特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201412042A
報告書区分
総括
研究課題名
特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾形 裕也(東京大学政策ビジョン研究センター)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 津下 一代(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 循環器内科学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 公衆衛生学部門)
  • 宮本 恵宏(国立循環器研究センター 予防健診部、研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学・公衆衛生学)
  • 古井 祐司(東京大学政策ビジョン研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、循環器疾患の発症リスクを軽減させる予防介入のあり方を最新のエビデンスや国際動向、技術動向を踏まえて検討した。
研究方法
本研究班では、「健診項目等の検討」、「施策実効性の検討」の課題に応じて、2つの分科会を設けた。 健診項目等の検討では、循環器疾患の発症リスク軽減の視点から、予防介入が可能であることや若年層のリスク評価なども考慮し、健診項目、対象、頻度などを検討する。検討にあたっては、エビデンス調査やこれまでのコホート研究などを踏まえる。施策実効性の検討では、健診受診率を集団単位で向上させる施策を検討する。初回の健診受診を若年で実現する仕組みと、受診者が経年で受診を継続する方策について、医療保険の運営と連携して実現できるよう検討する。また、受診後の行動変容を促すための、医療保険者が健診データに基づき意識づけを行う事業スキームを保険者団体、健診機関等との協力のもと設計・検証する。
結果と考察
各検査項目の異常による脳・心血管疾患等の発症リスクが、必須健診項目(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙歴)と独立して認められるか否かを解析した結果、今回検証した多くの健診項目は独立指標として検出された。しかしながら、必須健診項目以外の異常所見には、明確なエビデンスがある介入手段がないことが多く、実際の予防は併存する必須健診項目への介入となる。すなわち追加検査項目の異常と必須健診項目の異常が合併していた場合、後者の管理を厳格に行うことでリスク低減を図ることができるかが重要となる。また、一般市民におけるCKDの有病率、他の危険因子や蛋白尿との重複、肝機能検査異常の有所見率を明らかにし、スクリーニングの観点からこれらの意義を評価した。地域集団では、eGFRの推計を行うことで健診受診者の約10%を新たにCKDとして拾い上げると考えられた。しかしCKDの大部分は既に血圧高値や耐糖能異常を合併し保健指導の対象であるため、改めてCKDの検査を導入する意義は薄い。しかし受診勧奨の強弱をCKDの有無で階層化し、早期に医療管理を徹底するという視点からは意義がある。肝機能検査については、特定健診を内臓脂肪やMetS対策として注目すれば、AST(GOT)の実施意義は不明である。一方、健診受診後に意識・行動変容を促すICTプログラムへの登録が経年受診率を上げる方向に働いた。特に、初めて健診を受けた際や受診間隔が空いて受診した者へ効果的である可能性が示唆された。健診受診を保健事業の起点と捉え、健診の動線上に健診受診後に自身の健康状況を理解し、必要な行動変容を促す仕掛けを導入することが重要と考える。また、データヘルスの導入に伴い、他保険者との比較に基づく集団の特性(健康分布)が明確となり、予防介入施策の検討がしやすくなった。分析結果から、重大な疾患の発症を防ぐ視点から、肥満化する前段階、リスクが小さい段階から働きかけること(早期介入)の重要性が示された。一方、特定保健指導該当率を職場における健康文化を反映するひとつの目安と捉えたところ、特定保健指導該当率が悪化率、改善率と相関を示したが、改善率との相関(0.5強)に比べて、悪化率との相関(0.9強)が高いことから、個々人の行動変容を促し、職場や地域の環境整備を図り、加齢に伴う集団の健康状況の悪化を止めることを目指す保健事業の設計が不可欠と考える。
結論
循環器疾患の予防を目的とした健診の設計に向け、脳・心血管疾患の発症予測能、予防介入可能性の視点から、既存および新規の項目を検討した。その結果、多くの健診項目は発症予測能が必須健診項目(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙歴)と独立して認められたが、明確なエビデンスがある介入手段がないことが多く、医学的管理を厳格に行うことでリスク低減を図ることができるか否かは重要なポイントとなる。一方、健診受診後に意識・行動変容を促すICTプログラムへの登録(参加)は経年受診率を上げる方向に働いた。特に、初めて健診を受けた際や受診間隔が空いて受診した者へ効果的である可能性が示された。また、重大な疾患の発症を防ぐ視点から、肥満化する前段階、リスクが小さい段階から働きかけること(早期介入)、個々人の行動変容を促し、職場や地域の環境整備を図り、加齢に伴う集団の健康状況の悪化を止めることの重要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201412042Z