文献情報
文献番号
201806012A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職員確保対策に向けた看護職及び医療機関等の実態調査
課題番号
H30-特別-指定-012
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
武村 雪絵(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 佐々木 美奈子(東京医療保健大学 医療保健学部)
- 米倉 佑貴(聖路加国際大学 大学院看護学研究科)
- 國江 慶子(東京大学 大学院医学系研究科)
- 市川 奈央子(東京大学 大学院医学系研究科)
- 木田 亮平(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、看護師等学校養成所を卒業した看護職が就業・離職・復職をどのように推移しているかの実態、及び、医療機関等の看護職の募集・採用状況の実態を把握し、求職側・求人側の双方のニーズから看護職確保に関する課題整理を行うことを目的とした。
研究方法
1.看護職調査
日本の看護職免許保有者全体像を反映する集団を対象とするため、インターネット調査会社の全モニター登録者から無作為抽出した後、看護職免許保有者をスクリーニングにより抽出する方法(モニター調査)と、看護師等学校養成所の卒業生名簿を用いる方法(卒業生調査)を採用した。対象者には2018年12月~2019年2月、インターネット調査により基本属性の他、就業・離職・復職経験や今後の就業意向等を尋ねた。
2.医療機関等調査
全国の多様な施設から回答を得るため、病院、有床診療所、訪問看護ステーション、介護施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設)の4つの施設区分について、病院は所在地と規模、その他は所在地により層別化し無作為抽出した。病院3060施設、有床診療所500施設、訪問看護ステーション600施設、介護施設は506施設ずつ計1012施設を抽出し、2019年1~2月、質問紙郵送法にて施設の概要や看護職の採用状況等を尋ねた。また、多機能の施設を運営し、看護職を法人として募集・採用する2法人に補足的にヒアリング調査を実施した。
日本の看護職免許保有者全体像を反映する集団を対象とするため、インターネット調査会社の全モニター登録者から無作為抽出した後、看護職免許保有者をスクリーニングにより抽出する方法(モニター調査)と、看護師等学校養成所の卒業生名簿を用いる方法(卒業生調査)を採用した。対象者には2018年12月~2019年2月、インターネット調査により基本属性の他、就業・離職・復職経験や今後の就業意向等を尋ねた。
2.医療機関等調査
全国の多様な施設から回答を得るため、病院、有床診療所、訪問看護ステーション、介護施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設)の4つの施設区分について、病院は所在地と規模、その他は所在地により層別化し無作為抽出した。病院3060施設、有床診療所500施設、訪問看護ステーション600施設、介護施設は506施設ずつ計1012施設を抽出し、2019年1~2月、質問紙郵送法にて施設の概要や看護職の採用状況等を尋ねた。また、多機能の施設を運営し、看護職を法人として募集・採用する2法人に補足的にヒアリング調査を実施した。
結果と考察
1.看護職調査
全モニター登録者から無作為抽出した673,137名にスクリーニング調査への協力を依頼し、看護職免許保有者のうち研究参加に同意し回答した先着1,291名分のデータから不誠実回答を除く795名(有効回答率61.6%)を分析対象とした。卒業生調査は専門学校1校の参加に留まったため参照データとした。分析の結果、現在の就業状況[就業中62%、非就業34%、看護職未経験4%]、免許取得後期間に占める看護職としての就業期間割合[離職期間が全くない場合を1.0とすると、50歳以下平均0.79、40歳以下平均0.82、30歳以下平均0.84]、転職の実態[転職経験者7割。少なくとも8施設目まで就職した看護職の半数以上が退職し転職。転職により大規模病院から多様な施設に移動]、就職や転職に伴う看護職の地域移動[一部地域を除くと同一地域内の移動が約8割]、ライフイベントに伴う雇用形態・勤務形態の変更[変更しない者が多いが非正規職員や日勤のみへの変更もあり]、非就業者の復職意向[半数は将来看護職として就業意向があるが条件には個人差]及び未経験者の未就業理由[特に30代以降の免許取得者で条件に合う職場が見つからない]、51歳以上看護職の就業継続意向[定年まで継続6割、定年後も継続意向半数]、看護職を志した動機[経済的自立、社会貢献]、届出制度の認知状況[聞いたことがない者が34%]を明らかにできた。
