肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201030004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐田 通夫(久留米大学 医学部 内科学講座消化器内科部門)
研究分担者(所属機関)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院 腫瘍内科学講座)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
  • 伊東 恭悟(久留米大学 医学部 免疫・免疫治療学講座)
  • 矢野 博久(久留米大学 医学部 病理学講座)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 加藤 淳二(札幌医科大学 医学部 内科学第四講座)
  • 清家 正隆(大分大学 医学部 肝疾患相談センター)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 長尾 由実子(久留米大学 医学部 消化器疾患情報講座)
  • 川口 巧(久留米大学 医学部 消化器疾患情報講座)
  • 井出 達也(久留米大学 医学部 内科学講座消化器内科部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,319,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝疾患の終末像である肝硬変は、全身に種々の疾患・病態を引き起こすため、多方面からの対策が必要である。本研究の目的は、肝疾患の進展抑制を視野に入れた多方面からの病態解析と治療介入による臨床効果の実証並びに抗ウイルス療法以外の新規治療法を確立することである。
研究方法
班員や班友による個々の研究に加え、多施設共同研究、二重盲検比較試験、大規模疫学研究、アンケートによる大規模調査等によって、肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法を検討した。
結果と考察
(1)新規治療法の開発:私共が開発したBCAA含有食品のC型慢性肝疾患患者における糖・脂質・蛋白代謝異常に対する改善効果を検証するため、多施設二重盲検比較試験を開始した。また、肝硬変に対する新たな肝再生療法の実用化をめざして、患者末梢血から得られる血管内皮前駆細胞を用いた肝動注投与による肝再生療法を開始し、その効果を確認した。非アルコール性脂肪性肝障害に対する新規運動療法としてハイブリッド訓練システムを確立し、その効果を検証した。(2)病態解析-疫学:大規模疫学研究によってC型肝炎患者の長期予後と、予後改善効果に寄与する抗ウイルス療法の有用性を明らかにするとともに、アルブミン値と生存率に有意な関連性があることを明らかにした。肝癌:九州地区における肝癌患者の動向と、発癌要因を明らかにした。また、糖尿病治療薬と肝発癌、HBVの潜在感染および酸化的DNA損傷の修復系酵素活性の個体差と肝癌との関連、自己免疫性肝炎の進展や発癌状況を明らかにした。肝外病変:乾癬患者におけるとHCV乾癬の実態と肝疾患患者におけるOral Medicineの重要性を明らかにした。臓器相関:脾機能と脂肪肝との関連、グレリンと肝再生との関連などを明らかにした。上記の研究結果について、一般市民を対象に公開講座を行うとともに、小冊子を作成し広く一般公開した。本研究の結果は、肝癌関連死亡者数の減少に寄与すると考えられる。また、著しく増加が見込まれる高齢層の慢性肝疾患患者のQOLの改善と医療費の抑制効果にも貢献できると考えられる。
結論
肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法を多方面から研究した。研究成果は多くの研究論文として公表されると共に、新たな治療法が実際の患者に導入され効果や有用性が検証された。また、一般住民や患者を対象にした啓発活動も積極的に行った。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201030004B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐田 通夫(久留米大学 医学部 内科学講座消化器内科部門)
研究分担者(所属機関)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院 腫瘍内科学講座)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
  • 伊東 恭悟(久留米大学 医学部 免疫・免疫治療学講座)
  • 矢野 博久(久留米大学 医学部 病理学講座)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 加藤 淳二(札幌医科大学 医学部 内科学第四講座)
  • 清家 正隆(大分大学 医学部 肝疾患相談センター)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 長尾 由実子(久留米大学 医学部 消化器疾患情報講座)
  • 川口 巧(久留米大学 医学部 消化器疾患情報講座)
  • 井出 達也(久留米大学 医学部 内科学講座消化器内科部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝疾患の終末像である肝硬変、肝癌への進展や発症の阻止および予防を視野に入れ、肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法を確立することが本研究班の目的である。
研究方法
研究内容は大きく2つの領域からなり、一つは新規治療法の開発、他の一つは治療法開発のために基礎及び臨床研究によって慢性肝疾患や肝癌に関わる種々の病態を解明することである。
