がれきの処理作業など短期間作業にも対応可能なアスベストの簡易測定方法の開発

文献情報

文献番号
201425004A
報告書区分
総括
研究課題名
がれきの処理作業など短期間作業にも対応可能なアスベストの簡易測定方法の開発
課題番号
H24-労働-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 治彦(公益社団法人 日本作業環境測定協会 事業推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 淑人(㈱エフアンドエーテクノロジー研究所)
  • 薮田 十司(北里大学 医療衛生学部)
  • 寺田 和申(公益社団法人 日本作業環境測定協会 精度管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
解体現場等や被災地におけるがれき処理作業では2次的に飛散したアスベスト繊維を吸引する危険性があり、がれき処理労働者の健康影響を考慮すれば、作業時のアスベスト濃度を正確に把握する必要がある。作業時の石綿濃度測定用機器としてリアルタイムファイバーモニター(以下「リアルタイムモニター」という)があるが、がれき処理で飛散する可能性がある繊維状粒子の種類は、当該現場で使用されていたアスベストとアスベスト以外の繊維状粒子として「①有機質繊維(植物繊維や作業服等の衣服から飛散する繊維)と「②無機質繊維(人造鉱物繊維:ロックウール等)」が考えられ、リアルタイムモニターの計測値はこれらの繊維状粒子の全てを含んだ総繊維数濃度として表示される。
 リアルタイムモニターの検出器に取り込まれる前に①及び②の繊維状粒子を除去する前処理装置を開発すれば、リアルタイムモニターの計測値はアスベスト繊維の値と考えられる。
 そこで、リアルタイムモニターで計測値が「アスベスト繊維」とほぼ等しくなるために、アスベスト繊維以外である「①有機質繊維」と「②無機質繊維」を除去する手法の検討を行った。
研究方法
平成26年度は平成24年度に開発した「有機質繊維除去方法」と平成25年度に開発したと「無機質繊維除去方法」の両者を連結し、前処理装置としての可能性について検討を行った。まず前処理装置の検討に先立って、平成25年度に開発した無機質繊維除去方法に関する追加実験を実施した。
 平成25年度に実施したサンプリング系統図で、角閃石系のアスベストであるアモサイトを発生させて残存率を確認するとともに有機質繊維である「パルプ」を発生させて除去率の確認試験を実施した。
次に前処理装置として「有機質繊維除去方法」と「無機質繊維除去方法」の順に連結して実験を行った。この接続方法において耐熱性が弱いアスベストである「クリソタイル」を発生させて、この装置を組み合わせた時における最適条件を実験検討した。
 その後、無機質繊維である「ロックウール」と有機質繊維である「パルプ」繊維をそれぞれ単独で発生させ、溶解率の試験を行った。 
結果と考察
平成25年度に開発した「無機質繊維除去方法」に関する追加実験を実施した結果、アモサイトの残存率は96.2%、パルプの除去率は96.0%であり、良好な結果が得られた。次に前処理装置として「有機質繊維除去方法」と「無機質繊維除去方法」の順に連結した場合の最適条件を検討した結果、「有機質繊維除去方法」の加熱部分の移動空気相の温度は「有機質繊維除去方法」を単独で使用する場合の最適条件である650℃よりも低い500℃程度の方がクリソタイルを発生させて実験した場合、高い残存率の結果が得られた。一方「無機質繊維除去方法」の条件については、単独で使用した場合と同様の条件が最適条件とした。
 次にこの条件で、ロックウールとパルプをそれぞれ発生させて実験した結果、ロックウールの除去率は98.9%で、パルプの除去率は98.7%であり、良好な結果が得られた。
結論
前処理装置の構成は、まず「有機質繊維除去方法」により有機質繊維を除去し、その後に「無機質繊維除去方法」の順に連結することで、ロックウールを除去し、アスベストはこれらの装置の影響を受けることなく残存させる最適条件を見つけることができた。
「有機質繊維除去方法」の条件は、移動空気相の温度が約500℃になるような条件下を通過させる。
「無機質繊維除去方法」は10%のギ酸を使用して、AC電源の電圧を実測値97Vに調整した状態で発振子を稼働させることでギ酸のミストを発生させる。次にそこを通過した移動空気相は、約650℃となるような条件下を通過させた後、リアルタイムモニターに送り込まれるようにした。
今回検討した前処理装置の後にリアルタイムモニターを接続することで、リアルタイムモニターが表示する値はよりアスベスト濃度に近似することが可能になった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201425004B
報告書区分
総合
研究課題名
がれきの処理作業など短期間作業にも対応可能なアスベストの簡易測定方法の開発
課題番号
H24-労働-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 治彦(公益社団法人 日本作業環境測定協会 事業推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 淑人(株式会社エフアンドエーテクノロジー研究所)
  • 山崎 淳司(早稲田大学 創造理工学部)
  • 薮田 十司(北里大学 医療衛生学部)
  • 寺田 和申(公益社団法人日本作業環境測定協会 精度管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
解体現場等や被災地におけるがれき処理作業では2次的に飛散したアスベスト繊維を吸引する危険性があり、がれき処理労働者の健康影響を考慮すれば、作業時のアスベスト濃度を正確に把握する必要がある。作業時の石綿濃度測定用機器としてリアルタイムファイバーモニター(以下「リアルタイムモニター」という)があるが、がれき処理で飛散する可能性がある繊維状粒子の種類は、当該現場で使用されていたアスベストとアスベスト以外の繊維状粒子として「①有機質繊維(植物繊維や作業服等の衣服から飛散する繊維)と「②無機質繊維(人造鉱物繊維:ロックウール等)」が考えられ、リアルタイムモニターの計測値はこれらの繊維状粒子の全てを含んだ総繊維数濃度として表示される。
