C型肝炎を含む代謝関連肝がんの病態解明及び治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
201423005A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎を含む代謝関連肝がんの病態解明及び治療法の開発等に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府済生会吹田医療福祉センタ-)
  • 西原利治(高知大学 教育研究部 )
  • 橋本悦子(東京女子医科大学)
  • 田中真二(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 植木浩二郎(東京大学 医学部附属病院 )
  • 芥田憲夫(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 川口 巧(久留米大学 医学部)
  • 松浦善治(大阪大学 微生物病研究所 )
  • 勝二郁夫(神戸大学 大学院医学研究科附属感染症センター)
  • 森屋恭爾(東京大学 医学部附属病院)
  • 建石良介(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近増加している「代謝関連肝癌(MALC)」について、(1)C型肝炎肝発癌における代謝因子の解明と肝発癌抑制法の確立、(2)NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制法の確立、(3)NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定、(4)糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定、を中心として臨床と基礎の両面から検討を行なう。危険群の設定と早期治療、新たな予防法の開発が期待される。本研究班における検討によって、上記の肝癌発生の高リスク群を設定し、高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減が期待される。
研究方法
C型肝炎、NASH、非ASH非NASH非B非C型肝疾患に関連する肝癌を「代謝関連肝癌(Metabolism-associated liver cancer, MALC)」として、臨床と基礎の両面から解析を行ない、疾患の実態、病態を明らかにする。
1) C型肝炎肝発癌における代謝因子の重要性の解明と肝発癌抑制治療法の確立
2) NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制治療法の確立
3) NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定による囲い込み
4) 糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定
を中心として、研究者ごと、あるいは班全体での研究を行ない、MALC発生の高リスク群を設定する。これらに対する高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減を図る。
結果と考察
 代謝関連肝癌(MALC)の現状と発生機序を明らかにするため以下の様な検討を行なった。
1) 遺伝子patatin like phospholipase containing 3(PNPLA3) I148Mはtype 4 NASHに特異的(p-value 1.34×10-29, HWE p<10-7)かつ発癌感受性遺伝子である事を証明した(p-value 1.7×10-9)。
2) 非ウイルス性肝癌の癌部遺伝子発現では、糖尿病と年齢に正相関する群ではmRNA metabolic processに関連する遺伝子群で異常が認められた。糖尿病かつ肥満で発現上昇する非癌部遺伝子としてCTGFを同定した。
3) 摂食でERストレスが一過性に惹起され、その終止シグナルとしてコシャペロン分子Sdf2l1を同定した。肝臓においてSdf2l1をノックアウトすると、糖代謝が障害され脂肪合成が亢進した。
4) ApoA群、ApoC群、およびApoEに共通して存在する、両親媒性のアルファへリックスがHCVの粒子産生に重要であることが示唆された。
5) HCV NS5A蛋白質により細胞内転写因子HNF-1αのライソソーム依存性分解が促進され、GLUT2の発現が抑制され糖代謝異常が起こる。
6) HCV core蛋白発現系を用いピルビン酸、多価不飽和脂肪酸が腫瘍マーカーでもあるSCD-1(Δ9不飽和酵素)発現抑制によって肝臓の脂肪化、不飽和化抑制をもたらすことを確認した。
7) 非B非C型肝細胞癌データに階層別クラスタリングを行い、非B非C型肝癌は5つのカテゴリーに分別できた。近年の増加はカテゴリー1(高齢中等度飲酒男性)、5(非飲酒メタボリック男性)によるものであった。従来考えられてきた「高度飲酒」群や「NASH」とは異なったカテゴリーの、より一般的といえる「軽度肥満、そこそこ飲酒」の男性が肝癌のリスクに曝されていることが初めて明らかとなった。
 以上の様に、「代謝関連肝癌(MALC)」の解析を行ない、その病態を探り、高リスク群を設定し、さらに肝発癌抑制法を開発し適用していくことで、これらの疾患の病態・肝発癌制御が可能になると考えられた。
結論
1) 肝細胞癌は我が国の保健行政、医療の最大の問題の一つである。C型、B型肝炎に関連した肝癌が多くを占めるが、最近は両者陰性である『非B非C型肝癌』の増加傾向が見られ、対策確立が急務である。
2) 非B非C型肝癌の階層化クラスタリング解析よって、従来言われているNASHやアルコール性肝硬変以外に、肝機能正常高齢男性や肥満と飲酒のリスクを併せ持つ集団など新たな背景集団を抽出することができた。C型肝炎、NASH、非ASH非NASHの非B非C型肝疾患に関連する肝癌を「代謝関連肝癌(MALC)」として捉えて解析を行ない、その病態を探り、高リスク群を設定し、さらに肝発癌抑制法を開発し適用していくことで、これらの疾患の病態・肝発癌制御が可能になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201423005B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎を含む代謝関連肝がんの病態解明及び治療法の開発等に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府済生会吹田医療福祉センタ-)
