文献情報
文献番号
202401007A
報告書区分
総括
研究課題名
法学的視点からみた社会経済情勢の変化に対応する労働安全衛生法体系に係る調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22AA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
一般社団法人 日本産業保健法学会(一般社団法人 日本産業保健法学会 )
研究分担者(所属機関)
- 三柴 丈典(一般社団法人日本産業保健法学会)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,335,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現行の労働安全衛生法(以下、「安衛法」)を取り巻く環境や労災の性格が大きく変化している。疲労やストレス対策、行動災害対策などが焦点になりつつある一方、個人事業者等も対象化されるなど、安衛法の質的な転換が迫られている。従来の技術者による技術的な対策のみではなく、人事労務担当者や予防の知識を持つ法律家など事務系との協働による、関係者の意識や行動への働きかけが求められる。これは、文理協働の極めて高度な作業であり、関係領域の研究者と実務家によるプラットフォームの形成が求められる。そのため、本研究プロジェクトは、安衛法の予防的な特質を踏まえた学問的な体系化と多面的な学会活動の展開、労災防止や問題解決効果のある法教育方法の開発を図ることとした。
研究方法
本研究最終年度となる令和6年度は、法の制定経緯のほか、監督指導の実態や関係判例などの適用の実際に関する情報を積極的に盛り込んだ安衛法体系書の発刊、安衛法学研修の実施及び効果測定を図った。
また、安全衛生法学研修を実施し、その効果(労災防止とそのための組織の説得力の向上)を測定した。
令和5年度中に、監督指導状況と関係裁判例、図表や写真等を積極的に埋め込んだ教本を制作すると共に、元監督官や安全衛生の専門家、人事労務管理者、法律家らから成る安全衛生法学研修の運営委員会を組織し、労災防止とそのための組織への働きかけをリードできる人材を養成するカリキュラムと研修効果の測定指標を起案した段階に至っていた。
今年度は、本学会の会員及び関係団体から50名程度の受講者を募集し、教本等の内容に沿って、基礎知識に関する座学(e-learningと対面)のほか、事件を中心とした参加型の研修を行った。標準となるカリキュラム内容は、①リーガルマインド、日本の労働に関する裁判例の傾向を知るためのベーシック、②最近の労働裁判例の傾向や、安全衛生法制度の概要を知るためのスタンダード、③安全衛生に関する裁判例等の実践的な法情報を知るためのアドバンストの3つのレベルにわたるe-learningでの学習のほか、安衛法の来し方や特徴に関する座学と、事件を素材とするワークショップ等で構成した。
産業保健法学研修と同様に、受講前、受講直後、受講の1ヶ月後の3点にわたり、受講者の意識や認識、知識につき、定性的調査と定量的調査を行い、統計学の専門家が結果を分析した。結果的に、労災防止能力自体にさしたる変化は見られなかったが、労災防止のための経営者ら関係者への説得能力の向上が確認された。
また、安全衛生法学研修を実施し、その効果(労災防止とそのための組織の説得力の向上)を測定した。
令和5年度中に、監督指導状況と関係裁判例、図表や写真等を積極的に埋め込んだ教本を制作すると共に、元監督官や安全衛生の専門家、人事労務管理者、法律家らから成る安全衛生法学研修の運営委員会を組織し、労災防止とそのための組織への働きかけをリードできる人材を養成するカリキュラムと研修効果の測定指標を起案した段階に至っていた。
今年度は、本学会の会員及び関係団体から50名程度の受講者を募集し、教本等の内容に沿って、基礎知識に関する座学(e-learningと対面)のほか、事件を中心とした参加型の研修を行った。標準となるカリキュラム内容は、①リーガルマインド、日本の労働に関する裁判例の傾向を知るためのベーシック、②最近の労働裁判例の傾向や、安全衛生法制度の概要を知るためのスタンダード、③安全衛生に関する裁判例等の実践的な法情報を知るためのアドバンストの3つのレベルにわたるe-learningでの学習のほか、安衛法の来し方や特徴に関する座学と、事件を素材とするワークショップ等で構成した。
産業保健法学研修と同様に、受講前、受講直後、受講の1ヶ月後の3点にわたり、受講者の意識や認識、知識につき、定性的調査と定量的調査を行い、統計学の専門家が結果を分析した。結果的に、労災防止能力自体にさしたる変化は見られなかったが、労災防止のための経営者ら関係者への説得能力の向上が確認された。
結果と考察
令和5年度に概ねゲラ段階に至った約1600頁に及ぶ安衛法体系書について、著者校正、事項索引作成、引用した図表等の承諾獲得等を行い、令和7年2月に、『コンメンタール労働安全衛生法』〔法律文化社〕として発刊された(非売品。市販品は令和7年4月に発刊された)。
その過程で、令和2年度に実施した前研究プロジェクト(労働安全衛生法の改正に向けた法学的視点からの調査研究(19-JA1-001))の現役・元行政官を対象とするアンケート調査結果、及び体系書の分担執筆内容からの抽出により、法改正への提言を整理した(アンケート調査結果については、初年度に設置した研究会で妥当とされたものを採用)。
なお、産業保健法学に関する理論とQ&A、裁判例情報をふんだんに盛り込んだ教本『生きた産業保健法学』も令和6年9月に発刊された。
法教育方法の開発については、令和5年度に産業保健法学、令和6年度に安全衛生法学に関する研修を実施して効果測定したところ、ケーススタディを採り入れた法教育には質的な効果があることが確認された。すなわち、産業保健のような人事労務的な課題では、特に問題解決に効果を発揮する。安全衛生のような技術的な課題でも、組織の文化や行動への働きかけ、特に経営者や人事労務管理者への働きかけに効果を発揮することが判明した。
その過程で、令和2年度に実施した前研究プロジェクト(労働安全衛生法の改正に向けた法学的視点からの調査研究(19-JA1-001))の現役・元行政官を対象とするアンケート調査結果、及び体系書の分担執筆内容からの抽出により、法改正への提言を整理した(アンケート調査結果については、初年度に設置した研究会で妥当とされたものを採用)。
なお、産業保健法学に関する理論とQ&A、裁判例情報をふんだんに盛り込んだ教本『生きた産業保健法学』も令和6年9月に発刊された。
法教育方法の開発については、令和5年度に産業保健法学、令和6年度に安全衛生法学に関する研修を実施して効果測定したところ、ケーススタディを採り入れた法教育には質的な効果があることが確認された。すなわち、産業保健のような人事労務的な課題では、特に問題解決に効果を発揮する。安全衛生のような技術的な課題でも、組織の文化や行動への働きかけ、特に経営者や人事労務管理者への働きかけに効果を発揮することが判明した。
結論
安衛法の来し方に関する体系書と、そのエッセンスをまとめた教本の作成、それを用いた問題解決能力や組織への説得力を磨く法教育方法の開発を実現できた。その過程で、行政官らによる現場的な提言と体系書の分担執筆者による法改正提案も整理した。また、産業保健法学会の活動の展開により、安衛法研究のプラットフォームを形成した。
なお、Industry 4.0の下での安衛法規制の在り方について、国際文献レビューを踏まえた展望をPosition Paperにまとめ、発表した。
なお、Industry 4.0の下での安衛法規制の在り方について、国際文献レビューを踏まえた展望をPosition Paperにまとめ、発表した。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
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