新しい内視鏡診断機器の臨床への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する調査研究

文献情報

文献番号
201118009A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい内視鏡診断機器の臨床への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する調査研究
課題番号
H21-3次がん・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 豊(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 消化管内科(消化管内視鏡科))
研究分担者(所属機関)
  • 中村 哲也(獨協医科大学病院 医療情報センター (消化器内科))
  • 関口 隆三(栃木県立がんセンター 画像診断部)
  • 江副 康正(京都大学大学院医学研究科 集学的がん診療学講座・消化器腫瘍学・内視鏡治療学 (消化器内科学講座))
  • 角川 康夫(独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診開発研究部 )
  • 吉永 繁高(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 消化管内科(消化管内視鏡科) )
  • 木戸 尚治(山口大学大学院医学系研究科 応用医工学系学域医療支援工学分野 画像支援診断工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
30,557,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最新の内視鏡診断装置の診断能の検証,装置の改良から,効率的に消化管癌を診断するための内視鏡診断法の開発.
研究方法
1)画像強調内視鏡:近赤外イメージングシステムによる胃がんの診断精度を検証する.
自家蛍光内視鏡(AFI)の,大腸腫瘍検出の効率化に対する有用性を多施設RCTで明らかにする. 2)カプセル内視鏡:カプセル内視鏡による消化管癌検診を目的に,新しい検査法を考案する. 3)超音波検査:超音波内視鏡(EUS)への応用を目的に, センチネルリンパ節同定法の消化管癌の描出能について検討. 4)EUS-FNA:EUS下穿刺吸引細胞・組織診(EUS-FNA)の有用性を検討する. 5)画像自動解析:内視鏡診断客観化のため,大腸NBI画像のテクスチャ特徴量より組織分類を行う.
結果と考察
1)画像強調内視鏡:近赤外イメージングシステムを利用した診断感度と診断特異度は,それぞれ80%,92%で,胃がんを識別して画像化できる可能性が示唆された. 単施設前向き試験ではAFIが有意にポリープの発見率を向上させたが多施設試験の結果では,通常光が優れていた.既存のAFIシステムの改良が必要である. 2)カプセル内視鏡:小腸用カプセル内視鏡用に設定した3種類のFICEの有用性について検討した結果,上・中部消化管の苦痛のないスクリーニング法として期待できるものと考えられた.大腸カプセル内視鏡に関し,肛門排出率が克服すべき課題と浮上したため, より高い排出率を得るための方法を開発した. 3)超音波検査:超音波造影剤を用いてのセンチネルリンパ節同定法がガンマプローブ法に代わる適切な手法となる可能性が示された.4)EUS-FNA:前向き検討に関し2012年2月末日現在88例の症例が登録された. 5)画像自動解析:非典型的な67症例を追加した実験において新たに特徴量を追加することで,識別率をそれぞれ81%,89%まで改善できた.
結論
1)画像強調内視鏡の有用性をRCTにより明らかにし,効率的な消化管癌スクリーニング体系を構築する. 2)カプセル内視鏡による消化管癌検診は,被験者負担も軽く,検診受容性が向上する. 3)造影超音波の新技術をEUSに導入する. 4)EUS-FNAの多施設前向き検討が進行中である. 5)内視鏡画像の自動解析は,内視鏡診断の普及・均霑化に有用である.

