地域医療連携システムの医療経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
201520038A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療連携システムの医療経済評価に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-035
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 博(山口大学大学院医学系研究科)
  • 渡邉 直(聖路加国際大学教育センター)
  • 白鳥 義宗(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療連携システムの継続性、有効性等について系統だった議論は、まだほとんどなされていない。もとより医療情報システムは多面的な有用性が期待され、導入が進んできたが、多くの投資がなされているにもかかわらず、系統的評価をもとにした費用対効果の検討はなされていない。そこで、地域医療連携システムにおける費用対効果の評価に資することを目的として、システマティクレビュー、事例調査とメジャーの抽出、効果の測定と評価の試行、地域医療連携システム・効果メジャーのフレームワークの構築を行った。
研究方法
文献検索はHIEを中心に検討した。また、NDBを用いて地域医療連携システムが5年以上稼働している二次医療圏と、これと人口年齢構成、糖尿病・代謝疾患の患者頻度が類似の二次医療圏を2箇所選択して分析した。1施設内の取り組みとして画像の共有がもたらす医療経済上の評価等を検討した。さらに岐阜地域の地域連携クリニカルパスの取り組みを対象に、地域での医療機関連携ならびに情報共有が、地域の医療レベルの向上、健康水準の引き上げに繋がる可能性について検討した。個々の研究結果に基づいて地域医療連携システムの効果メジャーのフレームワークを構築した。
結果と考察
HIEの効果に関する文献的検討を行った。HIEの評価に関する論文は多数みられたが、Hersh等によるHIEのアウトカムに関するシステマティクレビューでは34の研究がアウトカムを提案していると考えられ、エビデンスの質は低度から中程度であるがHIEが医療資源の利用削減に、ケアの質向上に有利に働くことを支持していた。しかしエビデンスの質の面で、今後、包括的リサーチクェスチョン、厳密な研究デザインが必要であると考えられた。NDBを用いて、連携システムが5年以上稼働している二次医療圏1箇所(連携システム導入群と非導入群を含む)と、人口年齢構成、糖尿病・代謝疾患の患者頻度が類似の2次医療圏2箇所を比較した。重回帰分析の結果、一部の診療内容および合併症について連携システムを導入している医療機関の患者群で経年的変化を認めたが、診療報酬請求額には変化を認めなかった。1急性期病院において、2014年度の外部医療機関からの画像取込実態調査を実施したところ、316件の検査が重複せず診療利用されたと判断され、一定の節減効果が認められた。岐阜地域の肝炎のクリニカルパスを例に中間アウトカムをエコー検査の回数として検討したところ、パス群、院内群、紹介群でエコーの回数、腫瘍の最大径に有意差が認められた。生存率については有意な差を認めなかった。地域医療連携システムの効果メジャーのフレームワークを構築した。評価軸としては、満足度、受入可能度、適切さ、能力、有効性、効率性、安全性、継続性の8軸を、測定対象領域は、連携システム自体、システム利用状況、システム利用による効果とし、それぞれサブカテゴリを設定して本研究を通じて得られたメジャーの例を示した。

結論
文献的検討では、費用効用を含む費用対効果、費用便益分析の限られた研究から具体的な効果指標を抽出し主要なものを提示した。今後、国内への適用が考えられる。診療情報共有で期待される医療の効率性の観点から重複検査・入院の減少効果について文献的検討を行ったところ、多くが肯定的な結果であったが、研究結果の内的・外的妥当性に対する考慮が重要と考えられた。NDBを用いた、連携システム導入を行っている医療機関とそれ以外の医療機関に受診する糖尿病患者を対象に、診療内容、合併症頻度、診療報酬請求額などを比較した結果、一部の診療内容および合併症について連携システム導入群で経年的な変化を認めたが、診療報酬請求額には変化を認めなかった。得られた診療状況の経年的な結果が地域医療連携システム本来の効果によるものか明確にする必要がある。地域医療連携システム効果メジャーのフレームワークを構築し、メジャーの例を示した。地域医療連携システムは、関係する要因の複雑さ、多面性から強いエビデンスを生成するデータ分析の困難さは明らかであるが、関係要因を整理し、評価の対象を明確化し、評価項目の概念を整理してメジャーを特定した本フレームワークは今後の医療情報連携システムの向上に貢献し得ると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201520038B
報告書区分
総合
研究課題名
地域医療連携システムの医療経済評価に関する研究
課題番号
H26-医療-指定-035
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療連携システムの継続性、有効性等について系統だった議論は、まだほとんどなされていない。そこで、地域医療連携システムにおける費用対効果の評価に資することを目的として、システマティクレビュー、事例調査とメジャーの抽出、効果の測定と評価の試行、地域医療連携システム効果メジャーのフレームワーク構築を行った。
研究方法
