高精度放射線治療システムの実態調査と臨床評価に関する研究

文献情報

文献番号
201313037A
報告書区分
総括
研究課題名
高精度放射線治療システムの実態調査と臨床評価に関する研究
課題番号
H23-3次がん-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和正(九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 宇野 隆(千葉大学大学院)
  • 戸板 孝文(琉球大学医学部)
  • 角 美奈子(国立がん研究センター)
  • 大西 洋(山梨大学医学部)
  • 古平 毅(愛知県がんセンター中央病院)
  • 小泉 雅彦(大阪大学大学院)
  • 小川 和彦(大阪大学大学院)
  • 権丈 雅浩(広島大学大学院 )
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター)
  • 塩山 善之(九州国際重粒子線がん治療センター)
  • 佐々木 智成(九州大学病院)
  • 手島 昭樹(大阪大学大学院)
  • 熊崎 祐(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 大谷 侑輝(大阪大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,924,000円
研究者交替、所属機関変更
塩山 善之 九州大学大学院(2013年6月まで)→九州国際重粒子線がん治療センターへ(2013年7月から)

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線治療は近年非常な進歩をとげ、先進的な放射線治療機器の導入が進んでいるが、その実態は不明である。本研究の目的は、高精度放射線治療機器導入の実態をサーベイするとともに、ランダムに抽出した施設を訪問調査し、各施設に結果をフィードバックし、本邦の放射線治療の質の向上に大きく寄与することである。
研究方法
平成23年度は高精度放射線治療の質に関する指標を策定し、アンケート調査のためのWeb入力システムを開発した。平成24年度は、全国放射線治療施設へアンケート調査を実施した。また、DICOM-RT取得/参照プロセスを確立し、訪問調査を開始した。平成25年度は、以下に示す6項目を実施した。
結果と考察
①放射線治療全施設アンケート調査
放射線治療の質に関する指標(QI)109項目について、全国の放射線治療施設(789 施設)にアンケートを実施した。まず、Web入力システムを作成、Webにて回答を収集した。さらに未回答施設にアンケートを郵送し、最終的に平成25年4月末で507施設(65%)から回答を得た。結果は報告書にまとめ、各施設にWeb配信を行った。
②DICOM-RT取得/参照プロセスの確立
 個人情報を削除した高精度放射線治療のDICOM-RTデータ(CT画像に線量分布などの放射線治療データを含んだ統一規格)を収集するために、①治療計画装置からのDICOM-RTデータの取得、②DICOM-RTデータの匿名化、③DICOM-RTデータ参照の3つのプロセスを確立した。本研究でのDICOM-RT取得/参照プロセスの確立により、従来施設内でクローズされていた放射線治療計画データを容易に匿名化し、収集、それを解析することが可能となった。
③訪問調査
 上記プロセスを確立した後、昨年度より実際に訪問調査を開始した。平成26年1月末で、全国からランダムに選択した、大学病院等の大規模病院8施設、それ以外の病院9施設、計17施設で調査を実施した。各施設にて画像誘導放射線治療・強度変調放射線治療の実施状況やその方法、呼吸移動対策、品質管理体制などを調査、意見交換を行うとともに、匿名化した221例の治療計画データ(DICOM-RTデータ)を収集した。その解析により、各施設での物理的QA/QCの違い、線量分布、正常組織への線量などに施設間で大きな差があることがわかった。
④高精度放射線治療の標準化のための講習会の実施
  高精度放射線治療の均てん化にはすぐれた教育システムが必要となる。そこで、平成26年1月に「高精度放射線治療の標準化のための講習会」を行った。匿名化した中リスク前立腺癌症例の治療計画CTデータを事前に送付、参加9施設(4大学病院を含む)計12名が強度変調放射線治療にて治療計画を行い、その治療計画を収集・解析し、各施設での治療計画に大きな差があることが判明した。本パイロットスタディに参加した各施設の放射線治療医、診療放射線技師/品質管理士が同一会場に集まり、その差について検討を行い、各施設の治療計画の方法について意見交換を行った。このような同一治療計画データを使用する教育システムは、各施設の違いをより詳しく認識し、よりよい治療計画の作成にきわめて有用であり、新たな教育システムとなる可能性が示唆された。
⑤前立腺癌小線源療法等の普及状況と施設ごとの症例数の調査
 前立腺癌小線源療法は2003年に治療が開始された。その普及状況と施設ごとの症例数の推移の調査を行った。治療開始後1年以上経過した施設にて、2005年では23施設で1412名が治療されており、2011年には、109施設で3793名が治療された。しかし、年間24例以下のみしか治療しない小規模施設数が急増していた。
