癌幹細胞を制御する転写因子を標的とした難治性乳癌治療法の開発

文献情報

文献番号
201411037A
報告書区分
総括
研究課題名
癌幹細胞を制御する転写因子を標的とした難治性乳癌治療法の開発
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 博昭(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 長村 文孝(東京大学 医科学研究所)
  • 片岡 一則(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 西山 伸宏(東京工業大学 資源化学研究所)
  • 谷 憲三朗(九州大学 生体防御医学研究所)
  • 平田 公一(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座)
  • 前佛 均(国立がん研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
124,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳がんにおいて癌幹細胞形質とPRDM14が密接に関連し、がんの増殖・転移・抗癌剤耐性に関与することを示した。PRDM14は核内転写因子であることから、その発現抑制を可能とする核酸医薬によりがん幹細胞を撲滅することを目的とした。さらに上記目的のために重要である、「核酸創薬のプラットフォームを確立すること」を目的として研究を推進した。これらの成果を積み重ね、最終的に、「日本発のオリジナルな標的に対する医師主導治験へ歩みを進めること」を最終目的としている。
研究方法
A)PRDM14分子を標的とした核酸医薬のPOC取得
①培養細胞・初代培養細胞を用いて、NGSによるChIP-seq、高性能FCMによる表面抗原解析、免疫組織学的検討を実施。
②キメラ型RNAiを用いた多角的なin vitro実験を実施。
③数種の核酸ドラックデリバリーシステム(DDS)を蛍光標識を使用したspheroidによる到達能、血中での滞留能、臓器への集積性、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍への到達・抗腫瘍効果で評価。
②③の併用についてin vivoモデルで、高い抗腫瘍効果、転移抑制能を核酸単剤、化療剤併用で評価。
B)PRDM14分子に関する臨床検体POC取得
①臨床情報が判明している組織・患者血清を入手(研究・倫理審査を実施済)。
②qRT-PCR、発現マイクロアレイ、免疫組織化学法により、PRDM14発現と臨床病理学的因子との関連性を評価。
③発現マイクロアレイ法により分泌タンパク質に注目し血清コンパニオンマーカー候補を選定。
④サスペンションアレイによる患者血清を使用した血清コンパニオンマーカー候補の絞り込み。
C)核酸医薬のGMP製造
①複数企業の品質試験・生産能を評価して、キメラRNAiのGMP製造を行う企業を決定。
②Unit PICのGMP製造については、(株)日油と製造検討を実施。
D) 核酸医薬のGLP試験
①キメラRNAiのLC-MS/MSを使用した検出方法の検討。
②ラット・サルでの、(A) siRNA及びユニットPICキャリア複合体分析試験・TKバリデーション、(B) キメラRNAi単独試験 (毒性・用量設定試験)、をGLP試験の実施。
E) 医師主導治験の準備・計画
①長村(医科研)を中心に定期的会合を行う。
②治験プロトコール原案を作成する。
③さらに、治験コーディネーター、及び生物統計専門家を確保。

上記に関しては、倫理面への配慮として、各種法令を順守するとともに、各所属機関委員会の審議を実施している。
結果と考察
下記研究成果に関し追加特許申請を行った(出願番号2014-141278)。PMDAへの事前面談を6月に実施済である。
① 臨床検体によるPRDM14分子の新たなPOC取得
② コンパニオンマーカー候補の同定
③ キメラ型RNAiの治療用配列を決定
④ unit PICを治療用キャリアーとして選定
⑤ より高効率・低毒性の新規unitPICの同定
⑥ in vivoモデルで、高い抗腫瘍効果、転移抑制能を実証(薬効試験)
⑦ GMP準拠のキメラ型RNAiの合成、安定供給体制を構築、また、GMP準拠の新規核酸キャリアの合成に必要な体制を構築
⑧ キメラ型RNAiの高感度測定系を構築。(A)分析試験・TKバリデーション、(B) キメラRNAi単独試験(毒性・用量設定試験)を完了。
【調整費による研究成果】
項目1 核酸DDSに関して:調整費により、新規unitPICに関してGMP準拠での合成体制を構築、非臨床試験が進行中。
項目2 GMP準拠製造に関して:GMP準拠での大量核酸合成が可能な企業と製剤化を前提に開発を推進。新規unit PICに関して、GMP準拠製造体制を構築、大量合成の条件検討を完了。