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201118009B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい内視鏡診断機器の臨床への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する調査研究
課題番号
H21-3次がん・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 豊(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 消化管内科(消化管内視鏡科))
研究分担者(所属機関)
  • 中村 哲也(獨協医科大学病院 医療情報センター (消化器内科))
  • 関口 隆三(栃木県立がんセンター 画像診断部)
  • 武藤 学(京都大学大学院医学研究科 内科学消化器内科学講座・消化器病学 (消化器内科学講座))
  • 江副 康正(京都大学大学院医学研究科 集学的がん診療講座・消化器腫瘍学・内視鏡治療学 (消化器内科学講座))
  • 角川 康夫(独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診開発研究部)
  • 吉永 繁高(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 消化管内科(消化管内視鏡科) )
  • 木戸 尚治(山口大学大学院医学系研究科 応用医工学系学域医療支援工学分野 画像支援診断工学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最新の内視鏡診断装置を利用し効率的に消化管癌を診断するための内視鏡診断法を開発.
研究方法
1)画像強調内視鏡:消化管癌診断における狭帯域分光内視鏡(NBI)・自家蛍光内視鏡(AFI)の有用性を明らかにする.近赤外イメージングシステムを開発する. 2)カプセル内視鏡:カプセル内視鏡による消化管癌検診を目的に,新しい検査法を考案する. 3)超音波検査:超音波内視鏡(EUS)への応用を目的に新技術を検討する. 4)EUS-FNA:多施設前向き検討で有用性を検討する. 5)画像自動解析:内視鏡診断客観化のためNBI画像のテクスチャ解析を行う.
結果と考察
1)画像強調内視鏡:NBIによる多施設RCTを完了した.胃癌診断において,NBIが白色光より有意に優れていた.大腸においてもNBIが見落とし率を減少させた. AFI単施設前向き試験では大腸ポリープの発見率を向上させたが,多施設ではnegativeでありシステムの改良が必要である.近赤外イメージングで,胃がんを識別して画像化できる可能性が示唆された. 2)カプセル内視鏡:小腸用カプセル内視鏡は上・中部消化管の苦痛のないスクリーニング法として期待できる.大腸カプセル内視鏡に関し,本邦独自の腸管前処置方法および高い排出率を得るための方法を開発した. 3)超音波検査:造影超音波検査による消化管癌の描出能および造影効果・乳がんセンチネルリンパ節の同定能について検討した. 4)EUS-FNA:後ろ向き検討の正診率98%,重篤な合併症は認めなかった.多施設前向き検討を開始し88例の症例が登録された. 5)画像自動解析: NBI画像を用いて大腸腫瘍の鑑別診断を行うコンピューター支援診断システムの開発を行った.開発した識別アルゴリズムを用いたソフトウエアを作成した.
結論
1)画像強調内視鏡の有用性をRCTにより明らかにした. 2)カプセル内視鏡による消化管癌検診は,検診受容性が向上する. 3)造影超音波の新技術をEUSに応用していく. 4)EUS-FNAの遡及的成績は良好であり,多施設前向き試験が進行中である. 5)内視鏡画像の自動解析は,内視鏡診断の普及・均霑化に有用である.

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-09-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201118009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
狭帯域分光内視鏡(NBI)の胃癌診断に対する有用性が多施設無作為化比較試験により証明された.
大腸においてもNBIは表面型腫瘍の見逃しの軽減に寄与することが多施設前向き試験から示された.
NBI画像を用いた診断を客観的に行うコンピューター支援診断システムを構築した.大腸カプセル内視鏡において腸管前処置の負担が問題であり,本邦独自の負担の少ない前処置法を開発した. しかし,肛門排出率は従来の報告より低く,高い排出率を得るための方法を工夫した.
臨床的観点からの成果
第2次対がん総合戦略研究事業で開発されたNBIの臨床的有用性が今回の第3次対がんで証明され,国内外で市販化された. NBIを用いた客観的内視鏡診断を行うためのコンピューター支援診断システムを構築した. 消化管カプセル内視鏡は,大腸カプセルも含め全消化管のスクリーニングが可能な上,苦痛が少なく,検査医の技術も不要のため検診への応用が期待される.低侵襲な超音波検査の新技術の臨床応用を進めるとともに超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)についても多施設前向き試験を開始した.
ガイドライン等の開発
NBI拡大観察の臨床的有用性が認められ,保険収載された.
大腸カプセル内視鏡については,当班研究の結果から国内で初の治験が開始され,薬事承認への道筋がつけられた.
その他行政的観点からの成果
NBI拡大観察の臨床的有用性が認められ,保険収載された.
大腸カプセル内視鏡の薬事承認・保険収載に向けての基盤を確立した.
その他のインパクト
本研究は, 近年開発された内視鏡診断装置の診断能の検証ならびに既存の診断装置の改良および対象臓器の拡大などの検討から, 効果的に消化管がんを発見するための新しい内視鏡診断法の開発を目的としている. 当班においてNBIが産官学共同で開発され,その後の多施設前向き試験の成果により頭頸部・食道早期がんの早期診断,胃癌の診断に関しても従来の世界標準を変えうるインパクトの大きな臨床結果が発表された. 今後の消化管がん検診のあり方,ガイドラインに大きな影響を与える内容である.

