病・診・介護の連携による認知症ケアネットワーク構築に関する研究事業

文献情報

文献番号
201418002A
報告書区分
総括
研究課題名
病・診・介護の連携による認知症ケアネットワーク構築に関する研究事業
課題番号
H24-認知症-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 恒一(杏林大学 医学部高齢医学)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 章敬(国立長寿医療研究センター)
  • 小田原 俊成(横浜市立大学附属市民総合医療センター・精神医療センター)
  • 旭 俊臣(旭神経内科リハビリテーション病院)
  • 木之下 徹(医療法人社団こだま会こだまクリニック)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
三鷹市と武蔵野市における地域包括ケアの構築のため、これまで、かかりつけ医もしくは相談医(医師会)、専門医療機関(杏林大学病院他)、在宅相談機関(地域包括支援センター他)の三者の連携組織である“三鷹武蔵野認知症連携の会”活動を行ってきた。本研究では認知症連携をさらに推進、拡大するために、①三鷹市, 武蔵野市での連携推進、近隣地区(調布市, 小金井市, 府中市, 狛江市)での連携事業拡大、②認知症啓発冊子の効用検証を目的として以下の研究を行った。
研究方法
<認知症連携組織の構築ならびに協議会の運営> 神﨑(研究代表者)は三鷹市・武蔵野市での、かかりつけ医または相談医、専門医療機関、在宅相談機関の代表者(約40名)との定期的な認知症連携会議開催を継続した。また、“三鷹武蔵野認知症連携の会”と同様の連携組織を近隣の調布市、小金井市、府中市、狛江市でも構築し、各市ならびに三鷹市、武蔵野市を加えた6市全体の協議会を開催した。<在宅相談機関向け認知症対応マニュアルの利用とその効用を検証するためのアンケートの作成、運用と効果検証> 主任研究者と4人の研究分担者で協働して作成した在宅向け認知症啓発冊子「認知症のことで困ったら」を、連携活動を行っている6市ならびに研究分担者が所属する地域に配布した。また同時に、アンケートを配布し、認知症への理解が深まるか、認知症者への対応、家族の介護負担が変わるかなどについて調査した。
結果と考察
<認知症連携組織の構築ならびに協議会の運営> “三鷹武蔵野認知症連携の会”活動を平成26年度も継続して行った(計4回)。また、調布市で6回、小金井市2回、府中市で2回連携協議会を開催し、医療と介護の連携活動を進めた。なお、調布市と小金井市では三鷹・武蔵野情報交換シートを参考に独自の情報交換シートの運用を開始した。さらに、6市全体の協議会を11月に開催した。また、6つの各都市で、市民向けの認知症啓発セミナーを数多く開催し、地域全体での認知症に対する理解を深めるよう努めた。<在宅相談機関向け認知症対応マニュアルの利用とその効用を検証するためのアンケートの作成、運用と効果検証> 在宅、在宅相談機関向け認知症啓発冊子「認知症のことで困ったら」(40頁)を作成し、上記6市のほか、愛知県知多北部地域、横浜市、千葉県松戸市、群馬県、東京都品川区の関係各所に配布した。また、同時にアンケート(倫理委員会承認)を配布し、冊子配布の効果について検証した。357件回収し解析した結果、冊子の中では“認知症の症状”、“行動心理症状を予防する家族ケア”などの項目が参考になったとの意見が多かった。また、冊子を読んで家族の認知症者への対応の仕方が変わったと思うかの問いに対して、「少し変わった」という回答がもっと多かった。一方、介護負担が変わったかの問いに対しては「変わらない」、認知症の方本人の様子が変わったと思うかの問いに対しても「変わらない」、この冊子を読んで、医師やその他の人に相談する必要が減ったと思いますか?の問いに対しても「減ったとは思わない」の回答がが多く、必ずしも冊子だけで十分な効果を期待することは難しかった。しかしながら一方で、本冊子を他の人にも薦めたいとの回答は非常に多く、40頁と少冊子としては認知症の啓発効果はあったと考える。
 本研究の最終的な目標は、普遍的な病・診・介護認知症ケアネットワーク構築である。もともと、三鷹市、武蔵野市で始めた地域連携であるが、現在、同様の連携システムを小金井市、調布市、府中市、狛江市でも展開中である。各市とも三鷹・武蔵野情報交換シート1~6の利用が始めている。すでに実績のある方法を用いることで連携が始めやすくなったと考えられえる。連携開始から1年以上が経過しているが、市によって進捗が大きく異なる事実が確認されており、今後の各市の連携に関する進捗について引き続き観察していく予定である。