結果と考察
新規治療法の確立では、私共が開発したBCAA含有食品のC型慢性肝疾患患者に対しての糖・脂質・蛋白代謝異常に対する改善効果を明らかにするための多施設二重盲検比較試験を開始した。また本食品の安全性、味覚障害の改善効果についても確認した。また、肝硬変に対する新たな肝再生療法の実用化をめざして、患者末梢血から得られる血管内皮前駆細胞を用いた肝動注投与による肝再生療法を開始し、その効果を確認した。NAFLDに対する新規運動療法としてハイブリッド訓練法を確立した。病態の解析では大規模疫学研究によってC型肝炎患者の長期予後と、予後改善効果に寄与するインターフェロン療法の有用性を明らかにした。地域住民のコホート研究からはアルブミン値と生存率に有意な関連性があることを明らかにした。基礎研究ではアルブミンは酸化型と還元型があり、慢性肝疾患の病態形成に関与することを示した。九州地区の肝癌患者の動向と、発癌要因についてその特徴を明らかにした。また、非B非C型肝癌の背景肝病変の組織学的特徴を解析した。糖尿病治療薬と肝発癌、HBVの潜在感染と肝癌との関連、自己免疫性肝炎の進展や発癌状況、乾癬とHCVとの関連、肝疾患患者におけるOral Medicineの重要性、MRIによる肝内鉄濃度評価法の開発、酸化的DNA損傷の修復系酵素活性の個体差と発癌との関連、脾機能と脂肪肝との関連、グレリンと肝再生との関連が明らかにされた。肝疾患患者1336例に対してビブリオ・バル二フィカス感染症の認知度に関する調査と啓発活動を行った。また、研究をデザイン、実施、解析するにあたっては、生物統計学専門家の助言を得た。
結論
今回の研究により、新たな治療法が実際の患者に導入され効果や有用性が検証された。また、一般住民や患者を対象にした啓発活動も積極的に行った。今回の研究結果が肝疾患の進展や発癌の予防、肝疾患と臓器相関さらには医療における連携を実施・検討するうえで多くの情報を提供することになれば幸いである。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
抗ウイルス剤の効果が得られない肝炎・肝硬変に対する有効な治療法は未だ存在しない。本研究では、血管内皮前駆細胞移植による肝再生効果およびペプチドワクチンによる肝発癌・病態進展抑制効果を検証し、その有効性を明らかにした。これらの結果は、肝再生や肝癌予防の新規治療法として専門医療の向上に貢献する成果である。また、本研究では、基礎的研究により、酸化型アルブミンと肝病態の関連、脾機能の低下と脂肪性肝炎の関連、胃から分泌されるグレリンと肝再生の関連を証明し、多方面から新たな学術的知見が得られた。
臨床的観点からの成果
慢性肝疾患患者には様々な代謝異常が合併し、病期の進展に深く関与する。本研究では、多施設共同研究により、久留米大学で開発した分岐鎖アミノ酸・亜鉛含有食品(アミノフィール)の臨床的有用性をプラセボ対照二重盲検試験により検討し、アルブミン値と亜鉛値の上昇を確認した。また、インスリン製剤とスルホニルウレア製剤は肝発癌の危険因子である事を明らかにした。さらに、MRIの拡散強調画像を用いることにより、肝内鉄濃度の定量法を開発した。このように、慢性肝疾患に合併する様々な代謝異常に対する臨床的成果が得られた。
ガイドライン等の開発
肝炎患者の予後因子と口腔・皮膚合併症は、実態把握と認知度の向上が急務である。本研究では、疫学調査により60歳以前の抗ウイルス療法によりC型肝炎患者の予後が改善することと、低アルブミン血症が独立した予後因子であることを証明した。また、肝疾患に関わるオーラルメディシン、ビブリオ・バルニフィカス感染症、乾癬についての病態と問題点を明らかにした。免疫抑制剤を用いる乾癬の治療は、肝炎の悪化が懸念されるため、ガイドラインを作成中である。さらに、国民への啓発を目的に小冊子を発刊し、市民公開講座も開催した。
その他行政的観点からの成果
九州地区の肝疾患専門施設16施設における過去14年間の肝癌症例(9,888例)を解析し、非B非C型肝癌が近年増加している事を明らかにした。また、病理学的解析および遺伝子解析により、潜在性B型肝炎ウイルスと酸化ストレス調節機構の破堤が非B非C型肝癌の危険因子である可能性が示唆された。さらに、多施設共同研究により、自己免疫性肝炎における肝発癌率と肝癌以外の発癌率を明らかにした。これらの研究成果は、非B非C型肝発癌の発癌予防や早期発見を介して、患者予後の改善とともに医療費の抑制にも貢献しうる。
その他のインパクト
脂肪肝患者に対する新規運動療法としてハイブリッド訓練法を確立し、インスリン抵抗性と脂肪肝の改善効果を確認した。この運動療法は、メタボリック症候群への新規治療法としても応用可能であり、国民保健の向上に寄与しうると考えられる。また、本研究は、肝炎・肝硬変に対する抗ウイルス剤以外の治療法に関する多方面からの研究を行っており、肝疾患と臓器相関さらには医療における連携を実施・検討するうえで多くの情報を提供しうると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
68件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
38件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
肝疾患に伴う浮腫の判定方法、胆管細胞癌の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法、C型肝炎ウイルスによる肝癌の発症および再発予防ワクチン
その他成果(施策への反映)
1件
民主党肝炎対策議員連盟第3会合でのプレゼン
その他成果(普及・啓発活動)
16件
市民公開講座、セミナー、講演会、東京肝臓友の会会報

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawaguchi T, Shiba N, Maeda T, et al.
