文献情報
文献番号
202201015A
報告書区分
総括
研究課題名
法学的視点からみた社会経済情勢の変化に対応する労働安全衛生法体系に係る調査研究
課題番号
22AA2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
一般社団法人 日本産業保健法学会(一般社団法人 日本産業保健法学会)
研究分担者(所属機関)
- 三柴 丈典(一般社団法人日本産業保健法学会)
- 井村 真己(追手門学院大学)
- 石崎 由希子(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院)
- 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)
- 大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
- 吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
- 平岡 伸隆(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
- 南 健悟(日本大学法学部)
- 佐々木 達也(名古屋学院大学 法学部)
- 阿部 理香(九州国際大学 法学部)
- 長谷川 聡(専修大学 法学部)
- 高木 元也(独立行政法人労働安全衛生総合研究所 産業安全研究所人間工学・リスク管理研究グループ)
- 北岡 大介(東洋大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究事業は、
①安衛法に関する体系書を制作すること
※特に条規の趣旨、運用実態(関係判例や監督指導の実際)を明らかにしたものであって、先の研究プロジェクト(研究代表者・三柴丈典「労働安全衛生法の改正に向けた法学的視点からの調査研究」(19JA1001))から引き継いだもの。書籍にして約 1700 頁、報告書段階では 2000 頁を超え、学問的にも実務的にも最も充実した体系書の完成を予定している。
②制作した体系書から、特に運用実態に関する情報を抜き出し、産業保健と安全衛生全般に関する法教育のための教本を制作すること
③②の教本を用いて、少人数の被験者グループを対象にした実践的な法教育を実施し、その効果を測定すること
を目的としている。
初年度にあたるR4年度は、①と③のうち産業保健法学研修の準備作業(専門委員会の組織、カリキュラムの作成、効果測定指標の開発と受講者(被験者)の特定)に注力した。
①安衛法に関する体系書を制作すること
※特に条規の趣旨、運用実態(関係判例や監督指導の実際)を明らかにしたものであって、先の研究プロジェクト(研究代表者・三柴丈典「労働安全衛生法の改正に向けた法学的視点からの調査研究」(19JA1001))から引き継いだもの。書籍にして約 1700 頁、報告書段階では 2000 頁を超え、学問的にも実務的にも最も充実した体系書の完成を予定している。
②制作した体系書から、特に運用実態に関する情報を抜き出し、産業保健と安全衛生全般に関する法教育のための教本を制作すること
③②の教本を用いて、少人数の被験者グループを対象にした実践的な法教育を実施し、その効果を測定すること
を目的としている。
初年度にあたるR4年度は、①と③のうち産業保健法学研修の準備作業(専門委員会の組織、カリキュラムの作成、効果測定指標の開発と受講者(被験者)の特定)に注力した。
研究方法
R4年度は、12名の法学者、1名の弁護士、2名の労働基準監督官らが、割り当てられた条文につき、内容、趣旨、制度史、安衛法内外の関連規定、行政官による運用実態、関係判例等にかかる逐条解説の作成を進めた。その際、厚生労働行政での法政策立案経験者、元・現労働基準監督官、産業保健学者、安衛研所属の安全工学者らの協力を得た。
合わせて、産業保健法学の有効な法教育方法の開発のため、産業保健研修、教育工学、統計学等の専門家、企業人事関係者らを擁する調査委員会を設置したうえ、従来のアンケート等を踏まえたカリキュラム編成、調査票の作成、調査デザインの構築を進めた。
合わせて、産業保健法学の有効な法教育方法の開発のため、産業保健研修、教育工学、統計学等の専門家、企業人事関係者らを擁する調査委員会を設置したうえ、従来のアンケート等を踏まえたカリキュラム編成、調査票の作成、調査デザインの構築を進めた。
結果と考察
本プロジェクトのうち、特に体系書の制作にかかるエフォートは膨大で、未だ完了し得ていないが(内容的には、半ば安全衛生行政の試行錯誤の棚卸しのような様を呈している)、予定した分担報告書は全て提出され、統括による要約も2/3近く完了している。
より個別具体的な提言は、先の研究プロジェクトで行政官等から示された提言について研究班会議で議論した結果を該当の分担報告書で示した。