⑥日本の外部照射機器、放射線治療施設数の国際比較
 外部照射機器、放射線治療施設数の国際比較を行った。日本の放射線治療施設1施設当たりの外照射台数は1.1台であり、先進26カ国平均3.3台に比べ最も小さかった。また癌患者1000人当たりの放射線治療施設数は1.3施設で、先進26カ国平均0.54施設よりも多いことが判明した。他の先進国と比較し、日本は癌患者当たりの放射線治療施設数が多く、その分規模が小さいことが判明した。
結論
本研究により、本邦での高精度放射線治療の実施状況が把握でき、均てん化、集約化への基礎データを得ることができた。また、調査結果を各施設にフィードバックすることにより、放射線治療の質の向上に貢献し、がん医療水準の均てん化に貢献できると考えられる。今後、本研究の成果を利用して、高精度放射線治療の新たな教育システムの開発が可能で、施設間格差の是正、若手医師の教育などに有用なツールとなる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201313037B
報告書区分
総合
研究課題名
高精度放射線治療システムの実態調査と臨床評価に関する研究
課題番号
H23-3次がん-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和正(九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学 国際医療センター )
  • 宇野 隆(千葉大学 大学院)
  • 戸板 孝文(琉球大学 医学部)
  • 角 美奈子(国立がん研究センター)
  • 大西 洋(山梨大学 医学部 )
  • 古平 毅(愛知県がんセンター中央病院)
  • 小泉 雅彦(大阪大学 大学院)
  • 小川 和彦(大阪大学 大学院)
  • 権丈 雅浩(広島大学 大学院)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター)
  • 塩山 善之(九州国際重粒子線がん治療センター)
  • 佐々木 智成(九州大学 大学病院)
  • 手島 昭樹(大阪大学 大学院)
  • 熊崎 祐(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 大谷 侑輝(大阪大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
塩山 善之 九州大学大学院(2013年6月まで)→九州国際重粒子線がん治療センターへ(2013年7月から)

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線治療は近年非常な進歩をとげ、先進的な放射線治療機器の導入が進んでいるが、その実態は不明である。本研究の目的は、高精度放射線治療機器導入の実態をサーベイするとともに、ランダムに抽出した施設を訪問調査し、各施設に結果をフィードバックし、本邦の放射線治療の質の向上に大きく寄与することである。
研究方法
平成23年度に、高精度放射線治療の質に関する指標(QI)を策定する。平成24年度に、QI項目を用いて全放射線治療施設にアンケート調査を実施すると同時に、放射線腫瘍医、医学物理士、保健学科大学院生等により、ランダムに選択した放射線治療施設への訪問調査を行う。平成25年度に訪問調査を継続、その結果を解析し、構造と診療過程の実態を明らかとする。均てん化、集約化の基礎データとして、前立腺小線源療法の普及状況を調べ、また放射線治療施設数等について国際比較を行う。
結果と考察
①放射線治療全施設アンケート調査
放射線治療の質に関する指標109項目を策定し、全国の放射線治療施設(789 施設)にアンケートを実施した。まず、Web入力システムを作成、Webにて回答を収集した。さらに未回答施設にアンケートを郵送し、最終的に平成25年4月末で507施設(65%)から回答を得た。結果は報告書にまとめ、各施設にWeb配信を行った。
②DICOM-RT取得/参照プロセスの確立
 個人情報を削除した放射線治療のDICOM-RTデータ(CT画像に線量分布などの放射線治療データを含んだ統一規格)の解析を行うために、①治療計画装置からのDICOM-RTデータの取得、②DICOM-RTデータの匿名化、③DICOM-RTデータ参照の3つのプロセスを確立した。これにより、従来施設内でクローズされていた放射線治療計画データを容易に匿名化し、収集、それを解析することが可能となった。
③訪問調査
 平成24-25年度に、全国からランダムに選択した大学病院等の大規模病院8施設、それ以外の病院9施設、計17施設の訪問調査を実施した。各施設にて画像誘導放射線治療・強度変調放射線治療の実施状況やその方法、呼吸移動対策、品質管理体制などを調査、意見交換を行うとともに、匿名化した221例の治療計画データ(DICOM-RTデータ)を収集した。その解析により、各施設での物理的QA/QCの違い、線量分布、正常組織への線量などに施設間で大きな差があることがわかった。
④高精度放射線治療の標準化のための講習会の実施
