文献情報
文献番号
201911046A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の医療水準及び患者のQOL向上に関する大規模多施設研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-一般-053
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 伸彦(大阪大学 大学院医学系研究科運動器医工学治療学)
研究分担者(所属機関)
- 久保 俊一(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
- 馬渡 正明(佐賀大学 医学部)
- 山本 謙吾(東京医科大学 医学部)
- 帖佐 悦男(宮崎大学 医学部 )
- 須藤 啓広(三重大学 大学院医学系研究科)
- 田中 栄(東京大学 医学部附属病院)
- 尾崎 誠(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 伊藤 浩(旭川医科大学 医学部)
- 高木 理彰(山形大学 大学院医学系研究科)
- 松田 秀一(京都大学 大学院医学研究科)
- 秋山 治彦(岐阜大学 大学院医学系研究科)
- 名越 智(札幌医科大学 生体工学・運動器治療開発講座)
- 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
- 福島 若葉(公立大学法人大阪 大阪市立大学大学院医学研究科)
- 稲葉 裕(横浜市立大学 医学部)
- 山本 卓明(福岡大学 医学部)
- 中島 康晴(九州大学 大学院医学研究院)
- 神野 哲也(獨協医科大学 医学部)
- 兼氏 歩(金沢医科大学 医学部)
- 坂井 孝司(山口大学 大学院医学系研究科)
- 三島 初(筑波大学 医学医療系)
- 加畑 多文(金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科)
- 上杉 裕子(神戸大学 大学院保健学研究科)
- 山崎 琢磨(国立病院機構呉医療センター 中国がんセンター 整形外科)
- 三木 秀宣(国立病院機構大阪医療センター 整形外科)
- 関 泰輔(名古屋大学 医学部附属病院)
- 仲宗根 哲(琉球大学 医学部附属病院)
- 高橋 大介(北海道大学 北海道大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)は、青・壮年期に好発し、股関節機能障害をきたし歩行困難となる重篤な疾患である。その病態は、大腿骨頭が虚血性壊死に陥り、壊死骨圧潰することで股関節が変形し、疼痛や機能障害を起こす。しかしながら、大腿骨頭が虚血にいたる詳細な病因・病態は不明である。病因・病態解明を目的とし、以下4点の重点研究課題について多施設研究を行う。
研究方法
1)定点モニタリングシステムの継続による疫学像の把握
世界に類を見ない大規模な疫学調査を継続することにより、本症の疫学像と記述疫学特性の経年変化を把握し、分析疫学的手法を用いて喫煙を含めた最新のONFHのリスク因子を分析し、発生予防につながる因子を探索する。また、臨床個人調査票のデータと比較検討を行い、その有用性について検証する。
2)精度の高い診断基準の検証
壊死骨再生治療のため無症状のstage1の早期診断法を確立することが残された課題である。Stage 1のMRI所見の特徴や自然経過からその診断の標準化を進め、鑑別が必要な他疾患の混入を減少させる。
3)重症度分類の確立とQOL評価
定点モニタリングデータやQOL評価データを疫学的手法を用いて解析し、QOLを加味した重症度分類を確立する。
4)特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定と検証
平成30年度に策定したガイドライン試案を、日本整形外科学会ホームページ掲載を通じパブリックコメントを募って最終修正を行い、令和元年度に日本整形外科学会理事会に承認を得た上で公表、発刊を行う。その上で市民公開講座開催やホームページ掲載等を通じ、啓蒙活動を行う。さらには国際基準を検討するARCO(Association Research Circulation Osseous)国際学会や米国整形外科学会参加を含め、国際的に研究成果の発表を行う。
世界に類を見ない大規模な疫学調査を継続することにより、本症の疫学像と記述疫学特性の経年変化を把握し、分析疫学的手法を用いて喫煙を含めた最新のONFHのリスク因子を分析し、発生予防につながる因子を探索する。また、臨床個人調査票のデータと比較検討を行い、その有用性について検証する。
2)精度の高い診断基準の検証
壊死骨再生治療のため無症状のstage1の早期診断法を確立することが残された課題である。Stage 1のMRI所見の特徴や自然経過からその診断の標準化を進め、鑑別が必要な他疾患の混入を減少させる。
3)重症度分類の確立とQOL評価
定点モニタリングデータやQOL評価データを疫学的手法を用いて解析し、QOLを加味した重症度分類を確立する。
4)特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドラインの策定と検証