一方、法教育プログラムの開発は、初年度の課題とした産業法学研修について、双方に進められた。
先ずは研究統括者(三柴)が、産業保健に関する判例を中心とした基本的な法情報を習得するための講座と、具体的な事例検討から成るカリキュラムを編成した。また、教育工学者、産業医、弁護士、人事関係者ら、多職種から成る委員会を組織し、カリキュラムの承認を経て、効果測定指標、運営事項について意見を出し合い、人事関係者は、受講者(被験者)となる者を推薦した。こうして、学会会員からの応募者と合わせ、約25 名から成る受講者グループが形成された。
R5年度には、産業保健法学研修が終了し、終了直後と数ヶ月を経た時点での効果測定が行われる予定である。並行して、安全衛生一般に関する法学研修のプログラム開発を開始する予定であり、既に、開発を担当する委員会の委員や受講者の選定に入っている。
より個別具体的な提言は、先の研究プロジェクトで行政官等から示された提言について研究班会議で議論した結果を該当の分担報告書で示した。
一方、法教育プログラムの開発は、初年度の課題とした産業法学研修について、双方に進められた。
先ずは研究統括者(三柴)が、産業保健に関する判例を中心とした基本的な法情報を習得するための講座と、具体的な事例検討から成るカリキュラムを編成した。また、教育工学者、産業医、弁護士、人事関係者ら、多職種から成る委員会を組織し、カリキュラムの承認を経て、効果測定指標、運営事項について意見を出し合い、人事関係者は、受講者(被験者)となる者を推薦した。こうして、学会会員からの応募者と合わせ、約25 名から成る受講者グループが形成された。
R5年度には、産業保健法学研修が終了し、終了直後と数ヶ月を経た時点での効果測定が行われる予定である。並行して、安全衛生一般に関する法学研修のプログラム開発を開始する予定であり、既に、開発を担当する委員会の委員や受講者の選定に入っている。
結論
本研究プロジェクトの研究成果により、大きく2つの効果が期待される。
1)客観的根拠や科学的根拠に基づく政策立案への貢献
法学者の他、関係分野の専門家の知見を総合し、逐条ごとに制度の背景と運用実態を記した体系書を公表する。
条文横断的な法政策学的研究では、1)テレワーカーやフリーランス、第三次産業への安全衛生規制のあり方、2)性能基準と罪刑法定主義の調整、3)作業関連疾患対策や行動災害対策、4)法令の名宛人と保護対象、5)特別安全規則・特別衛生規則の統合可能性、6)法定健診制度のあり方、7)製造流通規制と製造物責任の関係などを検討し、安全衛生分科会や行政検討会での議論に活用する。また、民事的効果を示し、安全衛生に詳しい法学専門家の裾野拡大に繋げる(社会的基盤の形成)。
2)実態把握や費用対効果などの客観的根拠の創出
最終目的(労災の減少と産業保健にかかる問題解決)の中間目標として、研修受講者(人事労務関係者を含む)の意識変革、有効と認められる安全衛生活動、問題解決能力の向上を設定し、その状況を、受講前・直後調査、フォローアップ調査等で測定する。この際、違反の法的責任を基軸とした教本を製作し、説得性を持つ法教育ノウハウを開発する。これらを通じ、法知識を基礎に安全衛生活動を推進できる人材の裾野拡大(社会的基盤の形成)と共に、国の施策立案(法令上の安全衛生教育の義務付け、事業場への指導方法、教材ツールの周知など)への反映を図る。
1)客観的根拠や科学的根拠に基づく政策立案への貢献
法学者の他、関係分野の専門家の知見を総合し、逐条ごとに制度の背景と運用実態を記した体系書を公表する。
条文横断的な法政策学的研究では、1)テレワーカーやフリーランス、第三次産業への安全衛生規制のあり方、2)性能基準と罪刑法定主義の調整、3)作業関連疾患対策や行動災害対策、4)法令の名宛人と保護対象、5)特別安全規則・特別衛生規則の統合可能性、6)法定健診制度のあり方、7)製造流通規制と製造物責任の関係などを検討し、安全衛生分科会や行政検討会での議論に活用する。また、民事的効果を示し、安全衛生に詳しい法学専門家の裾野拡大に繋げる(社会的基盤の形成)。
2)実態把握や費用対効果などの客観的根拠の創出
最終目的(労災の減少と産業保健にかかる問題解決)の中間目標として、研修受講者(人事労務関係者を含む)の意識変革、有効と認められる安全衛生活動、問題解決能力の向上を設定し、その状況を、受講前・直後調査、フォローアップ調査等で測定する。この際、違反の法的責任を基軸とした教本を製作し、説得性を持つ法教育ノウハウを開発する。これらを通じ、法知識を基礎に安全衛生活動を推進できる人材の裾野拡大(社会的基盤の形成)と共に、国の施策立案(法令上の安全衛生教育の義務付け、事業場への指導方法、教材ツールの周知など)への反映を図る。
公開日・更新日
公開日
2023-06-01
更新日
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