平成26年度は医療情報システム、電子カルテ、地域医療システムを対象に、平成27年度はHIEをキーとして文献的検討を行った。システムの事例調査として平成26年度は国内5箇所の調査を行った。海外については、平成26年度は米国、平成27年度はシンガポールの取り組みについて調査した。また平成27年度は具体的な効果の測定と評価の試行を行った。NDBを用いて地域医療連携システムの効果に関する評価を試みた。また1施設内の取り組みから画像の共有がもたらす医療経済上の評価等を検討した。さらに地域連携クリニカルパスの取り組みを対象に、情報共有が地域の医療レベルの向上、健康水準の引き上げに繋がる可能性について検討した。また、病院情報システムからの客観的指標としうる情報の抽出として2箇所の大学病院にてオーダのチッェク機能を実装し検討した。個々の研究結果に基づいて地域医療連携システムの効果メジャーのフレームワークを構築した。
結果と考察
結果:平成26年度はシステム別の論文の中で用いられた主要な効果指標や、分析方法との関係を検討した。平成27年度はHIEの効果に関する文献的検討を行った。Hersh等によるHIEのアウトカムに関するシステマティクレビューでは、エビデンスの質は低度から中程度であるがHIEが医療資源の利用削減に、ケアの質向上に有利に働くことを支持していた。しかしエビデンスの質の面で、今後、包括的リサーチクェスチョン、厳密な研究デザインが必要であると考えられた。事例調査として、国内で地域医療連携システムを先行して構築している、道南MedIka、青洲リンク、晴れやかネット、KBネット、HMネット、あじさいネットの5箇所を訪問して、その効果、利点、問題点など整理した。海外訪問調査では、医療情報化政策が医療提供のビジョン、医療提供体制の政策ととともに推進されている点で共通していた。NDBを用いて、連携システムが5年以上稼働している二次医療圏1箇所と、人口年齢構成、糖尿病・代謝疾患の患者頻度が類似の2次医療圏2箇所を比較した。重回帰分析の結果、一部の診療内容および合併症について連携システムを導入している医療機関の患者群で経年的変化を認めたが、診療報酬請求額には変化を認めなかった。また、1急性期病院において外部医療機関からの画像取込実態調査を実施し、一定の節減効果が認められた。岐阜地域における肝炎のクリニカルパスについて中間アウトカムをエコー検査の回数として検討したところ、パス群、院内群、紹介群でエコーの回数、腫瘍の最大径に有意差が認められたが、生存率については有意な差を認めなかった。地域医療連携システムの効果メジャーについて8つの評価軸と3つの測定領域からなるのフレームワークを構築しメジャーの例を示した。
考察:海外の文献検索においても医療経済の観点からの研究は限られていた。しかし今後、我が国においても適用可能な方法になり得るものと考えられた。IHEを中心とする文献的検討は一般に、IHEの効果を支持する方向であったが、エビデンスの強度では課題は多い。NDBを用いて得られた診療状況の経年的な結果については地域医療連携システムの効果によるものか否かを明確にする必要がある。NDBについては、個票レベルでの情報をシステム活用の情報と連結するなどによりさらに精緻な検討が可能な重要な情報源となり得ると考えられた。
結論
海外事例における費用効用を含む費用対効果あるいは費用便益分析の限られた研究から具体的な効果指標を抽出し、その主要なものを提示した。これらについては、今後、国内の地域医療連携システムの具体的な医療経済評価への適用が考えられる。またHIEに焦点を当てた検討では、重複検査・入院の減少効果について多くが肯定的な結果であったが、研究結果の内的・外的妥当性に対する考慮が重要と考えられた。NDBを用いた分析結果では、一部の診療内容および合併症について連携システム導入群で経年的な変化を認めたが、診療報酬請求額には変化を認めなかった。地域医療連携システム効果メジャーのフレームワークを構築した。地域医療連携システムは、関係する要因の複雑さ、多面性から強いエビデンスを生成するデータ分析の困難さは明らかであるが、関係要因を整理し、評価の対象を明確化し、評価項目の概念を整理してメジャーを特定した本フレームワークは今後の医療情報連携システムの向上に貢献し得ると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201520038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
海外事例における費用効用を含む費用対効果あるいは費用便益分析の限られた研究から具体的な効果指標を抽出し、その主要なものを提示した。これらについては、今後、国内の地域医療連携システムの具体的な医療経済評価への適用が考えられる。
地域医療連携システムは、関係する要因の複雑さ、多面性から強いエビデンスを生成するデータ分析の困難さは明らかであるが、関係要因を整理し、評価の対象を明確化し、評価項目の概念を整理してメジャーを特定した本フレームワークは今後の医療情報連携システムの向上に貢献し得ると考える。
臨床的観点からの成果
HIEに焦点を当てた検討では、重複検査・入院の減少効果について多くが肯定的な結果であったが、研究結果の内的・外的妥当性に対する考慮が重要と考えられた。NDBを用いた分析結果では、一部の診療内容および合併症について連携システム導入群で経年的な変化を認めたが、診療報酬請求額には変化を認めなかった。地域医療連携システム効果メジャーのフレームワークを構築した。
ガイドライン等の開発
NDBを用いて地域医療連携システムの効果に関する評価を試みた。また1施設内の取り組みから画像の共有がもたらす医療経済上の評価等を検討した。さらに地域連携クリニカルパスの取り組みを対象に、情報共有が地域の医療レベルの向上、健康水準の引き上げに繋がる可能性について検討した。また、病院情報システムからの客観的指標としうる情報の抽出として2箇所の大学病院にてオーダのチッェク機能を実装し検討した。
その他行政的観点からの成果
文献的検討では、費用効用を含む費用対効果あるいは費用便益分析の限られた研究から具体的な効果指標を抽出し主要なものを提示した。今後、国内への適用が考えられる。
その他のインパクト
2016年3月13日「地域医療連携システムの医療経済評価に関する研究」研究班報告およびシンポジウム「地域医療連携システムの効果を考える」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201520038Z