平成30年度に策定したガイドライン試案を、日本整形外科学会ホームページ掲載を通じパブリックコメントを募って最終修正を行い、令和元年度に日本整形外科学会理事会に承認を得た上で公表、発刊を行う。その上で市民公開講座開催やホームページ掲載等を通じ、啓蒙活動を行う。さらには国際基準を検討するARCO(Association Research Circulation Osseous)国際学会や米国整形外科学会参加を含め、国際的に研究成果の発表を行う。
結果と考察
定点モニタリングでは、新患症例は2017~2019年の3年間に確定診断された287症例450関節について、男性では40歳代、女性では60歳代の割合が高かった。全身ステロイド投与歴「あり」と報告された者は160症例(56%)であり、投与対象疾患はSLEが最多であった(10%)。移植歴、習慣飲酒歴、喫煙歴が「あり」と報告された者は、それぞれ9症例(3%)、147症例(52%)、118症例(41%)であった。
診断基準に関し、定点モニタリングに登録されている病期1 (stage 1) の追跡調査が行われ、86%が診断項目1項目でstage1 ONFHと診断されており、両側性のONFHについて、反対側のONFHの有無に関わらず、約半数がONFHの確定診断に至っている現状が明らかとなった。さらに、病型分類と単純X線像での骨硬化像出現の関連が示された。
ONFH保存的治療症例は初診時に、手術加療例は術前に股関節評価尺度である日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)、Oxford Hip Score(OHS)、包括的健康QOL尺度であるSF-12(PCS: 身体的, MCS: 精神的, RCS: 役割/社会的)を用いて調査を行った。17施設の初診患者, 手術前患者 合計274名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特にstage 3A、stage 3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果より、診療ガイドラインを、1.疫学、2.病態、3.診断、4.保存治療、5.手術治療:骨移植、細胞治療、6.手術治療:骨切り術、7.手術療法:人工股関節置換術の7つの章を決定し、Pubmed及び医中誌から文献を選択し、エビデンスをもとにガイドライン試案を作成した。この試案に対して関連学会においてシンポジウムを開催し討議を行い、ガイドラインの修正を行い、令和元年10月、特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019を発刊した。
診断基準に関し、定点モニタリングに登録されている病期1 (stage 1) の追跡調査が行われ、86%が診断項目1項目でstage1 ONFHと診断されており、両側性のONFHについて、反対側のONFHの有無に関わらず、約半数がONFHの確定診断に至っている現状が明らかとなった。さらに、病型分類と単純X線像での骨硬化像出現の関連が示された。
ONFH保存的治療症例は初診時に、手術加療例は術前に股関節評価尺度である日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)、Oxford Hip Score(OHS)、包括的健康QOL尺度であるSF-12(PCS: 身体的, MCS: 精神的, RCS: 役割/社会的)を用いて調査を行った。17施設の初診患者, 手術前患者 合計274名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特にstage 3A、stage 3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果より、診療ガイドラインを、1.疫学、2.病態、3.診断、4.保存治療、5.手術治療:骨移植、細胞治療、6.手術治療:骨切り術、7.手術療法:人工股関節置換術の7つの章を決定し、Pubmed及び医中誌から文献を選択し、エビデンスをもとにガイドライン試案を作成した。この試案に対して関連学会においてシンポジウムを開催し討議を行い、ガイドラインの修正を行い、令和元年10月、特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019を発刊した。
結論
定点モニタリングによる男女での年齢分布・関連因子は異なっており、男性では40歳代、女性では60歳代の割合が高かった。ONFH診断について、MRI診断項目1項目のみでの病期1のONFHの確定診断は信頼性が低いと考えられた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特に3A、3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。これらの結果を踏まえ、エビデンスとして文献を選択し、診療ガイドライン試案を発刊した。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
-