結論
三鷹市・武蔵野市での連携協議会を継続して開催した。また、これをロールモデルとして、近隣の調布市、小金井市、府中市、狛江市の4都市でも同様の連携活動を推進した。また、認知症の啓発を目的として、講演会、研修会以外に、在宅向け認知症対応マニュアル“認知症のことで困ったら”という小冊子を関係各所に配布した。そして、啓発効果をアンケートで確認した結果、“認知症の症状”、“行動心理症状を予防する家族ケア”などの項が参考になり、マニュアルの利用によって認知症者への対応の仕方が変わる傾向を確認することができた。このことから、冊子を用いた認知症啓発はポピュレーションアプローチとして一定の効果をあげたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201418002B
報告書区分
総合
研究課題名
病・診・介護の連携による認知症ケアネットワーク構築に関する研究事業
課題番号
H24-認知症-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
神崎 恒一(杏林大学 医学部高齢医学)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 章敬(国立長寿医療研究センター 脳機能診療部)
  • 小田原 俊成(横浜市立大学附属市民総合医療センター・精神医療センター)
  • 旭 俊臣(旭神経内科リハビリテーション病院)
  • 木之下 徹(医療法人社団こだま会 こだまクリニック)
  • 山口 晴保(群馬大学 大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症地域包括ケア体制の実現のため、三鷹市, 武蔵野市を中心として、近隣の6市で連携体制を構築すること、その際、情報連携ツールを使用し、その効果を検証すること、また、認知症啓発冊子を作成・配布し、その効果を検証することを目的として研究を行った。
研究方法
<認知症連携組織の構築ならびに協議会の運営> 神﨑(研究代表者)は三鷹市・武蔵野市での、かかりつけ医または相談医、専門医療機関、在宅相談機関の代表者(約40名)との定期的な認知症連携会議開催を継続した。また、同様の連携組織を近隣の調布市、小金井市、府中市、狛江市でも構築し、さらに6市全体の協議会を開催した。そのなかで、①三者間双方向型情報交換シート1~6の運用の確認、②シート1の早期診断ツールとしての妥当性の検証、③シート1~3利用の効用の確認を行った。<在宅相談機関向け認知症対応マニュアルの利用とその効用を検証するためのアンケートの作成、運用と効果検証> 在宅向け認知症啓発冊子「認知症のことで困ったら」を作成し、連携活動を行っている6市ならびに研究分担者が所属する地域に配布した。また同時に、アンケートを配布し、認知症への理解が深まるか、認知症者への対応、家族の介護負担が変わるかなどについて調査した。(倫理面への配慮)研究の実施にあたっては「臨床研究に関する倫理指針」を遵守するとともに、各施設の倫理委員会等の承諾を受けて行った。
結果と考察
<認知症連携組織の構築ならびに協議会の運営> “三鷹武蔵野認知症連携の会”活動を平成24年度~26年度に計11回開催した。そのなかで、平成25年度までに三者間双方向型情報交換シート1~3を三鷹市において112例、武蔵野市において80例使用したことを確認した。シートの利用により三者間での情報伝達の円滑化、共有化によって、認知症の早期発見・早期介入、適切な介護サービスの導入、患者・家族の安心感の向上につながることが確認された。また、調布市で8回、小金井市で7回、府中市で6回、狛江市で1回連携協議会を開催した。なお、調布市と小金井市では三鷹・武蔵野情報交換シートを参考に独自の情報交換シートの運用を行った。さらに、6市全体での協議会も3回開催した。<早期診断ツールの作成ならびに検証> 早期診断ツールとして用いているシート1の妥当性について検討した結果、13項目は認知機能、周辺症状の程度、家族の介護負担度と十分高い相関を示し、認知症のスクリーニングとして有用であることが確認された。<在宅相談機関向け認知症対応マニュアルの利用とアンケートによる効果検証> 認知症の啓発を目的として、6市で医療職向け、コメディカル向け、市民向けの認知症啓発セミナーを数多く開催した。しかしながら、このような啓発活動は時間的、人的に限界があるため、在宅、在宅相談機関向け認知症啓発冊子「認知症のことで困ったら」(40頁)を作成し、6市のほか、愛知県知多北部、横浜市、千葉県松戸市、群馬県、東京都品川区の関係各所に配布した。