーと考えられた。・平成11年12月12日①東京で「スモンフォーラムIN東京'99」を約130人のスモン患者さん・保護者向けに当研究班主催で開催した。この集会は、初めての試みであったが、患者さん・保護者に好評であった。患者さん本位を目指す当研究班の活動として、有意義であったと考えられる。・積極的な生き方をしている若年発症スモン例の報告やスモン患者交流会にスモン医が参加し、患者QOL向上につながっているとの報告など、当研究班で重視される恒久対策、QOL面に配慮した研究発表がみられた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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