Hybrid-Training of Voluntary and Electrical Muscle Contractions Reduces Steatosis, Insulin Resistance and IL-6 Levels in Patients with NAFLD: A Pilot Study.
J Gastroenterol  (2011)
原著論文2
Kawaguchi T, Shiba N, Takano Y, et al.
Hybrid-Training of Voluntary and Electrical Muscle Contractions Decreased Fasting Blood Glucose and Serum Interleukin-6 Levels in Elderly People: A Pilot Study.
Appl Physiol Nutr Metab  (2011)
原著論文3
Itou M, Kawaguchi T, Taniguchi E, et al.
Supplementation before Endoscopic Therapy for Esophageal Varices Reduces Mental Stress in Patients with Liver Cirrhosis.
Hepatogastroenterology  (2011)
原著論文4
Kawaguchi T, Itou M, Taniguchi E, et al.
Serum Level of Free Fatty Acids is Associated with Nocturnal Hypoglycemia in Cirrhotic Patients with HCV Infection: A Pilot Study.
Hepatogastroenterology  (2011)
原著論文5
Fujimoto K, Kawaguchi T, Nakashima O, et al.
Periostin, a matrix protein, has potential as a novel serodiagnostic marker for cholangiocarcinoma.
Oncology Report  (2011)
原著論文6
Nagao Y, Matsuoka H, Kawaguchi T, et al.
Aminofeel improves the sensitivity to taste in patients with HCV-infected liver disease.
Med Sci Monit , 16 (4) , 7-12  (2010)
原著論文7
Nagao Y, Sata M.
Dental problems delaying the initiation of interferon therapy for HCV-infected patients.
Virol J , 7 , 192-  (2010)
原著論文8
Nagao Y, Sata M.
Serum albumin and mortality risk in a hyperendemic area of HCV infection in Japan.
Virol J , 7 , 375-  (2010)
原著論文9
Sakata M, Kawaguchi T, Taniguchi E, et al.
Oxidized albumin is associated with water retention and severity of disease in patients with chronic liver diseases.
e-SPEN, the European e-Journal of Clinical Nutrition and Metabolism , 5 , 247-353  (2010)
原著論文10
Sakata S, Kawaguchi T, Taniguchi E, et al.
Redox state of albumin is not associated with colloid osmotic pressure.
Mol Med Rep. , 3 , 685-687  (2010)
原著論文11
Yang L, Kiyohara T, Kanda T, et al.
Inhibitory effects on HAV IRES-mediated translation and replication by a combination of amantadine and interferon-alpha.
Virol J. , 7 , 212-  (2010)
原著論文12
Kanda T, Imazeki F, Nakamoto S, et al.
Internal ribosomal entry-site activities of clinical isolate-derived hepatitis A virus and inhibitory effects of amantadine.
Hepatol Res. , 40 , 415-423  (2010)
原著論文13
Imafuku S, Nakayama J
Questionnaire-based survey of the treatment of patients with psoriasis and hepatitis C in Japan.
J Eur Acad Dermatol Venereol , 24 , 1114-1116  (2010)
原著論文14
Kawaguchi T, Yamagishi S, Itou M, et al.
Pigment epithelium-derived factor inhibits lysosomal degradation of Bcl-xL and apoptosis in HepG2 cells.
Am J Pathol. , 176 (1) , 168-176  (2010)
原著論文15
Kanda T, Jeong SH, Imazeki F, et al.
Analysis of 5' nontranslated region of hepatitis a viral RNA genotype I from South Korea: comparison with disease severities.
PLoS One. , 5 (12) , 15139-  (2010)
原著論文16
Nagao Y, Matsuoka H, Seike M, et al.
Knowledge about Vibrio vulnificus infection in Japanese patients with liver diseases: A prospective multicenter study.
Med Sci Monit , 15 (10) , 115-120  (2009)
原著論文17
Kawaguchi T, Taniguchi E, Morita Y, et al.
Association of exogenous insulin or sulphonylurea treatment with an increased incidence of hepatoma in patients with hepatitis C virus infection.
Liver Int. , 30 , 479-486  (2009)
原著論文18
Niu Y, Komatsu N, Komohara Y, et al.
A peptide derived from hepatitis C virus (HCV) core protein inducing cellular responses in patients with HCV with various HLA class IA alleles.
J Med Virol. , 81 (7) , 1232-1240  (2009)

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030004Z