  • 西原利治(高知大学教育研究部医療学系医学部門臨床医学系)
  • 橋本悦子(東京女子医科大学)
  • 田中真二(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 植木浩二郎(東京大学 医学部附属病院 )
  • 芥田憲夫(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 川口 巧(久留米大学医学部)
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所 )
  • 勝二郁夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 森屋恭爾(東京大学 医学部附属病院 )
  • 建石良介(東京大学 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年増加している「代謝関連肝癌(Metabolism-associated liver cancer, MALC)」について、(1)C型肝炎肝発癌における代謝因子の解明と肝発癌抑制法の確立、(2)NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制法の確立、(3)NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定、(4)糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定、を中心として臨床と基礎の両面から検討を行なう。危険群の設定と早期治療、新たな予防法の開発が期待される。本研究班における検討によって、上記の肝癌発生の高リスク群を設定し、高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減が期待される。
研究方法
C型肝炎、NASH、非ASH非NASH非B非C型肝疾患に関連する肝癌を「代謝関連肝癌MALC」として、臨床と基礎の両面から解析を行ない、疾患の実態、病態を明らかにする。
1) C型肝炎肝発癌における代謝因子の重要性の解明と肝発癌抑制治療法の確立
2) NASHの実態解明、病態解析と肝発癌抑制治療法の確立
3) NASH、ASHの診断基準を満たさない非ASH非NASH非B非C型肝癌の実態解明、病態解析、高リスク群の設定による囲い込み
4) 糖尿病患者に発生する肝癌の病態解明と高リスク群の設定
を中心として、研究者ごと、あるいは班全体での研究を行ない、MALC発生の高リスク群を設定する。これらに対する高密度なフォローアップを行なうことで、肝癌の早期発見・治療が可能となり、肝癌患者の予後改善、医療費の削減を図る。
結果と考察
代謝関連肝癌(MALC)の現状と発生機序を明らかにするため以下の様な検討を行なった。
1) 遺伝子patatin like phospholipase containing 3(PNPLA3) I148Mはtype 4 NASHに特異的(p-value 1.34×10-29, HWE p<10-7)、かつ発癌感受性遺伝子である事を証明した。
2) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を基盤としたHCCは、年齢・性をマッチさせたC型肝炎ウイルス関連HCCに比し、主腫瘍径が大きく、steatohepatitic HCC・幹細胞マーカーNanog強発現例が高頻度であった。
3) 非ウイルス性肝癌の癌部遺伝子発現では、糖尿病と年齢に正相関する群ではmRNA metabolic processに関連する遺伝子群で異常が認められた。糖尿病かつ肥満で発現上昇する非癌部遺伝子としてCTGFを同定した。
4) インスリン抵抗性状態の肝臓において、IRS-2が減少しIRS-1が脂質合成に寄与することを明らかにした。
5) HCV NS5A蛋白質により細胞内転写因子HNF-1αのライソソーム依存性分解が促進され、GLUT2の発現が抑制され糖代謝異常が起こる。
6) C型肝炎患者の活性型グレリン値は低下し、アルブミン値と正相関すること、LP-1受容体作動薬は、脂肪酸の代謝調節を介してNASHを改善することが明らかとなった。
7) 非B非C型肝細胞癌データに階層別クラスタリングを行い、非B非C型肝癌は5つのカテゴリーに分別できた。近年の増加はカテゴリー1(高齢中等度飲酒男性)、5(非飲酒メタボリック男性)によるものであった。従来考えられてきた「高度飲酒」群や「NASH」とは異なったカテゴリーの、より一般的といえる「軽度肥満、そこそこ飲酒」の男性が肝癌のリスクに曝されていることが初めて明らかとなった。
 以上の様に、「代謝関連肝癌(MALC)」の解析を行ない、その病態を探り、高リスク群を設定し、さらに肝発癌抑制法を開発し適用していくことで、これらの疾患の病態・肝発癌制御が可能になると考えられた。
結論
1) 肝細胞癌は我が国の保健行政、医療の最大の問題の一つである。C型、B型肝炎に関連した肝癌が多くを占めるが、最近は両者陰性である『非B非C型肝癌』の増加傾向が見られ、対策確立が急務である。
2) 非B非C型肝癌の階層化クラスタリング解析よって、従来言われているNASHやアルコール性肝硬変以外に、肝機能正常高齢男性や肥満と飲酒のリスクを併せ持つ集団など新たな背景集団を抽出することができた。C型肝炎、NASH、非ASH非NASHの非B非C型肝疾患に関連する肝癌を「代謝関連肝癌(MALC)」として捉えて解析を行ない、その病態を探り、高リスク群を設定し、さらに肝発癌抑制法を開発し適用していくことで、これらの疾患の病態・肝発癌制御が可能になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201423005C

収支報告書

文献番号
201423005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
91,000,000円
(2)補助金確定額
91,000,751円
差引額 [(1)-(2)]
-751円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 43,845,950円
人件費・謝金 0円
旅費 4,325,832円
その他 21,828,969円
間接経費 21,000,000円
合計 91,000,751円

備考

備考
利息    0円
自己資金 751円

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-