また、同時にアンケートを配布し、冊子配布の効果を検証した。357件を回収し解析した結果、冊子の中では“認知症の症状”、“行動心理症状を予防する家族ケア”などの項目が参考になったとの意見が多かった。また、冊子を読んで家族の認知症者への対応の仕方は、「少し変わった」という回答が最も多かった。一方、介護負担が変わったかの問いに対してはに関しては「変わらない」、認知症の方本人の様子についても「変わらない」、医師やその他の人に相談する必要は「減ったとは思わない」との回答が多く、必ずしも冊子だけで十分な効果を期待できるとは言い難い印象であった。しかしながら一方で、本冊子を他の人にも薦めたいとの回答は非常に多く、少冊子としては、ある程度の認知症啓発効果はあったと考えた。
結論
三鷹市・武蔵野市で認知症連携協議会を定期的に開催し、情報連携シートの運用などを確認した。その結果、シート1は認知症早期発見ツールとして有用であること、シート1, 2, 3の利用によって、情報伝達の円滑化、共有化、適切な介護サービスの導入、患者・家族の安心感の向上につながることが確認された。また、三鷹市・武蔵野市から調布市、小金井市、府中市、狛江市の4都市にも連携活動を広げることができた。また、認知症の啓発を目的として、在宅向け認知症対応マニュアル“認知症のことで困ったら”という小冊子を関係各所に配布した。アンケートによってマニュアル配布効果を確認したところ、十分とは言えないものの、ポピュレーションアプローチとして一定の効果をあげることができた。以上、本研究によって、認知症高齢者ならびにその家族が地域で安心して暮らすための、医療と介護の連携による地域ケアネットワークの構築の礎を築くことができたと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-07-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201418002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で使用した情報交換シート1の認知症スクリーニングツールとしての妥当性を調べた結果、シート1はMMSE、行動障害、家族介護負担度と有意な関連を示すことから妥当性があることが検証された。また、三鷹市と府中市で行った市民公開講座において、認知症にやさしいまち作りのために何が必要かを本人目線と家族目線で調査し、家族に対しては医療体制の充実、相談できる場所を明確にすること、本人にとっては自分の意思を伝えておく仕組み作り、介護や生活支援のためのサービス充実などの必要性が確認された。
臨床的観点からの成果
三鷹市と武蔵野市における地域連携システム構築のため本研究は実施されたが、情報交換ツールとしてシート1, 2, 3の運用状況を確認した結果、平成25年度までに三鷹市において112例、武蔵野市において80例の使用が確認された。また、使用した結果、早期発見・早期介入、適切な介護サービスの導入、患者・家族の安心感の向上につながることが確認された。これは取りも直さず、連携がうまくできていることを臨床的に示す結果を示している。
ガイドライン等の開発
H28-認知症-一般-003「認知症地域包括ケア実現を目指した地域社会創生のための研究」において、尾島班との共同作業で「認知症の人・高齢者等にやさしい地域作り手引き~指標の利活用とともに~」を作成した。この中で、病・診・介護の連携を図示した。
その他行政的観点からの成果
三鷹市高齢者計画・第六期介護保険事業計画のなかで「認知症相談の充実と医療機関との連携強化」及び「地域の連携による認知症高齢者への支援」の事業内容として「もの忘れ相談シート」を活用した行政・医療・介護関係者による連携体制の整備、地域における認知症の早期発見・早期診断体制の整備が取り上げられた。また、三鷹市認知症ケアパス「知って安心 認知症ハンドブック」の中で、3者連携の内容が図入で説明されており、地域の認知症ケアネットワークが具現化された。
その他のインパクト
平成25年3月16日三鷹市公会堂、平成28年9月10日三鷹産業プラザ、平成28年10月29日三鷹市さんさん館、平成29年1月15日府中市ルミエール府中、平成29年11月18日三鷹市さんさん館において、市民を対象とした認知症啓発講演会・パネルディスカッションを開催した。また、三鷹市の病・診・介護・行政連携体制についてNHK Eテレ「団塊スタイル」で取り上げられた(平成28年7月8日放送)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2019-05-16

収支報告書

文献番号
201418002Z