  高精度放射線治療の均てん化にはすぐれた教育システムが必要となる。そこで、平成26年1月に「高精度放射線治療の標準化のための講習会」を行った。匿名化した中リスク前立腺癌症例の治療計画CTデータを事前に送付、参加9施設(4大学病院を含む)計12名が強度変調放射線治療にて治療計画を行い、その治療計画を収集・解析し、各施設での治療計画に大きな差があることが判明した。本パイロットスタディに参加した各施設の放射線治療医、診療放射線技師/品質管理士が同一会場に集まり、その差について検討を行い、各施設の治療計画の方法について意見交換を行った。このような同一治療計画データを使用する教育システムは、各施設の違いをより詳しく認識し、よりよい治療計画の作成にきわめて有用であり、新たな教育システムとなる可能性が示唆された。
⑤前立腺癌小線源療法等の普及状況と施設ごとの症例数の調査
 前立腺癌小線源療法は2003年に治療が開始された。その普及状況と施設ごとの症例数の推移の調査を行った。治療開始後1年以上経過した施設にて、2005年では23施設で1412名が治療されており、2011年には、109施設で3793名が治療された。しかし、年間24例以下のみしか治療しない小規模施設数が急増していた。
⑥日本の外部照射機器、放射線治療施設数の国際比較
 外部照射機器、放射線治療施設数の国際比較を行った。日本の放射線治療施設1施設当たりの外照射台数は1.1台であり、先進26カ国平均3.3台に比べ最も小さかった。また癌患者1000人当たりの放射線治療施設数は1.3施設で、先進26カ国平均0.54施設よりも多いことが判明した。他の先進国と比較し、日本は癌患者当たりの放射線治療施設数が多く、その分規模が小さいことが判明した。
結論
本研究により、本邦での高精度放射線治療の実施状況が把握でき、均てん化、集約化への基礎データを得ることができた。また、調査結果を各施設にフィードバックすることにより、放射線治療の質の向上に貢献し、がん医療水準の均てん化に貢献できると考えられる。今後、本研究の成果を利用して、高精度放射線治療の新たな教育システムの開発が可能で、施設間格差の是正、若手医師の教育などに有用なツールとなる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201313037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
個人情報を削除した放射線治療のDICOM-RTデータ(CT画像に線量分布などの放射線治療データを含んだ統一規格)の解析を行うために、①治療計画装置からのDICOM-RTデータの取得、②DICOM-RTデータの匿名化、③DICOM-RTデータ参照の3つのプロセスを確立した。これにより、従来施設内でクローズされていた放射線治療計画データを容易に匿名化、解析でき、また高精度放射線治療の新たな教育システムの開発が可能となり、標準化に大きく貢献すると考えられる。
臨床的観点からの成果
放射線治療の質に関する指標(QI)を策定し、アンケート調査により高精度放射線治療の実態が明らかとなり、全体像を明確に把握できた。また、高精度放射線治療に対する品質管理体制等の実態および施設間差が明らかとなった。外部照射機器、放射線治療施設数の国際比較を行うことにより、他の先進国と比較し、日本は癌患者当たりの放射線治療施設数が多く、その分規模が小さいことが判明した。これらの成果により、今後放射線治療施設をどのように均てん化し、集約化するかの基礎データを得ることができた。
ガイドライン等の開発
放射線治療の質に関する指標(QI)を策定し、アンケート調査により高精度放射線治療の実態が明らかとなり、品質管理体制等の実態および施設間差等が明らかとなった。日本放射線腫瘍学会では、平成28年に認定放射線治療施設の新たな認定基準を作成した。本研究で得られたデータは認定施設基準作りの基礎データとしてきわめて有用となった。
その他行政的観点からの成果
本研究にて、強度変調放射線治療(IMRT)の実施施設の割合、IMRTのQAに要する時間、呼吸同期照射の実施状況などが明らかとなった。これは、高精度放射線治療に対する診療報酬改定の影響・評価が可能となり、今後の改定の基礎データとなる可能性がある。また、本研究班で作成したWebアンケートシステムを使って、同一(または一部変更)アンケートを数年後に実施可能で、高精度放射線治療の普及状況、その治療方法の変遷などの経年的な変化を知ることができる。
その他のインパクト
本研究にてパイロットスタディとして行われた「高精度放射線治療の標準化のための講習会」では、同一の治療計画CTを事前に送付し、参加施設に高精度放射線治療にて治療計画を行い、その治療計画を収集・解析し、各施設での治療計画の差について比較検討を行ったが、教育システムとして参加者から非常に高い評価を得た。2016年1月16日には沖縄地区にて前立腺癌放射線治療の治療計画研修会に参加し、本研究で開発した手法で標準化のための講習を行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
2016年2月に第182回日本医学放射線学会九州地方会にて特別講演「高精度放射線治療の現況と展望」を行った。