 リアルタイムモニターの検出器に取り込まれる前に①及び②の繊維状粒子を除去する前処理装置を開発すれば、リアルタイムモニターの計測値はアスベスト繊維の値と考えられる。そこで、リアルタイムモニターで計測値が「アスベスト繊維」とほぼ等しくなるために、アスベスト繊維以外である「①有機質繊維」と「②無機質繊維」を除去する手法の検討を行った。
研究方法
平成24年度は「有機質繊維除去方法」を検討した。有機質繊維を除去する方法は静置状態では電気炉等による加熱処理や低温灰化処理装置等を使用する方法があるが、特に移動空気相中に含まれる有機質繊維を低温灰化処理装置の原理を利用して除去することは難しい。そこで電気炉で高温に加熱された条件下を通過することで有機質繊維の形態を消失させる検討を行った。なお、アスベストの種類の中には熱に弱いクリソタイルが存在する事から、両者の繊維の性質を考慮した最適加熱条件を検討した。平成25年度は「無機質繊維除去方法」の検討を行った。無機質繊維を除去する方法は建材製品中等のアスベスト含有率を分析するJISA1481群の中にギ酸を使用して溶解する分析方法が示されている。そこでギ酸ミストを発生させた条件下を無機質繊維が含む移動空気相を通過させ、除去する装置の開発を検討した。平成26年度は無機質除去方法の追加試験を行うとともに有機質繊維除去方法、無機質繊維除去方法の両者を連結し、前処理装置としての可能性並びに最適条件の検討を行った。
結果と考察
有機質繊維除去方法は市販の管状電気炉の炉心管の中に移動空気相が通過するための直管を通す改造を行った。リアルタイムモニターの吸引流量は2L/minであるため、この時の最適温度条件を確認することとし、有機質繊維(綿、稲わら、パルプ)とクリソタイルをそれぞれ発生させて、除去率と残存率を実験した。その結果、移動空気相の温度が約650℃の時の条件が最も良く、有機質繊維は90%以上を除去でき、クリソタイルは100%近く残存する結果が得られた。無機質繊維除去方法は、超音波ネプライザーによりギ酸ミストを発生させ、無機質繊維を溶解することとした。無機質繊維を含む移動空気相との接触は、「うず流効果」が生まれるような機構にしてギ酸ミストと移動空気相を接触させることとした。接触後の移動空気相は乾燥し、リアルタイムモニターに接続する。この装置を用いて無機質繊維であるロックウールとクリソタイルをそれぞれ発生させ、除去率と残存率を検討した結果、ロックウールは約90%が除去され、クリソタイルは95%以上が残存する結果が得られた。前処理装置の検討は、「有機質繊維除去方法」と「無機質繊維除去方法」の順に装置を組み合わせ、最適条件を検討した結果、「有機質繊維除去方法」の加熱部分の移動空気相の最適温度は500℃程度の方がクリソタイルを発生させて確認した結果、残存率が高い結果が得られた。一方「無機質繊維除去方法」は、単独で使用した場合と同様の条件とした。次にこの条件で実験した結果、ロックウールの除去率は98.9%、パルプの除去率は98.7%であった。
結論
前処理装置の構成は「有機質繊維除去方法」、「無機質繊維除去方法」の順に連結することで、有機質繊維とロックウールを除去し、アスベストは装置の影響を受けることなく残存する最適条件を見つけることができた。「有機質繊維除去方法」の条件は、移動空気相の温度が約500℃になるような条件下を通過させる。「無機質繊維除去方法」は10%のギ酸を使用して、ミストを発生させる。次にそこ通過した移動空気相は、温度が約650℃となるような条件下を通過させた後、アルタイムモニターに送り込まれるようにした。今回検討した前処理装置とリアルタイムモニターを接続することで、リアルタイムモニターが表示する値はよりアスベスト濃度に近似することが可能になった。これらの条件を基に現場で使用可能な可搬型の前処理装置を製作した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201425004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
前処理装置の活用として、がれき集積場の処理作業者周辺の測定の以外にアスベスト含有建材等が使用されている建築物の解体現場の漏洩監視にリアルタイムモニターと共に使用する場合に有効である。解体現場はアスベスト以外の繊維状粒子が存在するため、この前処理装置を使用することで、今までよりもアスベストの漏洩が正確に判断できると考える。さらにアスベスト除去現場の隔離空間の解除の測定にこの前処理装置とリアルタイムモニターを組み合わせればPCM法より時間の短縮化が図れ、その場でアスベストの有無が判断できる。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床的研究ではないので特にありません。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第1回日本繊維状物質研究学術集会(平成25年8月21日(水)東京都 第34回作業環境測定研究発表会・第53回日本労働衛生工学会(平成25年11月14日(木)横浜市
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201425004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,700,000円
(2)補助金確定額
5,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,808,239円
人件費・謝金 191,400円
旅費 86,450円
その他 2,618,275円
間接経費 0円
合計 5,704,364円

備考

備考
少額ではあるが、実験を実施するにあたり、交付額を超過してしまった。

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-