健康危機事象の早期探知システムの実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201237003A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機事象の早期探知システムの実用化に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部信彦(川崎市衛生研究所・感染症学)
  • 藤本嗣人(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 菊池清(島根県立中央病院)
  • 杉浦弘明(医療法人医純会すぎうら医院)
  • 中山裕雄(中山小児科内科医院)
  • 神谷信行(東京都健康安全研究センター疫学情報)
  • 中野道晴(北海道立衛生研究所)
  • 菅原民枝(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 山本康仁(都立広尾病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域レベルでの健康危機の早期探知、自治体での情報共有のシステムを構築、運用し、その問題点を解決し、日本全国での実用を実現することを保健級の目的とする。そのために、まず研究開始段階で研究期間中に日本全国での実用化が見込まれるであるシステムとして、学校欠席者情報収集システムと薬局サーベイランスを用いる。また、その運用を通じて、自治体での実用経験、あるいは問題点を蓄積し、今後の改善点を模索する。また、保護者を含む一般住民への情報還元も、従来のホームページ加えて一般住民がアクセスしやすい様々な媒体を通じて行い、日常的から広く一般住民に使用されるシステムとしての可能性を検討する。
研究方法
【学校欠席者情報収集システム】
従来の学校欠席者情報収集システムでの入力が、クラス単位での症状別、疾患別の人数を入力する方式であったが、それが二度手間であるという指摘から、児童生徒名を明記した上で個人ごとの出欠、欠席理由を入力する個人管理システムをインターネットから独立した環境で開発した。
【薬局サーベイランス】
インフルエンザに関しては、1年通じてその情報を行政機関等に配信する。アシクロビル製剤に関しては、小児や高齢者での流行を伴わない成人での異常が探知された場合には、内閣官房、厚生労働省厚生科学課の担当者に一報を入れる。抗菌薬に関しては特に、キノロン系の抗菌薬の動向を監視した。
【行政での活用】
学校欠席者情報収集システムの保健所や教育委員会、保育課等の行政機関における活用の実態を担当者から活用状況の報告がされた。
薬局サーベイランスの活用状況については、2012年11月に全国の地方衛生研究所のアンケートを実施した。
【一般住民への情報還元】
保護者を含む一般住民への情報還元を、従来のHPに加えて一般住民がアクセスしやすい様々な媒体を通じて行う。その際の内容は従来のHPですでに一般公開されている情報にとどめる。つまり、同じ情報を媒体を変えて提供する形とする。
結果と考察
【学校欠席者情報収集システム】
学校欠席者情報収集システムは、2012年12月末現在で、19県4政令指定都市の全校をはじめ全国で18000校以上(全国全学校の40%以上)において活用された。またその保育園版では全国5000保育園(全国全保育園の約20%)で活用された。
【薬局サーベイランス】
薬局サーベイランスは8500以上の薬局(全国の全薬局の17%)の協力を得て運用された。キノロン系の抗菌薬の動向については、小児において急激な増加を認めた。
【行政での活用】
学校欠席者情報収集システムの行政での活用事例としては、大和郡山保健所からは「①入力データの精度管理を行うことにより数値の誤入力や麻疹、風疹等の疾患名の主治医確認による保護者申告の誤りが明らかになった。②以前は学校からの連絡により把握していた集団感染について、リアルタイムで把握できることから、即時調査・振り返り調査による迅速な介入が可能となり、感染拡大防止に役立った。③医療機関情報による地域サーベイランスと対比することで、より迅速で精度の高い情報提供が可能となった。④感染症発生時に、本システムのコメント欄などを活用した啓発のほか、メールを用いた双方向のやり取りができることから、より効果的な感染対策が可能となった。
また薬局サーベイランスに関しては、38.2の地方衛生研究所が活用していると回答した。具体的には、「発生動向調査よりも最新の流行状況を把握するために利用した。」、「患者数が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのかをほぼリアルタイムで確認できた。」等の意見が寄せられた。
【一般住民への情報還元】
一般住民への情報還元は、ケーブルテレビが2011年3月末から、スマートホンが2012年11月中旬から、iPhoneが2012年12月中旬から、デジタル放送が2013年1月中旬から開始された。
結論
学校欠席者情報収集システムが全国全学校の40%以上、保育園版では全国5000保育園(全国全保育園の約20%、薬局サーベイランスが全国の全薬局の17%の協力を得て運用され、全国的な実用化を実現したことは、本研究の当初の目標が達成されたと評価される。このような、全国的な、また日常的に使用されるシステムが、一つの研究班において、しかもかなりの低予算で実現したことは、特筆に値する。今後は、国や、それに代わる組織が安定的に運用していくことが望まれる。
一般公開について、その評価は今後の課題ではあるが、近い将来には天気予報と同じように位置づけられ、様々な媒体から情報提供されるようになると予想される。