本分子の発現抑制を可能とする核酸医薬は、がん幹細胞の撲滅に繋がる可能性が示唆された。核酸医薬のハードルとして、①配列特異性・安定性、② 核酸医薬に最適化されたDDSの開発、がある。①はキメラ型RNAiの使用、②はunit PICを剤型として克服した。GMP準拠での合成、供給体制を構築し、各種非臨床試験が進行しており、来年度に試験が終了する。その結果を治験プロトコール原案に反映し、治験審査に進む。
結論
がん治療の最大の課題は、再発・遠隔転移である。標的分子はがんの幹細胞性に関与するため、治療応用によりこれらの事象を抑制することが可能であり、医療現場における必要度が高い。
製剤化を視野に入れた製造体制を構築し、今後の核酸創薬に大きく貢献できる。世界初の核酸医薬であり、多くの困難が想定されるが、核酸医薬の標準化・指針が得られ、日本発の核酸創薬に大きく貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201411037B
報告書区分
総合
研究課題名
癌幹細胞を制御する転写因子を標的とした難治性乳癌治療法の開発
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 博昭(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 長村 文孝(東京大学 医科学研究所)
  • 片岡 一則(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 西山 伸宏(東京工業大学 資源化学研究所)
  • 谷 憲三朗(九州大学 生体防御医学研究所)
  • 平田 公一(札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座)
  • 前佛 均(国立がん研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳がんの幹細胞形質とPRDM14が密接に関連し、がんの増殖・転移・抗癌剤耐性に関与することを示した。本分子は核内転写因子であることから、その発現抑制を可能とする核酸医薬によりがん幹細胞を撲滅することを目的とした。そのために重要である、核酸創薬のプラットフォームの確立を目的として研究を推進した。これらの成果を積み重ね、最終的に、日本発のオリジナルな標的に対する医師主導治験へ歩みを進めることを最終目的としている。
研究方法
A)本分子を標的とした核酸医薬のPOC取得
①培養細胞・初代培養細胞を用いて、NGSによるChIP-seq、高性能FCMによる表面抗原解析、免疫組織学的検討を実施。
②キメラ型RNAiを用いた多角的なin vitro実験を実施。
③複数の核酸ドラックデリバリーシステム(DDS)を蛍光標識を使用したspheroidによる到達能、血中での滞留能、臓器への集積性、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍への到達・抗腫瘍効果で評価。
④in vivoモデルで②③を併用し、高い抗腫瘍効果、転移抑制能を核酸単剤、化療剤併用で評価。
B)本分子に関する臨床検体POC取得
①組織・患者血清を入手(研究・倫理審査を実施済)。
②qRT-PCR、発現マイクロアレイ、免疫組織化学法により、PRDM14発現と臨床病理学的因子との関連性を評価。
③発現マイクロアレイ法により分泌タンパク質に注目し血清コンパニオンマーカー候補を選定。
④サスペンションアレイによる患者血清を使用した血清コンパニオンマーカー候補の絞り込み。
C)核酸医薬のGMP製造
①複数企業の品質試験・生産能を評価、キメラRNAiのGMP製造を行う企業を決定。
②Unit PICのGMP製造は、(株)日油と製造検討を実施。
D) 核酸医薬のGLP試験
①キメラRNAiのLC-MS/MSを使用した検出方法の検討。
②ラット・サルでの、(A)分析試験・TKバリデーション、(B) キメラRNAi単独試験 (毒性・用量設定試験)、の実施。
E)医師主導治験の準備・計画
①長村(医科研)を中心に定期的会合を行う。
②治験プロトコール原案を作成する。
③さらに、治験コーディネーター、及び生物統計専門家を確保。
上記に関しては、倫理面への配慮として、各種法令を順守するとともに、各所属機関委員会の審議を実施している。
結果と考察
本分子を標的とした乳がん幹細胞に対する核酸医薬を確立すべく、日本発の革新的な難治性癌の治療としてPOCを取得した。
【平成24年度】 乳がん細胞・臨床検体を使用して、
①がん幹細胞形質と本分子の密接な関連性を解明。
②病理組織学的因子との関連性解明。
③キメラ型RNAiを用い、in vitro / in vivoモデルを経て2/55配列を同定。
④数種の有力な核酸DDS候補をキメラ型RNAiと評価する系を樹立し評価を開始。
⑤本法が化療剤効果増強、再発・遠隔転移に関与する乳癌幹細胞の撲滅に繋がる根拠を示した。
【平成25-26年度】
①乳がん・膵がん臨床検体による病理組織学的因子との関連性を解明。
②コンパニオンマーカー候補の同定 (遺伝子発現アレイ、サスペンションアレイ等)。
③キメラ型RNAiの治療用配列を決定。
④核酸DDS候補から、安全性が高く、腫瘍集積能を高めたunit PICを治療用キャリアーとして選定。
⑤さらに高効率の新規unit PICを作成、キメラ型RNAiと併用しin vivo (含、転移)で薬効試験。
⑥GMP準拠の合成、供給体制を検討・構築。
⑦GLP施設においてLC-MS/MSによる非標識siRNAの高精度測定系を構築。
⑧ラット、サルで (A)複合体分析試験・TKバリデーション、(B) キメラRNAi単独毒性・用量設定試験。
⑨上記①-④の特許申請(出願番号2014-141278)。
本分子の発現抑制を可能とする核酸医薬は、がん幹細胞の撲滅に繋がる可能性が示唆された。核酸医薬のハードルとして、①配列特異性・安定性、② 核酸医薬に最適化されたDDSの開発、がある。①はキメラ型RNAiの使用、②はunit PICを剤型として克服した。GMP準拠での合成、供給体制を構築し、各種非臨床試験が進行しており、来年度に試験が終了する。その結果を治験プロトコール原案に反映し、治験審査に進む。
結論
本分子はがんの幹細胞性に関与するため、治療応用により再発・遠隔転移を抑制可能である。その発現を抑制する核酸医薬は、既存抗癌剤の効果の増強、経年後の再発、遠隔転移に関与するがん幹細胞の撲滅に繋がり医療現場における必要度は高い。製剤化を視野に入れた製造体制を構築し、また、世界初の核酸医薬であるため、核酸医薬の標準化・指針が得られ、日本発の核酸創薬に大きく貢献できることは間違いない。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-10-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201411037C

収支報告書

文献番号
201411037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
154,635,000円
(2)補助金確定額
154,635,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 98,056,845円
人件費・謝金 17,154,507円
旅費 1,651,424円
その他 7,857,224円
間接経費 29,915,000円
合計 154,635,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-