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura K, Ohga S, Yorozu A, et al.
Diffusion pattern of low dose rate brachytherapy for prostate cancer in Japan.
Cancer Sci. , 104 (7) , 934-936  (2013)
doi: 10.1111/cas.12168.
原著論文2
Tomita N, Kodaira T, Teshima T, et al.
Japanese Structure Survey of High-Precision Radiotherapy in 2012 Based on Institutional Questionnaire about the Patterns of Care.
Jpn J Clin Oncol  (2014)
doi: 10.1093/jjco/hyu041.
原著論文3
Shikama N, Tsujino K, Nakamura K, et al.
Survey of advanced radiation technologies used at designated cancer care hospitals in Japan.
Jpn J Clin Oncol , 44 (1) , 72-77  (2013)
doi: 10.1093/jjco/hyt161.
原著論文4
Terashima K, Nakamura K, Shioyama Y, et al.
The Effect of Treatment Position on Rectal and Bladder Dose-Volume Histograms for Prostate Radiotherapy Planned with 3-Dimensional Conformal Radiotherapy, Intensity-Modulated Radiotherapy and Volumetric Modulated Arc Therapy.
Int J Med Phys Clin Eng Radiat Oncol , 3 , 88-97  (2014)
doi: 10.7785/tcrt.2012.500334.
原著論文5
Nakamura K, Sasaki T, Yoshitake T, et al.
Recent advances in radiation oncology - intensity-modulated radiotherapy: A clinical perspective.
Int J Clin Oncol. , 19 (4) , 564-569  (2014)
doi: 10.1007/s10147-014-0718-y.
原著論文6
Ohga S, Nakamura K, Shioyama Y, et al.
Acute urinary morbidity after a permanent 125I implantation for localized prostate cancer.
J Radiat Res. , 55 (6) , 1178-1183  (2014)
doi: 10.1093/jrr/rru065.
原著論文7
Yoshitake T, Nakamura K, Shioyama Y,et al.
Stereotactic body radiation therapy for primary lung cancers clinically diagnosed without pathological confirmation: A single-institution experience.
Int J Clin Oncol. , 20 , 53-58  (2015)
原著論文8
Nakamura K, Konishi K, Komatsu T, et al.
Patterns of radiotherapy infrastructure in Japan and in other countries with well-developed radiotherapy infrastructures.
Jpn J Clin Oncol , 48 (5) , 476-479  (2018)
doi: 10.1093/jjco/hyy031

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201313037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,600,000円
(2)補助金確定額
11,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,878,637円
人件費・謝金 2,696,215円
旅費 1,318,190円
その他 2,030,958円
間接経費 2,676,000円
合計 11,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-