公開日・更新日

公開日
2016-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201237003B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機事象の早期探知システムの実用化に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部信彦(川崎市衛生研究所)
  • 藤本嗣人(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 菊池清(島根県立中央病院)
  • 杉浦弘明(医療法人医純会すぎうら医院)
  • 中山裕雄(中山小児科内科医院)
  • 神谷信行(東京都健康安全研究センター疫学情報室)
  • 中野道晴(北海道立衛生研究所)
  • 菅原民枝(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 山本康仁(都立広尾病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域レベルでの健康危機の早期探知、自治体での情報共有のシステムを構築、運用し、その問題点を解決し、日本全国での実用を実現することを保健級の目的とする。そのために、まず研究開始段階で研究期間中に日本全国での実用化が見込まれるであるシステムとして、学校欠席者情報収集システムと薬局サーベイランスを用いる。また、その運用を通じて、自治体での実用経験、あるいは問題点を蓄積し、今後の改善点を模索する。また、保護者を含む一般住民への情報還元も、従来のホームページ加えて一般住民がアクセスしやすい様々な媒体を通じて行い、日常的から広く一般住民に使用されるシステムとしての可能性を検討する。
研究方法
【学校欠席者情報収集システム】
従来の学校欠席者情報収集システムでの入力が、クラス単位での症状別、疾患別の人数を入力する方式であったが、それが二度手間であるという指摘から、児童生徒名を明記した上で個人ごとの出欠、欠席理由を入力する個人管理システムをインターネットから独立した環境で開発した。
【薬局サーベイランス】
インフルエンザに関しては、1年通じてその情報を行政機関等に配信する。アシクロビル製剤に関しては、小児や高齢者での流行を伴わない成人での異常が探知された場合には、内閣官房、厚生労働省厚生科学課の担当者に一報を入れる。抗菌薬に関しては特に、キノロン系の抗菌薬の動向を監視した。
【行政での活用】
学校欠席者情報収集システムの保健所や教育委員会、保育課等の行政機関における活用の実態を担当者から活用状況の報告がされた。
薬局サーベイランスの活用状況については、2012年11月に全国の地方衛生研究所のアンケートを実施した。
【一般住民への情報還元】
保護者を含む一般住民への情報還元を、従来のHPに加えて一般住民がアクセスしやすい様々な媒体を通じて行う。その際の内容は従来のHPですでに一般公開されている情報にとどめる。つまり、同じ情報を媒体を変えて提供する形とする。

結果と考察
【学校欠席者情報収集システム】
学校欠席者情報収集システムは、2012年12月末現在で、19県4政令指定都市の全校をはじめ全国で18000校以上(全国全学校の40%以上)において活用された。またその保育園版では全国5000保育園(全国全保育園の約20%)で活用された。
【薬局サーベイランス】
薬局サーベイランスは8500以上の薬局(全国の全薬局の17%)の協力を得て運用された。キノロン系の抗菌薬の動向については、小児において急激な増加を認めた。
【行政での活用】
学校欠席者情報収集システムの行政での活用事例としては、大和郡山保健所からは「①入力データの精度管理を行うことにより数値の誤入力や麻疹、風疹等の疾患名の主治医確認による保護者申告の誤りが明らかになった。②以前は学校からの連絡により把握していた集団感染について、リアルタイムで把握できることから、即時調査・振り返り調査による迅速な介入が可能となり、感染拡大防止に役立った。③医療機関情報による地域サーベイランスと対比することで、より迅速で精度の高い情報提供が可能となった。④感染症発生時に、本システムのコメント欄などを活用した啓発のほか、メールを用いた双方向のやり取りができることから、より効果的な感染対策が可能となった。
また薬局サーベイランスに関しては、38.2%の地方衛生研究所が活用していると回答した。具体的には、「発生動向調査よりも最新の流行状況を把握するために利用した。」、「患者数が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのかをほぼリアルタイムで確認できた。」等の意見が寄せられた。
【一般住民への情報還元】
一般住民への情報還元は、ケーブルテレビが2011年3月末から、スマートホンが2012年11月中旬から、iPhoneが2012年12月中旬から、デジタル放送が2013年1月中旬から開始された。
結論
学校欠席者情報収集システムが全国全学校の40%以上、保育園版では全国5000保育園(全国全保育園の約20%、薬局サーベイランスが全国の全薬局の17%の協力を得て運用され、全国的な実用化を実現したことは、本研究の当初の目標が達成されたと評価される。このような、全国的な、また日常的に使用されるシステムが、一つの研究班において、しかもかなりの低予算で実現したことは、特筆に値する。今後は、国や、それに代わる組織が安定的に運用していくことが望まれる。
一般公開について、その評価は今後の課題ではあるが、近い将来には天気予報と同じように位置づけられ、様々な媒体から情報提供されるようになると予想される。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201237003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
なし
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課「2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン」に記載.
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tamie Sugawara et al
Real-time Prescription Surveillance and its Application to Monitoring Seasonal Influenza Activity in Japan
J Med Internet Res , 14 , 1-9  (2012)
原著論文2
大日康史 他
佐賀県におけるインフルエンザ年齢構成の検討
厚生の指標  (2012)
原著論文3
大日康史 他
避難所サーベイランスの構築・運用と評価
ライフメディコム , 154-157  (2012)
原著論文4
菅原民枝 他
病原体診断を伴うリアルタイムサーベイランスによる流行抑制の可能性―保育園での手足口病流行での事例検討―
感染症学雑誌 , 86 (4) , 405-410  (2012)
原著論文5
菅原民枝 他
薬局サーベイランスによる抗菌薬使用量の検討
日本環境感染学会雑誌 , 27 (3) , 195-198  (2012)
原著論文6
石田茂 他
鳥取県における高病原性鳥インフルエンザ(H5N1亜型)発生時の住民健康監視及び大雪による住民健康監視
日本集団災害 , 17 (2) , 351-356  (2012)
原著論文7
稲葉静代 他
2010名古屋COP10における症候群サーベイランスの運用と評価
日本集団災害 , 17 (2) , 326-333  (2012)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237003Z