発表件数

原著論文(和文)
110件
平成21(2009)年度:26件、平成22(2010)年度:57件、平成23(2011)年度:27件
原著論文(英文等)
75件
平成21(2009)年度:27件、平成22(2010)年度:25件、平成23(2011)年度:23件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
91件
平成21(2009)年度:34件、平成22(2010)年度:27件、平成23(2011)年度:30件
学会発表(国際学会等)
47件
平成21(2009)年度:11件、平成22(2010)年度:18件、平成23(2011)年度:18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
[産業財産権の種類、番号]特許権、特願2011-040279 [申請年月日] 平成23年2月25日 [財産権の名称] 生体検査装置および生体検査方法
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nonaka S, Saito Y, Oda I, et al.,
Narrow-band imaging endoscopy with magnification is useful for detecting metachronous superficial pharyngeal cancer in patients with esophageal squamous cell carcinoma.
J Gastroenterol Hepatol. , 25 (2) , 264-269  (2010)
原著論文2
Suzuki H, Saito Y, Ikehara H, et al.,
Evaluation of visualization of squamous cell carcinoma of esophagus and pharynx using an autofluorescence imaging videoendoscope system.
J Gastroenterol Hepatol. , 24 (12) , 1834-1839  (2009)
原著論文3
Ezoe Y, Muto M, Horimatsu T, et al.,
Magnifying narrow-band imaging versus magnifying white-light imaging for differential diagnosis of gastric small depressive lesions: a prospective Study.
Gastrointest Endosc. , 71 (3) , 477-484  (2010)
原著論文4
Manabu Muto, et al.,
Improving visualization techniques by narrow band imaging and magnification endoscopy.
Gastroenterol Hepatol. , 24 (8) , 1333-1346  (2009)
原著論文5
Manabu Muto, et al,.
Narrow Band Imaging of the Gastrointestinal Tract
J Gastroenterol. , 44 (1) , 13-25  (2009)
原著論文6
Saito Y, Uraoka T, Yamaguchi Y, et al,
A prospective, multicenter study of 1111 colorectal endoscopic submucosal dissections (with video).
Gastrointest Endosc. , 72 (6) , 1217-1225  (2010)
原著論文7
Suzuki H, Saito Y, Oda I, et al.,
Feasibility of endoscopic mucosal resection for superficial pharyngeal cancer: a minimally invasive treatment.
Endoscopy. , 42 , 1-7  (2010)
原著論文8
Fukuzawa M, Saito Y, Matsuda T, et al.,
Effectiveness of narrow-band imaging magnification for invasion depth in early colorectal cancer.
World J Gastroenterol. , 16 (14) , 1727-1734  (2010)
原著論文9
Ezoe Y, Muto M, Horimatsu T, et al.,
Magnifying narrow-band imaging versus magnifying white-light imaging for differential diagnosis of gastric small depressive lesions: a prospective Study
Gastrointest Endosc. , 71 (3) , 477-484  (2010)
原著論文10
Sakamoto T, Saito Y, Nakajima T, et al.,
Comparison of magnifying chromoendoscopy and narrow-band imaging in estimation of early colorectal cancer invasion depth: a pilot study.
Dig Endosc. , 23 (2) , 118-123  (2011)
原著論文11
Suzuki H, Saito Y, Matsuda T, et al.,
Prospective Case Study on Characterization of Colorectal Adenomas Comparing AFI with NBI.
Diagn Ther Endosc. , 2011 , 1-6  (2011)
原著論文12
Uraoka T, Saito Y, Ikematsu H, et al.,
Sano's capillary pattern classification for narrow-band imaging of early colorectal lesions.
Dig Endosc. , 23 , 112-115  (2011)
原著論文13
Ikematsu H, Saito Y, Yamano H.
Comparative evaluation of endoscopic factors from conventional colonoscopy and narrow-band imaging of colorectal lesions.
Dig Endosc. , 23 , 95-100  (2011)
原著論文14
Ezoe Y, Muto M, Uedo N, et al.,
Magnifying Narrowband Imaging Is More Accurate than Conventional White-Light Imaging in Diagnosis of Gastric Mucosal Cancer.
Gastroenterology. , 141 (6) , 2017-2025  (2011)
原著論文15
Yoshinaga S, et al.
Role of Endoscopic Ultrasound-guided Fine Needle Aspiration (EUS-FNA) for Diagnosis of Solid Pancreatic Masses.
Digestive Endoscopy. , 23 , 29-33  (2011)
原著論文16
生沼健司,山岸秀嗣,中村哲也
食道用カプセル内視鏡
消化器内視鏡 , 22 (3) , 360-363  (2010)
原著論文17
関口隆三、他
胆嚢病変のSonazoid造影超音波所見
Rad Fan , 8 (5) , 1-2  (2010)
原著論文18
角川康夫、斎藤豊、斎藤彰一、他
大腸カプセル内視鏡における新しい腸管前処置方法 -本邦におけるパイロット試験の報告-
消化器医学 , 9 , 70-76  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201118009Z