2.医療機関等調査
病院998施設(32.6%)、有床診療所101施設(20.2%)、訪問看護ステーション200施設(33.3%)、介護施設237施設(23.4%)から有効回答を得た。雇用中の看護職の年代[病院は病床数が少ないほど平均年齢が高く、有床診療所・介護施設では60歳以上がいる施設も多い]や勤続年数[病院は平均5~14年が多く、他の施設区分では勤続5年未満の職員割合が高い施設が多い]、募集状況[募集のない施設も少なくない。新卒より既卒・中途を募集する施設の方が多い]、受験・入職者数[概ね募集数と一致するが募集に満たない施設もある]、不採用の状況[全施設区分で不採用あり]とその理由[コミュニケーションスキル、雇用条件の希望、経歴]がわかった。多様な人材の募集・採用状況[全施設区分で役職雇用や認定・専門看護師の募集があったが採用できていない施設もある。60歳以上の新規雇用は全施設区分で報告]や募集活動[ナースセンター・ハローワークの利用率が高いが採用につながったと感じる割合は6割程度]、採用や定着につながった施策[育児支援や柔軟な雇用形態、病院では教育体制]、2019年度の採用見込み[例年通りが最も多く、減らす方針より増やす方針が多い]を明らかにできた。
全モニター登録者から無作為抽出した673,137名にスクリーニング調査への協力を依頼し、看護職免許保有者のうち研究参加に同意し回答した先着1,291名分のデータから不誠実回答を除く795名(有効回答率61.6%)を分析対象とした。卒業生調査は専門学校1校の参加に留まったため参照データとした。分析の結果、現在の就業状況[就業中62%、非就業34%、看護職未経験4%]、免許取得後期間に占める看護職としての就業期間割合[離職期間が全くない場合を1.0とすると、50歳以下平均0.79、40歳以下平均0.82、30歳以下平均0.84]、転職の実態[転職経験者7割。少なくとも8施設目まで就職した看護職の半数以上が退職し転職。転職により大規模病院から多様な施設に移動]、就職や転職に伴う看護職の地域移動[一部地域を除くと同一地域内の移動が約8割]、ライフイベントに伴う雇用形態・勤務形態の変更[変更しない者が多いが非正規職員や日勤のみへの変更もあり]、非就業者の復職意向[半数は将来看護職として就業意向があるが条件には個人差]及び未経験者の未就業理由[特に30代以降の免許取得者で条件に合う職場が見つからない]、51歳以上看護職の就業継続意向[定年まで継続6割、定年後も継続意向半数]、看護職を志した動機[経済的自立、社会貢献]、届出制度の認知状況[聞いたことがない者が34%]を明らかにできた。
2.医療機関等調査
病院998施設(32.6%)、有床診療所101施設(20.2%)、訪問看護ステーション200施設(33.3%)、介護施設237施設(23.4%)から有効回答を得た。雇用中の看護職の年代[病院は病床数が少ないほど平均年齢が高く、有床診療所・介護施設では60歳以上がいる施設も多い]や勤続年数[病院は平均5~14年が多く、他の施設区分では勤続5年未満の職員割合が高い施設が多い]、募集状況[募集のない施設も少なくない。新卒より既卒・中途を募集する施設の方が多い]、受験・入職者数[概ね募集数と一致するが募集に満たない施設もある]、不採用の状況[全施設区分で不採用あり]とその理由[コミュニケーションスキル、雇用条件の希望、経歴]がわかった。多様な人材の募集・採用状況[全施設区分で役職雇用や認定・専門看護師の募集があったが採用できていない施設もある。60歳以上の新規雇用は全施設区分で報告]や募集活動[ナースセンター・ハローワークの利用率が高いが採用につながったと感じる割合は6割程度]、採用や定着につながった施策[育児支援や柔軟な雇用形態、病院では教育体制]、2019年度の採用見込み[例年通りが最も多く、減らす方針より増やす方針が多い]を明らかにできた。
結論
本研究により、潜在看護職を含む看護職の就業状況や全国の多様な医療機関等の看護職採用状況など貴重な資料を得た。結果からは、看護職が転職を繰り返すことを前提とした確保策の必要性が示され、キャリアデザインの支援、転職を前提とした継続教育・継続学習と雇用される力(エンプロイアビリティ)の育成、30代以降の新規免許取得者の就業支援、早期からの転職支援、資格や経験を持つ看護職の転職支援、多様な人材をタイムリーに雇用につなぐ仕組み等の必要性が示唆された。届出制度の利活用やナースセンターの機能強化、看護職のポートフォリオ作成と活用の支援が有効だと思われる。
公開日・更新日
公開日
2019-07-10
更新日
-