文献情報
文献番号
200901043A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障と労働市場政策:格差社会のセイフティネットの構造
課題番号
H20-政策・若手-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神林 龍(一橋大学 経済研究所)
研究分担者(所属機関)
- 永瀬伸子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)
- 大森義明(横浜国立大学経済学部)
- 駒村康平(慶応義塾大学経済学部)
- 玄田有史(東京大学社会科学研究所)
- 野口晴子(国立社会保障・人口問題研究所・社会保障基礎理論研究部)
- 川口大司(一橋大学大学院経済学研究科)
- 宮里尚三(日本大学経済学部)
- 山田篤裕(慶応義塾大学経済学部)
- 両角良子(富山大学経済学部)
- 妹尾渉(平成国際大学法学部)
- 酒井正(国立社会保障・人口問題研究所・社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,606,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、世帯に対する社会保障諸制度と、労働市場への介入を通じた最低限度の保障とを同時に考察することによって、社会全体でみたときの適切な社会保障制度のあり方を提示することである。本研究の特色は、社会保障と労働経済の分野を専門とする10名を超える経済学研究者が同時に参加する研究会を組織するところにある。その際、社会的最低限の網が顕著に揺れていると考えられる、高齢者・若年者・女性・障害者などいわゆる社会的弱者に焦点をあて、対応する諸制度(たとえば、最低賃金と生活保護、医療保険と労災保険など)を具体的に取り上げることで、制度相互の適切なバランスを解明することを最終的な目標とする。
研究方法
研究は3ヵ年で行われ、毎年10回程度の定例研究会と、毎年1回程度行われるコンファレンスを予定している。定例研究会では、原則として労働経済研究者と社会保障研究者の両者をゲストスピーカーとして招聘し、基礎研究の深化を図った。コンファレンスでは、政策担当者などを招聘し、研究成果の政策への応用についての知見を深めた。各研究分担者は自ら課題を選択し個別で研究を遂行する一方、定例研究会およびコンファレンスへ出席し研究成果を報告、最終的に学術論文をまとめることが要請される。
結果と考察
まず、日本における労働市場のパフォーマンスが世帯所得の分布や家族形態の選択に与える影響が、既存研究を通じて検討された。中心となったのは、いわゆるワーキングプアや貧困層の存在を統計的に確認することである。貧困形成に関して本研究で指摘された重要な論点のひとつは、家族形成の問題である。さらに、本研究では、従来労働市場の機能とは切り離されて考えられてきた諸制度が一定の役割を果たしていることも強調された 。
結論
労働市場と社会保障制度は、従来それぞれ独立に考えられてきた。しかし、1990年代以降、急速に変化したといわれる労働市場の様態が、実は社会保障制度に対する(労働市場制度を所与とした)合理的かつ適切な反応として理解できる側面があることがわかる。もちろん、このことは現在の労働市場と社会保障制度との関連が効率的な関係を保っていることを示唆するわけではない。これらの点により気を配り、現状を判断しつつ政策提言に結びつけることが必要であろう。
公開日・更新日
公開日
2010-08-13
更新日
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